自治体レベルで拡散する局地的な偽・誤情報にどう対応するか 鍵を握る地元メディア/JFC検証など10本【今週のファクトチェック】
宮城県知事選(10月26日投開票)でも、誤情報や真偽不明の情報が拡散しました。その多くは現職の知事で再選された村井嘉浩氏を攻撃する内容でした。
本人が反対を表明していたメガソーラーを「大歓迎している」。撤回すると明言していた土葬可能な墓地の検討も「推進している」。こういった投稿がX、TikTok、YouTube、Instagramなど、複数のプラットフォームで引用を繰り返す形で広がっていきました。
日本ファクトチェックセンターでも、特に拡散していた情報を2つ検証し、「不正確」「根拠不明」と判定しました。新聞社やテレビ局なども、真偽不明情報の拡散を報じましたが、特に目立ったのは地元の河北新報の報道です。
ネット情報の真偽を調べる「かほQチェック」のコーナーで、選挙戦中盤の10月18〜19日に以下の3つの記事を公開しています。
宮城県知事選挙の期日前投票が開始3日間で前回の31倍 なぜ急増?
宮城県知事選挙で再び争点「水道みやぎ」導入の経緯って?
宮城県知事選挙で話題「土葬墓地」検討撤回の経緯って?
いずれも「誤り」「不正確」などと判定を下す形ではなく、真偽不明の情報が広がっている話題について、客観的な事実を説明する内容になっています。
河北新報が「かほQチェック」を始めたのは2025年2月です。きっかけは2024年の兵庫県知事選。「ネット上に広がる虚偽や曖昧な情報に対応したい」という相談を受けた筆者(古田)は河北新報の勉強会に招かれ、ファクトチェックの手法について講義しました(JFC"「ファクトチェック後進国」日本に変化の兆し 兵庫県知事選きっかけに全国の新聞社が始めた試み【解説】")。
偽・誤情報には全国的に広がるものもあれば、局地的に拡散するものもあります。東京に本拠を置く全国メディアや、少人数で全国をカバーする日本ファクトチェックセンターでは、各自治体レベルの情報拡散への対応が遅れます。
参政党が支援した前自民党参院議員の和田政宗氏との接戦で、全国的な注目を集めた宮城県知事選は、JFCでもなんとか検証記事を出せました。しかし、今回のニュースレターの関連記事の項目で挙げている「いわき市にまつわる誤情報拡散 パキスタンの都市と姉妹都市でビザ容易になど(いわき民報)」となると、拡散に気づくことも困難です。
局地的な誤情報の拡散を防ぐには、ローカルメディアの活躍が鍵です。日本ファクトチェックセンター(JFC)では、全国各地の検証など対策への取り組みにも協力していきたいと考えています。(古田大輔)
JFCからのお知らせ
JFCファクトチェック講師養成講座はこちら
日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。
次回は11月28日(金)午後5時~6時30分で、お申し込みはこちら。
ユースファクトチェック選手権2025開催へ 申し込みはこちら
日本ファクトチェックセンター(JFC)は11~12月、中学生〜大学生を対象に情報を検証するスキルを競うイベント「ユースファクトチェック選手権2025」をオンライン開催します。2〜3人でチームを組み、国内大会を勝ち抜くと世界大会でアジア各国のチームと決勝を争います。
大会の日程(日本)
キックオフイベント(オンライン) 11月22日(土) 14:00-16
全国大会(オンライン)11月29日(土) 14:00-16
国際大会(オンライン) 12月13日(土) 時間未定
キックオフイベントを含めた大会への申込みはこちら(応募締切は11月17日)

今週のファクトチェック
高市政権でこども家庭庁の肩書が消滅? 以前から肩書きに変更なし
高市新内閣の閣僚名簿、補佐官名簿の画像と共に「子ども家庭庁肩書消滅」という投稿が拡散しましたが誤りです。こども家庭庁の大臣の肩書きは、前政権も内閣府特命担当大臣に含まれていました。

高市首相が外国人を大量に国外退去させる省庁を設立? 新省庁も大量退去の情報もない
高市早苗新首相が、外国人を大量に国外退去させるための省庁を設立すると表明したかのような投稿が、英語で拡散しましたが、誤りです。高市氏は、一部の外国人による違法行為やルールからの逸脱に毅然と対応すると述べ、外国人政策を担当する大臣を置きましたが、10月27日現在、省庁を新設したり、外国人を大量に国外退去させたりという情報はありません。

Fact Check: Japan Is Not Creating a Ministry to Mass Deport
An English-language post circulating on social media falsely claims that Japan’s new Prime Minister, Sanae Takaichi,has announced the creation of a government ministry to deport large numbers of foreigners.This claim was verified by the Japan Fact-check Center.

大阪は6人に1人が中国人? 府内1.1%、市内1.9%
「大阪は6人に1人が中国人」という投稿が拡散しましたが、誤りです。大阪府に就労や勉強などのために訪れ、中長期にわたり滞在する中国人の割合は人口の約1.1%(2025年6月末時点)、大阪市と比べても、市内に住民登録している中国人は市の人口の約1.9%(2024年末時点)で、いずれも6人に1人(約16.7%)からはかけ離れています。観光客の人数を考慮しても「6人に1人」は程遠い数値です。

南アなど10か国の在留資格者を再入国禁止に? 2021年のコロナ禍の映像
南アフリカなど10か国の在留資格を持つ外国人の再入国を禁止するかのような言説が拡散しましたが、誤りです。拡散した動画は2021年末、松野博一官房長官(当時)が、新型コロナウィルスの水際対策について説明しているものです。

安倍元首相が日本の年収を下げていた? グラフの読み間違い
「安倍元首相が日本の年収を下げていた」という文言とともにグラフ付きの画像が拡散しましたが、誤りです。グラフで年収が下がっていると強調されている時期は小泉純一郎政権です。第一次や、第二次安倍政権発足以降の年収はともに上昇傾向にありました。

宮城県知事選、期日前投票数が前回の31倍なのに投票率が低いのは不正? 「衆院とのダブル選」という特殊事情
宮城県知事選について「期日前投票が前回の31倍だったのに、当日の投票率の低さは不自然」「不正選挙」などの言説が拡散しましたが、ミスリードで不正確です。期日前投票の最初の3日間に投票した有権者数は前回の31倍でしたが、前回は投票日が衆院選と重なるダブル選挙でした。知事選は選挙期間が17日間、衆院選は12日間。「31倍」だったのは、知事選のみの投票期間である最初の3日間のデータで、今回とは比較条件が大きく異なります。期日前投票の総数は、前回の約1割増にとどまっており、不正選挙を示すデータとは言えません。

米トランプ大統領「サナエをイジメた奴はアメリカを敵に回す」と野党に警告? まとめサイトによる誤り
米トランプ大統領が「サナエをイジメた奴はアメリカ合衆国を敵に回すという事だ」と日本の野党に警告したかのような投稿が拡散しましたが、誤りです。トランプ氏がそのような発言をしたという情報も報道もありません。

TikTokで拡散するAI生成によるクマ被害の偽動画に注意
日本のクマ被害が深刻化していることをうけ、熊による被害を映した動画がTikTokで多数拡散しています。しかし、その中にはAIで生成された現実のものではない映像が多数混じっています。

今週の動画/ポッドキャスト
中国人留学生は学費がほぼ無料?
その他の関連記事
EU finds Meta, TikTok in breach of transparency obligations
AI-Generated Fact Check on X is Wrong: MSNBC’s ‘No Kings’ Footage is Legit:NewsGuard's Reality Check
https://www.newsguardrealitycheck.com/p/ai-generated-fact-check-on-x-is-wrong
The Wayback Machine’s snapshots of news homepages plummet after a “breakdown” in archiving projects:Nieman Lab

大谷翔平“歴史的活躍”の裏でYouTubeに蔓延する「海外の反応」うたうフェイク動画…生成AIが生んだ“荒稼ぎ”の実態:Smart FLASH/スマフラ[光文社週刊誌]

AIでニュース見るの、もうやめた方がいい? 誤報率は45%:ギズモード・ジャパン

EU-funded Training on Media Literacy and AI Integration for Content Creators held in Ashgabat:EEAS

Fact check: Comparing European rape statistics doesn't work – DW – 10/25/2025:dw.com

第2回調査分析結果・シンポジウムを実施しました:スマートニュース メディア研究所 SmartNews Media Research Institute

「選挙のファクトチェックを検討」 宮城県知事が指示 デマ拡散受け:毎日新聞

She arrived in Canada as an immigrant and now teaches newcomers how to resist misinformation:Poynter

河北春秋(10/29):例えば「空に雲が出ている」という情報があ… :河北新報オンライン

いわき市にまつわる誤情報拡散 パキスタンの都市と姉妹都市でビザ容易になど:株式会社いわき民報社

クマに関するフェイク拡散 クマ鈴の効果は?メガソーラーは?:NHK
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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