ドイツが「アメリカからの独立」のため核武装を表明? まとめサイトによるもの【ファクトチェック】

ドイツが「アメリカからの独立」のため核武装を表明したとの主張が拡散しましたが、誤りです。拡散した投稿はまとめサイトのもので、見出しは掲示板サイトのスレッドタイトルを引用しているだけです。次期首相就任が有力視されているフリードリヒ・メルツCDU党首が米国への軍事的依存からの脱却を目指す考えを示したのは事実ですが、ドイツの核武装を表明したわけではありません。
検証対象
2025年3月3日、「【速報】ドイツが「アメリカからの独立」のため核武装を表明」との投稿が拡散した。
投稿は3月5日時点で3000件以上のリポストと約90万件のインプレッションを獲得している。「同じ敗戦国として、敗戦から学び、培った国家の在り方の違いを感じる」「日本もそうしろ。核保有は憲法改正不要だし」などのコメントが付く一方で、元記事と内容が違うとの指摘もある。
検証過程
まとめサイトと添付記事の内容が不一致
検証対象のリンクは、まとめサイト「Tweeter Breaking News —ツイッ速!」の記事だ。タイトルは掲示板サイト5ちゃんねるのスレッド「【速報】ドイツが『アメリカからの独立』のため核武装を表明」で、Yahoo!ニュースエキスパートに今井佐緒里氏が2025年3月3日に投稿した記事「ドイツが『アメリカからの独立』を目指して軍拡の準備を始める。米ではなく欧州の核の傘へ。独仏の連携強化」が引用元だとしている。今井氏はパリ在住のEU・国際関係の研究者、ジャーナリストだ。
今井氏の記事は、2月のドイツ総選挙を経て次期首相就任が有力視されていてるメルツ氏の言動を紹介している。「私の絶対的な優先事項は、できるだけ早くヨーロッパを強化し、アメリカからの真の独立を徐々に獲得できるようにすることです」などと述べ、かねてからのメルツ氏の主張通りドイツが軍拡路線に転換しようとしているとの内容だ。フランスのマクロン大統領と26日に会談し、英仏の「核の傘」にドイツを含めるよう協議に入りたいと表明したとも伝えている。
つまり、「ドイツが核武装を表明」とは書いていない。これまで米国の「核の傘」に守られてきたドイツが、英仏を始めとした欧州各国と協調して米国への軍事的依存から脱却を目指す方針だと報じる内容だ。
メルツ氏の実際の発言は
メルツ氏は選挙勝利後の演説で「トランプ政権は欧州の運命に関心がないことは明らかだ」「私の絶対的な優先事項は、できるだけ早くヨーロッパを強化し、アメリカからの真の独立を徐々に獲得できるようにすることです」などと述べ、米国に代わる「核の傘」として英仏を頼る考えを表明した(BBC)。
今井氏の記事の通りだ。ドイツが核武装するという趣旨の発言はしていない。
判定
ドイツが「アメリカからの独立」のため核武装を表明したとの主張は誤り。次期首相就任が見込まれるメルツ氏は、英仏の「核の傘」を頼るなど欧州各国との協調を通じて欧州全体の米国への軍事的依存からの脱却を目指す方針を示した。自国による核武装を表明したわけではない。
検証:リサーチチーム
編集:古田大輔
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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