日本ファクトチェックセンター (JFC)

 

最新の記事

イランの攻撃でサウジは原油生産能力の90%超を喪失? 国営通信社の記事を誤訳【ファクトチェック】

イランの攻撃でサウジは原油生産能力の90%超を喪失? 国営通信社の記事を誤訳【ファクトチェック】

イランからの攻撃で「サウジアラビアの原油生産能力の90%以上が失われた」と主張する投稿が拡散しましたが、誤りです。根拠として示されたサウジアラビア国営通信社の英文記事には、同国の生産能力は、合計で1日あたり約「60万バレル減った」と書いてあります。国全体の生産能力が1日当たり「60万バレルに減った」という意味ではなく、90%超が失われたわけではありません。 検証対象 拡散した言説 2026年4月10日、「サウジアラビア当局者によると、イランからの攻撃により、同国の原油生産能力は日量わずか60万バレルにまで激減した。これは、通常の生産能力である日量1,000万〜1,200万バレルから壊滅的な落ち込みだ。90%以上が失われたことになる」という投稿がXで拡散した。 検証する理由 4月13日現在、投稿は698回リポストされ、表示は19.9万件を超える。 投稿には「60万バレル減っただけだよ」「そんなんなってたら、世界市場パニック」などの指摘もあるが、「オールドメディアは報道しませんね」「イスラエルを甘やかした結果、サウジが、悲鳴。。。米ってアホ?」など真に

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
ファクトチェックの限界とAI汚染の加速 「確かめる気はない」が最多の現状での対策は【情報インテグリティ】

ファクトチェックの限界とAI汚染の加速 「確かめる気はない」が最多の現状での対策は【情報インテグリティ】

ファクトチェックの記事数は2025年に激増したが、伸びしろは限定的。一方で情報環境はAIの影響もあり悪化が加速している。4月2日に開かれた情報インテグリティシンポジウムで、日本ファクトチェックセンター(JFC)編集長の古田大輔が報告した日本の偽・誤情報の現状と今後について、文字起こしをしました。 読みやすさのために一部編集しています。動画は最後に埋め込んでいます。 日本ファクトチェックセンターの検証記事は2年で倍増 日本ファクトチェックセンター(JFC)編集長の古田大輔です。今日は「広がり始めたファクトチェックと悪化する情報環境」というテーマでお話しします。 まず、JFCのファクトチェックの数です。2022年の10月にローンチして、2023年から見ていくと、昨年は2倍以上に増えています。1年目が173本、2年目が330本、3年目が365本。これは、偽情報が増えたという意味ではありません。 ファクトチェック記事が増えたのは、我々の能力が増したということです。 ただ、2024年から2025年は10.6%しか伸びていません。我々の組織の規模感で言うと、月に3

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
イラン戦争をめぐってナフサは「確保」できているのか 専門家の「6月に詰む」という言葉の背景【ファクトチェック解説】

イラン戦争をめぐってナフサは「確保」できているのか 専門家の「6月に詰む」という言葉の背景【ファクトチェック解説】

イラン戦争でナフサや関連する石油化学製品が不足するなか、TBS報道特集が専門家の「6月には詰む」という見通しを報じました。これに対し、高市早苗首相はXで「事実誤認」と反論し、中間段階の製品も加えれば「国内需要の4ヶ月分が確保できる」と主張しました。しかし、その後もナフサ不足のニュースは国内外で続いています。問題の経緯をまとめ、専門家に発言の背景を取材しました。 身の回りの様々な製品の元となるナフサ ナフサは石油から精製される液体で、ナフサからエチレンなどの「石油化学基礎製品」が作られます。それがプラスチック、合成繊維、合成ゴム、合成洗剤、塗料などの原料となる「石油化学誘導品」(中間製品)のもととなります。 最終的には、パソコン、携帯電話、テレビ、その他家電製品、自動車のバンパーやシートや内装、ワイシャツやスポーツ用品などの衣料品、塗料、橋脚の補強材など、身の回りの多くの製品で使われています(以上、石油連盟.”ナフサとは”)。 つまり、ナフサ不足は身の回りの多くの製品の不足に繋がります。 ナフサ供給の大半は中東から 2026年2月から続くアメリカとイス

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)
偽・誤情報への危機感は高まっても ファクトチェックの経験は4人に1人、リテラシーの基礎の理解は1割未満【情報インテグリティ】

偽・誤情報への危機感は高まっても ファクトチェックの経験は4人に1人、リテラシーの基礎の理解は1割未満【情報インテグリティ】

日本ファクトチェックセンター(JFC)と電通総研は「情報インテグリティ調査2026」を実施しました。昨年に続いて2回目。日本における偽・誤情報やメディア情報リテラシーの現状を把握し、今後の対策に資するための調査となっています。 4月2日に共催した情報インテグリティシンポジウムの基調講演1では「信頼できるデジタル情報空間の構築に向けて」と題し、株式会社電通総研 Quality of Society センターの鷲見圭祐研究員が調査概要を発表しました。 偽・誤情報への関心が高まり、情報検証の必要性を理解している人は増える一方で、実践する人は4人に1人、「確かめたいと思わない」という人も3割に上ります。現代の情報環境を理解するために必須の知識の普及も1割に届かず、厳しい状況が浮き彫りです。 情報インテグリティとは「正確性・一貫性・信頼性」 ただいまご紹介にあずかりました、電通総研の鷲見と申します。私からは今年の1月から2月にかけて、日本ファクトチェックセンターと電通総研で行った「情報インテグリティ調査2026」について、「信頼できるデジタル情報空間の構築に向けて」

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
アルテミスⅡ乗組員が撮影した月面の裏側? 表側と地球を合成【ファクトチェック】

アルテミスⅡ乗組員が撮影した月面の裏側? 表側と地球を合成【ファクトチェック】

月探査プロジェクト「アルテミス計画」の一環だと主張する、「乗組員が撮影した月の裏側の動画」が拡散しましたが、実際の映像ではありません。米航空宇宙局(NASA)が主導する有人月面探査プロジェクト「アルテミス計画」では、生成AIで作られたディープフェイクや合成画像など、様々な偽画像・動画が拡散しています。 検証対象 拡散した言説 2026年4月8日、「月の裏側、人間の目が最近まで足を踏み入れていなかった場所で、アルテミスIIの乗組員がこの光景を捉えた」という英語の説明付きの動画が拡散した。 検証する理由 4月10日現在、投稿は2300回以上リポストされ、表示は190万件を超える。 この動画は日本語でも拡散。「嘘動画じゃん」「どう見ても、AI」などの指摘が多いが、「本当にきれい」「アニメみたいに見えるのは驚き」など、真に受けた反応もあるため、検証する。 検証過程 拡散した動画は 拡散した動画は20秒。画面奥に地球が大きく全面に映り、画面の手前を右から左に月が横切る。冒頭から2秒ほどの間、左下に小さく赤い円のテロップが表示される。円の内側には黒い

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
偽・誤情報対策としての収益化停止/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

偽・誤情報対策としての収益化停止/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

SNSで拡散する偽情報対策として、選挙中の動画の収益化停止が議論されています(日経新聞"SNS偽情報対策 選挙中の収益停止議論 「表現の自由」衝突懸念")。 収益化停止については、総務省の作業部会が2025年6月にまとめた中間報告でも言及されています(総務省"デジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会中間取りまとめ(案)")。 SNSなどのプラットフォームの多くには、動画などの閲覧数等に応じて、発信者に広告収入を分配する仕組みがあります。このため、選挙の際には政治家を褒めたり貶したりするコンテンツを正確性は二の次で配信する人たちがいます。 これが「アテンション・エコノミー」という注目を集めるほどおカネになる経済設計です。収益化を停止することで、カネ目当ての信頼性の低いコンテンツを作ることを防ごうという試みです。 作業部会ではその効果を認めつつも、以下のような理由から「慎重に検討すべきだ」と指摘しています。 ・表現内容に一定の制約を与える ・経済活動の自由への制約にもなりうる ・事業者による一定の自主的な取組も行われている 収益化停止には、その他に

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
日本が外国人観光客や不法移民を「寿司のように」簀巻きにして強制送還? 国籍を問わず使うシート【ファクトチェック】

日本が外国人観光客や不法移民を「寿司のように」簀巻きにして強制送還? 国籍を問わず使うシート【ファクトチェック】

日本政府が、迷惑行為をした外国人観光客や不法移民を「寿司のように」シートで簀巻きにして国外退去させていると主張する動画が英語やスペイン語で拡散しましたが、不正確です。警察は、動画に映っているシートを国籍を問わずに使用しています。国外退去目的ではありません。 検証対象 拡散した言説 2026年2月9日、「日本は、迷惑な観光客の『寿司化』プロセスを開始しました。もしあなたが問題を起こしているところを見られたら、彼らはあなたを巻いて強制送還のために送り出します。笑」という英語の投稿がXで拡散した。 投稿には動画が添付されている。街中で「警視庁」という文字の入った制服姿の男性数人が、黒人男性を緑色のシートでくるんでパトカーに乗せる様子が映っている。 検証する理由 4月6日現在、投稿は1.5万回以上リポストされ、表示は455.2万件を超える。 投稿には「天才的な判断だ――無礼は一切許さない」や「観光客は、訪れる国の文化を尊重することを学ぶべきだ」など真に受けたコメントも多い。 スペイン語で「高市政権は不法移民たちを寿司のようにくるんで強制送還する」という

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
キアヌ・リーブスが「ハリウッドスターは赤ちゃんの血を飲んでいる」と暴露? 何度も拡散する偽情報【ファクトチェック】

キアヌ・リーブスが「ハリウッドスターは赤ちゃんの血を飲んでいる」と暴露? 何度も拡散する偽情報【ファクトチェック】

俳優のキアヌ・リーブス氏が「ハリウッドスターは赤ちゃんの血を飲んでいる」と暴露したという動画付き投稿が拡散しましたが、誤りです。そのような発言はしていません。2017年ごろから何度も拡散している偽情報です。 検証対象 拡散した投稿 2026年3月30日、「キアヌ・リーブスが内部告発:『ハリウッドスターはハイになるために赤ちゃんの血を飲んでいる』衝撃的な映像が流出した」という投稿が拡散した。 投稿は英語の投稿を引用しており、引用元には15分の動画が添付されている。動画ではニュースキャスター風の人物が、「キアヌの新番組『フーリガンズ』のプロモーション中、彼はファンに対して爆弾発言をしました」などと話しており、キアヌ・リーブス氏がインタビューに答える画像が挿入されている。 検証する理由 4月7日現在、この投稿は4300件以上リポストされ、表示回数は46万回を超える。投稿について「キアヌ・リーブスが嘘つくとは思えないから本当なんだろう」「キアヌ、こんな発言して大丈夫かな」というコメントの一方で「悪質なフェイクニュース」という指摘もある。 検証過程

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)
高市首相が「移民より出産増で人口減対策」と演説? 出生率向上重視しつつ、外国人労働力も否定せず【ファクトチェック】

高市首相が「移民より出産増で人口減対策」と演説? 出生率向上重視しつつ、外国人労働力も否定せず【ファクトチェック】

高市早苗首相が、2025年10月24日の所信表明演説で「移民を増やすのではなく、子供を多く持つことが日本の人口減少を解決する」と述べたと主張する投稿が拡散しましたが、不正確です。高市首相は「子供・子育て政策を含む人口減少対策を検討していく」と述べるとともに、「人手不足の状況において、外国人材を必要とする分野があることは事実です」とも発言しています。 検証対象 拡散した言説 2026年4月1日、「高市首相は移民を増やすのではなく、子供を多く持つことが日本の人口減少を解決すると述べた」と主張する投稿がXで拡散した。 検証する理由 4月6日現在、投稿は1900回以上リポストされ、表示は15.5万件を超える。 投稿には「真っ赤な嘘。高市は、そんな事ひとことも言ってない」や「情報を都合良く解釈して賛美。アホらし」などの指摘もあるが、「自慢の総理が世界でも認められて飛び上がるぐらい嬉しい」や「悪さをするのは男が多い、移民は40歳以下の女性限定にしましょう」など真に受けた反応も多いため、検証する。 検証過程 添付動画は2025年10月の演説 拡散した投

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
在中国のイラン大使館が「亡くなったすべてのイラン人のために日本に報復する」と投稿? そのような文言はない【ファクトチェック】

在中国のイラン大使館が「亡くなったすべてのイラン人のために日本に報復する」と投稿? そのような文言はない【ファクトチェック】

在中国のイラン大使館がSNSに「亡くなったすべてのイラン人のために日本に報復する」と投稿したという主張が拡散しましたが、誤りです。イラン大使館が投稿した文言は「皆の仇を討つために」という内容で「日本に報復する」とは書いていません。 検証対象 拡散した投稿 2026年3月30日、「イラン駐中国大使館の公式微博アカウントが、広島原爆AI動画に対し、『亡くなったすべてのイラン人のために日本に報復する』と投稿しました」という投稿が拡散した。投稿には、中国語で「在中国イラン大使館」と書かれたアカウントの画像が添付され、廃墟にたたずむ少年の姿と「日本 広島」という文字が書かれている。 この少年の画像は広島をイメージしていると思われるが、4月3日時点で、元動画からカットされている。 検証する理由 3月31日現在、この投稿は1000件以上リポストされ、表示回数は99万回を超える。投稿について「イラン大使館が公式に日本に報復すると書いたのですか?」「日本は関係ないだろ」というコメントの一方で「デマやめてくれよ」という指摘もある。 検証過程 日本に報復の文言な

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)
多言語で広がる日本に関する偽・誤情報/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

多言語で広がる日本に関する偽・誤情報/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

日本ファクトチェックセンター(JFC)は電通総研との共催で「情報インテグリティシンポジウム」を開きました。AIによるディープフェイクの氾濫、選挙とファクトチェック、メディアリテラシーの普及など、各分野の専門家で議論しました。 状況は非常に厳しいと言わざるを得ません。発表やパネル討論の内容は今後、記事にしていきますのでしばらくお待ちください。 情報環境の悪化は「今週のファクトチェック」の内容を見ても明らかです。日本に関する誤った情報が多言語で拡散し、逆に英語から日本語へと浸透していく現象も加速しています。 例えば、「高市早苗首相が訪米時に長崎に原爆を落としたパイロットの墓に献花した」という情報はロシアやイランのメディアが報じ、英語でも拡散しました。「バイデン元大統領が死去」という情報は、エイプリルフールの英語でのネタ投稿がXの自動翻訳機能で日本語になっていました。 JFCでは、日本に関する偽・誤情報が海外でも拡散している場合には、英語でも発信するようにしています。ソーシャルメディアで国境を超えて正確な情報を広げるためだけではありません。生成AIが誤った情報を学習するの

By 古田大輔(Daisuke Furuta)