「日本の治安が世界33位に急落」? 2023年の海外アンケートでの東京の順位【ファクトチェック】

「日本の治安が世界33位に急落」? 2023年の海外アンケートでの東京の順位【ファクトチェック】

「日本の治安が世界33位に急落した」という投稿がXで拡散しましたが、ミスリードで不正確です。海外企業のアンケート調査に「33位」という数字はありますが、最新のものではなく、東京を対象としたもので「急落」はしていません。

検証対象

2025年8月25日、まとめサイト「NewsSharing」のXアカウントが「【悲報】日本の治安が世界33位まで急落…移民政策を推進する自民党が日本を破壊している。石破首相には辞任してほしい」と投稿した。

8月27日現在、投稿は9256回以上リポストされ、表示は123.3万件以上だ。投稿には「治安をかえせ😇」「解散総選挙を要求する」や「いや、12位でしょ?2024年の17位から5ランクUPでは??」という指摘もある。

検証過程

引用元は治安と無関係の画像

「NewsSharing」のまとめ記事が引用した投稿は、次のように主張している。

「日本は治安がいいが有名だったのに 世界33位に急落」「なぜか私たちの知らないうちに、移民受け入れによりアフリカの故郷にされてる」「このIQスコアの人々が日本でまともに働けるのでしょうか?」「自民党が日本を破壊してる」

しかしこの投稿に添付されている世界地図の画像は「Global IQ Scores(世界の知能指数スコア)」と書かれており、治安とは無関係だ。そのほかに「33位」の根拠となるデータは示されていない。

「33位」は海外のアンケート調査のデータ

日本ファクトチェックセンター(JFC)でも、「日本の治安が世界33位」と示すデータを調べたところ、2023年03月11日にBusiness Journalが配信した”日本の治安、世界33位に低下…格差拡大で生活困窮者が犯罪に加担、強盗犯罪も増加”という記事があった。

記事はセルビアに拠点を置く企業が運営するサイト「ナムベオ(Numbeo)」のデータを紹介。「『治安指数(Numbeo Safety Index)』の2023年版によると、なんと日本の治安ランキングが33位にまで低下している」と書いている。

ただし記事には続きがあり、「このランキングは結局のところ出身国を偽っても回答できてしまううえ、アンケートの回答も一般人の体感がベースになっているので、正確なデータとはいえません。つまり、信憑性は低いでしょう」という専門家のコメントも紹介している。

Numbeoのサイトは犯罪や治安のデータについて「ウェブサイト訪問者が回答した調査に基づいており、科学的調査や政府の調査と同様の形式で構成されている」と書いている(Numbeo”Understanding Crime Indexes”)。

つまり、サイト訪問者へのアンケートが主な情報源だ。

日本ではなく東京が33位、急落していない

NumbeoのSafety Indexランキングは上位なほど安全で、2023年は国別で日本が8位(Numbeo”Safety Index by Country 2023”)、都市別で東京が33位(Numbeo”Safety Index by City2023”)だ。

前年2022年の都市別ランキングだと東京は37位だった(Numbeo”Safety Index by City2022”)。最新の2025年(中間報告)では36位だ(Numbeo”Safety Index by City 2025 Mid Year”)。

2025年の世界平和指数ランキングは12位

「治安 国 ランキング」や「安全 国 ランキング」で検索すると上位に表示されるのが、オーストラリアに拠点を置く国際的シンクタンク「Institute for Economics &Peace(IEP、経済平和研究所(IEP)」による世界平和指数(GPI)だ。(Institute for Economics &Peace”About Us”)。

犯罪だけでなく、国内外の紛争度合いなども含めた総合的な平和度を測る指標となっており、最新の2025年版によると、日本は163か国中12位だ。2024年の17位から順位はむしろ上昇している。

「33位」が話題になった2023年のGPIは9位、2022年は10位だった(Global Peace Index 2025Global Peace Index 2024Global Peace Index 2023Global Peace Index 2022)。

判定

日本の治安が世界33位に急落したという投稿が拡散した。セルビアの企業が運営するサイトの都市別ランキングでは、確かに東京は33位だ。しかし、日本のデータではなく、前年のデータと比べて急落はしていない。しかも、このデータはユーザーのアンケートによるものだ。よって、不正確と判定する。

出典・参考

Business Journal.”日本の治安、世界33位に低下…格差拡大で生活困窮者が犯罪に加担、強盗犯罪も増加”.2023年03月11日.
https://www.excite.co.jp/news/article/Bizjournal_202303_post_335926/ ,(閲覧日2025年8月27日).

Numbeo.”Understanding Crime Indexes”.
https://www.numbeo.com/crime/indices_explained.jsp,(閲覧日2025年8月27日).

Numbeo.”Safety Index by Country 2023”.
https://www.numbeo.com/crime/rankings_by_country.jsp?title=2023&displayColumn=1,
(閲覧日2025年8月27日).

Numbeo.”Safety Index by City2023”.
https://www.numbeo.com/crime/rankings.jsp?title=2023&displayColumn=1,(閲覧日2025年8月27日).

Numbeo”Safety Index by City2022”.
https://www.numbeo.com/crime/rankings.jsp?title=2022&displayColumn=1,(閲覧日2025年8月27日).

Numbeo”Safety Index by City 2025 Mid Year”.
https://www.numbeo.com/crime/rankings.jsp?title=2025-mid&displayColumn=1,(閲覧日2025年8月27日).

Institute for Economics &Peace.”About Us”.
https://www.economicsandpeace.org/about/,(閲覧日2025年8月27日).

Institute for Economics &Peace."Global Peace Index 2025".
https://www.visionofhumanity.org/wp-content/uploads/2025/06/Global-Peace-Index-2025-web.pdf,(閲覧日2025年8月27日).

Institute for Economics &Peace."Global Peace Index 2024".
https://www.economicsandpeace.org/wp-content/uploads/2024/06/GPI-2024-web.pdf,(閲覧日2025年8月27日).

Institute for Economics &Peace."Global Peace Index 2023".
https://www.economicsandpeace.org/wp-content/uploads/2023/09/GPI-2023-Web.pdf,(閲覧日2025年8月27日).

Institute for Economics &Peace."Global Peace Index 2022".
https://www.economicsandpeace.org/wp-content/uploads/2023/09/GPI-2022-web.pdf,(閲覧日2025年8月27日).

検証:根津綾子
編集:古田大輔、藤森かもめ


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

沖縄県知事選/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

沖縄県知事選/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

沖縄県知事選の投開票から1週間。偽・誤情報だけでなく、誹謗中傷や一方的な内容のAIディープフェイク、動画などが話題となりましたが、勝敗を左右したというデータはいまのところありません。欧州では子供たちのSNS利用を制限する動きが広がっています。 今週のファクトチェックまとめです。 ✉️日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら。 今週のお知らせ JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら 日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は9月27日(日)午後4時~5時30分で、お申し込みはこちら。 日本ファクトチェックセンター(JFC) ファクトチェック講師養成講座 9月27日(日)開催分日本ファクトチ

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
都がモスク建設に補助金? インバウンド対応の祈祷室と混同か【ファクトチェック】

都がモスク建設に補助金? インバウンド対応の祈祷室と混同か【ファクトチェック】

東京都がイスラム教のモスク建設に補助金を出しているかのような投稿が拡散しましたが、誤りです。都は外国人旅行者のニーズに対応するため、「祈祷室」の整備に補助金を出す制度はつくっていますが、ウェブサイトで「モスク建設を支援するための都の補助金はありません」と明確に否定しています。 検証対象 拡散した言説 2026年9月8日、「東京都が超ヤバい!イスラム教のモスク建設に!補助金!」という投稿がXで拡散した。 検証する理由 9月18日現在、投稿は1.5万回以上リポストされ、表示は47万件を超える。 投稿には「どんどん外国人が集まり、東京都の日本人が重税に泣かされる運命になるね」「ほんとに都民は怒った方がいいよ」など真に受ける反応が多いため、検証する。 検証過程 都「モスク建設支援の補助金はない」 拡散した投稿は、都がモスク建設の補助金を出しているかのように主張している。投稿は小池百合子都知事の画像を添付しているが、補助金の根拠は示していない。 「東京都 モスク 建設 補助」でGoogle検索すると、都産業労働局の「インバウンド対応力強化支援事業

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
アジア開発銀行・神田総裁の「なりすまし」が多発 警察庁「(神田総裁が)個別にSNSで投資を指南することはありません」【詐欺注意】

アジア開発銀行・神田総裁の「なりすまし」が多発 警察庁「(神田総裁が)個別にSNSで投資を指南することはありません」【詐欺注意】

アジア開発銀行(ADB)総裁・神田眞人氏になりすましたアカウントによる投資詐欺の被害が出ています。警察庁が「(神田総裁が)個別にSNSで投資を指南することはありません。公式アカウント以外は全て偽物です」と注意を呼びかけています。 警察庁「SNS型投資詐欺に注意」 2026年9月14日、警察庁は公式Xアカウントで、神田氏のなりすましによるSNS型投資詐欺への注意を呼びかけた。 添付画像には、以下のように手口の詳細が紹介されている。 ①バナー等広告などからLINEの投資グループに誘導される ②神田氏やそのアシスタントになりすましたLINEアカウントから投資を勧められ、指定した口座に振込を要求される ③偽の投資アプリをダウンロードさせられ、アプリ上では利益が出ているように表示 ④出金時に手数料を要求され、その後連絡が取れなくなり、被害が発覚 ADBも注意喚起 ADB駐日代表事務所は、ウェブサイトに「ADBや神田総裁の名前を使って投資等を勧誘するサイトにご注意ください」とバナーを掲示している。 ADBはウェブサイトの「ADBの名を騙る詐欺にご注意(B

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
JFC2025年度会計を公開しました

JFC2025年度会計を公開しました

日本ファクトチェックセンター(JFC)は資金源と組織の透明性を保つため、国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)が定める綱領に則り、毎年、会計報告を公開しています。 JFCの2025年度(2025年4月‐2026年3月)の会計報告はこちら。また、運営母体である一般社団法人セーファーインターネット協会の収入報告はこちらです。 JFCのウェブサイトでは過去分も含めてごらんいただけます。「JFCへの支援と会計」のページからご確認ください。

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は9月27日(日)午後4時~5時30分で、お申し込みはこちら。 日本ファクトチェックセンター(JFC) ファクトチェック講師養成講座 9月27日(日)開催分日本ファクトチェックセンター(JFC)による講師養成講座です。 講師養成講座(オンラインで90分)を受講いただいた後、修了課題を提出された方には、教室や職場などで利用可能な教材の提... powered by Peatix : More than a ticket.Peatix 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験

JFCファクトチェッカー認定試験

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や騙されない人の行動

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)