自民党・小泉進次郎氏が80歳からの年金支給を提案? 誤情報の再拡散【ファクトチェック】

自民党・小泉進次郎氏が80歳からの年金支給を提案? 誤情報の再拡散【ファクトチェック】

自民党の小泉進次郎衆院議員が「年金支給を80歳からにすると提案した」という情報が拡散しましたが、不正確です。現在の制度では受給開始を60~75歳までの間で繰り上げ・繰り下げが可能です。小泉氏は「80歳まで選択肢を広げる」という考えを述べただけで、80歳からの支給を義務づける趣旨の発言ではありません。過去にも拡散した誤情報です。

検証対象

2025年9月6日、「小泉進次郎の年金支給年齢80歳案は、国民殺しのクソ提案だと思う人〜🖐️」という投稿が拡散した。

9月8日現在、この投稿は9900件以上リポストされ、表示回数は493万回を超える。投稿について「なんで平均寿命迄年金貰え無いんだよ」「80は正気の沙汰ではないぞ」というコメントの一方で「年金を貰い始める年齢の上限を80歳にするのはどうかという提案」という指摘もある。

検証過程

過去の誤情報の再拡散

日本ファクトチェックセンターは以前も同様の投稿を検証し、「不正確」と判定している(JFC.”小泉進次郎氏「年金受給は80歳から」? 開始年齢の選択肢を広げる発言【ファクトチェック】”)。

また、XのAI「Grok」が「年金支給開始年齢は80歳からにするべきだと発言していた政治家は誰ですか?」という質問に対して「小泉進次郎です」と回答したという投稿に関して、Grokの回答は他にも誤った点があったために「誤り」と判定した(JFC”年金支給開始年齢は80歳からにすべきと小泉進次郎氏が発言? AIが誤情報を再生産【ファクトチェック】”)。

日本のファクトチェック団体InFactも2024年9月に「不正確」という検証記事を出している(InFact.”【Fact Check】小泉進次郎は年金の『支給開始年齢』を「80歳でもいい」とは言っていない”)。

小泉氏の発言内容は

以下、改めて具体的に検証してみる。

小泉氏は、2018年10月15日の「国策研究懇談会」で、年金受給開始年齢に関する発言をしている。内容は小泉氏のオフィシャルブログで公開している。

講演のタイトルは「平成のうちにやるべきこと〜人生100年時代の社会保障と国会改革」。年金の受給開始年齢に関して、以下の発言をしている。

「受給開始年齢は八十歳でもいいのではないかと考えている。六十歳~八十歳までの間であれば、受給開始年齢は自分たちで決められるという考え方である」(以上、小泉進次郎オフィシャルブログ「日本の政治を未来のために~自由民主党~」.“【講演書き起こし】平成のうちにやるべきこと〜人生100年時代の社会保障と国会改革〜 | 小泉進次郎オフィシャルブログ「日本の政治を未来のために~自由民主党~」”)

つまり、現在75歳まで繰り下げられる受給開始年齢(講演当時は70歳まで)を80歳まで繰り下げられるように、選択肢を広げようという内容だ。

判定

小泉氏は受給開始年齢は自分たちで決められるという考えのもと、「受給開始年齢は八十歳でもいいのではないかと考えている」と2018年に発言している。しかし、支給開始年齢を80歳にするとは発言していない。よって、不正確と判定した。

あとがき

石破茂首相が辞任を表明したことで、近く開かれる自民党総裁選の行方に注目が集まっています。有力な候補者に対する偽情報の拡散が予想されます。

2024年9月の総裁選でも、偽情報は大量に拡散しました。候補者の中でも小泉氏は標的になる傾向がありました。注目度が高く、ネット上で否定的な反応が多い候補者に偽情報は集まりがちです。

JFCの過去記事も参考にしてみてください(JFC"自民党総裁選で偽・誤情報の標的になっているのは誰か その理由は【解説】")

出典・参考

日本ファクトチェックセンター. “小泉進次郎氏『年金受給は80歳から』? 開始年齢の選択肢を広げる発言【ファクトチェック】”. 公開日 2024年9月17日.https://www.factcheckcenter.jp/fact-check/politics/inaccurate-koizumi-pension-80years/ , (閲覧日 2025年9月1日).

日本ファクトチェックセンター. “年金支給開始年齢は80歳からにすべきと小泉進次郎氏が発言? AIが誤情報を再生産”. 公開日 2024年12月20日. https://www.factcheckcenter.jp/fact-check/politics/inaccurate-koizumi-pension-80years/ , (閲覧日 2025年9月1日).

小泉進次郎オフィシャルブログ「日本の政治を未来のために~自由民主党~」. “〝講演書き起こし〟平成のうちにやるべきこと~人生100年時代の社会保障と国会改革~”. 公開日 2018年12月19日. https://ameblo.jp/koizumi-shinjiro/entry-12427026562.html , (閲覧日 2025年9月1日).

InFact. “【Fact Check】小泉進次郎は年金の『支給開始年齢』を「80歳でもいい」とは言っていない”. 公開日 2024年9月14日. https://infact.press/2024/09/post-23867/ , (閲覧日 2025年9月1日).

JFC"自民党総裁選で偽・誤情報の標的になっているのは誰か その理由は【解説】". 公開日 2024年9月24日. https://www.factcheckcenter.jp/explainer/politics/explainer-who-is-the-target/(閲覧日 2025年9月8日)

検証:木山竣策
編集:古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら。

もっと見る

富山県知事が「県民をインド人に置き換える」と発表? そのような発表はない【ファクトチェック】

富山県知事が「県民をインド人に置き換える」と発表? そのような発表はない【ファクトチェック】

「富山県知事が、県民をインド人に置き換えると発表した」「義務を課し権利を制限する『多文化共生条例』でがんじがらめにした上で、外国人を受け入れる」と主張する投稿が拡散しましたが、誤りです。富山県・新田八朗知事はそのような発表をしていません。県の多文化共生条例の素案には、「県民は、多文化共生推進に協力するよう努めるものとする」とありますが、努力規定で、義務を課したり権利を制限する内容ではありません。 検証対象 拡散した言説 2026年10月24日、「【悲報】県民をインド人に置き換えると発表した富山県知事」「義務を課し権利を制限する『多文化共生条例』でがんじがらめにした上で、外国人を受け入れる」などと主張する投稿がXで拡散した。 同一のアカウントが新田知事の10月19日の投稿写真を一部加工したうえで引用し、批判を繰り返している(例1,2)。 検証する理由 11月5日現在、投稿は多いもので7900回以上リポストされ、表示は159万件を超える。 投稿には「堂々の売国奴宣言、恐れ入る…」「つまり日本人差別をし、富山県知事は日本を売り渡す気なんだね」など、真に

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
高市首相「ウクライナのために増税」? 動画は発言の一部を切り貼り【ファクトチェック】

高市首相「ウクライナのために増税」? 動画は発言の一部を切り貼り【ファクトチェック】

「ウクライナのために増税するって国民の理解得られてるの?」と高市早苗首相を批判する投稿がXで拡散しましたが、誤りです。動画は会議での高市首相の発言の一部を切り張りしたもので、実際には、日本の防衛力強化のために「2027年1月から所得税には1パーセント上乗せになる」と説明しています。ウクライナを支援するために増税するとは述べていません。 検証対象 拡散した投稿 2026年10月26日、「は?ありえないんだけど、、ウクライナのために増税するって国民の理解得られてるの?まじ意味不明なんだけど。ウクライナのために働いてないし、税金はウクライナのためじゃなくて国民のために使うべきだろ。他国の戦争の為に増税って歴史上聞いたことないよ」という投稿が動画とともにXで拡散した。 検証する理由 この投稿は1.8万件以上リポストされ、表示回数は219万回を超えている。「デマです」という反応もあるが、「ウクライナのために増税するのか」などと真に受けたコメントも多数あるため検証する。 検証過程 動画の内容は 拡散した動画は約27秒だ。動画では「戦略3文書の改訂に向け

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)
米国の中間選挙でも拡散する「不正選挙」偽情報/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

米国の中間選挙でも拡散する「不正選挙」偽情報/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

トランプ政権の今後にも大きな影響を与える米国の中間選挙。「票が書き換えられる」などの、日本でも定番の偽情報が拡散しています。偽・誤情報の多くは、同じような内容・手口で繰り返し拡散します。事前に知っておくことで、目にしても惑わされにくくなります。 今週のファクトチェックまとめです。 ✉️日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら。 今週のファクトチェック フランス暴動の略奪品が路上で販売? マドリードとニューヨークで撮影 「フランスの暴動で略奪された高級ブランド品が、路上で定価の8〜9割引きで販売されている」という投稿が、動画や画像とともにXで相次いで拡散しました。動画はスペイン・マドリード、画像はアメリカ・ニューヨークで撮影されたもので、いずれもフランスで大規模な暴動が起きた10月17日より前に投稿されたものです。 総合的に誤りと判定しました。 フランス暴動の略奪品が路上で販売? マドリード

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
横浜市の原澤敦美・新市長が当選翌日に「朝鮮学校への支援再開を検討」と発言? 発言はしていない【ファクトチェック】

横浜市の原澤敦美・新市長が当選翌日に「朝鮮学校への支援再開を検討」と発言? 発言はしていない【ファクトチェック】

2026年10月の横浜市長選で初当選した原澤敦美氏が、「朝鮮学校への支援再開を検討する」と当選翌日に発言したという投稿が拡散しましたが、誤りです。そのような発言は報じられておらず、また、20日の就任会見で原澤市長は「今の状況を変える必要があるかどうかは考えていない」と述べています。 検証対象 拡散した言説 2026年10月20日、「原沢あつみ 横浜市長当選翌日になって、『朝鮮学校への支援再開を検討します』ステルス共産党かよ!」という投稿がXで拡散した。 検証する理由 10月29日現在、投稿は8000回以上リポストされ、表示は37.8万件を超える。 「そんなこと言ってませんけど?証拠は?」というコメントもあるが、 「やっぱりね」「自民党を保守と思っている人に改めて気がついてほしい」など真に受けた反応が多いため検証する。 検証過程 横浜市は2013年、政治・外交問題を理由に「横浜私立外国人学校補助金交付要綱」を改訂。「趣旨に反すると市長が認めた外国人学校は補助の対象としない」という条項を追加して、2013年度以降は市内の朝鮮学校への補助金を停止し

By 根津 綾子(Ayako Nezu)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は11月29日(日)午後4時~5時30分で、お申し込みはこちら。 日本ファクトチェックセンター(JFC) ファクトチェック講師養成講座 11月29日(日)開催分日本ファクトチェックセンター(JFC)による講師養成講座です。 講師養成講座(オンラインで90分)を受講いただいた後、修了課題を提出された方には、教室や職場などで利用可能な教材の提... powered by Peatix : More than a ticket.Peatix 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤っ

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験

JFCファクトチェッカー認定試験

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や騙されない人の行動

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)