兵庫県知事選 稲村氏が当選すると外国人の地方参政権が成立する?公約になく、本人も否定【ファクトチェック】

兵庫県知事選 稲村氏が当選すると外国人の地方参政権が成立する?公約になく、本人も否定【ファクトチェック】

前知事の失職に伴う兵庫県知事選挙に立候補している稲村和美氏について、「当選すると外国人の地方参政権が成立」するという言説が拡散していますが、誤りです。稲村氏は外国人参政権を公約にしておらず、この言説を自ら否定しています。

検証対象

兵庫県では、斎藤元彦前知事が県議会の不信任決議案を受けて失職し、2024年11月17日投開票で県知事選が実施される。選挙戦の最中、立候補者の一人で前尼崎市長の稲村和美氏に対して「当選すると外国人の地方参政権が成立する」「外国人参政権推進派」「外国人参政権を与えようとしています」などの言説がX(旧Twitter)で拡散した(例1例2例3)。

投稿の中には47万を超える閲覧と4600件以上のリポストのついたものもある。「ホンマにその通り 稲村知事になったら埼玉県みたくクルド人や中国人だらけになるで」「尼崎だけでやってくれ。 迷惑」「土葬の墓地が許可される」といったコメントのほか、「デマを流しましたね」という指摘もある。

また、自民党の岡田ゆうじ神戸市議会議員は、自身のアカウントで「稲村氏は極左の『緑の党』の共同設立者の一人で、緑の党は外国人参政権を主要政策としている。知事選出馬に際し、緑の党の役員は降りたようだが、Wikiには記載が残っている。不適格では」と10月28日に投稿している。

検証過程

日本ファクトチェックセンター(JFC)では、稲村氏が「外国人の参政権」を公約としているか稲村氏のウェブサイトで確認した。公約については「政策」「30アクション」というページに書かれているが、外国人参政権については触れていない。

拡散した言説には、稲村氏が過去に現在の緑の党の前身の団体の設立にかかわり共同代表だったことを指摘する投稿もあった。緑の党は基本政策として「特別永住者のあらゆる権利を日本国民と対等とし、一般永住者の地方参政権や教育を受ける権利を保障する」を挙げている。

このことについて稲村氏は自身のウェブサイトで「緑の党の『前身』の団体の活動に参加していたが、2010年の尼崎市長就任時に会員を辞めている。2012年に設立された緑の党の活動には関与していない」と述べている(いなむら和美 みんなの質問に答えます)。

緑の党も11月7日付けで同様の説明をしており、「稲村さんの政策と緑の党の政策には関連がない」と関係性を否定している(緑の党サイト)。

稲村氏は、11月9日に自身のウェブサイトで「外国人参政権」を進めることについて、「この件について何も発言しておらず、また県知事選とは関係ありません」「私が当選したら、外国人参政権を進める、との噂があるそうですが、それは正しくありません」と否定して、「デマに気をつけて」と付け加えている。

判定

兵庫県知事選挙に立候補している稲村和美氏について、「当選すると外国人の地方参政権が成立する」「外国人参政権推進派」という言説が拡散したが、誤り。稲村氏は外国人参政権を公約にしておらず、この言説を否定している。

あとがき

選挙では、政党や候補者に関する偽・誤情報が特にソーシャルメディア上で拡散しがちです。政党や候補者の公約や主張は、公式のウェブサイトや新聞、テレビ局の報道、選挙公報など信頼できるソースで確認しましょう。JFCでは解説記事を公開しています。参考にしてください。

選挙で拡散する偽・誤情報、AIの影響は? 標的は候補者だけでなく民主主義【解説】
石破茂首相は2024年10月に解散総選挙を実施すると宣言しました。選挙は偽・誤情報の標的になります。2024年は世界中で国政選挙が実施され、生成AIによる混乱も指摘されてきました。実際にどのようなデマや噂が拡散するのでしょうか。国内外の状況について解説します。 選挙で拡散しがちな偽・誤情報の種類 選挙で拡散する偽・誤情報には世界的に共通する傾向がある。以下の表に日本で実際に拡散し、日本ファクトチェックセンター(JFC)で検証をしたものを中心に分類した。 拡散する時期を「投開票日前」「投開票日」「選挙後」に、標的となる対象を「政党・候補者」「選挙制度」「メディア」に分けた。標的と時期ごとに、これまでにJFCが実際に検証した情報をまとめている。 政党・候補者に関する偽・誤情報 候補者や政党を貶めたり、持ち上げたりする偽・誤情報が拡散する理由の一つは、自分が支持する陣営を有利にしたいという明確な意図だ。間違った情報を意図的に流して政治的な利益を得ようとする「故意犯」と言える。 ただ、これだけが拡散の理由ではない。 自分が嫌いな候補にとって不利な情報であれ

検証:宮本聖二
編集:古田大輔、藤森かもめ、野上英文


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

埼玉県知事・大野元裕氏がポスターに「日本一外国人が暮らしやすい埼玉」? 加工された画像【ファクトチェック】

埼玉県知事・大野元裕氏がポスターに「日本一外国人が暮らしやすい埼玉」? 加工された画像【ファクトチェック】

埼玉県知事・大野元裕氏の顔写真と「日本一外国人が暮らしやすい埼玉」と書かれたポスターのような画像が拡散しましたが、公式のものではなく誤りです。画像は加工されています。大野氏のHPに書かれた実際のキャッチコピーは「日本一暮らしやすい埼玉」で、「外国人が」という文言は含まれていません。 検証対象 拡散した投稿  2026年9月13日、「玉城デニーの次はこいつだ」というコメントとともに、大野知事のポスター風の画像がXで拡散した。画像には「日本一外国人が暮らしやすい埼玉」と書かれている。 検証する理由 この投稿は1.1万件以上リポストされ、表示回数は53万回を超える。「絶対に落とさなければならない知事TOP3 デニー(沖縄)× 大野(埼玉) 小池(東京)」「来年は我が埼玉の出番」というコメントがある一方で、「悪質なデジタル修正がなされた画像が使用されています」という指摘もある。 検証過程 大野元裕氏は2019年の埼玉県知事選挙に初当選し、現在2期目を務めている(大野もとひろ公式サイト."大野もとひろ 埼玉県知事 公式サイト")。 大野氏の公式サイトに

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)
沖縄県知事選、きょう投開票/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

沖縄県知事選、きょう投開票/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

きょうは沖縄県知事選の投開票日です。偽・誤情報だけでなく、誹謗中傷や一方的な内容のAIディープフェイク、動画などが拡散しています。琉球新報が積極的にファクトチェックをしている他、NHKが動画を分析しています。 今週のファクトチェックまとめです。 ✉️日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら。 今週のお知らせ JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら 日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は9月27日(日)午後4時~5時30分で、お申し込みはこちら。 日本ファクトチェックセンター(JFC) ファクトチェック講師養成講座 9月27日(日)開催分日本ファクトチェックセンター(JFC)による講師

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
伊勢神宮近くで起きた火事はイスラム教徒によるもの? 警察「裏付けはない」【ファクトチェック】

伊勢神宮近くで起きた火事はイスラム教徒によるもの? 警察「裏付けはない」【ファクトチェック】

2026年8月31日に三重県伊勢市の明倫商店街で火災が起きたことについて、イスラム教徒が放火したと主張する投稿が拡散しましたが、根拠不明です。9月8日午前9時現在、火災の原因は調査中で、伊勢警察署は、日本ファクトチェックセンター(JFC)の取材に「(イスラム教徒によるものだという)裏付けはない」と答えています。 検証対象 拡散した言説 2026年8月31日、「とうとう、イスラムどもが、伊勢神宮を燃やしにきましたね」という投稿がXで拡散した。 検証する理由 9月7日現在、拡散した投稿は3800回以上リポストされ、表示は157万件を超える。 同様の投稿は他にも拡散している(例)。 投稿には、「犯人はまだ逮捕されていないのに、犯人がイスラム教徒だと決めつけるのか」「イスラムがやった証拠あるんでしたっけ」などの指摘もあるが、「イスラム駆逐デモやらないかな?行くんだけど」「更地になったらモスク建設でしょうか?」など真に受けた反応も多いため検証する。 検証過程 拡散した投稿は 拡散した投稿は、NHKが8月31日に公開した「三重 伊勢神宮近くの商店街

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
災害や事件の際のディープフェイク?/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

災害や事件の際のディープフェイク?/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

ネパールの土石流や、島根県の路上に捨てられたパンを食べに来るクマ――。AIによる画像や動画、いわゆるディープフェイクが拡散しました。中にはディープフェイクかはっきりしないが、少なくともその事件や災害のものではない過去の映像もあります。 ✉️日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら。 今週のお知らせ JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら 日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は9月27日(日)午後4時~5時30分で、お申し込みはこちら。 日本ファクトチェックセンター(JFC) ファクトチェック講師養成講座 9月27日(日)開催分日本ファクトチェックセンター(JFC)による講師養成講座です

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は9月27日(日)午後4時~5時30分で、お申し込みはこちら。 日本ファクトチェックセンター(JFC) ファクトチェック講師養成講座 9月27日(日)開催分日本ファクトチェックセンター(JFC)による講師養成講座です。 講師養成講座(オンラインで90分)を受講いただいた後、修了課題を提出された方には、教室や職場などで利用可能な教材の提... powered by Peatix : More than a ticket.Peatix 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験

JFCファクトチェッカー認定試験

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や騙されない人の行動

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)