岩手・宮城内陸地震で巨人の痕跡が出た?人骨と災害の画像を合成したもの【ファクトチェック】

岩手・宮城内陸地震で巨人の痕跡が出た?人骨と災害の画像を合成したもの【ファクトチェック】

「岩手・宮城内陸地震で巨人の痕跡」という画像が拡散していますが、誤りです。がけ崩れの報道映像と佐賀・吉野ヶ里遺跡のウェブサイトで公開されている人骨の画像を合成しています。こうした「巨人」の偽画像は古今東西を問わずに存在します。

検証対象

災害現場で巨人の骨が見つかったという情報が拡散している(例1例2)。これはこれまでにも何度も取り上げられ、検証もされてきた。2023年3月7日に投稿されたツイートは、3月15日時点で3900万回以上の表示、8万件以上のいいねを獲得している。

画像

返信欄などには反論するリプライが多く見られた一方で「巨人は実在しとったんや…」「初めて見ました!!」などの反応もあった。

検証過程

この画像については、すでに多くのユーザーが指摘している通り、NHKが放送した2008年6月の岩手・宮城内陸地震のがけ崩れ現場の映像と吉野ヶ里遺跡から発掘された人骨とを合成した画像と見られる。

ネット上に多数あるNHKによるがけ崩れ現場の元映像を見ると、今回の検証対象と同様の地形やがけ崩れ、水たまりなどを確認できるが「巨人の骨」のような物体は見当たらない。

次に、吉野ヶ里歴史公園HPを見ると、以下の画像が確認できる。

画像

この画像と、対象言説の画像を比較すると酷似している。

画像
(両者、画像の一部を拡大)

以上の点から、対象言説の画像は、NHKの報道映像と吉野ヶ里歴史公園HPにある画像を合成したものだとわかる。

また、このツイートのツリーには他にも「巨人がいた痕跡」とする画像や動画がある。これらについてもいくつか検証した。

画像
”a hoax archaeological discovery(でっち上げの考古学的発見)”を作成する画像コンテストに出展された作品。画像はPhotoshopで加工されたものだと示されている。
画像
ブラジルの3Dアーティストを名乗る人物によって作成されたもの

判定

以上より、検証対象の画像は合成写真で巨人の痕跡ではない。誤り。

あとがき

検証対象のツイートにはたくさんの「巨人を写した画像」がぶら下がっていますが、それらの多くはこれまでに何度もネット上で検証された偽画像です。「巨人が存在した」という言説はネットが生まれる前からある、定番の偽情報です。画像の加工ツールが発達し、誰でも簡単に合成映像が作れるようになったことで新しい「巨人説」も生まれやすくなっています。

画像検索をすると過去の検証記事や、元画像が見つかることが多いので、ぜひ実践してみてください。

検証:本橋瑞紀
編集:古田大輔、藤森かもめ

検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。

「ファクトチェックが役に立った」という方は、シェアやいいねなどで拡散にご協力ください。誤った情報よりも、検証した情報が広がるには、みなさんの力が必要です。

X(Twitter)FacebookYouTubeInstagramなどのフォローもよろしくお願いします。またこちらのQRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、真偽が気になる情報について質問すると、AIが関連性の高い過去のJFC記事をお届けします。詳しくはこちらの記事を

もっと見る

黄砂は中国の農業が引き起こしている? 無関係な動画【ファクトチェック】

黄砂は中国の農業が引き起こしている? 無関係な動画【ファクトチェック】

多数のトラクターが砂塵を巻き上げながら走っている動画と共に「黄砂は中国の人工的なテロ」と主張する投稿が拡散しましたが、誤りです。拡散した動画はブラジルの農業風景を映したもので、中国は関係ありません。動画はこれまでにも世界中で違う文脈で拡散しています。 検証対象 2025年3月13日、「黄砂🇨🇳って人工的なテロだったんだね…」と書かれた投稿が拡散した。多数のトラクターが砂塵や土埃のようなものを巻き上げながら走っている様子が映った動画が添付されている。 投稿は約1500件のリポストと約17万件のインプレッションを獲得している。「日本に飛来するようにわざとやってます⁉」「もしかしてワタシの持病の粉塵アレルギーや気管支喘息ももしかしてコレの所為?」などのコメントが付く一方で、フェイクを指摘する声もある。 検証過程 過去に中国とは別の文脈で拡散した動画 日本ファクトチェックセンター(JFC)が投稿に添付された動画の一部をGoogle画像検索で調べたところ、同じ動画を使ったYouTube動画やXの投稿がヒットした(投稿1、投稿2、投稿3)。 これらの投稿

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
兵庫県百条委、告発7つを全否定? テレビ画像を加工【ファクトチェック】

兵庫県百条委、告発7つを全否定? テレビ画像を加工【ファクトチェック】

兵庫県・斎藤元彦知事に関する県議会の百条委員会が、告発された7項目全てを否定したという情報が拡散しましたが、誤りです。根拠とされたテレビ画像は加工されています。 検証対象 2025年3月9日、「7つの告発」という見出しに、「職員へのパワハラ」「不当な解任で理事長急死」など、斉藤知事に対する告発の7項目が書かれ、いずれもバツ印と「否」の文字がついているテレビ番組と思われる画像の投稿が拡散した。「百条委員会ってやる意味あったの?」という文言がついている。 3月14日現在、46万以上の閲覧と280あまりのリポストがついて、「結論ありきでホント酷かった」「ないですよね…微塵も」「時間と税金の無駄遣い委員会」などのコメントがついている。一方、コミュニティノートが付き「加工された画像」だと指摘している。 検証過程 画像はサンデージャポンの一場面 拡散した画像の右上には爆笑問題の太田光さんらが映っており、TBS「サンデージャポン」のように見える。拡散した投稿のリプ欄にはサンデージャポンの該当箇所と思われる動画をつけた投稿もある。 この動画を見ると、拡散した画像

By 宮本聖二
新型コロナワクチンで寿命が短くなる? 根拠不明のデータ【ファクトチェック】

新型コロナワクチンで寿命が短くなる? 根拠不明のデータ【ファクトチェック】

新型コロナワクチンで寿命が短くなることを示したデータがあるという情報が拡散しましたが、根拠不明です。同じような情報が過去に世界でたびたび拡散していますが、いずれも「根拠不明」と判定されています。 検証対象 2025年2月12日ごろから、30歳の人が3回新型コロナワクチンを打ったら55歳までしか生きられないデータが出たという主張や、新型コロナワクチンは人口削減ワクチンだなどと言う投稿がXで複数拡散した(例1、例2)。 投稿は、多いものは3000回以上リポストされ、表示は269.3万回を超える。投稿には「そもそも政府がグレートリセットって発言されてます」「3回打たされた小中学生はどうなるんだろう…」などのコメントのほか「統計出せるほど年数経ってませんがね」「どうやってデータ取ったんだよ笑」という批判もある。 検証過程 新型コロナワクチンの接種から約4年しか経っていない 検証対象は、「30歳の人が3回コロナワクチンを打ったら55歳までしか生きられないデータが出た」「統計が出ている」などと主張する。同ワクチンの一般人への接種が始まったのは英国が初めてで、2

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
菅元首相がワクチン注射を誤魔化した? 映像の角度によるもの【ファクトチェック】

菅元首相がワクチン注射を誤魔化した? 映像の角度によるもの【ファクトチェック】

菅義偉元首相が「刺すと引っ込む針」を使ってワクチン接種を誤魔化したという情報が拡散しましたが、誤りです。拡散した動画では注射針が消えたように見える場面がありますが、別の映像では針がはっきりと映っています。 検証対象 2025年3月3日、菅元首相(当時)が2021年3月16日に新型コロナのワクチン接種をする動画とともに「日本国民のみなさん、まだ騙されたままですか? 首相を含め政府関係者が、インチキなAIR接種をしてることに気づきましょう」という投稿が拡散した。 この動画を見ると注射の針が消えているように見える場面がある。そこを指摘して「刺すと引っ込む針ですね」「生物兵器であることを知ってて、わざわざ自分から打つわけないでしょ」などのコメントがついている。この投稿は910万の閲覧と2500を超えるリポストがある。 検証過程 拡散した動画の内容は 投稿につけられた動画は15秒。マスク姿の菅氏が注射を受けている。医者が注射を取り出すと針が飛び出たように見える。これが「刺すと引っ込む針」「AIR注射」などと批判が出る根拠となっている。 動画の左上にはテレビ

By 宮本聖二