中国がモスクを破壊する動画? インドネシアの遊園地の解体【ファクトチェック】

中国がモスクを破壊する動画? インドネシアの遊園地の解体【ファクトチェック】

「中国ではイスラム教は精神病として扱われ、モスクが取り壊されている」というテロップ入りの動画が拡散しましたが、誤りです。動画は、土地利用許可に違反したインドネシアの遊園地を解体する様子を映したもので、中国でモスクを取り壊している動画ではありません。

検証対象

拡散した言説

2026年5月16日、「中国ではイスラム教は精神疾患として、モスクが取り壊されている この件に関しては日本も見習うべきだと思います」という文言付きの動画がXで拡散した。

検証する理由

5月27日現在、投稿は1300回以上リポストされ、表示は13.8万件を超える。

投稿には「これ本当に中国ですか?」「アテンションのための嘘はよくないかと思います」などの指摘もあるが、「この件に関しては中国が正しい」「精神疾患とは言わないまでも、カルトであることは明らかです」など真に受けた反応も多いため、検証する。

検証過程

映っているのはインドネシアの遊園地

拡散した動画をGoogleレンズで検索すると、多数の動画が表示される。

そのうちの一つに、@AbangbakmalというYouTubeアカウントが2025年3月7日にライブ配信した53分19秒の動画がある(@Abangbakmal ”AHIR CERITA WISATA Hibisc Fantasy Puncak”)。

この動画は、遊園地のような施設が取り壊される様子や、取り壊しを見ている人の様子などを映している。拡散した動画とは別の角度から撮られているが、取り壊されている建物の色や形、ショベルカーの色や形などが一致している。

YouTube動画には、実況らしい男性の声が入っている。NotebookLMでYouTube動画の実況の和訳を作成すると、インドネシアの遊園地「Hibisc Fantasy Puncak」が取り壊される様子を実況している。

拡散した動画と似た画角から撮った別の動画を見ると、よく似た形の建物が少なくとも4つ並んでいる(@herdiansyahchannel9686”Langkah kang dedi mulyadi mengatasi banjir || emka 9 tangga cinta” 2025年3月9日)

拡散した動画の6~8秒あたりを見ると、画面の左奥には建物がないため、4つ以上並んだ建物のうち、手前の建物はすでに取り壊され、残りの2つを壊しているところを映しているようだ。

土地利用許可の違反に関係する取り壊し

施設名の「Hibisc Fantasy Puncak」で検索すると、複数の報道が見つかる。

CNNインドネシアは2025年3月6日の記事で、この施設が土地利用許可に違反し告発されていたことや、経営陣が施設の解体に同意したことを報じている(CNNインドネシア ”Melihat Hibisc Fantasy Puncak, Tempat Wisata yang Akan Dibongkar Demul” 2025年3月6日)。

つまり、拡散した動画は、インドネシアの遊園地が取り壊される様子を映したものだ。

AFPやロイターも、ファクトチェック記事で、画像検索などの結果、この動画がインドネシアの遊園地が取り壊されている様子を映したものだと報じている(AFP”Clip shows bulldozed Indonesian theme park, not Chinese mosque” 2025年10月18日、Reuters”Fact Check: Video shows building demolition in Indonesia, not China tearing down mosque” 2025年3月19日)。

「中国政府がモスク取り壊し」の報道はある

ただし、中国政府がイスラム教を弾圧したり、モスクを壊しているという報道や報告があることは事実だ。

アル・ジャジーラは、2018年11月、中国政府がイスラム教を「精神疾患」と呼び、ウイグル人にイスラム教を放棄させるよう強制したことを告発するオピニオン記事を公開している(aljazeera”For China, Islam is a ‘mental illness’ that needs to be ‘cured’” 2018年11月28日)。

国連人種差別撤回委員会は2022年11月に声明を発表し、中国に対し、ウイグル族やその他のイスラム系少数民族のコミュニティを含む人権侵害の被害者に、適切かつ実効的な救済と補償が提供されることを確実にするよう強く求めている(United Nations”China: UN Committee on the Elimination of Racial Discrimination calls for probe into Xinjiang rights violations” 2022年11月24日)。

アメリカのシンクタンクCouncil on Foreign Relationsや英ガーディアンは、新疆ウイグル自治区で多くのモスクが破壊されていると伝えている(Council on Foreign Relations”China’s Repression of Uyghurs in Xinjiang”2025年10月3日、The Guardian”Thousands of Xinjiang mosques destroyed or damaged, report finds”2020年9月25日)。

判定

「中国ではイスラム教は精神病として扱われ、モスクが取り壊されている」という動画が拡散した。動画はインドネシアの遊園地の施設を解体する様子を映したもので、中国でモスクを取り壊している動画ではない。よって、誤りと判定する。

出典・参考

@Abangbakmal. ”AHIR CERITA WISATA Hibisc Fantasy Puncak”.https://www.youtube.com/live/Zv9eyfwJAWk?si=QfbPBDDPRJ5ear-W .(閲覧日2026年5月27日).

@herdiansyahchannel9686

”Langkah kang dedi mulyadi mengatasi banjir || emka 9 tangga cinta” .2025年3月9日.https://youtu.be/vSjX79doHuo?si=8QhrnwLVj3d9diDm&t=170.(閲覧日2026年5月27日).

CNNインドネシア. ”Melihat Hibisc Fantasy Puncak, Tempat Wisata yang Akan Dibongkar Demul” 2025年3月6日.https://www.cnnindonesia.com/gaya-hidup/20250306130640-269-1205708/melihat-hibisc-fantasy-puncak-tempat-wisata-yang-akan-dibongkar-demul.(閲覧日2026年5月27日).

AFP.”Clip shows bulldozed Indonesian theme park, not Chinese mosque” 2025年10月18日.https://factcheck.afp.com/doc.afp.com.78BB4T3.(閲覧日2026年5月27日).

Reuters.”Fact Check: Video shows building demolition in Indonesia, not China tearing down mosque” 2025年3月19日.https://www.reuters.com/fact-check/video-shows-building-demolition-indonesia-not-china-tearing-down-mosque-2025-03-18/.(閲覧日2026年5月27日).

aljazeera.”For China, Islam is a ‘mental illness’ that needs to be ‘cured’” 2018年11月28日.https://www.aljazeera.com/opinions/2018/11/28/for-china-islam-is-a-mental-illness-that-needs-to-be-cured.(閲覧日2026年5月27日).

United Nations.”China: UN Committee on the Elimination of Racial Discrimination calls for probe into Xinjiang rights violations” 2022年11月24日.https://www.ohchr.org/en/press-releases/2022/11/china-un-committee-elimination-racial-discrimination-calls-probe-xinjiang.(閲覧日2026年5月27日).

Council on Foreign Relations.”China’s Repression of Uyghurs in Xinjiang”2025年10月3日.https://www.cfr.org/backgrounders/china-xinjiang-uyghurs-muslims-repression-genocide-human-rights.(閲覧日2026年5月27日).

The Guardian.”Thousands of Xinjiang mosques destroyed or damaged, report finds”.2020年9月25日.https://www.theguardian.com/world/2020/sep/25/thousands-of-xinjiang-mosques-destroyed-damaged-china-report-finds.(閲覧日2026年5月27日).

検証:根津綾子
編集:古田大輔、藤森かもめ


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

小泉今日子さん 「不法難民は強制送還ではなく保護を!」と発言? 文言を改変【ファクトチェック】

小泉今日子さん 「不法難民は強制送還ではなく保護を!」と発言? 文言を改変【ファクトチェック】

俳優の小泉今日子さんが「不法難民は強制送還ではなく保護を!」と発言した、という投稿が拡散していますが、不正確です。小泉さんが訴えたのは「難民の送還ではなく保護を」という内容であり、「不法難民」「強制送還」という言葉は使っていません。小泉さんのインタビュー記事を使った同様の誤情報は、2024年5月ごろ、複数のまとめサイトで拡散しました。小泉さんは「本意ではない拡散がこの数年間ずっと続いています」と発信しています。  検証対象 2026年5月24日、「小泉今日子さん 『不法難民は強制送還ではなく保護を!』 素晴らしいと思います ぜひ、ご自身のお宅で積極的に保護なさってください。その勇気ある行動を、日本全国で注目しています」という投稿がXで拡散した。 検証する理由 5月27日現在、この投稿は9400件以上リポストされ、表示回数は214万回を超える。 投稿について「移民賛成の人のお宅に外国人を引き受けさせるようにすればよい」「自分には関係ないと思ってるから好きなこと言えるよね」というコメントの一方で、「小泉今日子氏の発言内容と異なります」というコミュニティノー

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)
ファクトチェックの訂正・修正ルール/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

ファクトチェックの訂正・修正ルール/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

普段は日曜日に配信をしていますが、1日遅れで先週分のファクトチェックまとめを公開します。 12日に配信をしたファクトチェック記事「ハンタウイルスの流行で中国が米国民の入国を禁止?」に修正を入れました。当初の記事では「12日時点で感染者は7人」と記していましたが、その時点でのWHO資料で感染者は8人(確定6例、疑い2例)でした。 記事には15日時点でのWHOの最新資料をもとに、報告された症例は計11人(確定8例、疑い2例、不確定1例)、そのうち死者は3人に修正しました。刻々と症例数が変わっていく中で、最新資料の確認が不十分でした。 日本ファクトチェックセンターでは、「訂正・修正」のルールを以下のように定めています。 「判定結果を変更する場合には『訂正』、判定結果は変わらないが記事内容を変更したものを『修正』として、変更部分も記事末尾で明示」 訂正や修正を入れた記事は、一覧にまとめています(訂正・修正ページ)。 訂正や修正ではないけれど、あとから状況が変わったり、説明を追加したほうがわかりやすかったりする場合に「追記」をつけることもあります。 これらのルールは国際

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
中国軍公式アカウントが「専守防衛の原則を放棄」と批判した陸自部隊のロゴ? 画像を改変【ファクトチェック】

中国軍公式アカウントが「専守防衛の原則を放棄」と批判した陸自部隊のロゴ? 画像を改変【ファクトチェック】

中国軍のXアカウントが陸上自衛隊の部隊の新しいロゴが「日本国軍が『専守防衛』の原則を放棄していることを示す」などと批判しました。ただし、投稿に添付されたロゴは陸自が発表したものとは異なり、改変されています。 検証対象 拡散した言説 2026年5月7日、中国軍のXアカウントが陸上自衛隊の連隊が公開した新しいロゴを批判する投稿をした。画像には象を擬人化し、ドクロがあしらわれたロゴ画像が添付されていた。 検証する理由 5月12日現在、投稿は180回以上リポストされ、表示は15万件を超える。 投稿には「元画像を改変するなよ」「プロパガンダ流すならもっとバレないようにやりなよ」などの指摘もあるが、「日本は象を大量に生産していますか?」「日本は中国を急襲するぞ!(Japan will launch a surprise attack on China!)」など真に受けた反応も多いため検証する。 検証過程 新しい陸自部隊のロゴとは 2026年4月29日、陸上自衛隊の第1師団第1普通科連隊は、ロゴが新しくなったと画像とともにXに投稿した。 デザインをめ

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
ハンタウイルスの流行で中国が米国民の入国を禁止? そのような発表はない【ファクトチェック】(修正あり)

ハンタウイルスの流行で中国が米国民の入国を禁止? そのような発表はない【ファクトチェック】(修正あり)

クルーズ船でハンタウイルスの集団感染が疑われている問題で、 中国が米国市民の入国を禁止したという投稿が拡散しましたが、誤りです。2026年5月12日正午現在、中国はそのような発表をしていません。 検証対象 2026年5月7日、「速報:中国、正式にすべての米国市民の入国を禁止 ハンタウイルス流行を受けて」という投稿が拡散した。投稿には習近平国家主席やウイルスのような画像も添付されている。 検証過程 ハンタウイルスとは ハンタウイルスとは、発熱、咳、筋肉痛、また、嘔吐や下痢を伴うこともある感染症。病原体を保有するねずみなどのげっ歯類の排泄物を含む粉じんの吸入や、排泄物で汚染された食品・飲料水の摂取で感染する。 基本的にヒトからヒトへは感染しないが、例外的にハンタウイルスの一種であるアンデスウイルスにおけるヒトヒト感染が報告されている。日本国内では患者発生の報告はない(以上、厚生労働省.”ハンタウイルス肺症候群”)。 クルーズ船での集団感染 2026年5月2日、大西洋を航行中のクルーズ船で、ハンタウイルスの感染が報告された。同船には乗客・乗員あわせ

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は6月27日(土)午後4時~5時30分で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei0627.peatix.com 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にどのような知識

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験

JFCファクトチェッカー認定試験

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)