「期日前投票はすり替えられる」「鉛筆で書かせるのは消すため」「開票システムに仕掛けがある」 繰り返される不正選挙疑惑を検証【#衆院選ファクトチェック】

「期日前投票はすり替えられる」「鉛筆で書かせるのは消すため」「開票システムに仕掛けがある」 繰り返される不正選挙疑惑を検証【#衆院選ファクトチェック】

選挙のたびに「票がすり替えられる・書き換えられる」「選挙システムに仕掛けがある」などの投稿が拡散します。一部でミスが発生するのは事実ですが、拡散する主張のほとんどは根拠がなく、選挙結果が変わるほどの大規模な不正はほぼ不可能です。

はじめに、何度も拡散している疑惑を紹介します。次に、選挙実務に携わる選挙管理委員会に、現場の状況や不正対策を聞きました。最後に実際に起きた選挙トラブルや、その影響をまとめています。

よく拡散する選挙不正の主張は

本人確認をしない?

「期日前投票では本人確認が不要だ」という主張が度々拡散している。JFC(日本ファクトチェックセンター)は、投票日と同様に確認していることを根拠に「不正確」だと判定している。

JFC”期日前投票には本人確認が不要? 投票日と同じ確認手順【ファクトチェック】

票をすり替えられる?

「鉛筆が用意されているのは書き替えるため」「票がすり替えられる」などと不正を主張する投稿も多い。JFCは選挙管理委員会に不正対策を取材し、「誤り」だと判定している。

JFC”期日前投票はブラックボックスで不正し放題? 各選管で厳重な対策【ファクトチェック】

票を書き換えるために鉛筆を使わせる?

「投票所で鉛筆を使わせるのは誰に入れたかを書き換えるため。ボールペンを持っていこう」という呼びかけも、選挙のたびに拡散する。これもJFCは「誤り」だと検証している。

JFC”「期日前投票は不正し放題」「鉛筆だと書き換えられる」? 選挙のたびに拡散【#参院選ファクトチェック】

開票システム「ムサシ」による不正?

「開票システム『ムサシ』が自民党と繋がっていて、票を数える際に操作している」という情報も度々拡散する。JFCは「誤り」と判定している。

JFC“開票機器大手「ムサシ」の筆頭株主は安倍晋三氏で票を操作? 選挙のたびに拡散する誤情報【ファクトチェック】

宮城県・仙台市選管に聞く不正対策

JFCは、「不正がある」という主張に関して、現場の実情や対策を聞くために宮城県と仙台市の選挙管理委員会に取材した。以下はそれらの取材をまとめたQ&Aだ。

Q: 本人確認をせず、なりすましが可能?

・選挙の際には有権者に『投票所入場券』を住民票の住所宛に送付し、期日前であれば投票宣誓書に氏名・生年月日などの記載が必要です。記載内容などに間違いがあれば、投票管理者の判断で身元確認を行います。

・ただし、「必ず身分証を出しなさい」という法的なルールがあるわけではありません。厳しいルールを作れば、円滑な投票に支障が出て時間がかかったり、投票率が低くなったりするかもしれないことから、利便性も考えたうえでの制度です。

・自治体によって細かいルールは異なりますが、仙台市では身分証明書の提示は求めていません。本人確認は名簿と照合し、期日前投票の場合は投票宣誓書に書いてもらう氏名・生年月日などの内容により本人確認し、気になる点があれば、より詳細な確認を行います。

Q:期日前投票は、保管中に票のすり替えや書き換えができる?

・それは現実的には不可能だと考えています。投票箱は期日前から投開票日まで使いますが、投票箱を開ける鍵を使うのは開票日だけとなります。投函口を閉める鍵は毎日施錠して、鍵は封筒に入れて投票立会人に割印をしてもらいます。夜間は鍵のかかる部屋や書庫で保管します。投票箱の管理には自治体職員だけでなく、市町村の選挙管理委員会が選任する複数の投票立会人も交えて必ず複数人があたります。

・『全員がグルになっているのでは』と疑われると不正が絶対にないという証明が難しくなりますが、公務員としてのルールを守っている職員と、公募も含んだ立会人の全員が共同して犯行することは考えにくいと思います。

Q:鉛筆を使わせるのは消して書き換えるため?

・ボールペンで書きたいという人はボールペンで書いても構いません。投票所で鉛筆が用意されているのは書きやすいからです。投票用紙は開票作業のときに確認をしやすいように、折りたたんでも自然と投票箱の中で開くプラスチック製の用紙を使っています。そのため、ボールペンだと滑って書きにくく、また、インクだと滲んだり、他の用紙にうつったりする懸念もあります。

Q:開票システム「ムサシ」で不正をしている?

・不可能です。開票システムは素早い開票作業を実現するために取り入れています。ムサシ社製に限らず、候補者名や政党名を自動で読み取って分類する機械や票を数える機械がありますが、各陣営が推薦する開票立会人が票を確認しているので、機械でなんらかの不正をしたとしても、得票数を操作することはできません。

Q:選挙のたびに報じられる投票用紙の交付ミスや本人確認の誤りなどは不正の証拠?

・全国的に見れば、確かに毎回の選挙で何らかのミスがあります。それらは総務省で取りまとめて公開をしています。ただ、選挙の結果が変わるほどの大規模なミスや不正は宮城県内で起きたことはありませんし、全国でも聞いたことはありません。

・仙台市でも票の二重交付などのミスが生じたことはありますが、選挙結果に影響を及ぼすようなものではありませんでした。再発を防止するため、手順の再確認などを徹底しました。

Q:選挙管理委員会自体が信頼できないという指摘は?

・選挙は民主主義の大切なインフラです。選挙制度への信頼が失われることは、非常に大きな問題です。実際に選挙への信頼が失われている国もある中で、私たちは公務員として、その信頼を守るために日頃から職務をしています。日本では選挙の投票や開票は適正に実施されていると考えています。

実際にあった投票に関するトラブルと影響

Q&Aでも取り上げたように、選挙のたびに投票や開票に関してミスやトラブルが報じられるのは事実だ。そのたびに「選挙でおかしなことが起こっている証拠だ」とやり玉に上がる。

そういった問題はどれだけ存在するのか。総務省は国政選挙のたびに各地の選管経由で報告があった事例をまとめている。最新のものは2024年衆院選で、全国で243件の問題事例が挙げられている(総務省”令和6年10月27日執行 衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査 管理執行上問題となった事項”)。

投票用紙の交付の誤り83件、本人確認の誤り等38件など、問題事例を表にすると、以下の通りだ。

令和6年10月27日執行 衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査 管理執行上問題となった事項」よりJFC作成

影響が大きかった事例を挙げると、静岡県沼津市で投票所入場券504通911人分が発送されなかった。投票所では入場券なしで投票することが出来た。印刷ミスを確認した沼津市選挙管理委員会は後に謝罪した(朝日新聞”投票所入場券500通、印刷漏れ 静岡・沼津市選管がミス認め謝罪”2024年11月15日、SBS”消えた“入場券”…衆院選投票日までに届かず 選管は発送済みも「届いていない」問い合わせは100件以上=静岡・沼津市”2024年10月29日)。

また、神奈川県の「投票用紙交付誤り」2件のうち1件は、綾瀬市が、投票権のない外国籍の別人1人に投票用紙を誤って交付した(綾瀬市”期日前投票所における投票用紙の誤交付について”2024年10月26日、産経新聞”外国籍市民に衆院選投票用紙を誤交付 神奈川・綾瀬市選管 生年月日の同じ有権者と勘違い”2024年10月27日)。

宮城県や仙台市の選管が言うように選挙は民主主義のインフラであり、ミスがあってはならない。しかし、日本の有権者数は1億人を超える。ミスをゼロにすることは、現実的にはほぼ不可能だ。

2024年衆院選の投票者数は小選挙区5593万5743人、比例代表5593万901人。「本人確認の誤り等」の発生件数は38件だった(総務省”令和6年10月27日執行 衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査 速報結果”)。

2022年参院選では、選挙区5466万242人、比例5465万5446人に対して、「本人確認の誤り等」のミスが27件があった(総務省”令和4年7月10日執行 参議院議員通常選挙 速報結果”)。

投票者数と比較すると、発生件数はごくわずかにとどまっていることがわかる。

あとがき

投開票日に開票率が0%なのに新聞やテレビが「当選確実」と速報をするのは「最初から結果がわかっている出来レースだからだ」という指摘もあります。これについてもJFCは検証し、「誤り」と判定しています。

JFC”開票率0%で当選確実と報道するゼロ打ちは不正選挙? 取材と統計学に基づく精度の高い予測【ファクトチェック】

また、出口調査と開票結果に開きがあることを不正の証拠だと言う人もいます。しかし、出口調査はあくまでサンプル調査であり、開票結果と完全に一致することはありません。各報道機関はそれらの誤差も計算したうえで、当選予測をしています。

JFC”都議選・八王子で開票に不正? 出口調査と投票結果は異なる【ファクトチェック】

出典・参考

JFC.”期日前投票には本人確認が不要? 投票日と同じ確認手順【ファクトチェック】”.https://www.factcheckcenter.jp/fact-check/politics/inaccurate-early-voting-no-identity-verification/,(閲覧日2026年1月25日).

JFC.”期日前投票はブラックボックスで不正し放題? 各選管で厳重な対策【ファクトチェック】”.https://www.factcheckcenter.jp/fact-check/politics/false-early-voting-fraudulent/,(閲覧日2026年1月25日).

JFC.”「期日前投票は不正し放題」「鉛筆だと書き換えられる」? 選挙のたびに拡散【#参院選ファクトチェック】”.https://www.factcheckcenter.jp/fact-check/politics/false-election-rigged/,(閲覧日2026年1月25日).

JFC.“開票機器大手「ムサシ」の筆頭株主は安倍晋三氏で票を操作? 選挙のたびに拡散する誤情報【ファクトチェック】”.https://www.factcheckcenter.jp/fact-check/politics/false-claim-abe-major-shareholder-vote-machine/,(閲覧日2026年1月25日).

総務省.”令和6年10月27日執行 衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査 管理執行上問題となった事項”.https://www.soumu.go.jp/main_content/001026081.pdf,(閲覧日2026年1月25日).

朝日新聞.”投票所入場券500通、印刷漏れ 静岡・沼津市選管がミス認め謝罪”.2024年11月15日.https://digital.asahi.com/articles/ASSCH365LSCHUTPB003M.html,(閲覧日2026年1月25日).

SBS.”消えた“入場券”…衆院選投票日までに届かず 選管は発送済みも「届いていない」問い合わせは100件以上=静岡・沼津市”2024年10月29日.https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1519411,(閲覧日2026年1月25日).

綾瀬市.”期日前投票所における投票用紙の誤交付について”2024年10月26日.https://www.city.ayase.kanagawa.jp/soshiki/hishokohoka/pressrelease/press_24/18724.html,(閲覧日2026年1月25日).

産経新聞.”外国籍市民に衆院選投票用紙を誤交付 神奈川・綾瀬市選管 生年月日の同じ有権者と勘違い”2024年10月27日.https://www.sankei.com/article/20241027-4YT6CQ35QRIQRDFIIBDATUZJEM/?outputType=theme_election2024,(閲覧日2026年1月25日).

総務省.”令和6年10月27日執行 衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査 速報結果”.https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/data/shugiin50/index.html,(閲覧日2026年1月25日).

総務省.”令和4年7月10日執行 参議院議員通常選挙 速報結果”.https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/data/sangiin26/index.html,(閲覧日2026年1月25日).

取材・編集:根津綾子、古田大輔、藤森かもめ


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

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日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や騙されない人の行動

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