ファクトチェックセンターが新サイト 解説や研究、講座など多彩に

ファクトチェックセンターが新サイト 解説や研究、講座など多彩に

日本ファクトチェックセンター(JFC)はこのたび、サイトをリニューアルしました。ファクトチェックだけでなく、解説や調査研究、ユーザーが自ら学べる講座などを充実させます。

誤/偽情報対策に幅広く取り組むために

福島第一原発からの処理水放出や能登半島地震にも見られるように、「フェイクニュース=誤/偽情報」の拡散は広がっています。生成AIの普及などにより、状況はさらに悪化することが見込まれます。一つ一つをファクトチェックしていくだけでは、対策として不十分です。

JFCは新サイトで新たに複数のコーナーを設けました。偽情報や情報操作の現状を深く掘り下げ、専門家インタビューなどを掲載する「解説」、大学や調査機関などと連携した「調査研究」、それらのエビデンスに基づいたファクトチェックやメディアリテラシー教育の「講座」を充実させます。

もちろんファクトチェックも強化

ファクトチェック」のコーナーでは、誤解されることも多い「ファクトチェックとは何か」について基礎から解説。日々の検証の基本方針を定めた独自の「JFCファクトチェック指針」も公開しています。

ファクトチェックのやり方 定義・ルール・手法を解説
ファクトチェックとは「事実の検証」を意味します。不確かな情報、根拠のないデマ、陰謀論などが広がる中で、客観的・科学的な根拠に基づいて事実を確認し、拡散している言説が正確かどうかを判定します。 「意見は人それぞれ」「何が事実かを誰かが決めて良いのか」などの批判もあります。ここではファクトチェックとは何かについて、国際ファクトチェックネットワーク( International Fact-checking Network, IFCN)などの規定も参考にしつつ解説します。 ファクトチェックの国際的なルール ファクトチェックは世界中で実施されており、国際的に認められた一定のルールが存在します。 世界のファクトチェックをリードするIFCN IFCNは世界最大のファクトチェック団体の連合組織で、米ジャーナリズム研究機関ポインター研究所に本拠を置いています。2024年1月27日現在、IFCNの認証を得ているファクトチェック団体やメディアは世界に172存在します(61団体は認証リニューアル中)。日本ファクトチェックセンター(JFC)もその一つです。 IFCNはファクト

ファクトチェック記事一覧」では、JFCが2022年10月の発足から配信したファクトチェック記事の全てが見られます(2024年1月31日現在220本)。各記事の左上にある「医療・健康」「災害」「政治」などのタグをクリックすると、それぞれの分野の記事一覧を読むことができます。

無料の会員登録でニュースレターを配信

PC版で見たサイト右上や下部(スマホ版は右上の「≡」や下部)から無料の会員登録をすると、週1回のニュースレターが届きます。その週のファクトチェックまとめや偽情報対策に関する記事や資料、イベント案内などを幅広く紹介します。

能登半島地震のような大きな災害や事故などが発生した場合は、臨時のニュースレター(例:能登半島地震ファクトチェックまとめ)も発行します。

数年前まではニュースを届ける有力なプラットフォームだったX(旧Twitter)やFacebookなどのSNSは、アルゴリズムの変更で記事が届きにくくなりました。その週に拡散した偽情報とその検証を見逃さないために、ぜひご登録ください。

JFCニュースレター
日本ファクトチェックセンター(JFC)は毎週日曜日にその週のファクトチェック情報をまとめたニュースレターを発行します。下記のボタンからご登録ください。無料です。 ニュースレターでは、JFCのファクトチェック記事だけではなく、広く誤/偽情報の関連情報や、他メディアのファクトチェック関連記事なども紹介します。JFCが開催するイベントや講座の案内もお届けします。 ニュースレター登録(無料)はこちら

透明性を高めるための組織や会計の情報公開

JFCが認証を得ている国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)は、認証団体が守るべき原則として「資金源と組織の透明性」を掲げています。

JFCも、公正さを保ち、かつ、公正であると広く信頼してもらうためには組織の透明性は非常に重要だと考えています。

新サイトでは「JFCとは」のコーナーを設け、その中で「JFCの体制」でJFCの設立経緯や体制、ファクトチェック組織としての独立性を保つための取り組みを解説。「JFCへの支援と会計」では、無償でファクトチェック記事を公開しているJFCがどのように運営資金を獲得しているか、支援提供団体の一覧や会計などを公開しています。

JFCの体制
日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェック(事実の検証)を専門とする非営利組織です。 インターネット上の不確かな情報を中心に、証拠に基づいて真偽を確かめるとともに、デジタル時代のメディア・リテラシーについて発信・普及活動に取り組むなど、民主主義の基盤となるインターネット上の言論空間の健全性を維持、向上させることを目的として活動します。 この記事では、JFCの体制や規約を紹介します。 JFCの体制 JFCは2022年10月、一般社団法人セーファーインターネット協会(SIA)のもとで設立されました。これは誤/偽情報対策を民間でどう実施するかの議論がSIA中心に進められてきたという背景があります。 SIAはネット上の違法・有害情報対策に取り組むために国内のネット企業を中心に設立された一般社団法人で、多くのネット企業が会員となっています。JFCはSIA会員企業からの独立性を保ってファクトチェックに取り組むため、運営はSIAの活動からは切り離されています。 日々のファクトチェックの対象の選定や検証の実務、記事の公開などはJFC編集部に一任されています。JFC
JFCへの支援と会計
日本ファクトチェックセンター(JFC)はファクトチェックを無料で提供しています。誤情報や偽情報が無料で拡散しているのに、その誤りを指摘する検証記事が有料では、対抗することができないからです。 そのため、JFCでは活動資金を主に寄付や助成金などに頼っています。組織の透明性を保つため、定期的に予算や新たな資金援助などの情報をこちらで開示していきます。 JFCへの支援 JFCは2022年10月の設立に際し、Google.orgから2年間で最大150万ドル、Yahoo!JAPANから1年で2000万円の資金援助をいただきました。 さらに2年目となる2023年10月にLINEヤフーから500万円、同12月にMetaからは400万円の資金援助をいただいています。 JFCは情報環境をより良くし、健全な民主主義社会を守るためにファクトチェックとメディアリテラシーの普及に取り組んでいます。活動を維持・強化していくために、賛同していただける様々な企業や団体、個人の方々からの幅広い支援をお願いしていきたいと考えています。 JFCの会計 外部からの独立だけでなく、親団体であるSIAか

記事データを分析し、より良い検証に活かす

今回の新サイト制作は、Webサービスのデータ分析やグロースに強い株式会社JADEにお願いしました。ユーザーがどのように記事を読んでいるかの分析に力を入れたかったからです。

ユーザーはどのようなキーワードでファクトチェック記事に辿り着くのか、どの記事をどれだけ深く・長く読んでくれるのか、能登半島地震の記事は被災地である石川県の方々に届いているのか。

これらの分析をもとに、より読みやすく、届きやすいファクトチェック記事の作成に活かしていく計画です。

英語での発信も開始

英語での発信も始めます。誤/偽情報は国境を超えます。英語や中国語で拡散した情報が日本語に翻訳されて広がることは日常茶飯事です。

ファクトチェックは欧米が先行しましたが、アジアからも優れた実践例が次々と出てきています。例えば、2024年1月の総統選が世界的に注目を集めた台湾の台湾ファクトチェックセンターは検証だけでなく、メディアリテラシー普及の取り組みなどを英語で発信しています。

JFCではこれまでにも海外のファクトチェック団体と協力して様々な情報の検証に取り組んできました。今後、日本での検証事例だけでなく、研究や教育講座、テクノロジー開発などについて、世界への発信を強め、国際的な連携をさらに強化していきます。

Japan Fact-check Center
Japan Fact-check Center (JFC) is a non-profit organization dedicated to fact-checking and promoting media information literacy. Our mission is to maintain and improve the health of the digital public space, which is fundamental to democracy. Fact-check in English 【Coming soon】This is a list of articles translated into English from

判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

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フランス入国の優先レーンから日本が外された? 大使館が否定【ファクトチェック】

フランス入国の優先レーンから日本が外された? 大使館が否定【ファクトチェック】

「フランス入国の際の優先レーンから日本が外されたようだ」という情報が拡散しましたが、誤りです。2025年4月30日現在、日本は優先レーンの対象国です。 検証対象 2025年4月19日、埼玉県戸田市議・河合ゆうすけ氏が「フランスに入国する際、イミグレーションの優先レーンから日本が外されたようだ。日本のパスポートを持った中国人(帰化した人)が増えたからではないかと言われている」などと主張する投稿がXで拡散した。投稿には、フランス・パリの空港と思われる画像が添付されている。 投稿は4月30日現在、3700回以上リポストされ、表示回数は112万を超える。投稿には「治安だけは良かったのにその治安もパァ」「自公政権のお陰ですね」などのコメントのほか、「根拠がない」というコミュニティーノートの指摘もある。 検証対象の投稿が拡散するひと月ほど前にも、同様の投稿があった(2025年3月19日)。「フランスに入国しようとしたら優先自動ゲートが開かず、担当者に文句を言ったら『日本だけ撤廃した。向こうの中国人の列に並んで』と言われた」などという内容で「虚偽のポストの疑い」というコ

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
超高齢者の社会保障不正、戸籍制度がある日本ではあり得ない? 問題は日本でも【ファクトチェック】

超高齢者の社会保障不正、戸籍制度がある日本ではあり得ない? 問題は日本でも【ファクトチェック】

「トランプ政権が社会福祉コストを精査したら、記録上で200歳以上が数万人もいた。戸籍制度が完備してる日本ではあり得ない」などという言説がXで拡散しましたが、不正確です。トランプ氏が演説でふれた200超歳の高齢者の記録は1041人分。また、亡くなった人が戸籍上生存したままになっている「高齢者所在不明問題」は日本でも起きています。 検証対象 2025年4月24日、「トランプ政権でDOGEが社会福祉コストの精査を行ったら、記録上で200歳以上が数万人もいたという話は、戸籍制度が完備してる日本ではあり得ないこと」という投稿がXで拡散した。 投稿は2025年4月28日現在、1万回以上リポストされ、表示は308万件を超える。投稿には「母が亡くなった時戸籍を取り寄せたら、江戸時代末期まで遡った記録が送られてきて驚いた」「ほんと、そう。無くすべきではない」などのコメントのほか、「日本でも何年か前にそういう事ありましたよ」という指摘もある。 検証過程 トランプ氏「220~229歳が1039人」 第2次トランプ政権は、財政赤字の削減を目指し、社会保障費の削減に取り組ん

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
文京区の中学校はクラスの半分が中国人? 外国籍の生徒割合は約4%【ファクトチェック】

文京区の中学校はクラスの半分が中国人? 外国籍の生徒割合は約4%【ファクトチェック】

東京都文京区では中学校のクラスの半分が中国人だという情報が拡散していますが、誤りです。文京区教育委員会によると、文京区立中学校の外国籍生徒の割合は約4%です。 検証対象 2025年4月19日、「文京区では中学校のクラスの半分が中国人」という投稿が拡散した。 この投稿は1万件以上リポストされ、表示回数は124万回を超える。投稿について「都内は恐ろしい状況なんだ」「マジでやばいでしょ」というコメントの一方で「どこの中学校の話をされてるんですか?」という指摘もある。 検証過程 東京都文京区の人口は2025年4月1日現在、23万5380人(前月比298人増)。そのうち中国人を含む外国人全体の人口は1万5821人(前月比17人減)で6.7%だ(文京区「人口統計資料」)。 日本ファクトチェックセンター(JFC)は、文京区教育委員会学務課に取材した。 文京区内に10ある区立中学校の外国籍の生徒について、学務課学事係は「国別の人数は把握しておりません。外国籍生徒の総数は104人で、これは全生徒2,341人の約4%です(令和6年5月1日現在)。そのため、特定の国籍の

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
維新の会が大阪万博跡地の使用権を中国に売った? 跡地の開発事業者は未定【ファクトチェック】

維新の会が大阪万博跡地の使用権を中国に売った? 跡地の開発事業者は未定【ファクトチェック】

元プロレスラーの前田日明氏が「維新の会が大阪万博の跡地の使用権を中国に売った」と話す動画が拡散しましたが、誤りです。万博終了後の跡地利用の開発事業者はまだ決まっておらず、現在提案のある企業は「中国ではない」と吉村洋文大阪府知事が否定しています。前田氏のチャンネルの動画は削除されましたが、切り出し動画の拡散が続いています。 検証対象 2025年3月、元プロレスラーの前田日明氏が「維新の会が大阪万博の跡地の使用権を中国に売った」と語る動画が拡散した(例1、例2、例3)。 これらの動画は、前田氏が自身のYouTubeチャンネルで公開した動画から切り出したものだ。元動画は2025年4月24日現在、削除されている。 前田氏が「大阪の維新の党が中国に万博の跡地の使用権を今後60年間売ってお金にした」などと語る部分が切り出されたショート動画は、YouTubeだけでなくTikTokやXなどで拡散を続けている。 検証過程 現在は削除されている前田氏の元動画は3月23日に投稿され、タイトルは「万博の跡地は中国のものになる」だった。以下のように語っていた。 「ある仕事で

By 宮本聖二

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

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日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は5月28日(日)午後2時~3時半で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei0518.peatix.com/view 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にどのよう

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

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日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験  教材と申し込みはこちら

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日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)