衆議院選・神奈川15区の無効票1万1025票は異常? 前回より微増、選管「トラブルなし」【ファクトチェック】

衆議院選・神奈川15区の無効票1万1025票は異常? 前回より微増、選管「トラブルなし」【ファクトチェック】

2026年2月8日に投開票があった衆議院選挙・神奈川15区で、約1万票の無効票が出たのは「異常だ」という指摘が拡散しましたが、根拠不明です。神奈川県の選挙管理委員会は日本ファクトチェックセンター(JFC)の取材に対して、「特にトラブルは無い」と答えています。神奈川15区では無効票は過去3回、数千から約1万票出ており、これがただちに不正選挙の証拠とはなりません。

検証対象

拡散した投稿

2026年2月13日、「神奈川15区、無効票11025票⁉️何これ、異常でしょ」という投稿が拡散した。投稿はXの別の投稿を引用し、「衆議院小選挙区選出議員選挙 開票結果(開票区別投票総数)」と書かれた画像が添付されている。

検証する理由

2月17日現在、この投稿は7200件以上リポストされ、表示回数は21万回を超える。投稿について「操作です」「不正選挙かも」というコメントの一方で「異常というほどではないかと」という指摘もある。

検証過程

衆院選・神奈川15区の開票結果は

JFCが、拡散した画像の数値を調べたところ、開票結果は本物だ。選管が公表した”衆議院小選挙区選出議員選挙 開票結果(開票区別投票総数)”と一致する。

神奈川15区(平塚市、茅ヶ崎市、大磯町)では、自民党の河野太郎氏が14万1580票で当選。2位の参政党・小山善光氏は3万9547票で10万票以上の大差がついた(朝日新聞.”衆院選 神奈川 開票速報・結果(定数:20) 神奈川15区”)。

2026年と過去の無効票は

神奈川県の開票結果によれば、今回の衆院選の15区の投票総数は23万7429票、そのうち無効票が1万1025票だった。投票総数に占める無効票は4.64%だ(神奈川県.”衆議院小選挙区選出議員選挙 開票結果(開票区別投票総数)”)。

JFCが、過去3回の衆院選の無効票の割合を調べたところ、以下の通りだ。

2024年:投票総数24万1329票、無効9492票、無効票率3.93%
2021年:投票総数27万1428票、無効6036票、無効票率2.22% (二宮町を含む)
2017年:投票総数24万1129票、無効5078票、無効票率2.11% (二宮町を含む)

(神奈川県.”衆議院小選挙区選出議員選挙の結果 2024”.”衆議院小選挙区選出議員選挙の結果 2021”.”衆議院小選挙区選出議員選挙の結果 2017”.)

今回の無効票数が過去3回の衆院選より増えているのは事実だ。しかし、これだけで不正やなんらかのトラブルがあったとみなせるほどとは言えない。

また、仮に1万票すべてが2位候補に動いたとしても、当落の差には10万票以上の差があるため、結果は変わらない。

神奈川選管「特にトラブルはない」

JFCは神奈川県選挙管理委員会に問い合わせた。

県選管によると、開票作業における重大なトラブルや、投票や開票の立会人からの判定や集計に関する異議申し立てなどはなかったという。

判定

衆院選・神奈川15区で1万票を超える無効票があったのは事実だ。過去の選挙と比べても無効票の数は増えているが、当選した河野議員は次点の候補者に10万票以上の差をつけており、不正だと指摘する根拠はない。また、神奈川選管は大きなトラブルや立会人からの異議申し立てなどはなかったと説明している。よって、神奈川15区で無効票が1万件は異常という指摘は根拠不明と判定した。

あとがき

2026年衆院選では、これまで以上に「不正選挙だ」と主張する投稿が大量に拡散しています。日本の選挙に関しては、各地の選挙管理委員会で不正の防止策が実施されており、多くの不正選挙に関する投稿は根拠のない偽・誤情報です。また、投票所や開票所には各陣営からの立会人もおり、大規模な不正は極めて困難です。

JFC"「期日前投票はすり替えられる」「鉛筆で書かせるのは消すため」「開票システムに仕掛けがある」 繰り返される不正選挙疑惑を検証【#衆院選ファクトチェック】"

出典・参考

朝日新聞.”衆院選2026 神奈川15区(小選挙区)の候補者一覧・開票速報・選挙結果”.https://www.asahi.com/senkyo/shuinsen/koho/A14015.html ,(閲覧日2026年2月17日)

神奈川県.”衆議院小選挙区選出議員選挙 開票結果(開票区別投票総数)”.https://www.pref.kanagawa.jp/documents/128371/d.pdf ,(閲覧日2026年2月17日)

神奈川県.”衆議院小選挙区選出議員選挙の結果 2024”.https://www.pref.kanagawa.jp/documents/110780/r6syosenkyo.pdf ,(閲覧日2026年2月17日)

神奈川県.”衆議院小選挙区選出議員選挙の結果 2021”.https://www.pref.kanagawa.jp/documents/110780/syosenkyo.pdf ,(閲覧日2026年2月17日)

神奈川県.”衆議院小選挙区選出議員選挙の結果 2017”.https://www.pref.kanagawa.jp/documents/110780/syou.pdf ,(閲覧日2026年2月17日)

検証:木山竣策
編集:古田大輔、藤森かもめ


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

パリで移民2世、3世が暴動? 連覇を祝うサッカーファンの動画【ファクトチェック】

パリで移民2世、3世が暴動? 連覇を祝うサッカーファンの動画【ファクトチェック】

「パリのいま 移民の2世、3世による暴動 移民国家の末路を見る」という投稿がThreadsで拡散しましたが、誤りです。映像は2026年5月にフランスのサッカーチームが欧州のチャンピオンズリーグで連覇を果たした際のファンの様子を撮影したものです。 検証対象 拡散した投稿 2026年5月31日、「パリのいま 移民の2世、3世による暴動 移民はもういらん」という動画付き投稿がThreadsで拡散した。 動画には興奮した人々が、花火をあげたり信号に登ったりする様子が映っている。 検証する理由 この投稿は1万件以上いいねがあり、1200件ほどリポストされている。「パリサンジェルマンが勝っての騒ぎでしょ。移民関係ないから」「サッカーの盛り上がりですよね」というコメントの一方で、「世界中で国文化を壊した移民ビジネス」「誰もとめる人もいない。狂ってますね」と誤解したコメントもあるため検証する。 検証過程 動画には広場のような場所に集まった人々が花火を打ち上げる様子が映っている。Googleレンズで検索すると、5月31日にYouTubeやXに投稿された動画が見

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)
スイスが世界で初めてマンモグラフィを禁止? 該当する発表はなく、当局は否定【ファクトチェック】

スイスが世界で初めてマンモグラフィを禁止? 該当する発表はなく、当局は否定【ファクトチェック】

乳房X線検査マンモグラフィを、スイスが世界で初めて禁止したと主張する投稿が拡散しましたが、誤りです。そのような発表はなく、スイス当局はJFCの取材に対して「50歳以上の女性に対し推奨している」と述べています。 検証対象 拡散した言説 2026年6月3日、「速報:スイスが世界で初めてマンモグラフィ禁止の国になった―世界的な医療スキャンダルが白日の下にさらされた!」などと主張する英語の投稿がXで拡散した。 検証する理由 6月8日現在、投稿は7500回以上リポストされ、表示は59.4万件を超える。 投稿には「出典は?」や「スイスはマンモグラフィを禁止していません」などの指摘もあるが「神に感謝します。私は何年も前からこう言ってきました」「サーモグラムはマモグラムよりもはるかに安全」など真に受けた反応も多い。 同様の主張は、日本語でも拡散している(例1、2、3)ため検証する。 検証過程 拡散した投稿は 拡散した投稿の自動和訳は次の通りだ。 「🚨 速報: スイスがマンモグラフィを禁止する世界初の国に — 暴露されたグローバルな医療スキャンダル!

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
「真理省はいらない」認知戦への対策は/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

「真理省はいらない」認知戦への対策は/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

1週間のドイツ滞在を終えて、帰国の途についています(その関係で今週もニュースレターの配信が一日遅れてしまいました)。 公共放送含む大手メディア、ファクトチェック団体、メディアリテラシー団体、政府機関など、様々な立場の専門家と偽・誤情報の現状と対策について議論しました。中でも話題の中心となったのは、ロシアからの認知戦の現状です。 ドイツで著名な事例と言えば、ドッペルゲンガー作戦です。ドイツの大手メディアのサイトを模倣したサイトが大量に作られ、偽記事をSNSで拡散させるという手口でした。CORRECTIVの調査報道などでその実態が明らかとなっています。 政府もこれらの現状に対して、外国からの影響工作に対する備えを強化しています。その動きは国家情報局を設置する日本にとっても参考になるでしょう。 印象的だったのは「ドイツはバルト3国や北欧などと比べて認知戦への対応が遅れた」という言葉です。海外からの影響工作について、ロシアの行動を明らかにする報道や政府対応などを見ると、日本よりもかなり先行しているように見えますが、自己評価は違うようです。 「真理省はいらない」という声も聞

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
経営ビザ取得者の「9割が不正」? 疑いがある事業者に対する調査【ファクトチェック】

経営ビザ取得者の「9割が不正」? 疑いがある事業者に対する調査【ファクトチェック】

厳格化された経営・管理ビザについて「外国人事業者の内9割が、経営実態のない会社、日本への移住目的、高度医療を受けるため悪用していた」という投稿がXで拡散しましたが、不正確です。全体の9割が不正だったかのように読めますが、不正が9割というのは「疑わしい事業者約300件を対象にした調査結果」で、経営ビザ取得者の9割という意味ではありません。 検証対象 拡散した投稿 2026年5月10日、「経営・管理ビザの厳格化により申請が96%減少。また既存の会社を調査した結果、9割が不正。つまり外国人事業者の内9割が、経営実態のない会社、日本への移住目的、高度医療を受けるための悪用していた」という投稿がXで拡散した。投稿は、ニュース番組の動画も添付している。 検証する理由 6月2日現在、この投稿は1万回以上リポストされ、表示回数は66万回を超える。投稿について、「『9割が不正』は扱いに注意がいる」という指摘もあるが、「9割不正って大問題ですよ」「これが外国人が集まる理由」などと誤解しているコメントも多いため、検証する。 検証過程 経営・管理ビザの厳格化 政府

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は6月27日(土)午後4時~5時30分で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei0627.peatix.com 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にどのような知識

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験

JFCファクトチェッカー認定試験

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)