参政党、日本保守党に特別委員会の割り当てなし? 画像は過去のもの【ファクトチェック】

参政党、日本保守党に特別委員会の割り当てなし? 画像は過去のもの【ファクトチェック】

2025年7月の参院選で議席を獲得した参政党と日本保守党について「特別委員会の割り当てがない、国民の支持で議席を得た政党が、委員会審議に参加できないのは代表性の欠如」と国会を批判する投稿が拡散しました。これはミスリードで不正確です。画像は2025年1月〜6月の国会資料で、2025年7月の参院選後、参政党、保守党ともに議席に応じて各特別委員会の席が割り当てられています。

検証対象

2025年8月4日、「参政、保守に特別委員会の割り当てなし。国民の支持で議席を得た政党が、委員会審議に参加できないのは代表性の欠如。少数政党だからって、発言の場すら奪うなんてあまりにも理不尽だ」という投稿が根拠とされる画像付きで拡散した。

投稿したアカウントは@Hoshuto-kaihaで「日本保守党会の国会議員、河村たかし、島田洋一、竹上裕子の『会派』アカウント」とプロフィールに記している。

拡散した画像には「※参政、保守については割当なし」と書かれた資料が映っている。

8月15日現在、この投稿は8800件以上リポストされ、表示回数は68万回を超える。投稿について「あれだけ議席数を増やした参政党は入ってないの」「国民の民意ガン無視」というコメントの一方で「今国会の委員会ではちゃんと割り当てられています」という指摘もある。

検証過程

国会の委員会制度

国会には、様々な委員会が設置されており、常任委員会と特別委員会の2種類がある。

常任委員会は常設の委員会として法律案などを審査し、議長の承認を得て国政に関する調査をする。特別委員会は特定案件を審査するために国会ごとに設置される委員会だ(衆議院.”本会議・委員会”)。

常任委員と特別委員は、各会派の所属議員数に応じて各会派に割り当て、各会派から申し出た者について議長の指名によって選任される(衆議院"委員会の構成”)。

画像は前回の国会資料

拡散した画像には「地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する総合的な対策を樹立するため」とある。会議録を検索すると、この委員会が最後に設置されたのは2025年1月24日~6月22日に開かれた第217回国会だ(衆議院.”国会会期一覧”)。

衆議院の会議録で「議院において、地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する総合的な対策を樹立するため設置することに決した」と書かれた2025年1月24日の会議録が見つかる(衆議院.”第217回国会 地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会 第1号(令和7年1月24日(金曜日))”)。

拡散した画像にある14や11などの数字は政党別の委員数だ。左から自民党(14名)、立憲民主党(11名)、維新の会(3名)、国民民主党と公明党(各2名)、れいわ新選組と共産党と有志の会(各1名)で、第217回国会の「地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会」の委員数と一致している(衆議院.”委員名簿 地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会”)。

委員の数は合計で35人。その中に、参政党と日本保守党の議員はいない。但し書きにあるとおりだ。ただし、これは7月20日投開票の参議院選挙前に選出されたメンバーの数だ。

資料の但し書きは事実

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、画像の資料について衆議院広報課に問い合わせた。

広報課は「こういったものは事務局で作成しているが、一部だけなので全体像が見えず本物なのかは不明です。アカウントの発信主は日本保守党関係なので、そちらに確認してほしい」と回答した。また、「※参政、保守については割当なし」という注意書きについては捏造などではなく作成した資料通りだという。

JFCは日本保守党に「衆議院の資料で間違いないか」「発信しているアカウントは日本保守党が運営しているか」と問い合わせているが、8月15日現在、回答はない。

参議院選挙後の委員会メンバーは

2025年7月の参院選後、8月1-5日に開かれた第218回国会(臨時会)には7つの特別委員会が設置され、そのメンバーはサイトで確認できる(参議院.”今国会情報”)。

保守党からは「北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会」に百田尚樹氏、「東日本大震災復興特別委員会」に北村晴男氏が割り当てられている。また、参院選で議席を14に伸ばした参政党は、各特別委員会に1〜3人割り当てられている。

判定

拡散した画像は前回の国会のもので、古い資料だ。参政党が議席を増やした2025年7月の参院選後に開かれた国会では、議席数に応じて参政党、保守党ともに特別委員会の枠が割り当てられている。よって参議院選後に拡散した検証対象の投稿はミスリードで不正確と判定した。

出典・参考

衆議院. “本会議・委員会”.https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_honkaigi.nsf/html/honkai/hon_iin.htm , (閲覧日 2025年8月15日).

衆議院. “国会会期一覧”. 衆議院. 公開日 不明. https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/shiryo/kaiki.htm , (閲覧日 2025年8月15日).

衆議院. “地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会(第217回国会・令和7年1月24日)”. 公開日 2025年1月24日. https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/033021720250124001.htm , (閲覧日 2025年8月15日).

衆議院. “地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会 委員名簿(第217回国会)”. https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_iinkai.nsf/html/iinkai/iin_t5240.htm , (閲覧日 2025年8月15日).

参議院. “今国会情報(本会議・委員会・調査会等)”. https://www.sangiin.go.jp/japanese/kon_kokkaijyoho/index.html#03 , (閲覧日 2025年8月15日).

検証:木山竣策
編集:古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

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