選挙で拡散しやすい偽・誤情報の典型パターン 地方選固有の事例も【プレバンキング】

選挙で拡散しやすい偽・誤情報の典型パターン 地方選固有の事例も【プレバンキング】

沖縄県知事選の投開票を前に、SNSでは立候補者に関する真偽不明の情報が多数拡散しています。日本ファクトチェックセンター(JFC)はこれまでも、選挙のたびに偽・誤情報を検証してきましたが、似た主張は形を変えて広がります。1議席をめぐって対立が激化しやすい首長選挙などに特徴的な語り口もあります。

この記事は、偽・誤情報の手口を知ることで、同様の情報を目にしたときに騙されにくくする「プレバンキング」という予防的な取り組みです。詳しくは、JFC用語「プレバンキング」をご覧ください。

過去に拡散した事例

たった1人の勝者を決める大統領選型の知事選で特に拡散しがちな偽・誤情報を分類しました。

1. 候補者をめぐる偽画像・動画

AIで誰でも簡単に偽画像・動画を捏造したり、加工したりすることができるようになりました。注目の選挙・候補者に関して、必ずと言っていいほど、実物と異なる演説画像や偽ポスターなどが出回ります。

2026年8月、沖縄県知事選に立候補している古謝玄太氏の顔写真とともに「国益にかなう沖縄をつくる」と書かれた選挙ポスター風の画像がSNSで拡散しました。

しかし、これについて陣営は、自分たちが作成したものではないと否定しています。画像には、AIで作成されたことを示す電子透かし(SynthID)も確認されました。

JFC”古謝げんた氏「国益にかなう沖縄をつくる」? ポスター風画像は陣営のものではない【ファクトチェック】

2024年の都知事選では、小池百合子氏が「カイロ大学首席卒業」と書かれた横断幕の後ろで演説する画像が拡散しました。JFCが調べたところ、日本テレビの元動画では、幕の色が白無地で、文字は後から合成されたものでした。

JFC”小池百合子氏 都知事選演説で「カイロ大学首席卒業」の垂れ幕? ネットミームに【ファクトチェック】

2. 候補者の経歴や公約を捏造

沖縄県知事選を前に、「辺野古移設を決めた張本人は玉城デニー氏だ」と主張する投稿が拡散しました。しかし、辺野古移設が閣議決定された1999年当時、玉城氏は議員ではなく、その後の閣議決定や県の受け入れ承認の際には反対の立場を取っていました。

JFC”辺野古移設を決めたのは玉城デニー氏? 閣議決定や当時の知事の受け入れ承認時には反対【ファクトチェック】

候補者が掲げていない公約を「掲げている」と捏造するケースもあります。

2024年の兵庫県知事選では、候補の稲村和美氏について「当選すると外国人の地方参政権が成立」するという言説が拡散しました。けれども、稲村氏の公約にそうした記載はなく、本人も明確に否定しました。

JFC”兵庫県知事選 稲村氏が当選すると外国人の地方参政権が成立する?公約になく、本人も否定【ファクトチェック】” 

3. 発言・映像の恣意的な切り取り

実際の発言や映像の一部だけを切り取ったり、架空の説明を加えたりして、事実と異なる印象を与える手口です。

2025年の宮城県知事選で、現職の村井嘉浩氏について「土葬を肯定している」という趣旨の投稿が拡散しました。村井氏は、討論番組で、東日本大震災の際の一時的な「土葬」に言及をしていますが、その直後に「(土葬の導入は)完全に断念した」と明言していました。

JFC”宮城県・村井知事が土葬を肯定? 「完全に断念した」と発言【ファクトチェック】

2024年の兵庫県知事選で再選した斎藤元彦知事について、百条委員会の奥谷謙一委員長(当時)が「パワハラはなかった」と発言したという動画付き投稿が拡散しましたが、拡散した動画は発言の一部を切り取ったものでした。

元動画では奥谷氏が「厳しい叱責を受けたことがあると言われてた方は結構おられたんじゃないか」「パワハラにあたるかどうか評価したい」などと、慎重な意見を述べていました。

JFC”「(斎藤知事の)パワハラはなかった」と百条委の委員長が発言? 前後の文脈を無視した切り取り動画【ファクトチェック】” 

4. 選挙で不正があったという主張

これは知事選に限りませんが、選挙のたびに「不正があった」という投稿も拡散します。大阪府知事選や熊本県知事選では、開票率がゼロ%なのに、大手メディアが「当選確実」と報じることについて、「不正選挙だ」という主張が拡散しました。

けれども、これは期日前投票の集計などから当落を予測する「ゼロ票打ち」という報道手法の一つで、不正ではありません。

JFC.”大阪府知事選の当確が早すぎる、不正選挙?ゼロ票打ちによるもの【ファクトチェック】”.

2025年の宮城県知事選では「投票用紙が盗まれた」「期日前投票が大幅に増えたのに投票率が下がるのはおかしい」との投稿が拡散しました。けれども、県選挙管理委員会はJFCの取材に「盗難はなかった」と否定しました。

JFC”宮城県知事選で投票用紙が盗まれる?選挙不正? 選挙経費の紛失と誤認か【ファクトチェック】

見分ける方法

1.信頼できる情報を確認する

候補者の公式サイトや陣営の公式SNS、選挙管理委員会、報道機関の記事など、信頼できる情報にあたりましょう。

2.発言や映像は前後の文脈を確認する

切り取られた発言や短いダイジェスト動画は、前後の文脈次第で印象が大きく変わります。できるだけ元番組や配信のアーカイブを確認しましょう。

3.画像の出どころを確かめる

画像検索でオリジナルを探したり、AI生成を示す電子透かし(SynthIDなど)の有無を確認しましょう。

4.「報じられた」という情報の出どころを確認する

特定のメディアが「報じた」「不自然な対応をした」などの情報は、そのメディアの公式サイトやニュース検索で実際に該当する記事・番組があるかを確認しましょう。

出典・参考

JFC.”用語 プレバンキング”.
https://www.factcheckcenter.jp/jct-terms-prebunking/,(閲覧日2026年9月1日).

JFC.”古謝げんた氏「国益にかなう沖縄をつくる」? ポスター風画像は陣営のものではない【ファクトチェック】”.
https://www.factcheckcenter.jp/fact-check/politics/okinawa-election-koja-fake-poster/,(閲覧日2026年9月1日).

JFC.”小池百合子氏 都知事選演説で「カイロ大学首席卒業」の垂れ幕? ネットミームに【ファクトチェック】”.
https://www.factcheckcenter.jp/fact-check/politics/false-koike-cairo-university-graduation/,(閲覧日2026年9月1日).

JFC.”辺野古移設を決めたのは玉城デニー氏? 閣議決定や当時の知事の受け入れ承認時には反対【ファクトチェック】”.
https://www.factcheckcenter.jp/fact-check/politics/okinawa-tamaki-henoko/,(閲覧日2026年9月1日).

JFC.”兵庫県知事選 稲村氏が当選すると外国人の地方参政権が成立する?公約になく、本人も否定【ファクトチェック】” .
https://www.factcheckcenter.jp/fact-check/politics/false_hyogo_governor_foreign_voting/,(閲覧日2026年9月1日).

JFC.”宮城県・村井知事が土葬を肯定? 「完全に断念した」と発言【ファクトチェック】”.
https://www.factcheckcenter.jp/fact-check/politics/inaccurate-governor-murai-endorses-burial/,(閲覧日2026年9月1日).

JFC.”「(斎藤知事の)パワハラはなかった」と百条委の委員長が発言? 前後の文脈を無視した切り取り動画【ファクトチェック】” .
https://www.factcheckcenter.jp/fact-check/politics/inaccurate-chare-said-no-power-harassment/,(閲覧日2026年9月1日).

JFC.”大阪府知事選の当確が早すぎる、不正選挙?ゼロ票打ちによるもの【ファクトチェック】”.
https://www.factcheckcenter.jp/fact-check/politics/osaka-prefectural-governor-election-early-certainty-not-fraudulent-zero-votes/,(閲覧日2026年9月1日).

JFC.”熊本知事選で不正開票?【ファクトチェック】” .
https://www.factcheckcenter.jp/fact-check/politics/false-voting-in-kumamoto-governor-election/,(閲覧日2026年9月1日).

JFC.”都議選・八王子で開票に不正? 出口調査と投票結果は異なる【ファクトチェック】”.
https://www.factcheckcenter.jp/fact-check/politics/false-election-fraud-in-hachioji/,(閲覧日2026年9月1日).

JFC.”宮城県知事選で投票用紙が盗まれる?選挙不正? 選挙経費の紛失と誤認か【ファクトチェック】”.
https://www.factcheckcenter.jp/fact-check/politics/false-ballot-theft-in-miyagi-election/,(閲覧日2026年9月1日).

執筆:根津綾子
編集:藤森かもめ、古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

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香川県知事選、開票前の当確は不正? ゼロ票打ちによるもの【ファクトチェック】

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2026年8月30日に投開票があった香川県知事選挙で、報道機関が、投票が終わった直後に現職の池田豊人氏に「当選確実」と報じたことについて、不正選挙があったかのように主張する投稿が拡散しましたが、誤りです。報道機関が投票を締め切った直後に「当確」と報じるのは、事前取材や有権者への調査などに基づくもので、一般的な手法です。 検証対象 拡散した言説 2026年8月30日、「うゎ…香川オワタ…これから開票所に投票用紙を運ぶのにもう「当確」って… 絶対おかしいだろ‼️💢」という投稿がXで拡散した。 検証する理由 9月1日現在、投稿は2400回以上リポストされ、表示は22万件を超える。 投稿には「なんでそれが不正選挙になるんですか?」「当確って、メディアが多分当選しますよって、宣言してるだけで、当選したではないんですよ」などの指摘もあるが、「開票せずに当確なんて、いつも思いますがおかしいです」「不正のにおいがプンプンします」など、真に受けた反応も多いため、検証する。 検証過程 拡散した画像の出典は 拡散した投稿には、瀬戸内海放送(KSB)の「【速

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クマが捨てられた食パンを食べる様子? AI動画【ファクトチェック】

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「山本幸三地方創生相が『学芸員はがん』」と発言? 2017年の記事 【ファクトチェック】

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山本幸三・地方創生相(当時)が「学芸員はがん。連中を一掃しないと」と述べた記事が拡散し、反発が広がりましたが、ミスリードで不正確です。発言は2017年で、山本氏は翌日、この発言を撤回・謝罪しています。山本氏は2021年の衆院選で落選しています。 検証対象 拡散した言説 2026年8月24日、「『学芸員はがん。連中を一掃しないと』 山本地方創生相:朝日新聞」という見出しの朝日新聞記事がXで拡散した。 検証する理由 投稿者自身は、別の投稿で、記事の内容を読まない人たちへの拡散は想定外だったと述べており、記事が現在のものではないことを認識している。 Xユーザーの中には「見識のなさに呆れた」「文化財の保存舐めるな」などと最近の発言と受け止めている反応があるため、検証する。 検証過程 拡散した投稿の記事リンクは、朝日新聞が2017年4月16日に配信した「『学芸員はがん。連中を一掃しないと』 山本地方創生相」という記事だ。 山本氏が大津市内で開かれた地方創生セミナーで、文化財観光の振興について、見学者への案内方法やイベント活用が十分でないことを指摘し、

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日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や騙されない人の行動

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