偽・誤情報の影響が拡大する一方で対策は進まず 大規模調査から見える日本の一番の課題は【情報インテグリティ】

偽・誤情報の影響が拡大する一方で対策は進まず 大規模調査から見える日本の一番の課題は【情報インテグリティ】

4月2日の国際ファクトチェックデーに合わせ、日本ファクトチェックセンター(JFC)が開催した情報インテグリティシンポジウム。この記事では基調講演1の内容をお届けします。

基調講演1ではJFCが電通総研と共同実施した情報インテグリティ調査の概要を紹介しました。偽・誤情報が社会にもたらす深刻な影響や対策としてのファクトチェックやメディアリテラシーが広がっていないことが明らかになっています。

発表:合原兆二氏(株式会社電通総研)
コメント: 山口真一氏(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 准教授)

情報インテグリティ調査とは

情報インテグリティは「情報の誠実性」などと翻訳されます。提唱する国連は「情報の正確性、一貫性、信頼性」などと定義しています。

合原氏は以下のように調査の狙いを説明しました。

「私たちが日々接しているインターネットやSNS、そしてニュースなどの情報環境において、いかに正しく信頼できる情報が流通しているのか。これは個人の安心安全はもちろん、社会全体の健全性に関わる重要なテーマだと思っております」

「しかし、現実には、偽情報や誤情報、差別的な表現や誹謗中傷が社会問題となっており、日々の生活に少なからず影響を及ぼしているのではないでしょうか。今回の調査では、特にネットメディアに重点を置き分析を行いました。現在の情報環境における人々の意識や行動を把握することで課題を明らかにし、今後に向けた示唆を得ることを目的に調査を実施しました」

情報インテグリティ調査の概要

調査は全国15~69歳の男女を対象にインターネットで実施しました。

予備調査(2万人)として15個の偽情報・誤情報を提示し、「見聞きしたことがある」「見聞きしたことがない」「分からない」「覚えていない」のいずれかを選択してもらい、すべて「分からない」「覚えていない」と回答した人を除外。「見聞きしたことがある」と回答した人を優先して本調査(5000人)を実施しました。

対象者は性・年代別に人口構成比に基づいて割り当てをしています。

トピックごとにわけた15の偽・誤情報

調査で提示した15の偽・誤情報は、日本で実際に拡散しJFCが検証済のもののうち、「医療・健康」「経済」「災害」「政治」「生活」の各分野から選んだものです(回答者には、調査内で、すべて偽・誤情報であることを伝えました)。

【医療・健康】
1.自閉症の発症と麻疹のワクチン接種には関連がある
2.世界保健機関(WHO)でパンデミック条約が採択されると、ワクチンを強制接種させられるようになる
3.世界保健機関(WHO)事務局長が、2024年になって「新型コロナに効くワクチンはない」と言った
【経 済】
4.ヨーロッパの平均時給は日本円に換算して、ノルウェー 8,472円、フランス 6,889円、ドイツ 6,744円である
5.財務大臣が「円安の元凶と見てる」と発言し、新NISA(少額投資非課税制度)が規制された
6.偽造マイナンバーカードによる事件件数は2,508件、被害額は334億円である
【災 害】
7.東京・神奈川で発生した震度4の地震前に不自然な雲が多く発生していた
8.イワシやクジラの海岸への大量漂着は、地震の前兆または影響である
9.能登半島地震後、地盤隆起の影響で消波ブロックが波打ち際で船の障害物となった
【政 治】
10.兵庫県斎藤知事の公約実現率は98.8%である
11.難民申請中は強制送還できないよう入管法を改正したのは民主党政権である
12.前首相が「日本人は10%で残りの90%は移民や不法難民で構わない」と発言した
【生 活】
13.新小学一年生のなりたい職業1位は男子「殺し屋」、女子「ホロライブ」である
14.小中高生の自殺者数が初めて500人を超え、原因1位は「親の貧困による生活苦」である
15.2025年1月から、軽自動車の自賠責保険、修理費用が170%値上げする

誤情報の影響「ストレスや不安」「ニュースへの関心低下」

調査結果について、ここではその一部を紹介します。詳細版については現在、データ分析を続けており、5月に発表する予定です。

この概要版では、偽・誤情報が人々に与える影響から紹介します。

「誤った情報やニュースの影響でストレスや不安を感じるようになった」という質問に対して、「非常に当てはまる」「当てはまる」「やや当てはまる」と回答した人の合計は48.3%。また、「ニュースに対する関心が低下した」が44.4%、「話題を避けるようになった」が36.8%、「ニュースを読む頻度が減少した」が36.3%ありました。

合原氏は「誤情報は心理的なストレスを引き起こすだけではなく、情報摂取の行動へも影響することが明らかになりました」と説明しました。

これは世界的に注目される「ニュース忌避」の傾向と一致します。ロイタージャーナリズム研究所が毎年発表しているデジタルニュースリポート2024年版によると、意識的にニュースを避ける人の割合は世界で39%に上っており、前年から3ポイント増加していました。

誤情報との接触頻度は

メディアごと、また、家族・友人・知人との会話の中で誤情報との接触頻度を聞いた設問に対しては、以下のような結果でした。

「毎日」接していると感じている人はSNS31.8%、ネットニュース(コメント欄含む)25.9%、動画共有サービス(コメント欄含む)24.1%がトップ3に。

合原氏は「あくまで回答者の感覚であり、必ずしも事実を示すものではありませんが、一定の人が日々誤情報に接していると感じている現状が明らかになりました」と述べました。

ファクトチェックの現状

偽・誤情報に対して人々はどれだけ確かめる行動をしているか。

「ファクトチェックをおこなったことはない」と回答した人は47%。約半数が偽・誤情報を見ても真偽を確認する行動に至っていません。

また、ニュースの正確性の検証方法について「講座や動画などのコンテンツで学んだことがありますか?」という質問に対して「学んだことはない」と回答した人は67.3%に達しました。

情報インテグリティ関連用語の認知

情報インテグリティに関する用語の認知度(「人に説明できる程度に詳しく知っている」と「人には説明できないが概念を理解している」の合計)についても調査しました。

「フェイクニュース」は69.8%と高い一方で「エコーチェンバー」は10.0%、「フィルターバブル」は8.3%にとどまりました。

合原氏は「ニュースや報道でも使用される用語ではあるものの、一般的な認知はまだまだ十分ではないということが分かりました」と述べました。

情報の信頼性を担保するしくみへの期待

このような情報環境に対して、ファクトチェックやメディアリテラシー以外の対策についても聞きました。

ネット上の情報の信頼性を確認できる認証などの仕組みがあると良いかを聞いたところ、「そう思う」「ややそう思う」の合計は65.1%に上りました。

差別表現や誹謗中傷に関しては

多くの人が差別や誹謗中傷を目にしている

情報インテグリティを毀損する要因には、偽・誤情報だけではなく差別表現や誹謗中傷も含まれます。

「オンライン上で差別表現や誹謗中傷を見かけたことがあるか」と聞いたところ、73.2%が「見かける」と回答。多くの人が日常的に差別表現や誹謗中傷を目にしている現状が明らかになりました。

差別表現や誹謗中傷への対策は

そうした現状を踏まえ、法規制や対応強化の必要性についても尋ねました。

「とてもそう思う」「そう思う」と回答した人の合計は73.1%。「差別表現や誹謗中傷を見かけたことがある」という回答と同程度の数字となりました。

誰が対応すべきか

差別表現や誹謗中傷を規制する場合、どのような方策が望ましいかも尋ねました。

「国による法的規制」が最多で52.3%。「利用者のマナー意識向上や教育などの啓発活動」は46%、「デジタルプラットフォーマーによる監視と対応」は45.2%と、利用者側やプラットフォーマー側の取り組みも求められていることが分かりました。

情報インテグリティ向上に向けて

情報インテグリティの実現に向けて、国連はテック企業やAI開発者や市民社会や報道機関や政府や国連などマルチステークホルダーが総合的に取り組むことを提言しています。合原氏は調査の概要調査のまとめとして、以下のように述べました。

「今回の調査を通じ、偽・誤情報が人々の生活や心理・行動に大きな影響を与えることが明らかになりました。半数の人が、情報の信頼性を確認できる仕組みを期待しており、信頼できる情報に基づき人々が適切に判断できる環境を整えることが必要だと感じました」

「また、偽・誤情報だけでなく、差別表現や誹謗中傷も情報インテグリティを阻害する要因です。法的規制や情報リテラシー教育の普及などが期待される一方で、情報を発信し受け取る私たち一人一人も、情報インテグリティを意識し、健全な情報環境を醸成するための努力が求められるのではないでしょうか」

山口氏のコメント(一部抜粋)

まず注目すべきは、偽・誤情報の存在が、私たちのニュースへの態度にどう変化を与えているかという点です。多くの人が、偽・誤情報によってニュースに対する忌避感が生まれてしまっていることが分かりました。これは大きな社会的コストであると言えるでしょう。

また、啓発活動についても触れたいと思います。私自身も、総務省やGoogle、そして今日ご参加いただいているTikTokの方とも連携しながら、さまざまな啓発をしておりますが「学んだことがない」が60%以上ということで、啓発活動には依然として課題があると感じました。

また、「信頼性を確認できる認証などの仕組み」の必要性についても人々のニーズが非常に高いことが改めて明らかになりました。

最後に、誹謗中傷に関して「法規制が必要である」という意見が大半いらっしゃったことにも触れておきたいと思います。これは非常にタイムリーな話題であり、2025年4月から施行された「情報流通プラットフォーム対処法」も関係しています。

私も総務省のデジタル空間に関する検討会のメンバーとして、この法律に関する議論に参加してまいりました。この法律では、プラットフォーム事業者に、通報があった際の迅速な対応や、透明性を持った対応を求めています。

さらに、2022年には「侮辱罪の厳罰化」も行われました。このように法的枠組みが徐々に整備されている一方で、規制が過剰になると表現の萎縮につながるという問題もあります。

偽情報や誹謗中傷というのは定義が曖昧です。「誰が言うか」によって何がフェイクかが変わってしまいます。誹謗中傷と批判の区別がついていない人も多いのが現状です。

こういった中で、強い法規制をかけすぎると、たとえば政府に対する正当な批判までもが「誹謗中傷」「フェイク」とされ、抑制される恐れがあります。実際、海外に目を向けると「フェイクニュース規制法」によって、批判的なジャーナリストや野党議員が逮捕されるようなケースも存在します。

こうしたリスクを念頭に置きながら、表現の自由と安全な空間のバランスを見極め、法整備を進める必要があると考えています。

※意味が変わらない範囲で読みやすさのための修正を入れています。

アーカイブ動画とシンポジウム記事

情報インテグリティシンポ2025 基調講演1

情報インテグリティシンポ2025記事

基調講演やパネル討論の記事を順次公開します。

基調講演2: ファクトチェックとメディアリテラシーの現状と展望
発表:古田大輔(日本ファクトチェックセンター 編集長)

「情報の空白」を検証記事で埋める 偽・誤情報対策のハブになる日本ファクトチェックセンターの戦略【情報インテグリティ】
4月2日の国際ファクトチェックデーに合わせ、日本ファクトチェックセンター(JFC)が開催した情報インテグリティシンポジウム。この記事では基調講演2の内容を文字起こしでお届けします(※読みやすさのために意味合いを変えない範囲で一部修正しています)。 基調講演2ではJFC編集長の古田大輔がJFCの活動の紹介をしつつ、ファクトチェックがもつ根本的な課題と強み、実践的なメディア情報リテラシー教育やツール開発への展開などを解説しました。偽・誤情報が拡散する原因である「情報の空白」をどのように克服するかにも言及しています。 発表:古田大輔 JFC編集長 これまでの経歴 私(古田)からは、日本ファクトチェックセンターの活動を通じて見えてきた「ファクトチェックとメディアリテラシーの現状と展望」について、電通総研との「情報インテグリティ調査」の結果も絡めながらお話しします。 まず、自己紹介です。私はもともと新聞記者をしており、その後、アメリカのメディアBuzzFeed日本版で創刊編集長を務めました。その後独立し、2年間Googleでも働きました。そして、2022年9月から

パネル討論1: 選挙とファクトチェック
モデレーター:古田大輔(日本ファクトチェックセンター 編集長)
パネリスト:
 澁谷遊野 氏(東京大学大学院情報学環・学際情報学府准教授)
 永田憲亮 氏(神戸新聞社編集局報道部次長)
 西村 健吾氏(TikTok Japan 公共政策本部 公共政策部長)

兵庫県知事選から考える選挙とファクトチェック 「情報の空白」をいかに埋めるか【情報インテグリティ】
4月2日の国際ファクトチェックデーに合わせ、一般社団法人セーファーインターネット協会(SIA)/日本ファクトチェックセンター(JFC)が開催した情報インテグリティシンポジウム。この記事ではパネル討論1「選挙と情報インテグリティ」の内容をお届けします。 モデレーター:古田大輔(日本ファクトチェックセンター 編集長) パネリスト: ・澁谷遊野 氏(東京大学大学院情報学環・学際情報学府准教授) ・永田憲亮 氏(神戸新聞社編集局報道部次長) ・西村 健吾氏(TikTok Japan 公共政策本部 公共政策部長) 選挙と情報インテグリティ【パネル討論1】 登壇者の自己紹介 古田:モデレーターを務めます古田です。よろしくお願いいたします。まず最初に、登壇者の皆さまにご自身がどのように情報インテグリティの分野に関わっているか、自己紹介をお願いしたいと思います。 澁谷:澁谷と申します。東京大学大学院情報学環で准教授をしております。私は偽情報やデジタル空間の情報データに関しまして、主にデータ解析の観点から研究に取り組んでおります。 2つの観点から取り組んでおりまして

パネル討論2: 調和のある情報空間を目指す総合的な対策
モデレーター:古田大輔(日本ファクトチェックセンター編集長)
パネリスト
 山本龍彦氏(慶應義塾大学大学院法務研究科教授)
 桒原響子氏(公益財団法人日本国際問題研究所研究員)
 吉田弘毅氏(総務省情報流通振興課企画官)

偽・誤情報対策に不可欠な「社会全体での取り組み」と「情報的健康」【情報インテグリティ】
4月2日の国際ファクトチェックデーに合わせ、一般社団法人セーファーインターネット協会(SIA)/日本ファクトチェックセンター(JFC)が開催した情報インテグリティシンポジウム。この記事ではパネル討論2「調和のある情報空間を目指す総合的な対策」の内容をお届けします。 モデレーター:古田大輔(日本ファクトチェックセンター 編集長) パネリスト: ・山本龍彦氏(慶應義塾大学大学院法務研究科教授) ・桒原響子氏(公益財団法人日本国際問題研究所研究員) ・吉田弘毅氏(総務省情報流通振興課企画官) 調和のある情報空間を目指す総合的な対策【パネル討論2】 登壇者の自己紹介 古田:山本さんから一言ずつ自己紹介をよろしくお願いします。 山本:皆さんこんにちは。慶應義塾大学のロースクールで憲法学を教えております山本と申します。今お話にあったように憲法学が専門なんですけれども、主にテクノロジーと人権、テクノロジーと民主主義の関係について考えてまいりました。 その関係で総務省さんのデジタル関連の検討会などにも巻き込まれている状況です。あとで吉田さんからもご紹介がありますが

資料

プレスリリース

日本ファクトチェックセンター/セーファーインターネット協会と電通総研の調査に関するプレスリリースはこちら

簡易レポート

情報インテグリティ調査の簡易レポートはこちら。詳細版は5月に公開予定です。

情報インテグリティシンポジウム2025

情報インテグリティシンポジウムを4月2日開催 お申し込みはこちら
毎年4月2日の国際ファクトチェックデーに合わせ、一般社団法人セーファーインターネット協会(SIA)/日本ファクトチェックセンター(JFC)は、情報インテグリティシンポジウム「ファクトチェックとメディアリテラシー -調和のある情報空間を目指して-」を開催します。 会場となる慶応大学グローバルリサーチインスティテュートとの共催で、ライブストリーミングありのハイブリッド形式。多様な登壇者による議論で、ファクトチェックとメディアリテラシーの普及、偽情報対策の促進を目指します。 また、電通総研と共同実施した情報インテグリティ調査の概要やファクトチェックやメディアリテラシー教育の普及の現状なども発表します。 シンポジウム概要 日時:2025年4月2日(水) 14時00分~16時30分 場所:慶応大学 ※JFCのYouTubeアカウントでライブ配信 プログラム 開会あいさつ(14:00-14:05) 中妻照雄 氏(慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート 所長 慶應義塾大学経済学部 教授) 基調講演1: 情報インテグリティ調

判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

地震のたびに拡散する「人工地震説」や「地震予知」は何が間違っているのか 専門家が解説

地震のたびに拡散する「人工地震説」や「地震予知」は何が間違っているのか 専門家が解説

大きな地震が起きるたびにインターネット上では「人工地震だ」とか「予知されていた」「次の地震は〇月〇日」などの情報が拡散します。科学的な根拠はなく、これまでに日本ファクトチェックセンター(JFC)は何度も「誤り」と検証してきました。次の拡散を防ぐために、JFCは東京大学地震研究所/情報学環・学際情報学府の酒井慎一教授に改めて解説してもらいました。 地震予知は可能? Q「30年以内に地震が発生する確率は何十%」といった長期的な予測は政府も公表します。一方で、大きな地震が起きると「巨大地震は予知されていた」とか「次の地震は〇月〇日」など、日付や場所を特定した「予言」が拡散します。このようなピンポイントの地震予知は現代の科学で可能なのでしょうか。 できません。地震のメカニズムは、今でも多くのことが分かっていません。多くの人はプレート(岩盤)同士が押し合い、跳ね返ったり壊れたりして地震が起こると考えていますが、実際はもっと複雑です。地震は地下にある断層面にそって、岩盤同士が急激にズレることで起こります。断層面はでこぼこしており、触れ合っている岩盤と岩盤が摩擦力で固着し

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
伊東市長選挙は不正選挙だった? 画像は市議選、選挙不正の根拠なし【ファクトチェック】

伊東市長選挙は不正選挙だった? 画像は市議選、選挙不正の根拠なし【ファクトチェック】

2025年12月14日投開票の伊東市長選挙をめぐり、開票作業で不正があったと示唆する画像付きの投稿が拡散していますが、誤りです。根拠とされた画像はそもそも市長選ではなく市議選のもの。伊東市選挙委員会は開票作業について「不正はなかったと認識している」と話しています。 検証対象 検証する投稿 12月15日、「伊東市長選挙は不正選挙が行われていた?」という画像付き投稿が拡散した。画像には、票が積み上げられた画像と共に「TVで放送された卓上に積み上がっている票束の高さと選挙管理委員会から発表の票数差に不安を抱きました」と書かれている。 検証する理由 この投稿は戸田市議会議員の河合ゆうすけ氏によるもので、12月18日現在、290件以上リポストされ、表示回数は23万回を超える。 「あると思います」「不正しちゃってるね…」と同調するコメントがつく一方で「意に沿わない結果は何でも不正なのか」という指摘もある。 検証過程 伊東市長選と拡散した画像 伊東市長選挙は、学歴詐称疑惑で2度の不信任決議を受けた田久保真紀前市長の失職に伴い14日に投開票され、田久保氏

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)
ユースファクトチェック選手権優勝の大学生チームが語る検証能力を鍛える鍵 「普段の生活でも使える能力ばかり」

ユースファクトチェック選手権優勝の大学生チームが語る検証能力を鍛える鍵 「普段の生活でも使える能力ばかり」

高校生や大学生ら若者世代を対象に情報検証スキルを競う「ユースファクトチェック選手権」。日本、台湾、タイ、インド、モンゴルの各国内大会を勝ち上がった計25チームによる世界大会が12月13日に開かれ、日本から参加したチームが優勝しました。 選手権はGoogleが運営していた前身の大会を引き継ぐ形で、アジアのファクトチェック団体が協力して昨年から開催。日本では日本ファクトチェックセンター(JFC)とメディア情報リテラシー教育に取り組む学生スタートアップ「Classroom Adventure」が共催しています。 75チーム194人が参加した国内大会を首位で勝ち抜き、世界大会では昨年上位を独占した台湾のチームを抑えて優勝したチーム「YAYO-SAN」の2人、札幌大谷大1年の渡辺魁哩さん(20)と北海道大2年の千葉蛍太さん(20)に検証スキルを鍛える秘訣と大会の感想を聞きました。 昨年大会の経験活かし、生成AIで「自主練」 昨年の大会に「軽いノリで参加した」という渡辺さんが、今度は本気でやってみようと誘ったのが、高校の同級生の千葉さんでした。 教育学を専攻する千葉

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
御堂筋線の看板から韓国語と中国語がなくなった? 繰り返し拡散する誤情報【ファクトチェック】

御堂筋線の看板から韓国語と中国語がなくなった? 繰り返し拡散する誤情報【ファクトチェック】

大阪の地下鉄御堂筋線の看板から韓国語と中国語がなくなったという情報が拡散しましたが誤りです。画像は梅田駅の看板ですが、もともと日本語と英語表記のみでした。繰り返し拡散する誤った情報です。 検証対象 拡散した投稿 2025年12月10日、「大阪梅田の御堂筋線 韓国語と簡体語(中国語)が無くなりスッキリ見やすくなりましたか?」という画像付き投稿が拡散した。 画像には「梅田・新大阪・江坂・箕面萱野方面」と日本語と英語で書かれた看板が写っている。 検証する理由 12月15日現在、この投稿は2400件以上リポストされ、表示回数は51万回を超える。投稿について「やったね大阪メトロ」「公明党の国交大臣いなくなったため」というコメントの一方で「これまでも2か国語表記だったことに注意が必要です」というコミュニティノートがついている。 検証過程 画像は御堂筋線のなんば駅上りホーム 拡散した投稿には「大阪うめだの御堂筋線」と書かれているが、画像は御堂筋線のなんば駅だ。看板の後ろにローソンと電車が写っており、御堂筋線のローソンを検索すると、大阪メトロ内のローソン

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は1月24日(土)午後2時~3時30分で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei0124.peatix.com 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にどのような知識

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験

JFCファクトチェッカー認定試験

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)