日本ファクトチェックセンター (JFC)

 

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日本は世界一の重税国? 繰り返し拡散する誤情報【ファクトチェック】

日本は世界一の重税国? 繰り返し拡散する誤情報【ファクトチェック】

日本は世界一の重税国だという投稿が拡散しましたが、誤りです。国民所得で割った租税負担率や社会保障も加えた国民負担率は、OECD加盟国の中でも比較的低い水準にとどまります。同様の誤った言説は、過去に何度も拡散しています。 検証対象  検証する投稿 2025年11月27日、「日本は世界一の重税国です。皆さん知ってますか?日本は世界一の重税国です。その税金は正しく使われてません。」という投稿が拡散した。 検証する理由 12月1日現在、この投稿は5500件以上リポストされ、表示回数は27万回を超える。投稿について「使い方の説明と改善をしてほしい」「その通りです」というコメントの一方で「OECD平均以下の負担率で助かる」という指摘もある。 検証過程 日本の税負担は諸外国と比べて重いのか。国税や地方税を合計した租税収入金額を国民所得で割った「租税負担率」だけでなく、租税負担に年金や国民健康保険などの社会保障負担を加えた「国民負担率」の両方を比べた。 経済発展や途上国援助などを目的とした国際機関「経済協力開発機構(OECD)」などのデータをもとに、財務省は

By 木山竣策
日本ファクトチェックセンター エディター募集【JFC採用】

日本ファクトチェックセンター エディター募集【JFC採用】

日本ファクトチェックセンター(JFC)では、ファクトチェックやメディアリテラシー教育などの活動を強化するため、エディターを募集しています! インターネットやソーシャルメディアは、私たちの世界を大きく広げてくれました。一方で、拡散する不確かな情報や、悪意ある偽・誤情報によって、社会の分断や混乱が生まれているのも事実です。 「インターネット上の情報を、誰もが安心して活用できる社会にしたい」 そんな思いを共有し、日本ファクトチェックセンター(JFC)の活動をさらに加速させてくれる新しい仲間(エディター)を募集します! 明るく、前向きに、デジタル空間の健全化に取り組んでくれる方を待っています。 検証とリテラシー教育の「両輪」を強化する 総務省の情報通信白書などのデータを見るまでもなく、私たちが日々接する情報量は爆発的に増え続けています。 JFCは、日々拡散する疑わしい言説を検証する「ファクトチェック」とともに、情報の受け手が自分自身で情報の真偽を見極める力を養う「メディアリテラシー教育」の強化にも務めています。 検証と教育。この「両輪」を回すことで、情報の

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
ロシアではイスラム教は禁止? 法律で伝統的な宗教の一つと認定【ファクトチェック】

ロシアではイスラム教は禁止? 法律で伝統的な宗教の一つと認定【ファクトチェック】

ロシアでイスラム教が禁止されているという投稿が拡散しましたが、誤りです。ロシアは憲法で宗教の自由を認めています。連邦法でもイスラム教がキリスト教などと並ぶ4つの伝統的な宗教の一つだとしており、イスラム教徒が多数暮らしています。 検証対象 拡散した言説 2025年11月21日、「ロシアではイスラム教が禁止されている」という投稿がXで拡散した。 検証する理由 12月2日現在、投稿は1900回以上リポストされ、表示は20万件を超える。投稿には「ロシアで禁止されているのは,イスラム原理主義。イスラム教自体は禁止されていない」「デマ流すなよ。ロシア国民の15~20%はイスラム教徒だよ」などの指摘もあるが、「正しい対応。イスラム教は普通の宗教とは違う」「プーチンさんさすが👍それに比べて日本人は?」など同調するコメントも多い。 検証過程 ロシアは法律で宗教の自由とイスラム教を尊重 ロシア憲法は、ロシア語、英語、フランス語、ドイツ語で公開されている。第28条に以下のような条文がある。 「すべての人は、良心の自由および宗教の自由を保障される。これには、個

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
北九州市が50万人のインド人を受け入れ? 全国規模の双方向交流【ファクトチェック】

北九州市が50万人のインド人を受け入れ? 全国規模の双方向交流【ファクトチェック】

「北九州市で 50万人のインド人受け入れが進められてる」という言説が拡散しましたが、誤りです。5年間かけて日本とインドが進める全国規模の双方向交流と混同したものです。北九州市にも交流プログラムはありますが「具体的に何人という話ではない」と説明しています。 検証対象 拡散した言説 「北九州市がインド人50万人を受け入れる」という情報は、遅くとも2025年9月ごろから何度も拡散している(例1、例2、例3)。 2025年11月29日の動画付き投稿では「北九州市で50万人のインド人受け入れが進められている」「インド政府と懇談して交流促進を確認した」「10兆円投資する」などと語られている。 検証する理由 2025年12月1日現在、この投稿だけでも3800件以上リポストされ、表示回数は25万回を超える。同様の投稿は遅くとも9月頃から複数のプラットフォームで何度も拡散している。 投稿について「マズい話が進められてますよ」「インド人が50万人も受け入れたらヤバいことに」というコメントの一方で「国の相互交流として50万人」という指摘もある。 検証過程 イン

By 木山竣策
フィルターバブルとは【JFC用語解説】

フィルターバブルとは【JFC用語解説】

フィルターバブルとは、フィルター(膜)がバブル(泡)のように周りをつつみ、そのフィルターを通ってきたコンテンツ(記事や動画など)ばかりを目にする状態を意味します。 ここでフィルターとなっているのが、YouTubeやXなどインターネットの情報プラットフォームのアルゴリズムです。 例えば、あなたが料理動画、それも日本の食べ歩きが好きで、YouTubeでそういった動画をよく見ているとします。 そうすると、YouTubeのアルゴリズムは、あなたがそういった動画チャンネルを登録し、何度も長い時間見ているデータを分析し、同じような食べ歩き動画をどんどん届けるようになります。結果、あなたはそれ以外の動画を見る時間が減る。これがフィルターバブルです。 アルゴリズムとはコンピューターが効率よく仕事を処理するための手順書のようなもので、別途、「アルゴリズム」の用語解説を御覧ください。

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
情報の検証スキル競う「ユースファクトチェック選手権」に昨年上回る194人参加 5チームが世界大会へ

情報の検証スキル競う「ユースファクトチェック選手権」に昨年上回る194人参加 5チームが世界大会へ

中高生から大学生らを対象に、情報検証スキルを競うオンラインイベント「ユースファクトチェック選手権(英語名:GenAsia Challenge Challenge)2025」の国内大会が11月29日、開催されました。 日本ファクトチェックセンター(JFC)と学生スタートアップClassroom Adventureが共催し、全国から昨年を上回る75チーム194人が参加しました。 情報検証のスキルを実践的に学ぶ国際的イベント 選手権は日本、台湾、タイ、モンゴル、インドのファクトチェック団体が共同で企画した国際的な取り組みで、2024年に続き2回目。参加者はネット上の情報を効率的かつ正確に検証する技術を学び、それを実践する課題に挑戦しました。 日本では、まず11月22日にキックオフイベントとして、Classroom Adventureが提供する謎解きゲーム「レイのブログ」を通じて情報の検証スキルを学習。JFC編集長の古田大輔がファクトチェックにとどまらないクリティカルシンキングの重要性を解説しました。 検索やジオロケーションなど駆使して解答 11月29日に国

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
中国からの食料輸入がなくなったら日本の食卓はイモだらけ? 中国からの輸入は一部【ファクトチェック】

中国からの食料輸入がなくなったら日本の食卓はイモだらけ? 中国からの輸入は一部【ファクトチェック】

中国からの食料輸入が途絶えたら、日本の食卓はイモだらけになると示唆した画像が拡散しましたが、ミスリードで不正確です。拡散した画像は、日本が食料を輸入せずに100%自給した場合の食卓です。中国からの食料輸入が途絶えただけで、拡散した画像のような食卓になるわけではありません。 検証対象 拡散した言説 2025年11月17日、「中国が日本への食料を止めたら、日本の食卓はこうなります。」という文言付きの画像がXで拡散した。 検証する理由 12月1日現在、投稿は3300回以上リポストされ、表示は442万件を超える。 投稿には「根拠を教えて下さい」「これは、農林水産省が示した『もし日本が輸入に一切頼らず国内だけでカロリー計算するとどうなるか』という極端なシミュレーションだ」などの指摘もあるが、「ご飯と梅干しに味噌汁があれば十分」「中国が止めてくれたら、その手間が省けていいわ」など、拡散した情報をうのみにしたコメントも多い。 検証過程 元画像は「食料自給率を100%にした場合の日本の食事」 添付画像をGoogleレンズで検索すると、朝日新聞の2022年

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
京都のホテル代が暴落? 首相の台湾有事発言後も微増【ファクトチェック】

京都のホテル代が暴落? 首相の台湾有事発言後も微増【ファクトチェック】

高市早苗首相の台湾有事発言後、中国からの観光客のキャンセルが相次いでいると話題になる中で、「京都市内のホテル代が暴落している」という投稿が拡散しましたが、ミスリードで不正確です。京都市観光協会のデータによれば、高市首相発言前の7・8月の平均客室単価は前年同月比で約4~6%下回りましたが、9,10月は増加。発言後に中国政府が日本への渡航自粛を呼び掛けた11月14日以後も、京都市内の年内のホテルの予約販売料金は前年同期比でやや高くなっています。観光客の動向は流動的なため、今後、大きく変わった場合は追記します。 検証対象 拡散した言説 2025年11月23日、「京都のホテルの宿泊代、暴落です。」という画像付きの投稿がXで拡散した。 検証する理由 12月1日現在、投稿は3700回以上リポストされ、表示は339万件を超える。 投稿には「どーせ検索条件を1万円以下にしてんだろ」「11月後半からは例年こんなもんですよ」などの指摘もあるが、「京都の有名どころのホテルが軒並み民宿並みの低料金に。貧乏人応援の物凄い経済効果が高市政権で成し遂げられたね」「良かったじゃね

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
築地の飲食店、高市首相の台湾有事発言による観光客減で値下げ? 発言前と同じ内容の画像【ファクトチェック】

築地の飲食店、高市首相の台湾有事発言による観光客減で値下げ? 発言前と同じ内容の画像【ファクトチェック】

高市早苗首相の台湾有事発言後、中国人観光客のキャンセルが相次ぐと報じられる中、東京都中央区築地の飲食店が緊急値下げをしたという画像が拡散しましたが、ミスリードで不正確です。この飲食店は、発言前から値下げをしています。 検証対象 検証する投稿 2025年11月25日、「築地、中国からの観光客がいなくなってしまって、臨時値下げです」という画像付き投稿が拡散した。 画像には「又こい家」と書かれ、海鮮丼の写真や「期間限定値下げ中」という文字が示されている。 検証する理由 11月28日現在、この投稿は1100件以上リポストされ、表示回数は83万回を超える。投稿について「値下げをしてこの価格。一体いくらで売ってたのだろうか?」「ぼったくり価格から通常価格へ」というコメントの一方で「まさか憶測でデマを流してる訳じゃないよな?」という指摘もある。 検証過程 中国外務省が日本への渡航自粛呼びかけ 高市首相は11月7日、国会で「台湾有事」について発言。それをめぐって、中国の外務省は11月14日、日本への渡航自粛を呼びかけた。 これを受けて、中国人旅行客の予

By 木山竣策
AI画像に翻弄される報道機関や自治体/JFC検証など2本【今週のファクトチェック】

AI画像に翻弄される報道機関や自治体/JFC検証など2本【今週のファクトチェック】

共同通信や朝日新聞が掲載した「ウミガメをくわえるタヌキ」の写真がAIで加工されたものだったとして取り消され、宮川県女川町が「町内でクマが目撃された」と公式Xで注意を呼びかけたクマ画像も生成AIによるフェイクでした。 いずれも報道機関や自治体が自分たちで撮影したものではなく、提供写真でした。生成AIの性能の向上で、誰でも簡単に本物と見分けがつかない画像や動画を作ったり、一部を加工したりすることができるようになりました。 生成AIでつくる偽の画像や動画、いわゆる「ディープフェイク」は、それ自体が脅威というだけではありません。「自分たちが見ている画像や動画は偽物かもしれない」という疑念が、あらゆる情報に対する信頼を根本的に揺るがします。 私たちは間違った情報を信じ込まないように、じっくりと吟味する思考(クリティカルシンキング)を必要とします。一方でそれは、何も信じない、何でも批判するという姿勢とも異なります。 無料で視聴可能なJFCのファクトチェック講座では、画像や動画の検証方法だけではなく、クリティカルシンキングの考え方についても解説しています。(古田大輔) 理論から

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
Temuの倉庫が炎上したけど被害額7000円? 何度も拡散するAI画像【ファクトチェック】

Temuの倉庫が炎上したけど被害額7000円? 何度も拡散するAI画像【ファクトチェック】

中国発のECサイト「Temu」の倉庫が炎上したが被害額は7000円という投稿が拡散しましたが、事実ではありません。画像はAIで生成され、低価格をネタにした風刺として拡散しているものです。 検証対象 拡散した言説 2025年11月25日、「Temu倉庫が炎上したけど被害総額7000円らしい」という文言とともに倉庫のような建物が燃えている画像が拡散した。 画像には「TEMU」と書かれた建物が燃える様子が写っている。 検証する理由 11月27日現在、この投稿は4300件以上リポストされ、表示回数は1123万回を超える。投稿について「明らかにAIってわかって、かつgrokのロゴも書いてある」というコメントもある一方で、「倉庫燃えたか」「Is this real?」など、日本だけではなく外国からも注目を集めている。 検証過程 画像の文字は崩壊 画像を確認すると、燃えている建物に描かれている「TEMU」の文字のうち、オレンジ色 の文字が崩れて「TEHU」と読める。また、オレンジと白の四角いロゴのような看板も写っているが、模様が形をなしていない。 画

By 木山竣策
AIを活用し、監視する世界の調査報道/JFC検証など5本【今週のファクトチェック】

AIを活用し、監視する世界の調査報道/JFC検証など5本【今週のファクトチェック】

世界中から調査報道記者が集まるGlobal Investigative Journalist Canferenseがマレーシア・クアラルンプールで開かれています。5日間にわたって、様々な社会問題に関する、多種多様な取材手法や成果などを共有する調査報道の祭典。日本ファクトチェックセンターから筆者(古田)が参加しています。 特に目立つのはAIを活用した報道、逆にAIの問題点を指摘する取材です。AIを活用した調査や分析はすでに報道に欠かせなくなっています。同時に、世界で注目を集める「Empire of AI(AIの帝国)」の著者Karen Haoは、現在のAI開発が社会、経済、環境など地球規模の問題を引き起こしていることを鋭く指摘しました。 ファクトチェックの分野では、個々の偽・誤情報の検証にとどまらず、なぜ、どのように拡散しているのか、いわゆる影響工作に関する調査報道のセッションに大勢の記者が詰めかけました。 GIJC2025の内容については、帰国後に改めて記事を書く予定です。(古田大輔) ✉️日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)