個人情報やカード情報、企業の情報漏洩を狙う偽メール・偽サイトに注意 共通する6つの手口は?【プレバンキング】

個人情報やカード情報、企業の情報漏洩を狙う偽メール・偽サイトに注意 共通する6つの手口は?【プレバンキング】

2026年夏以降、不正アクセスによる個人情報の大規模な流出が相次いでいます。また、SNSでは「偽メールが届いた」などの報告が多数投稿されています。

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、カード会社や宅配業者を装って個人情報やカード情報を盗み取ろうとする偽メールについて、繰り返し注意を呼びかけてきました。同様の事例は、企業や団体名を変えて、繰り返し広がっています。今回は、これまで検証してきた事例に共通する6つの「手口」を紹介します。

この記事は、偽・誤情報の手口を知ることで、同様の情報を目にしたときに騙されにくくする「プレバンキング」という予防的な取り組みです。詳しくは、JFC用語解説「プレバンキング」をご覧ください。

広がりやすい6つの手口

1. 実在の企業になりすます

カード会社や宅配業者など、利用者の多い企業の名前やロゴを使って、公式の通知に見せかける手口です。

2026年10月、三井住友カードを名乗り「お客さまのアカウントに異常な利用を検知いたしました」という偽メールが確認されました。本文には同社のロゴや「Vpassで利用明細を確認」というボタンが並んでいましたが、実際の送信元は同社とは無関係のアドレスでした。メール内のリンクは、どれを押しても同じ偽サイトにつながりました。

JFC.”三井住友カードを装って「異常な利用を検知」とメール 偽リンクへ誘導【詐欺注意】”

同じ時期に、ヤマト運輸を名乗って「ご住所不明により再配達確認のお知らせ」と称する偽メールも出回りました。12桁の送り状番号や配送状況の図、偽メールへの注意書きまで添えられ、公式の通知と区別がつきにくいものでした。

JFC.”ヤマト運輸を名乗る偽の再配達メールが相次ぐ【詐欺注意】”

メールの送信者名やロゴや文言などは、誰でも簡単に複製できます。

2. 警察や公的機関をかたって信じさせる

警察や年金、消防など、公的機関の名前を使う手口も相次いでいます。受け取った人は公的な名前を聞くと「無視してはいけない」と感じがちなため、その心理を突く手口です。

2026年7月ごろ、警視庁を名乗り「【警視庁】マイナポータル:不審なアクセスの確認」という件名の偽メールが出回りました。本文には「警視庁サイバーセキュリティ対策本部」の名前や通知番号のほか、本物の警視庁の住所まで書かれていましたが、送信元は警視庁と無関係のドメインでした。リンク先の偽サイトにアクセスすると、ログイン情報や個人情報を盗まれるおそれがあります。警視庁は公式Xで、リンクを押さないように注意を呼びかけています。

JFC.”「マイナポータルに不審なアクセス」という偽メールに注意 警視庁「『オンライン確認画面へ』という部分は押さないで」”2026年8月4日

2026年5月には、日本年金機構を名乗って「【重要】差押予告通知書(最終通知)」という偽メールを送り、国民年金保険料が未納だと主張して、PayPayで送金させようとする手口もありました。「日本年金機構」をかたっていましたが、送信元のドメインは同機構のもの(nenkin.go.jp)とは異なりました。

JFC.”日本年金機構を騙ってPayPayで送金させる偽メールに注意 「国民年金保険料の未納」と嘘”

公的機関や有名企業の名前や住所、通知番号が書かれていても、それだけで信用できるとは限りません。

3. 「不正アクセス」や「差し押さえ」という文言で不安をあおる

「不正な利用を検知した」「差し押さえる」などの言葉で不安をあおり、すぐに手続きをとらなければいけないかのように装う手口もあります。

三井住友カードの偽メールが拡散した時は、「48時間以内にログイン」しなければアカウントを停止すると、ユーザーを焦らせました。警視庁を名乗る偽メールも手続きができる期間を短く設けていました。日本年金機構を名乗る偽メールは、手続きの期限を過ぎると「差押手続きを即刻開始する」と脅していました。

三井住友カードは公式サイトで、「緊急」「カード(アカウント)をロックした」「24時間以内に」などの不安をあおる表現はフィッシングメールの特徴だとして、注意を呼びかけています。

JFC.”三井住友カードを装って「異常な利用を検知」とメール 偽リンクへ誘導【詐欺注意】”

4. 災害に便乗する

大きな災害の時にも、偽メールが出回ります。2026年7月28日の熊本地震の直後には、日本赤十字社を名乗って「熊本地震義援金募集」と呼びかける偽メールが出回りました。偽メールには、同社のロゴや写真が使われていましたが、同社は「このようなメールを送信することはなく、当社とは一切関係がございません」と注意を呼びかけました。

JFC.”日本赤十字社を騙る「なりすましメール」に注意”

5. 電話で直接、個人情報を聞き出す

メールやSMSだけでなく、電話で直接聞き出す手口もあります。

2026年7月ごろには、総務省消防庁を名乗り「ご自宅が緊急避難先に指定された」「住所を教えてほしい」などと個人情報を聞き出そうとする不審電話が相次ぎました。同庁は公式Xで、そのような対応はしておらず、個人に電話をかけることは一切ないと注意を呼びかけています。

JFC.”「ご自宅が緊急避難先に指定された」 総務省消防庁をかたる不審電話相次ぐ【詐欺注意】”

2026年10月に情報流出を公表した企業の一部は、メールやSMSだけでなく、不審な電話にも注意するように呼びかけています。

6. 身に覚えのない「領収書」で慌てさせる

実際には購入していない商品やサービスの領収書・請求メールを送りつけて、「解約」「キャンセル」などのリンクを押させる手口も確認されています。

2026年10月、「Appleからの領収書です」という偽メールが送られてきたという投稿が拡散しました。本物の領収書とよく似ており、Xでは「一瞬本物かと思った」というコメントもありました。

Appleは公式サイトで、アカウント情報を騙し取る手口について注意喚起しています(Apple.com.”App StoreやiTunes Storeからの正規のメールを識別する")。

Appleによると、本物の領収書メールには、Apple Accountに登録された氏名・住所などが必ず記載されています。また、本文に「解約はこちら」といったボタンやリンクはありません。送信元のアドレスが偽装されることもあるため、アドレスだけでは判断できない場合があります。

また、実際の企業のドメインから偽のメッセージが届くケースも確認されています。

JFC.”セゾンカードを名乗る偽メールが拡散 送信元は不正アクセス発覚の「アララ」【詐欺注意】”

身に覚えのない請求が届いても、メール内のリンクから手続きをせず、公式のアプリやサイトから購入履歴を確かめましょう。

偽サイト・メールを見分ける方法

1. メール・SMSのリンクからログインしない

カード会社や金融庁は、メッセージが届いた場合、そのメッセージのリンクを開かず、公式アプリや事前に登録したブックマークから内容を確認するように呼びかけています。見た目が本物に似ていても、メッセージの内容を確認する時は、自分で公式アプリやサイトにアクセスして請求内容などを確認しましょう。

2. 送信元のアドレスを確かめる

三井住友カードや日本年金機構を名乗る偽メールは、送信元のドメインが本物と異なっていました。これは一つの手がかりになりますが、送信元を本物のドメインに似せてつくらることもあるため、ドメインだけでは判断せず、ほかの点とあわせて確認しましょう。

3. 「不正利用」「差し押さえ」「◯時間以内」などの文言を見たら、いったん手を止める

手続きの期限を区切って不安をあおり、急いで手続きをさせるのは、ユーザーが考える時間を奪うためです。焦って手続きをせずに、公式のアプリ、サイトから確認しましょう。

4. 公的機関や企業からのメッセージは、公式サイトなどで直接で確かめる

気になる連絡が届いたら、まずは公式の発信を確認しましょう。情報流出の「お詫び」「補償」の連絡があった時も、企業の公式サイトで発表されているかどうかを確認しましょう。

5. 電話で住所やカード番号を聞かれたら、いったん切る

電話で住所などの個人情報を聞かれた時は、いったん電話を切り、企業や団体の公式の番号を自分で調べてかけ直しましょう。総務省消防庁は公式Xで「個人に電話をすることも一切ありません」と発信しています。

もし、送られてきたURLに、個人情報などを入力してしまった場合は、すぐにカード会社や金融機関の正規の窓口に連絡してパスワードを変えましょう。

あとがき

情報漏洩のニュースが続くと、「自分の情報も漏れて利用されるかもしれない」と不安になります。しかし、偽メールや不審電話は、そうした不安につけこみます。自分のところへ不審なメッセージが届いても、そこに個人情報などを入力しなければ、それ以上、情報が漏れることを食い止めることができます。リンクを押す前や、電話で答える前に、いったん時間をおいて、公式のサイトやアプリから内容を確かめましょう。

執筆:木山竣策
編集:古田大輔、松田史朗


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら。

もっと見る

セゾンカードを名乗る偽メールが拡散 送信元は不正アクセス発覚の「アララ」【詐欺注意】

セゾンカードを名乗る偽メールが拡散 送信元は不正アクセス発覚の「アララ」【詐欺注意】

セゾンカードを名乗り、「メルカリで25万円余りの利用があったが、決済は完了していない」という文面で、別のリンクへ誘導する偽メールが確認されています。送信元は、第三者による不正アクセスが発覚したメール配信サービス「アララメッセージ」で、見分けにくいため注意が必要です。 偽メールの内容は 2026年10月29日、JFC編集部のメンバーのもとにセゾンカードを名乗るメールが届いた。 差出人の表示名は「セゾンカード」、件名は「利用内容確認のご依頼」。本文にはセゾンカードのロゴとともに「CARD USAGE NOTICE」「利用内容の確認」と記され、利用先「メルカリ」、利用金額「254,100円」と表示されている。 末尾には「利用内容確認の回答はこちら(所要時間:30秒)」というボタンがあった。高額な利用を示して不安をあおり、リンクボタンを押させようとする手口だ。 2026年10月末、類似したメールを受け取ったという投稿がX上にも散見された。編集部のメンバーへのメールでは、利用先がメルカリとなっていたが、ヨドバシカメラや楽天市場などの他サービスが利用先として表示され

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)
富山県知事が「県民をインド人に置き換える」と発表? そのような発表はない【ファクトチェック】

富山県知事が「県民をインド人に置き換える」と発表? そのような発表はない【ファクトチェック】

「富山県知事が、県民をインド人に置き換えると発表した」「義務を課し権利を制限する『多文化共生条例』でがんじがらめにした上で、外国人を受け入れる」と主張する投稿が拡散しましたが、誤りです。富山県・新田八朗知事はそのような発表をしていません。県の多文化共生条例の素案には、「県民は、多文化共生推進に協力するよう努めるものとする」とありますが、努力規定で、義務を課したり権利を制限する内容ではありません。 検証対象 拡散した言説 2026年10月24日、「【悲報】県民をインド人に置き換えると発表した富山県知事」「義務を課し権利を制限する『多文化共生条例』でがんじがらめにした上で、外国人を受け入れる」などと主張する投稿がXで拡散した。 同一のアカウントが新田知事の10月19日の投稿写真を一部加工したうえで引用し、批判を繰り返している(例1,2)。 検証する理由 11月5日現在、投稿は多いもので7900回以上リポストされ、表示は159万件を超える。 投稿には「堂々の売国奴宣言、恐れ入る…」「つまり日本人差別をし、富山県知事は日本を売り渡す気なんだね」など、真に

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
高市首相「ウクライナのために増税」? 動画は発言の一部を切り貼り【ファクトチェック】

高市首相「ウクライナのために増税」? 動画は発言の一部を切り貼り【ファクトチェック】

「ウクライナのために増税するって国民の理解得られてるの?」と高市早苗首相を批判する投稿がXで拡散しましたが、誤りです。動画は会議での高市首相の発言の一部を切り張りしたもので、実際には、日本の防衛力強化のために「2027年1月から所得税には1パーセント上乗せになる」と説明しています。ウクライナを支援するために増税するとは述べていません。 検証対象 拡散した投稿 2026年10月26日、「は?ありえないんだけど、、ウクライナのために増税するって国民の理解得られてるの?まじ意味不明なんだけど。ウクライナのために働いてないし、税金はウクライナのためじゃなくて国民のために使うべきだろ。他国の戦争の為に増税って歴史上聞いたことないよ」という投稿が動画とともにXで拡散した。 検証する理由 この投稿は1.8万件以上リポストされ、表示回数は219万回を超えている。「デマです」という反応もあるが、「ウクライナのために増税するのか」などと真に受けたコメントも多数あるため検証する。 検証過程 動画の内容は 拡散した動画は約27秒だ。動画では「戦略3文書の改訂に向け

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)
米国の中間選挙でも拡散する「不正選挙」偽情報/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

米国の中間選挙でも拡散する「不正選挙」偽情報/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

トランプ政権の今後にも大きな影響を与える米国の中間選挙。「票が書き換えられる」などの、日本でも定番の偽情報が拡散しています。偽・誤情報の多くは、同じような内容・手口で繰り返し拡散します。事前に知っておくことで、目にしても惑わされにくくなります。 今週のファクトチェックまとめです。 ✉️日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら。 今週のファクトチェック フランス暴動の略奪品が路上で販売? マドリードとニューヨークで撮影 「フランスの暴動で略奪された高級ブランド品が、路上で定価の8〜9割引きで販売されている」という投稿が、動画や画像とともにXで相次いで拡散しました。動画はスペイン・マドリード、画像はアメリカ・ニューヨークで撮影されたもので、いずれもフランスで大規模な暴動が起きた10月17日より前に投稿されたものです。 総合的に誤りと判定しました。 フランス暴動の略奪品が路上で販売? マドリード

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は11月29日(日)午後4時~5時30分で、お申し込みはこちら。 日本ファクトチェックセンター(JFC) ファクトチェック講師養成講座 11月29日(日)開催分日本ファクトチェックセンター(JFC)による講師養成講座です。 講師養成講座(オンラインで90分)を受講いただいた後、修了課題を提出された方には、教室や職場などで利用可能な教材の提... powered by Peatix : More than a ticket.Peatix 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤っ

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験

JFCファクトチェッカー認定試験

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や騙されない人の行動

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)