各党党首の発言の真偽は 討論会をまとめて検証【#衆院選ファクトチェック】(訂正あり)

各党党首の発言の真偽は 討論会をまとめて検証【#衆院選ファクトチェック】(訂正あり)

2月8日投開票の衆院選に向けて開かれた様々な党首討論の発言をまとめてファクトチェック。「誤り」「不正確」などに該当し得る部分を一覧にしました。

質問が高市早苗首相に集中しがちなため、発言量は均等ではありません。その影響もあり、高市首相の発言へのチェックが主となりましたが、チェック回数の多さが、ただちに他の発言者より信頼性が低いことを示すわけではありません。

また、検証に時間がかかるため、すべての疑わしい発言をチェックできたわけではありません。

※当初の記事にあった「れいわ新選組の大石晃子氏の発言」を削除しました。詳細は記事末尾の「訂正」をお読みください。

検証対象とした党首討論会

ニコニコ https://www.youtube.com/watch?v=VcF_yHv2BO4
フジテレビ 日曜報道 THE PRIME https://www.youtube.com/watch?v=ePy2ORVqYkw
日本記者クラブ https://www.youtube.com/watch?v=TvxDE_hZ8tw
テレビ朝日 報道ステーション https://www.youtube.com/watch?v=L-36jCAC7iY
日本テレビ zero https://www.youtube.com/watch?v=aZk4rkZkbzo
TBS news23 https://www.youtube.com/watch?v=7t3lEUrCA14

討論参加者

自由民主党・高市早苗氏
中道改革連合・野田佳彦氏
日本維新の会・藤田文武氏、吉村洋文氏
国民民主党・玉木雄一郎氏
参政党・神谷宗幣氏
日本共産党・田村智子氏
れいわ新選組・大石晃子氏
日本保守党・百田尚樹氏
社会民主党・福島瑞穂氏
チームみらい・安野貴博氏
減税日本・ゆうこく連合共同代表・原口一博氏
※代理や録画での参加を含む

ファクトチェックした発言

防衛費の対GDP比5%引き上げ「直接言われたことない」?

「(米国が日本に防衛費の増額を求めていることについて)向こうの言い値で、例えば3.5%とか5%とか、そういったことを直接言われたこともありません」(自民党・高市早苗氏、日曜報道 THE PRIME

判定:ミスリード
アメリカが日本を含む同盟国に対し、防衛費を対GDP比5%まで引き上げるように要求していることは、公表されている米国防総省の国家防衛戦略に明記されており、日本の新聞やテレビなども一斉に報じた。高市氏が直接、米国から連絡を受けていないとしても「直接言われたこともありません」という言い方は、自分は知らないという印象を与えるのでミスリードだ。

選挙事務による物価高対策への影響「部局は別」?

「(選挙事務による物価高対策への影響について)選挙管理委員会とこういった対策をやる地方財政部局は別でございます」(自民党・高市早苗氏、日本記者クラブ)

判定:ミスリード
選挙管理委員会は、選挙の公正な実施のために、市長などの首長から独立した機関として設置される。しかし、選挙の準備や投開票作業などの事務は膨大にあり、選挙専任の職員だけでは人手が足りず、他部署の職員も動員するのが一般的だ。そのため、「物価高対策に影響がない」という発言はミスリード。

1月19日に高市氏が衆議院解散を記者会見で明言した際、自治体首長が緊急声明を出した。声明では「選挙を実務として支えているのは、自治体職員です」「自治体はいま、新年度当初予算の編成作業の真っただ中にあり、予算議会を目前に控え、年間でも最も業務が集中する時期」「期日前投票が定着した今日において、投票所入場整理券をいつまでに住民へ届けられるのか、極めて綱渡りの調整を続けています」などと訴えている(1月22日現在、呼びかけ首長5人、賛同首長10人)。

AIの判断と異なり、判定を見送った例

党首討論会は分量が多いため、編集部による確認だけではなく、生成AIも活用して、客観的な検証が可能なポイントを抽出しました。それらの中には判定を出さなかったものもあります。

医療費は15年後に80兆円?

例えば、日本維新の会の藤田文武氏が日本記者クラブの討論会で「医療費は今47兆円ですけれども、15年すると80兆になる」という発言をしましたが、15年後の医療費80兆円という数字の根拠は不明確です。

ただし、藤田氏の発言のみが不明確なのではなく、そもそも日本は医療にかかる包括的な費用の算出が不十分であるという事情があります。JFCは、医療経済学が専門の井伊雅子・一橋大教授に取材しました。

「ここで議論されているのは医療保険でカバーされている『国民医療費』だが、本来、医療にかかる費用は国民医療費と介護費、予防の費用などの合算で考えるべき。そうすると、最新(2023年)の値は約65兆円である。ただし、実はこれらのデータは日本の推計が不正確だと国際的に指摘されており、現状では正確性が低い数字で議論せざるをえないし、現時点では将来の推計値もない。より信頼性の高い推計値を出せるよう取り組みが進んでいるところだ」(井伊教授)

免税取引?非課税取引?

その他に、消費税をめぐっても、判断が難しい点がありました。

高市氏は日本記者クラブで食料品の消費税をゼロにする点について、玉木雄一郎氏から「仕入れ税額控除が認められる免税取引なのか、認められない非課税取引なのか」と問われ、「どちらに近いかといえば、免税に近いという感触ですけれど、消費税率を0%にするということ」と発言しました。

高市首相の説明について、財政や税制に詳しい土居丈朗・慶應義塾大教授に聞きました。土居教授は「誤りとはいわないまでも、整理がされていない。本来、『非課税』『税率0%』『免税』はそれぞれ別の意味を持つ」と指摘しました。

そのうえで「消費税率をゼロにしても、売り手が本体価格を値上げするかもしれない。市場には買い手だけでなく、売り手もいる。さらには財源をどうするのか。言葉の使い方だけの話ではない」として、より踏み込んだ議論が必要だと訴えます。

これらの話題は、JFCが利用したAIが「検証対象にすべきだ」と選定し、判定を「誤り」と推定していたものです。ただ、専門家への取材なども加味して検討すると、これらの発言を「誤り」や「不正確」などと判定することは難しいと判断しました。

他社の検証事例とJFCは判定を避けた理由

党首討論での発言をめぐっては、他の報道機関も複数のファクトチェック記事を公開しています。

旧統一教会文書は出所不明?

例えば、毎日新聞は「高市首相、旧統一教会文書『明らかに誤り』出所不明』はミスリード」という記事を公開。韓国検察が旧統一教会の韓鶴子総裁らの捜査過程で発覚した文書について、ニュース番組に出演した高市氏が「出所不明」「明らかに誤り」などと発言したことをミスリードと判定しました。

毎日新聞は、教団自身が「内部向け資料」との見解を示していることや、教団の元会長が「私の報告が含まれるのは事実だ」と毎日新聞の取材に答えていることなどを根拠に挙げています。

消費減税、2026年度実現?

琉球新報は「首相『消費減税、2026年度実現』は本当か?<衆院選ファクトチェック>」という記事を公開。高市氏が1月25日の討論会で、「2026年度内に食料品の消費税減税を実現するか?」「約束できる方は挙手をお願いします」という質問に対して、手をあげて「まだ来年(27年)の3月まで時間はあります」と発言をしたことをファクトチェックしています。

判定は不正確・ミスリーディング。根拠は、自民党公約に実施時期が明記されていないことや、高市氏自身が討論会の間に説明を変えている点だとしています。

JFCはなぜ検証対象から外したのか

JFCでは、これらの発言も検証対象にするか検討しました。

旧統一教会文書をめぐる文書について、「出所が不明」と発言したことは「不正確」だと考えます。ただし、文書の中に「明らかな誤り」も含まれていることは事実です。JFCが文書を入手していないため、検証を見送りました。

消費減税をめぐる発言については、政治家が公約の「実現を目指す」ことと「実現する」ことには、往々にして開きがあります。実現の可能性が無い政策を掲げることは無責任ですが、今回の場合は、実現の可能性が現時点では不明確なため、検証は見送りました。

他にも検証対象の候補は複数ありましたが、時間の制約もあり、すべてをカバーできたわけではありません。党首討論は公開されているため、ぜひ、投票の参考にしてみてください。

訂正

上記の記事について、記事中の「れいわ新選組の大石晃子氏の発言」が、実際には存在しなかったため、該当部分を記事から削除し、お詫びして訂正いたします。

以下、問題の経緯や再発防止策について説明いたします。(2026年6月29日)

削除した内容

記事は党首討論会の発言をまとめて検証したものです。その中の「AIの判断と異なり、判定を見送った例」という項目で、編集部は大石晃子氏に関して、以下のように書きました。

「れいわ新選組の大石晃子氏はnews zeroでの党首討論で『国家総動員とか強制労働とか、高市さんのパッケージメニューに入ってるんですよ』と発言しました」

しかし、実際には、日本テレビnews zeroの約50分間の番組や、その他に編集部が記事で挙げた5本の党首討論の中で、大石氏はそのような発言をしていませんでした。そのため、この発言について書いた段落を削除いたします。

「大石氏の発言」を掲載した経緯

衆院選の党首討論会は、テレビ各局や日本記者クラブなどで複数実施されました。編集部では、ニコニコ主催のネット党首討論会を含む6つの動画について、文字起こしをして検証しました。

大量の発言の中から、ファクトチェック対象を探すためにAIを活用しました。具体的には、動画の文字起こしと検証対象になりそうな発言の抽出です。主にGoogleのAIツール「NotebookLM」を使用しました。

編集部は1月27日、文字起こししたドキュメントをNotebookLMに入力し、「客観的・科学的に検証可能な発言を抜きだしなさい」と指示しました。その結果、15の発言が抽出されました。今回の大石氏の発言は、入っていませんでした。

JFCでは「AI活用に関するガイドライン」を定め、公表しています。AIには事実と異なる情報を生成する「ハルシネーション(幻覚)」と呼ばれる欠点があります。論理的な誤りやAIのバイアスもあります。

そのため、ガイドラインでは「ルール1:確認」として、「生成AIが作成した文字情報をそのままJFCの記事や公開情報として活用しない。必ず、人間が確認し、事実と確認された内容だけを記事などに活用する」と定めています。

編集部で15の発言について、その発言が実際に存在するかや、発言があった文脈を動画で確認しました。そのうえで、客観的・科学的に検証可能な発言なのか、表現の自由の範囲内なのかなどを検討しました。

記事中に登場する専門家へも取材したうえで、最終的に検証対象とするのは高市氏の2つの発言だけと判断し、その2つをファクトチェックする形で記事の前半部分にまとめました。

また、消費税ゼロに関する高市氏の「免税に近い」という発言、日本維新の会の藤田文武氏の「医療費は15年すると80兆」という発言については、ファクトチェックの対象にするよりは、解説で文脈を補うほうが有権者に資すると判断して、専門家への取材を交えて記事後半に加えました。

しかし、これらだけでは与党側の政治家発言ばかりをファクトチェックしているように見え、「JFCの検証には偏りがある」と受け取られる懸念もありました。そのため、ほかにも検証対象となる発言がないか、文字起こしを見直しつつ、改めてNotebookLMでも抽出しました。

この2回目の抽出の結果に、大石氏の発言として、「国家総動員とか強制労働とか、高市さんのパッケージメニューに入ってるんですよ」が入っていました。

編集部では、この発言について「ファクトチェックの対象にはならないのではないか」という意見が出たため、記事後半部分に「AIの判断と異なり、判定を見送った例」の一つとして記載しました。しかし、実際の動画で発言を確認するという基本的な作業が抜け落ちていました。

原稿を完成させて公開する前にも、発言部分が実在するか、動画での確認を怠っていました。

本来であれば、原稿の筆者以外のエディターが編集担当となり、検証段階や原稿の完成までに詳細にダブルチェックをすることがルールとなっています。そのため、JFCのファクトチェック記事には、検証と編集にわけて署名を入れています。

今回の記事は、通常のファクトチェック記事とは異なり、複数の検証を組み合わせ、さらに、大石氏の発言など検証対象に含まなかった点もまとめた解説記事となっています。

筆者である編集長の古田大輔が原稿を書き、他のエディターら編集部員らがチェックをしていましたが、明確な編集担当を置かないままに作業を進めてしまいました。

2026年6月21日、問い合わせ窓口より指摘を受け、内容を再度確認した際に誤りが発覚したため、該当部分を削除いたします。

今後の対応と再発防止策

記事が公開されたのは2026年2月5日です。選挙期間中という非常に重要な時期に政党代表の実在しない発言を記載するという重大な間違いを犯してしまいました。

れいわ新選組と大石晃子氏に対しまして、心よりお詫びを申し上げます。また、読者の皆様に対しても、実際には存在しない発言を伝えてしまったことを深くお詫び申し上げます。

今回の誤りの原因は、AIにはハルシネーションという問題があると認識しながら、確認が漏れていたことにあります。編集部が自ら定めたガイドラインにも反するものでした。

今後はAI活用時の確認を徹底し、ハルシネーションや論理的な誤り、AIによるバイアスなどが記事に反映されないように未然に防止します。そのために編集担当によるダブルチェックを厳格に実施します。

また、現行のAIガイドラインは2024年8月に公開したものです。AIについての議論は急速に進んでいるため、JFCとしても、時代に即したより厳格なガイドラインに更新し、公開する予定です。


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

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