外国人の健康保険未納が年間4000億円? 根拠の議員推計は訂正済み【#参院選ファクトチェック】

外国人の健康保険未納が年間4000億円? 根拠の議員推計は訂正済み【#参院選ファクトチェック】

外国人の健康保険未納が年間4000億円という情報が拡散しましたが、誤りです。日本維新の会の柳ケ瀬裕文氏が推計した数字ですが、のちに10年間分の推計だったと訂正しています。

検証対象

2025年6月19日、「外国人の健康保険未納去年4000億円」という情報が拡散した。

7月15日現在、この投稿は1.9万回以上リポストされ、表示回数は657万回を超える。投稿について「毎月いくら払ってると思ってるの」「国民健康保険料単価の値上がりはこれが要因?」というコメントの一方で「訂正されています」という指摘もある。

検証過程

維新の会・柳ケ瀬氏が5月の予算委員会で発言

投稿には2025年5月21日に産経新聞が配信した「外国人の国保未納は年4千億円と試算 維新・ 柳ケ瀬氏『日本国民の税金で立て替えている』 『移民』と日本人」という記事のスクリーンショットが添付されている。

該当記事は現在削除されているが、記事には19日の参議院予算委員会で発言があったと書かれている。

参議院インターネット審議中継のサイトから2025年5月19日の予算委員会(2時間49分~)を確認すると、柳ケ瀬氏は「過程で推定すると、全国の自治体を合算すると年間4000億円以上の国保が外国人によって納付されていない」と発言している(参議院. “2025年5月19日 第217回国会 予算委員会(第十七回)”)。

拡散した情報は、柳ケ瀬氏の発言をもとにした記事を根拠としたものだ。

柳ケ瀬氏は発言を訂正

6月3日の外交防衛委員会(1時間22分~)で柳ケ瀬氏は国民保険の未納に触れ、「発言したままにしておくのは望ましくない」として、以下のように訂正し陳謝した。

「外国人の国民健康保険料未納推定額について全国で年間約4000億円と申し上げましたけれども、新宿区における外国人の金額ベースの滞納率56パーセントを前提に計算をすると、2022年度で524億円程度という計算結果となりました。新宿区全体の滞納繰越分の回収率がおおむね21%程度ということなので未収額は410億円程度と推計がされるものとなります。したがって10年間で4000億円の未収というのが正しい言い方となります」(参議院"2025年6月3日 外交防衛委員会(第十七回)”)

福岡厚労相も否定

また、福岡資麿厚生労働相は7月15日の記者会見で、SNSで4000億円が未納という情報が拡散していることをうけ、「認識とは異なる」と述べた。

福岡氏は「引き続き保険料の適切な納付に向けた取り組みを進める」と述べ、生活保護制度について「外国人を優先しているということはない」と話した(日本経済新聞. “外国人の国保未納額「年4000億円は誤り」 厚労相、SNS投稿受け”)。

判定

拡散した情報の根拠となった推計に関して、柳ケ瀬氏は5月の予算委員会で「外国人の健康保険未納年間4000億円」と発言したが、のちに10年間の未納推定額が4000億円だったと訂正している。よって、「年間の外国人健康保険未納が4000億円」は誤りと判定した。

出典・参考

参議院. “第217回国会 予算委員会(第十七回)”.2025年5月19日. https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=121714370X00220250313&current=9 , (閲覧日 2025年7月15日).

参議院"2025年6月3日 外交防衛委員会(第十七回)”.2025年6月3日.https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=121714370X00220250313&current=9 , (閲覧日 2025年7月15日).

日本経済新聞. “外国人の国保未納額「年4000億円は誤り」 厚労相、SNS投稿受け”. 2025年7月15日. https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA154180V10C25A7000000/ , (閲覧日 2025年7月15日).

検証:木山竣策
編集:古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

政府や当事者の発表を100%信頼できるわけではない/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

政府や当事者の発表を100%信頼できるわけではない/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

アメリカとイスラエルが攻撃しているイランに関する偽・誤情報は、引き続き大量に拡散しています。AIによるディープフェイクが氾濫し、検証が全く追いつかない状況にも変わりありません。 こういうとき、「ソーシャルメディア上の出所不明の情報ではなく、信頼性の高い情報源を確認しましょう」と呼びかけるのが一般的です。日本ファクトチェックセンター(JFC)でも、そうしています。 しかし、その対策にも大きな弱点があります。「信頼性の高い情報源」と言えども、100%頼れるわけではない点です。 例えば、イランの女子学校が攻撃され、160人を超える児童や教員が死亡したとされる事案(犠牲者数は報道によって異なる)について、トランプ大統領は3月7日、「イランによるものだ」と主張しました。 しかし、米メディア「ワシントン・ポスト」や調査報道組織「ベリングキャット」などは、現地の映像から周囲への攻撃が米国が使用しているトマホークミサイルによるものと報じました(The Washington Post. "Video appears to show U.S. Tomahawk hit naval ba

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
ENEOS、出光興産、コスモ石油がロシアからの石油輸入を再開? 2社が否定【ファクトチェック】

ENEOS、出光興産、コスモ石油がロシアからの石油輸入を再開? 2社が否定【ファクトチェック】

アメリカとイスラエルによるイラン攻撃の影響で、ホルムズ海峡が封鎖状態となるなかで、「ENEOS、出光興産、コスモ石油などの日本の主要な石油会社が、ロシアからの石油輸入を再開した」という投稿が拡散しましたが、誤りです。日本ファクトチェックセンターの取材に対し回答があった出光興産とコスモ石油は3月10日現在で、そのような事実はないと否定しました。 検証対象 拡散した投稿 2026年3月9日、「ENEOS、出光興産、コスモ石油などの主要な日本の石油会社は、イランによるホルムズ海峡封鎖への対応として、ロシア🇷🇺からの石油輸入を再開しました。ロシアのプーチン大統領、ロシアの皆さんありがとうございます」という投稿が拡散した。 拡散した投稿は、英語で同様の内容を書いた投稿を引用している。 検証する理由 3月10日時点でこの投稿は2900件以上リポストされ、表示回数は86万回を超える。投稿について「プーチンありがとう」「ホント、ロシアさん有り難う」というコメントの一方で「これソース見つからんのだけんど」という指摘もある。 検証過程 2月28日、アメリカは

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)
岸田文雄元首相がWBCを観戦? 画像は2025年のプロ野球【ファクトチェック】

岸田文雄元首相がWBCを観戦? 画像は2025年のプロ野球【ファクトチェック】

元首相の岸田文雄衆院議員が球場でWBCを観戦したと主張する画像付き投稿が拡散しましたが、誤りです。画像は2025年に岸田氏がプロ野球の試合を観戦した際の写真です。岸田事務所は観戦を否定しています。 検証対象 拡散した投稿 2026年3月10日、「中道改革連合の小川代表❗️岸田さんは、おとがめなしなのですか❓」という投稿が拡散した。画像には、岸田氏が野球場の観戦席のようなところで手を叩いている様子が写っている。 検証する理由 3月13日現在、この投稿は4200件以上リポストされ、表示回数は181万回を超える。投稿について「こりゃ現地観戦してますね」「岸田さんもいたの?」というコメントの一方で「昨年の巨人、広島戦」という指摘もある。 検証過程 3閣僚がWBCを球場で観戦 イランで戦闘が続く中、3月5〜10日にかけて東京ドームでワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の1次ラウンドがあった。 高市早苗首相は7日の日本-韓国戦の始球式に参加する方向で調整していたが、見送った(テレビ朝日.”高市総理 WBC始球式への参加見送り イラン情勢受け最

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は3月22日(日)午前10時~11時30分で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei0322.peatix.com/view 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的に

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験

JFCファクトチェッカー認定試験

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)