有田芳生氏が女性器を携帯で撮影? 何度も拡散したコラ画像【ファクトチェック】

有田芳生氏が女性器を携帯で撮影? 何度も拡散したコラ画像【ファクトチェック】

2024年10月27日に投開票される衆院選で東京24区から立候補している有田芳生氏(立憲民主党)が女性の下半身を携帯電話で撮影しているような画像が拡散しましたが、偽物です。画像はこれまでに何度も拡散した合成写真で、捏造されたものです。

検証対象

2024年10月21日、「なんでこんなヨシフが優勢なのよ?萩生田さんてワンチャン総理大臣候補者だぞ!?」などという文言とともに、台の上で寝そべっている女性の下半身を有田氏が携帯電話で撮影しているような画像が投稿された。

画像には仰向けになりながらワンピースの裾をたくし上げる女性と、女性の足元側から携帯電話を手にする有田氏が写っている。また、背景に写っているホワイトボードには、「性器(世紀)のまん中3Dスキャン撮影会」「写真・動画撮影すべてOKです」「SNSへの投稿もご自由に 拡散希望」などと書かれている。

投稿には「はぁ気持ち悪い」「こんな奴を政治家にしちゃダメだろ」などのコメントが付く一方で、「コラ画像」との指摘もある。

検証過程

画像に写る女性は漫画家のろくでなし子氏

日本ファクトチェックセンター(JFC)が検証対象の画像を「Google画像検索」で検索したところ、漫画家のろくでなし子氏の画像がヒットした。ろくでなし子氏は自らの女性器をスキャンしたデータファイルを資金提供者に頒布したとしてわいせつ電磁的記録頒布罪などの罰金刑を受けている(最高裁判所判例集)。

ろくでなし子氏のFacebook投稿によると、女性器をかたどったボートを作るとしてクラウドファンディングで資金を集め、2013年9月7日に自らの女性器を3Dスキャンしたという。この際のオリジナル画像は現在ネット上で確認できないが、有田氏は写っておらず、その場にはいなかった。

有田氏の画像は合成

有田氏の画像は小さく不鮮明であるため、「Google画像検索」や「TinEye」などで検索してもヒットしない。

しかし、ネット上では、前墨田区議で諸派の大瀬康介氏のブログの画像を左右反転させたものだという指摘がある。2008年10月20日の大瀬氏のブログ記事では、有田氏が焼きそばを携帯電話で撮影している画像が添付されている。服装や姿勢が検証対象の画像と一致することから、有田氏の画像はこの大瀬氏のブログから転載して合成されたものと見られる。

検証対象の画像は過去にも拡散、投稿者は誤りを認め謝罪

検証対象の画像全体を「Google画像検索」で検索すると、検証対象の画像はこれまでに何度も拡散していたことがわかる(例1例2例3)。JFCで確認できた最も古い投稿は2015年9月のものだった。これらの投稿の中には投稿者自ら「クソコラ」と記載し、合成写真であることを示唆しているものもある。

今回の検証対象の投稿者は10月23日に「ココで使った有田芳生氏の写真、コラ画像と判明しましたので削除致しました。大変申し訳ありませんでした」と投稿。検証対象の画像を合成写真と認めた上で最初の投稿を削除し謝罪している。

判定

有田芳生氏が女性器を携帯電話で撮影しているかのような画像は偽物であり、その場にいたという言説は誤り。女性の画像は有田氏とは関係がなく、有田氏の画像は合成されている。

あとがき

選挙が近付くと、特定の政党や候補者を貶めたり、公約を歪めたり、発言を切り取って異なる文脈を加えるなどした偽・誤情報が拡散することがあります。

今回の衆院選でも、有田氏が小学生への性的行為を認める発言をしたような画像が拡散した一方で、有田氏と東京24区で争う萩生田光一氏についても、本人の発言でないインターネット上の書き込みが本人の発言かのように拡散しています。JFCはこのどちらの言説に対しても検証し、「誤り」と判定しました。

有田芳生氏が小学生への性的行為を認める発言? 投稿画像は捏造【ファクトチェック】
立憲民主党の有田芳生氏が小学生への性的行為を認める投稿をしたような画像が拡散しましたが、捏造によるもので誤りです。有田氏がそのような投稿をした事実はありません。 検証対象 2024年10月8日、有田氏のX(旧Twitter)アカウントが「もちろん同意が必要だけど/年齢なんてのは人が勝手に決めたただの概念であって/女子小学生でも乳がぷっくり出始めればもうご賞味あれ!って/合図なんじゃないかな」と投稿したかのような画像を添付したXの投稿が拡散した。 この投稿は2024年10月10日現在、96万回以上の閲覧回数と900回以上のリポストを獲得している。 検証過程 画像は2024年1月末には存在 日本ファクトチェックセンター(JFC)は、拡散した画像を検索した。Google画像検索の結果、2024年1月30日の画像や2024年6月29日の画像などが「完全に一致した画像」としてヒットした。少なくとも、2024年1月末には拡散した画像が存在したことがわかる。 ただし、TinEyeでは該当の画像はヒットせず、Factcheck exploreでも最も古い画像がい
萩生田光一氏「裏金と統一教会ごときで何回処分する気だ!」と発言? まとめサイトによるもの【ファクトチェック】
自民党の元政務調査会長、萩生田光一氏が「裏金と統一教会ごときで何回処分する気だ!」と発言したという言説が拡散しましたが誤りです。まとめサイトによるもので、本人の発言ではありません。 検証対象 2024年10月7日、「萩生田光一、ブチギレか『裏金と統一教会ごときで何回処分する気だ!!😡』」という言説が拡散した。 2024年10月11日現在、この投稿は4400件以上リポストされ、表示回数は150万回を超える。投稿について「大問題」「そう思いますね」というコメントの一方で、「そんなこと言ってない」という指摘もある。 検証過程 匿名掲示板のタイトルから 検証対象の投稿に添付されたリンクは「Tweeter Breaking News-ツイッ速!」というまとめサイトの記事だ。記事は東京新聞の記事「萩生田光一氏の非公認は『当然』だけど…『石破茂首相も残念』 非公認3氏の地元は怒り、不信、モヤモヤ」を引用元としている。 引用された記事は、自民党の裏金事件を巡り石破茂首相の衆院選対応が7日の衆院本会議で交わされたこと、旧安倍派の萩生田光一元政調会長をはじめ下村博

選挙に際して正確でない情報を拡散すると、その情報を自身や第三者が信じて投票してしまうことにも繋がります。誤った情報で選挙結果に影響を与えることを防ぎ、健全な民主主義と自由な言論環境を守るためにも、疑わしい情報は投稿や拡散をする前に自分自身で裏付けをするなどして判断する必要があります。

これまでにJFCは都知事選や自民党総裁選、衆院選など選挙に関する偽・誤情報に対して党派や主義主張を問わずファクトチェックしています。選挙で拡散しがちな偽・誤情報に関する解説記事も参考にしてください。

選挙で拡散する偽・誤情報、AIの影響は? 標的は候補者だけでなく民主主義【解説】
石破茂首相は2024年10月に解散総選挙を実施すると宣言しました。選挙は偽・誤情報の標的になります。2024年は世界中で国政選挙が実施され、生成AIによる混乱も指摘されてきました。実際にどのようなデマや噂が拡散するのでしょうか。国内外の状況について解説します。 選挙で拡散しがちな偽・誤情報の種類 選挙で拡散する偽・誤情報には世界的に共通する傾向がある。以下の表に日本で実際に拡散し、日本ファクトチェックセンター(JFC)で検証をしたものを中心に分類した。 拡散する時期を「投開票日前」「投開票日」「選挙後」に、標的となる対象を「政党・候補者」「選挙制度」「メディア」に分けた。標的と時期ごとに、これまでにJFCが実際に検証した情報をまとめている。 政党・候補者に関する偽・誤情報 候補者や政党を貶めたり、持ち上げたりする偽・誤情報が拡散する理由の一つは、自分が支持する陣営を有利にしたいという明確な意図だ。間違った情報を意図的に流して政治的な利益を得ようとする「故意犯」と言える。 ただ、これだけが拡散の理由ではない。 自分が嫌いな候補にとって不利な情報であれ

検証:リサーチチーム
編集:古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

2025年の偽・誤情報、ファクトチェック、認知戦 何がどのように広がったか

2025年の偽・誤情報、ファクトチェック、認知戦 何がどのように広がったか

1年前に2024年のファクトチェックの状況を振り返る記事を書いた際に「2024年はこれまで以上に大量の誤情報/偽情報が拡散した」と述べました。残念ながら、2025年は状況の悪化がさらに加速しました。 全体状況や2025年に特に注目すべきテーマを解説します。 偽・誤情報の増加とファクトチェック 「偽・誤情報は実際にどれだけ拡散しているのか」という問いに直接答えるのは困難です。 真偽不明の情報は、YouTube、TikTok、X、Instagram、LINEオープンチャット、Telegramなど多数のプラットフォームにまたがって無数に広がっています。しかし、それらが本当に偽・誤情報かは検証しなければ確認できません。すべての情報を検証することは不可能なため、偽・誤情報の総量を掴むことも不可能です。 確実に言えるのは、日本ファクトチェックセンター(JFC)が2025年の1年間で公開したファクトチェック記事は365本で、2023年173件、2024年330本から右肩上がりが続いているということ。 これはJFCが体制を強化したというだけでなく、JFCが目にする怪し

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
エコーチェンバー【JFC用語解説】

エコーチェンバー【JFC用語解説】

エコーチェンバーとは、自分と似た意見ばかりに囲まれ、自分の考えが世の中の正解であると思いこんで特定の思想に偏ってしまう現象です。日本語では「反響室」。閉ざされた部屋で同じような声が反響している様子に例えています。 XやFacebookやYouTubeやTikTokなど、ソーシャルメディアには「フォロー」や「チャンネル登録」などの機能があります。ユーザーは自分に価値観が近い人、好ましい人をフォローする傾向があります。 結果として、そこから発信される記事や動画だけでなく、そのコメント欄も含めて同質性の高い情報を見る確率が高まります。 これに似た概念がフィルターバブルで、フィルターバブルはアルゴリズムによるコンテンツの選別という技術的で受動的な構造を、エコーチェンバーは主にユーザーの能動的な選択や心理を表しています。 フィルターバブルとは【JFC用語解説】フィルターバブルとは、フィルター(膜)がバブル(泡)のように周りをつつみ、そのフィルターを通ってきたコンテンツ(記事や動画など)ばかりを目にする状態を意味します。 例えば、あなたが料理動画、それも日本の食べ歩きが好きで、YouTub

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
埼玉県川口市で検挙された4人に1人が外国籍? 繰り返し拡散する誤情報【ファクトチェック】

埼玉県川口市で検挙された4人に1人が外国籍? 繰り返し拡散する誤情報【ファクトチェック】

「川口市の検挙人数178人のうち、外国籍135人(約76%)」「検挙された人の約4人に3人が外国籍」という情報が拡散しましたが、誤りです。2024年に川口市内で、刑法犯で検挙された外国人のうち、トルコ・中国・ベトナムの3国籍が7割を占めるというデータを誤って解釈しています。この情報は繰り返し拡散しています。 検証対象 拡散した投稿 2025年12月22日、「【令和6年】川口市の検挙人数178人のうち、外国籍135人(約76%)」「検挙された人の約4人に3人が外国籍。大野知事「治安悪化のファクトない」私「ファクトしかない」という投稿が拡散した。 検証する理由 12月25日現在、この投稿は9100件以上リポストされ、表示回数は63万回を超える。投稿について「これから全国に広がっていきますよ」「めちゃくちゃだわ」というコメントの一方で「検挙人数が国籍無関係で178とは考えにくい」という指摘もある。 検証過程 根拠とされた記事の内容は 拡散した投稿は、産経新聞の2025年6月14日付の記事を引用している。「川口の外国人犯罪『トルコ国籍比率ずば抜けて

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)
インフルエンザワクチン「フルミスト」は劇薬だから危険? ワクチンは劇薬指定が原則【ファクトチェック】

インフルエンザワクチン「フルミスト」は劇薬だから危険? ワクチンは劇薬指定が原則【ファクトチェック】

鼻から吸い込むタイプのインフルエンザワクチン「フルミスト」の添付文書に「劇薬」と書いてあることなどから、「フルミストは危険」と訴える投稿がXやインスタグラムなどで拡散していますが、誤りです。フルミストに限らず、ワクチンは原則「劇薬」に指定されています。「劇薬」は、用量・用法を誤ると有害なおそれがあり、厳重に管理しなければならない医薬品を指しますが、ワクチンが危険だという意味ではありません。 検証対象 拡散した言説 2025年9月4日、フルミスト点鼻薬の添付文書に「劇薬」や「ミトコンドリア脳筋症症状悪化」などと書いてあることから「子供の命が危険」と主張する投稿がXで拡散した。 検証する理由 インスタグラムやTikTokでもフルミストの危険性を訴える投稿が多数拡散し、中には100万回以上再生されている動画もある(例1、2)。 検証過程 フルミストとは フルミストは、2024年10月に国内で接種が始まった鼻から吸い込むタイプのインフルエンザワクチンだ。ウィルスを弱めて使う生ワクチンで、2歳以上19歳未満を対象とし、接種回数は1回で済む。 米国で

By 根津 綾子(Ayako Nezu), リサーチ チーム

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は1月24日(土)午後2時~3時30分で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei0124.peatix.com 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にどのような知識

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験

JFCファクトチェッカー認定試験

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)