夫婦別姓にしたい日本人は1%? 複数調査結果と矛盾【#参院選ファクトチェック】(追記あり)

夫婦別姓にしたい日本人は1%? 複数調査結果と矛盾【#参院選ファクトチェック】(追記あり)

「夫婦別姓にしたい日本人→1%夫婦別姓に反対する党首→1人」という投稿がXで拡散しましたが、誤りです。参院選前の9党幹部による討論会で、明確に反対だったのは1名ですが、2025年実施の主だった調査で、選択的夫婦別姓制度への賛成は最低でも20%台、40%台のものもあり、「夫婦別姓にしたい日本人1%」という主張からは大きく外れています。

検証対象

7月8日「夫婦別姓にしたい日本人→1% 夫婦別姓に反対する党首→1人」という投稿がXで拡散した。

投稿には、動画のスクリーンショットらしい静止画がついている。

投稿は7月15日現在、3900回以上リポストされ、表示回数は196万回を超える。

投稿には「夫婦別姓法案の目的は日本の伝統文化の破壊、戸籍制度の破壊です」「1%は偽日本人です!」などのコメントや、「選択出来る事を否定する理由って何?」などの指摘が寄せられている。

検証過程

「夫婦別姓に反対する党首→1人」はほぼ正確

拡散した画像は、右上に「中継 参院選公示直前 9党幹部 政治討論会」というテロップがついている。

YouTubeで「参院選 公示直前 9党 政治討論会」と検索すると、拡散した画像と同じ構図の動画が見つかる。産経新聞が公開している6月29日に実施された討論会の動画だ(産経ニュース”参院選公示直前の6月29日、9党の幹部が集まり政治討論会(関西プレスクラブ主催)が開催された。万博は維新99点、共産マイナス100点…パンダ巡り「対中弱腰」批判も”)。

動画は1時間53分44秒。添付画像のように、背景に「選択的夫婦別姓YES→〇 NO→×」と映るのは、27分25秒からだ。選択的夫婦別姓を認めるべきかという質問に、参加者が〇か×のパネルを掲げている。

向かって一番右の参政党・神谷宗幣代表は×を、中央の自民党・細野豪志政調会長は〇も×も掲げず回答を避けた。他7名は〇を掲げている。

つまり、拡散した投稿のうち「夫婦別姓に反対する党首→1人」は、討論参加者が党首だけでなく幹部も含まれる点を除けば、ほぼ正確だ。

「夫婦別姓にしたい日本人1%」は誤り

夫婦別姓を望むのは、日本人の何割か。2025年に実施された主だった調査では、次のような結果が出ている。

連合「夫婦別姓に関する調査2025」(2月)

日本労働組合総連合会(連合)は、2月7日から10日の4日間、インターネットリサーチを実施。20~59歳の男女1000名の有効サンプルを集計した。

「夫婦は同氏でも別氏でも構わない。選択できる方がよい」46.8%が 、「夫婦は同氏がよい」26.6%を大きく上回った(連合”夫婦別姓に関する調査2025”)。

(【追記2025年7月17日】また、「選択的夫婦別氏制度が導入された場合、夫婦同氏にしたい」(31.5%)、「夫婦別氏にしたい」(9.5%)、「どちらでもよい」(37.9%)で、「同氏にしたい」が「別氏にしたい」を大きく上回った(連合”夫婦別姓に関する調査2025”)。

一般社団法人あすには調査(3月)

選択的夫婦別姓の導入を推進する一般社団法人「あすには」は、3月26から31日にインターネットによる調査を実施。

選択的夫婦別姓制度の導入について「必要である」40.3%、「必要ない」20.3%、「どちらともいえない」39.4%だった(あすには”選択的夫婦別姓、事実婚当事者䛾意識調査調査サマリー”)。

(【追記2025年7月17日】法律婚者で自分が改姓した人のうち、選択的夫婦別姓制度が法制化されたら、旧姓に戻したいという意向を示したのは16.5%だった。なお、「サンプル数が少数な点ご留意ください」という注意書きがある(あすには”選択的夫婦別姓、事実婚当事者の意識調査調査サマリー”)。)

テレビ朝日「報道ステーション」調査(5月)

テレビ朝日は5月10、11日に電話調査(RDD方式)を実施した。「夫婦の名字について、今後どうするのがよいとお考えですか?」という問いに対する回答は次の通りだ。

「法律を改正して選択的夫婦別姓を導入する」24%、「同じ名字とする制度を維持しつつ、通称として結婚前の名字を使える機会を増やす法整備を進める」43%、「今の制度を維持する」29%、「わからない、こたえない」4%(テレビ朝日”世論調査”)。

(【追記2025年7月17日】この調査には、「選択的夫婦別姓制度が法制化されたら別姓にしたいか、という項目はなかった。)

毎日新聞調査(5月)

毎日新聞が5月17、18日に実施した全国世論調査では、選択的夫婦別姓制度の導入に「賛成」が38%で「反対」の23%を上回った。「どちらとも言えない」は38%だった(毎日新聞”選択的夫婦別姓「賛成」38%「反対」23% 毎日新聞世論調査”)。

(【追記2025年7月17日】この調査には、「選択的夫婦別姓制度が法制化されたら別姓にしたいか、という項目はなかった。)

質問の聞き方などによって結果に差はあるが、いずれの結果も、拡散した投稿の「夫婦別姓にしたい日本人→1%」からはほど遠い。

判定

「夫婦別姓にしたい日本人→1%夫婦別姓に反対する党首→1人」という投稿がXで拡散した。参院選前の9党幹部による討論会で、明確に反対を表明した政党幹部は1名で、後半部分はほぼ正確だ。だが、2025年に実施された複数の調査で、選択的夫婦別姓制度への賛成は最低でも20%台を占めている。「夫婦別姓にしたい日本人1%」という主張からは大きく外れているため、総合的に誤りと判定する。

追記

検証過程の連合の調査の項目に追記しました。「選択的夫婦別氏制度が導入された場合、夫婦別氏にしたい」(9.5%)、「どちらでもよい」(37.9%)、で、「同氏にしたい」が「別氏にしたい」を大きく上回ったという内容です。

記事の公開後、「夫婦別姓にしたい」というのは、制度の導入ではなく「自分たちが本当に別姓にしたい人のことではないのか」という指摘がありました。たしかに、検証対象の言説は「制度を導入したい」「実際に自分たちが別姓にしたい」のどちらにも解釈できます。そのため、実際に別姓にしたいかどうかを聞いた連合調査のデータを加えました。

なお、どちらにしても言説が主張する1%とは大きな差があるため、判定結果は変わりません(以上、2025年7月17日)

出典・参考

産経ニュース.”参院選公示直前の6月29日、9党の幹部が集まり政治討論会(関西プレスクラブ主催)が開催された。万博は維新99点、共産マイナス100点…パンダ巡り「対中弱腰」批判も”2025年6月30日.https://youtu.be/3XCzQ7w5X1g?si=jWQHg5msh1Jyk8uy, (閲覧日2025年7月15日)

日本労働組合総連合会.”夫婦別姓に関する調査2025”.2025年3月6日.
https://www.jtuc-rengo.or.jp/bessei/data/survey_on_married_couples_2025.pdf, 
(閲覧日2025年7月15日)

一般社団法人あすには.”選択的夫婦別姓、事実婚当事者䛾意識調査調査サマリー”2025年4月21日. https://drive.google.com/file/d/1dLlA6CiO_-32HAzIj0JeGdCQ7NK867xS/view?usp=drive_link, (閲覧日2025年7月15日)

テレビ朝日.”世論調査” https://www.tv-asahi.co.jp/hst/poll/202505/, (閲覧日2025年7月15日)

毎日新聞.”選択的夫婦別姓「賛成」38%「反対」23% 毎日新聞世論調査”. https://mainichi.jp/articles/20250518/k00/00m/010/081000c, (閲覧日2025年7月15日)

検証:根津綾子
編集:古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

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