東日本大震災時の寄付、オマーンやパプアニューギニアは韓国より多かった? 寄付の一部だけのリストが拡散【ファクトチェック】

東日本大震災時の寄付、オマーンやパプアニューギニアは韓国より多かった? 寄付の一部だけのリストが拡散【ファクトチェック】

2011年の東日本大震災に関して、オマーンやパプアニューギニアからの寄付が韓国より多かったという情報が拡散しましたが、誤りです。拡散した表は海外からの寄付の一部である「義援金」上位リストですが、韓国からは約29億円が「海外救援金」として寄付されており、総合すると拡散した投稿が挙げた国々より多額です。

検証対象

拡散した投稿

2025年12月11日、「みんな知らないと思いますが、東北の地震の時に、オマーンやパプアは多額の寄付をしてくれて、韓国などより全然多いんです」という画像付き投稿が拡散した。

表には「海外から寄せられた義援金」と書かれ、最多はアメリカ、オマーンは4番目、パプアニューギニアは16番目、韓国は24番目となっている。

検証する理由

2026年3月10日現在、この投稿は8100件以上リポストされ、表示回数は380万回を超える。

投稿について「オマーンすごくね」「オマーンともっと仲良くしないといけないね」というコメントの一方で「明らかにデタラメな嘘の表」という指摘もある。

検証過程

拡散した表は

拡散した表をGoogleレンズで検索すると、2013年4月にマイナビニュースが配信した記事が見つかる(マイナビニュース.”東日本大震災後の海外からの義援金、1位は米国・2位は台湾・3位タイ--日赤 | マイナビニュース“)。

マイナビニュースの記事は、日本赤十字社の発表に基づくものだ。そこで、日本ファクトチェックセンター(JFC)は日本赤十字社にこの表について取材した。

日本赤十字社は「当社内部で管理していた『国別月別集計表(金額)』の2011年3月から2012年12月までの情報(送金元の金融機関の所在国が明らかなもののみ集計)をもとに、当時の速報値としてお伝えしたもの」と説明した。義援金の受付は2021年3月末をもって終了したという。

つまり、拡散した表は、赤十字社が義援金の「速報値」として集計し、取材に対して個別に提供したものだ。表自体は速報値としては、間違いはない。

赤十字社がまとめた同時期の確定値では、オマーンが10億7670万641円で4位、パプアニューギニアが3億2521万893円で16位、韓国は2億1557万9474円で24位で、速報値から変わっていない。

ただし、この「義援金」が海外からの寄付の全てを網羅しているわけではない。

国内災害義援金と海外救援金の違い

日本赤十字社によると、同社が受け付けている被災者支援のための寄付金には「国内災害義援金」(義援金)と「海外救援金」がある。

義援金は、被災都道府県に設置される義援金配分委員会に全額送金され、同委員会で定める配分基準に従って市区町村等の自治体に配分される寄付金で、日本国内の被災者の生活支援(現金給付)に直接役立てられる。

海外救援金は、世界各国の赤十字社・赤新月社を通じて被災国の赤十字社に寄せられるものであり、被災国の赤十字社が行う被災者への医療や衣食住の支援といった緊急救援や復興支援などの被災者支援活動に役立てられる。

海外救援金は、日本赤十字社が2019年3月4日現在でまとめた最新版の資料によると、韓国は29億7710万1031円で5位。オマーンとパプアニューギニアからは救援金は受け取っていないという。

集計時期や寄付の種類を加味せずに単純計算をすると、日本は韓国から義援金と海外救援金を合わせて少なくとも計約31.9億円を受け取っている(日本赤十字社.”東日本大震災海外救援金受付状況”)。オマーンは約10億円、パプアニューギニアは約3億円だ。

判定

拡散した表は、義援金の速報値だ。韓国からは、義援金とは別に集計される「海外救援金」が2019年3月までに約29億円寄付されていた。よって、拡散した投稿は誤り。

あとがき

災害時の海外からの支援に関しては、為替レートなども関係して、各国からの資金を単純比較することは困難です。また、金銭だけでなく救援物資も届いています(外務省.”東日本大震災に際しての諸外国等からの物資支援・寄附金一覧/外交青書2012”)。

JFCの取材に対して、赤十字社の担当者は「国別に金額を集計しておりましたが、当社では、各国の順位付け等を行っていたという記録はございませんでした」と述べています。

JFCのファクトチェックも順位付けをするためではなく、間違った情報の拡散を防ぐためのものです。赤十字社からは取材の最後に、以下のようなメッセージをいただきました。

「当社といたしましては、お寄せいただいた寄付額にかかわらず、支援を賜りましたすべての国・地域の皆様に心より感謝申し上げたいと考えております」

出典・参考

マイナビニュース.”東日本大震災後の海外からの義援金、1位は米国・2位は台湾・3位タイ--日赤 | マイナビニュース”.https://news.mynavi.jp/article/20130405-a207/ ,(閲覧日2026年3月10日)

日本赤十字社.”東日本大震災海外救援金受付状況”.https://www.jrc.or.jp/contribution/pdf/kaigaikyuenkin_uketuke.pdf ,(閲覧日2026年3月10日)

外務省.”東日本大震災に際しての諸外国等からの物資支援・寄附金一覧/外交青書2012”.https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/bluebook/2012/html/data/data1_01.html ,(閲覧日2026年3月10日)

検証:木山竣策
編集:藤森かもめ、古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

熊本地震でも広がるうオンライン詐欺/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

熊本地震でも広がるうオンライン詐欺/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

オンライン詐欺は世界中で被害が拡大しており、ファクトチェッカーにとっても重要な検証対象の一つになっています。熊本地震をめぐっても、寄付金詐欺や目立つ投稿に詐欺サイトへのリンクを貼るなどの手口が複数確認されています。 ✉️日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら。 今週のお知らせ JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら 日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は8月23日(日)午後4時~5時30分で、お申し込みはこちら。 日本ファクトチェックセンター(JFC) ファクトチェック講師養成講座 8月23日(日)開催分日本ファクトチェックセンター(JFC)による講師養成講座です。 講師養成講座(オ

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
イオンモール熊本の爆発はテロ? 現時点で未解明、漏洩したLPガスに着火した可能性も【ファクトチェック】

イオンモール熊本の爆発はテロ? 現時点で未解明、漏洩したLPガスに着火した可能性も【ファクトチェック】

2026年7月28日に発生した熊本地震の後、嘉島町のイオンモール熊本で起きた爆発事故をめぐり「テロだ」と主張する投稿が拡散しましたが、根拠不明です。経済産業省は漏洩したLPガスに着火した可能性に言及していますが、現時点で未解明です。イオンは8月5日、外部専門家らによる事故調査委員会を設置すると発表しました。 検証対象 拡散した言説 2026年8月2日、イオンモール熊本の爆発がテロによるものだと主張する投稿がXで拡散した。 検証する理由 8月5日現在、投稿は600回以上リポストされ、表示は19万件を超える。 同様の情報の拡散量を調べるため、「熊本」「イオンモール」「爆発」「テロ」など複数のキーワードを組み合わせてソーシャル分析ツールMeltwaterで調べると、総投稿数は8月5日までに約9900件あった(例1,2,3)。拡散のほとんどはXだ。 これらの投稿は根拠を示していないが、「ガス爆発には見えないね」「これは 熊本を略奪する為のテロですよ」など、投稿を真に受けたり、同調する反応が多い。「デマまたは不確定な情報を流すな」や「陰謀論だよ」などの指摘

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
イオンモール熊本の爆発は「ガスコージェネレーション」が原因? 経産省「設置していない」【ファクトチェック】

イオンモール熊本の爆発は「ガスコージェネレーション」が原因? 経産省「設置していない」【ファクトチェック】

熊本地震後にイオンモール熊本で発生した爆発について、「ガスコージェネレーションシステムが原因だ」とする投稿がXで拡散しましたが、誤りです。経済産業省は「ガスコージェネレーションやガス発電機は設置していないことを確認している」と発表し、LPガスが原因だった可能性が高いと説明しています。またイオンは5日、事故原因を調べる事故調査委員会を設置すると発表しました。 検証対象 拡散した投稿 イオンモール熊本で発生した爆発を受けて、Xでは、都市ガスを燃料としてガスエンジンやガスタービンで発電し、排熱を冷暖房などに利用する「ガスコージェネレーション」が原因だとする投稿が拡散した(例1、例2)。  検証する理由 ソーシャルリスニングツールMeltwaterで調べると、これらの投稿の表示回数は少なくとも合計194万回を超えている。爆発の原因をめぐって、さまざまな根拠不明の情報が飛び交っているため検証する。 検証過程 イオンモール熊本の爆発 2026年7月28日午後16時27分ごろ、熊本県で震度7の地震が発生した。午後6時ごろ、嘉島町のショッピングセンター「イ

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)
鳩山由紀夫元首相が中国共産党に頭を下げた動画? 2015年に韓国の独立運動家らに謝罪したもの【ファクトチェック】

鳩山由紀夫元首相が中国共産党に頭を下げた動画? 2015年に韓国の独立運動家らに謝罪したもの【ファクトチェック】

鳩山由紀夫元首相が中国共産党に頭を下げている動画だという投稿が拡散しましたが、誤りです。動画は2015年8月、鳩山氏が韓国・ソウル市の西大門刑務所跡を訪問し、韓国の独立運動家らに謝罪した映像です。中国共産党に対して頭を下げている動画ではありません。 検証対象 拡散した言説 2026年7月30日、「日本人がなぜ左翼を嫌うのか、考えたことはありますか?/ここに日本の左寄り首相だった鳩山由紀夫がいます。彼は2009年から2010年まで1年間務めました。/このビデオでは、彼が中国を訪問中に中国共産党に対して恥じらいながら頭を下げています」という英文付きの動画がXで拡散した。 検証する理由 8月6日現在、投稿は200回以上リポストされ、表示は20万件を超える。 投稿には「私の日本語力が衰えていたら申し訳ないですが、動画に『韓国』と書いてあるように見えます」などの英語の指摘もあるが、「日本が犯した残虐行為を謝罪するのは悪いことだと思わない」「共産主義者に恥じて頭を下げるべき人はいない」など、拡散した投稿を真に受けた反応も多いため検証する。 検証過程 動

By 根津 綾子(Ayako Nezu)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は8月23日(日)午後4時~5時30分で、お申し込みはこちら。 日本ファクトチェックセンター(JFC) ファクトチェック講師養成講座 8月23日(日)開催分日本ファクトチェックセンター(JFC)による講師養成講座です。 講師養成講座(オンラインで90分)を受講いただいた後、修了課題を提出された方には、教室や職場などで利用可能な教材の提... powered by Peatix : More than a ticket.Peatix 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験

JFCファクトチェッカー認定試験

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や騙されない人の行動

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)