ファイザー社が新型コロナワクチンで大腸ガンが増えると認めた? 関連性は説明していない【ファクトチェック】

ファイザー社が新型コロナワクチンで大腸ガンが増えると認めた? 関連性は説明していない【ファクトチェック】

ファイザー社が新型コロナワクチンで大腸がんになると認めたかのような投稿が拡散しましたが、誤りです。拡散した投稿に添付されたインタビュー動画で、ファイザー社の取締役は「米国で大腸ガンが増加していることは事実だが、理由は不明」と述べています。ファイザー社は大腸がんと新型コロナワクチンに因果関係があるとは発言しておらず、そのような報道もありません。

検証対象

拡散した言説

2026年1月24日、「ファイザーがコロナワクチンで大腸がんになること認めたって」という投稿がXで拡散した。

検証する理由

2月26日現在、投稿は2000回以上リポストされ、表示は24万件を超える。

投稿には「インタビューでは認めたって一言も言っていない」などの指摘もあるが、「私の友人が、3人ターボ大腸がんで、切っています」や「免疫力を弱める(といううわさだ)から、そりゃ癌にもなるでしょ」など同調するコメントも多いため、検証する。

検証過程

引用元投稿は

拡散した投稿は「ファイザーがコロナワクチンで大腸がんになること認めたって」という文言とともに、別アカウントが2025年1月23日に投稿した英語のポストを引用している。

引用している投稿を和訳すると、概ね以下の通りだ。

「必見。ファイザー社の取締役が大腸がんの増加を認める。各研究の衝撃的なつながりを暴露。リアルタイムで明らかになりつつある新情報。ケビン・マッカーナン氏([@Kevin_McKernan])とサビーネ・ハザン博士によるmRNA新型コロナワクチンに関する研究が、ファイザー社取締役のスコット・ゴットリーブ氏がCNBCで認めたばかりの内容、すなわち『大腸がんの増加』という事実と交差しました」

投稿には、「不穏なつながりを浮き彫りにする3つの動画」というコメントと共に、3本の動画と、その説明も付いている。

引用元は「相関は因果関係ではないが、これらは研究の非常に興味深いつながりであり、無視されるべきではない」と結んでいる。

添付動画の内容は

動画の1本目は、米バイオ企業Medical GenomicsのCSO兼創業者ケヴィン・マッカーナン氏が「大腸がんのサンプルから、自己複製・伝染の恐れがあるファイザー由来疑いのプラスミドを検出した」などと述べている。

2本目は内科医サビーネ・ハザン氏が「新型コロナワクチン接種後に体調を崩した多くの患者を調べたら、ビフィズス菌が消失していた。ワクチン由来のスパイクタンパクが健康を害しているのでは」などと述べている。

3本目は、米CNBCの番組から切り出したと思われる19秒の動画だ。

検証対象の「ファイザーがコロナワクチンで大腸がんになること認めた」という主張に関係しているのはこの3本目の動画だ。米食品・医薬品局(FDA)元長官で、ファイザー社取締役のスコット・ゴットリーブ氏がインタビューに答えている。書き起こしは以下の通りだ。

聞き手: 私が何を言わんとしているか、お分かりですよね。多くの人が、原因が分からない不安から、新型コロナや、あるいは新型コロナワクチンが関係しているのではないかと指摘しています。実際のところ、何が起きているのでしょうか?

スコット・ゴットリーブ氏: 答えは「わからない」です。いくつかのガンが増加しているのは事実です。おっしゃる通り、特に大腸ガンについては、特に若者の間で増えています。理由は解明されていませんが、アメリカ人の食生活の変化に関係があると考えている人たちもいます」

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、CNBCの元動画を確認した。3本目の添付動画は、2025年1月23日にCNBCの公式YouTubeに公開されている「Dr. Scott Gottlieb on navigating covid, the flu and RSV」という動画の2分19秒~2分38秒を切り出している。左上に「The Canadian Independent」というロゴが加えられているが、発言内容は改変されていない。

CNBCの動画では、聞き手が「周りでがん、脳卒中、RSV、肺炎などが異常に増えている気がする。新型コロナやワクチンが原因なのか?」と述べたうえで、「新型コロナや、あるいは新型コロナワクチンが関係しているのではないかという人もいます。実際のところ、何が起きているのでしょうか?」と質問している。

これに対してゴットリーブ氏は、大腸がんが若者の間で増えていると述べた上で、新型コロナやワクチンとの因果関係については「わからない」と答えている。

ファイザー社も関係機関も発表していない

2026年2月26日現在、ファイザー社のサイトにも、新型コロナワクチンと大腸がんの関係を示すような発表はない(Pfizer”Newsroom”)。

類似の発表があれば、報道されるはずだが、各社の報道もない。

日本では厚生労働省が、新型コロナワクチンの安全性評価をウェブサイトに公開しているが、ワクチンによって大腸ガンが増加するという発表はない(厚生労働省”新型コロナワクチンの有効性・安全性について”)。

国立がん研究センターも、ウェブサイトに次のように掲載している。

「現在までがん患者さんを対象としたワクチンの研究は数多く行われてきていますが、ワクチンがDNAを変化させたり、がんやがんの再発原因となる根拠は示されていません」(国立がん研究センター東病院”がん患者さんへの新型コロナワクチン接種Q & A 2024年11月1日更新”)

判定

ファイザー社が新型コロナワクチンで大腸がんになることを認めたかのような投稿が拡散した。添付動画で、ファイザー社の取締役は「米国で大腸ガンが増加していることは事実だが、理由は不明」と述べているだけで、因果関係を結び付けるような発言はしていない。ファイザー社の発表や、報道もない。よって、誤りと判定する。

出典・参考

FDA.”Commissioners”.
https://www.fda.gov/about-fda/fda-leadership-1907-today/commissioners,(閲覧日2026年2月19日).

Pfizer.”Board Members Scott Gottlieb, M.D.”
https://www.pfizer.com/scott_gottlieb-md,(閲覧日2026年2月19日).

CNBC.”Dr. Scott Gottlieb on navigating covid, the flu and RSV”.
https://youtu.be/GwvzEGt-T2M?si=Kog7KdX8ny36xKtj,(閲覧日2026年2月19日).

Pfizer.”Newsroom”.
https://www.pfizer.com/newsroom,(閲覧日2026年2月19日).

厚生労働省.”新型コロナワクチンの有効性・安全性について”.
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_yuukousei_anzensei.html,(閲覧日2026年2月19日).

国立がん研究センター東病院.”がん患者さんへの新型コロナワクチン接種Q & A.
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/division/infectious_control/040/06/index.html,(閲覧日2026年2月19日).

検証:根津綾子
編集:藤森かもめ、古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら。

もっと見る

フランス暴動、刻々と動く現場の事実をどう伝えるか/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

フランス暴動、刻々と動く現場の事実をどう伝えるか/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

フランスの暴動に関して、多くの偽・誤情報が世界的に拡散しています。多くの検証記事が出るなかで、NHKの検証が批判にさらされました。全国的な暴動のように同時多発的に発生し、自体が刻々と動いていく事象について「事実」を語ることの難しさ。関連記事も含めてぜひご覧ください。 今週のファクトチェックまとめです。 ✉️日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら。 今週のお知らせ 情報の検証に必須の検索力を競うイベント「se4rch.net」 参加者を募集! 日本ファクトチェックセンター(JFC)は、若者を対象に、インターネットを活用した情報検証スキルや検索力を競い合う大会「ユースファクトチェック選手権」を「se4rch.net(サーチ・ドット・ネット)」にリニューアルし、参加者を募集します。 se4rch.netは2024年から毎年開いてきたこれまでの選手権と同様、国内ではJFCが株式会社Classro

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
北朝鮮の金正恩総書記が死亡? 同日、北朝鮮メディアは視察を報道【ファクトチェック】

北朝鮮の金正恩総書記が死亡? 同日、北朝鮮メディアは視察を報道【ファクトチェック】

北朝鮮の金正恩総書記 が死亡したという情報が、朝鮮中央テレビの画像とともにXで拡散しましたが、根拠不明です。添付された画像はAIで生成された可能性が高く、北朝鮮の国営メディアは投稿と同じ2026年10月20日、金正恩氏が娘のジュエ氏と展示会を視察したと報じています。 検証対象 拡散した投稿 2026年10月21日、「냉면 먹고 싶어~🚨緊急速報🚨『キム・ジョンウンが死亡しました』朝鮮中央テレビジョン」という投稿がXで拡散した。投稿には、「キム・ジョンウンが死亡しました」というテロップ入りの朝鮮中央テレビジョンとする画像も添付されている。 検証する理由 この投稿は3600件以上リポストされ、表示回数は1270万回を超えている。「急に動きが見えてきましたね」「マジかぁ」というコメントがある一方、「画像は生成aiかな」という指摘もあるため検証する。 検証過程 北朝鮮メディアは金正恩氏の視察を報道 2026年10月、金正恩氏の死亡説は海外のSNSなどで拡散した。しかし、北朝鮮の国営通信社「朝鮮中央通信」と朝鮮中央テレビは10月20日、金正恩氏が

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)
ルーヴル美術館が燃えた? 映像はリヨンの観光事務所【ファクトチェック】

ルーヴル美術館が燃えた? 映像はリヨンの観光事務所【ファクトチェック】

2026年9月下旬以降、フランス各地で抗議行動や暴動が続く中で、ルーヴル美術館が燃えているという動画が拡散しましたが、誤りです。動画に映っているのはフランス南東部リヨンの観光事務所で、パリのルーヴル美術館ではありません。 検証対象 拡散した言説 2026年10月19日、「ルーブル美術館を燃やしている!(アラビア語からのX自動翻訳)」という文言付きの動画がXで拡散した。 検証する理由 10月21日現在、投稿は800回以上リポストされ、表示は249万件を超える。 日本語でも引用リポストされ、30万回以上再生されているものもある(例1)。 投稿には「このニュースではリヨンのツーリストオフィスが焼けていると言っていますね」「ルーブル美術館では無さそう」などの指摘もあるが、「えーーー‼️⁉️人類の宝が!😱」「日本でお寺が燃やされたりするのもこれと同じだな。ろくでもない」など真に受けた反応も多いため、検証する。 検証過程 添付動画はリヨンの観光事務所が燃えたニュース 拡散した動画は1分46秒。冒頭、白い石づくりの建物が激しく燃える様子が「URGE

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
エッフェル塔が炎上して倒壊? 塔は21日現在も開館【ファクトチェック】

エッフェル塔が炎上して倒壊? 塔は21日現在も開館【ファクトチェック】

フランスで大規模デモや破壊行為が続いている問題に関して、「エッフェル塔が轟然と崩れ落ちる」というコメントと動画がXで拡散しましたが、誤りです。エッフェル塔は10月21日現在も通常通りに開館・運営されており、燃えたり、倒れたりしたという事実はありません。 検証対象 拡散した投稿 2026年10月20日、「歴史を再び目撃、フランスのエッフェル塔が轟然と崩れ落ちる!!!」という投稿が動画とともにXで拡散した。動画にはエッフェル塔が炎に包まれ崩れ落ちる様子が映っている。投稿は中国語で、自動翻訳されている。 検証する理由 この投稿は400件以上リポストされ、表示回数は1096万回を超えている。「うわっ、こんなデカいニュース!」というコメントが多数ある一方、Grokは「これは本物ではなくAI生成だ。エッフェル塔は燃えておらず倒壊もしていない」と回答している。しかし、拡散が続いているため検証する。 検証過程 拡散した動画にはAIラベル 拡散した投稿には、5秒間の動画1本と、画像2枚が添付されている。 エッフェル塔が炎上して倒壊する5秒間の動画は、Goo

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は10月24日(土)午後4時~5時30分で、お申し込みはこちら。 日本ファクトチェックセンター(JFC) ファクトチェック講師養成講座 10月24日(日)開催分日本ファクトチェックセンター(JFC)による講師養成講座です。 講師養成講座(オンラインで90分)を受講いただいた後、修了課題を提出された方には、教室や職場などで利用可能な教材の提... powered by Peatix : More than a ticket.Peatix 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤っ

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験

JFCファクトチェッカー認定試験

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や騙されない人の行動

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)