イランが攻撃したドバイのCIA本部? 2015年の高層マンション火災の映像【ファクトチェック】

イランが攻撃したドバイのCIA本部? 2015年の高層マンション火災の映像【ファクトチェック】

「今朝、イランが標的としたドバイのCIA本部の映像が公開された」という文言とともにビルが煙をあげて燃える動画が拡散しましたが、誤りです。動画は2015年の高層マンションの火災を映したものです。

検証対象

拡散した投稿

2026年3月1日、「今朝、イランによって標的にされたドバイのCIA本部を映した映像が公開されました」「UAEは映像を公開した者たちを逮捕しています。しかし、彼らはこれを隠すことはできません」という英文と共に、動画付き投稿が拡散した。

動画には高層ビルが炎と煙をあげて燃えている様子が映っている。

検証する理由

3月2日現在、この投稿は1.1万件以上リポストされ、表示回数は392万回を超える。投稿について「UAEの戦略は興味深い」「嘘……」というコメントの一方で「これもデマ」という指摘もある。

英語での投稿だが、日本でも拡散しているため、検証する。

検証過程

2月28日、米国はイスラエルとともにイランに対する大規模な攻撃を開始した。

最高指導者のハメネイ師が死亡するなど、イランには大きな被害がでている模様で、イランは反撃を表明している(BBC.”イラン最高指導者ハメネイ師「死亡」とトランプ氏が発表 イラン国営放送も死去報じる”)。

報道によれば、ドバイのあるアラブ首長国連邦も反撃の標的となっており、空港やホテルで被害が出ているという。

拡散した動画は2015年の火災

拡散した動画では、側面に青い縦のラインが入った高層マンションが煙をあげて燃えている。投稿者は、これがドバイのCIA本部がイランに攻撃された様子だと主張している。

動画をGoogleレンズで検索すると、2015年10月にアラブ首長国連邦のシャルジャで発生した火災の画像が多数見つかる。

2015年10月1日のBBCの記事によると、同日、約200世帯が住む高層住宅の下層階で火災が発生し、住民が避難したという(BBC.”Firefighters tackle blaze at high-rise tower in UAE”)。

同じ日に、拡散した動画のマンションと同じ特徴を持ったマンションを同じ角度から撮影した動画もYouTubeに投稿されている(YouTube.”Fire at high rise residential tower in Sharjah City Centre“)。

YouTube.”Fire at high rise residential tower in Sharjah City Centre”より

2015年に投稿された動画と拡散した動画を比較すると、側面の青い縦ライン、建物下部の特徴、燃えた場所が一致している。

2026年3月2日現在、ドバイのCIA本部が爆撃されたという情報や報道はない。

判定

投稿者は、煙が出ている高層ビルの映像について、2026年にイランが攻撃したドバイのCIA本部だと主張しているが、実際は2015年にアラブ首長国連邦のシャルジャで発生した高層マンション火災の映像だ。よって、誤りと判定した。

出典・参考

BBC.”イラン最高指導者ハメネイ師「死亡」とトランプ氏が発表 イラン国営放送も死去報じる”.https://www.bbc.com/japanese/articles/c3wl7x4zpvvo  ,(閲覧日2026年3月2日)

BBC.”Firefighters tackle blaze at high-rise tower in UAE”.https://www.bbc.com/news/world-middle-east-34412951 ,(閲覧日2026年3月2日)

YouTube.”Fire at high rise residential tower in Sharjah City Centre“.https://www.youtube.com/shorts/pURX01_VEnc ,(閲覧日2026年3月2日

検証:木山竣策
編集:藤森かもめ、古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

「偽情報の源はテレビ」は本当か? 批判の根拠となった調査を実施した小笠原教授とデータを読み解く【ファクトチェック解説】

「偽情報の源はテレビ」は本当か? 批判の根拠となった調査を実施した小笠原教授とデータを読み解く【ファクトチェック解説】

「偽・誤情報の発信源はテレビが最多」という趣旨の投稿が多数拡散しました。きっかけは、衆院選期間中の有権者の偽・誤情報の接触状況を調べた東洋大の小笠原盛浩教授(情報社会学)による調査です。ただし、小笠原教授は調査データの読み解き方に、慎重さが必要だと説明します。(古田大輔) 調査の内容と拡散したテレビ批判 小笠原教授による調査は、2026年の衆院選期間中(1月27日〜2月7日)に有権者が接触した偽・誤情報に関して、2月8〜10日にインターネットモニター調査(有効回答者数1793)をしたもの。選挙期間中にファクトチェック機関やメディアが検証して「誤り」と判定されている偽・誤情報の中から5つを選び、テレビ、新聞、SNSなど、「どこでその情報と接触したか」「事実と認識したか」などを聞きました。 回答者の51.4%が選挙期間中に偽・誤情報に接触したと答え、しかも、接触した偽・誤情報1585件の79.9%を事実だと誤認識していました。中でも、最も注目を集めたのは、偽・誤情報の接触経路として「テレビ」と答えた人が最も多く32.7%を占めたことです。

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
日本政府がイラン攻撃を支持? 小泉防衛相らは支持も不支持も表明していない【ファクトチェック】

日本政府がイラン攻撃を支持? 小泉防衛相らは支持も不支持も表明していない【ファクトチェック】

アメリカのイラン攻撃について、小泉進次郎防衛大臣の会見動画とともに「日本政府は早々に支持を表明した」という投稿が拡散しましたが、不正確です。小泉氏は、政府の立場について「官房長官や外務大臣の会見内容の通りである」と述べるにとどまっています。また、木原稔官房長官、茂木敏充外務大臣は会見で「イランによる核兵器開発は決して許されない」と述べたうえで、米による攻撃に関しては、支持・不支持を明らかにしていません。 検証対象 拡散した投稿 2026年3月1日、「アメリカによるイラン攻撃について、日本政府は早々に支持を表明した」という動画付き投稿が拡散した。 動画では、小泉氏が記者から米国の軍事行動の評価について問われて、「官房長官、そして外務大臣からお話があったとおりだと思いますので、政府全体としてはそういう立場です」と答えている。 検証する理由 3月2日現在、この投稿は8900件以上リポストされ、表示回数は788万回を超える。投稿について「いかなる理由があったってミサイルいきなり撃っていいわけないだろ」「大丈夫なのか?この発言」というコメントの一方で、「国際

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)
海外からの「影響工作」の影響は/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

海外からの「影響工作」の影響は/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

2025年の参院選では、ロシアがソーシャルメディアなどを通じて日本の世論を捜査する「影響工作」を実施していると話題になりました。衆院選ではどうだったのでしょうか。 日経新聞は2月22日、「衆院選、中国系400アカウントが『反高市工作』 日本語発信やAI活用で巧妙に」という記事を公開しました。「#国民の裏切り者高市早苗」などの反高市キャンペーンのハッシュタグをつけた投稿を拡散している400アカウントに、画像や名前の使い回しなど不自然なパターンがあり、かつ、中国系アカウントと繋がりがあると特定した調査報道です。 読売新聞は2月24日、「日本を批判するアカウント群3000件規模、X投稿・拡散…衆院選前から中国系の影響工作か」という記事を配信しました。SNS分析企業「ジャパン・ネクサス・インテリジェンス」の調査を紹介し、約3000件のアカウントが「高市首相が旧統一教会から票を買っている」などの投稿や拡散をしており、簡体字など中国との関わりを示す痕跡があったという内容でした。 400と3000では大きな差があります。あるアカウントが人間によるものか、ボットか、自分で投稿している

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
ファイザー社が新型コロナワクチンで大腸ガンが増えると認めた? 関連性は説明していない【ファクトチェック】

ファイザー社が新型コロナワクチンで大腸ガンが増えると認めた? 関連性は説明していない【ファクトチェック】

ファイザー社が新型コロナワクチンで大腸がんになると認めたかのような投稿が拡散しましたが、誤りです。拡散した投稿に添付されたインタビュー動画で、ファイザー社の取締役は「米国で大腸ガンが増加していることは事実だが、理由は不明」と述べています。ファイザー社は大腸がんと新型コロナワクチンに因果関係があるとは発言しておらず、そのような報道もありません。 検証対象 拡散した言説 2026年1月24日、「ファイザーがコロナワクチンで大腸がんになること認めたって」という投稿がXで拡散した。 検証する理由 2月26日現在、投稿は2000回以上リポストされ、表示は24万件を超える。 投稿には「インタビューでは認めたって一言も言っていない」などの指摘もあるが、「私の友人が、3人ターボ大腸がんで、切っています」や「免疫力を弱める(といううわさだ)から、そりゃ癌にもなるでしょ」など同調するコメントも多いため、検証する。 検証過程 引用元投稿は 拡散した投稿は「ファイザーがコロナワクチンで大腸がんになること認めたって」という文言とともに、別アカウントが2025年1月

By 根津 綾子(Ayako Nezu)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は3月22日(日)午前10時~11時30分で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei0322.peatix.com/view 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的に

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験

JFCファクトチェッカー認定試験

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)