小池都知事がGoogleに個人情報を提供? 東京都「共有する可能性があるのはオープンデータなど、個人情報は提供しない」【ファクトチェック】

小池都知事がGoogleに個人情報を提供? 東京都「共有する可能性があるのはオープンデータなど、個人情報は提供しない」【ファクトチェック】

小池百合子都知事がGoogleに個人情報を提供したという情報が拡散しましたが、根拠不明です。拡散した情報には都が個人情報を提供するという主張の根拠が示されておらず、東京都は「既にオープンデータで公表されている内容や、都が取り扱う情報の種類等をグーグル合同会社に共有する可能性」はあるとしたうえで「個人を特定できる情報が含まれることはない」と説明しています。

検証対象

2025年9月18日、「ファラオ小池百合子さん、『行政のDX推進』という建前で日本Google社に東京都民の住民票や税務申告などの個人情報を提供してしまう」という投稿が拡散した。

9月22日現在、この投稿は1800件以上リポストされ、表示回数は6.5万回を超える。投稿について「えっホント」「なにしてくれてんの」というコメントの一方で、「個人情報を提供ってどこに書いてる?」という指摘もある。

検証過程

拡散した投稿は山陽新聞の「DXで東京都がグーグルと協定 小池都知事『課題解決に期待』」という記事を添付している。記事には、東京都が行政のDX推進のため、9月16日にIT大手グーグルの日本法人と連携協定を結んだと発表したなどと書かれている。

DXは「デジタル・トランスフォーメーション」の略で、直訳すると「デジタル変革」。「デジタル技術で人々の生活をより良いものに変革する」という意味だ(経済産業省 中小企業庁.”担当者に聞く「DXとは」”)。

9月16日、東京都はDX推進を目的として、グーグル合同会社と協定を結んだ。都のサイトによれば、協定の内容は以下の通りだ(東京都.”グーグルと「東京のDX推進に向けた連携・協力に関する協定」を締結”)。

1東京都における先進的なサービスの創出及び実装に関すること
2東京都及び区市町村におけるサイバーセキュリティ対策に関すること
3生成AI及びデータの利活用に関すること
4東京都及び区市町村職員の人材育成に関すること
5行政のDX推進及び新しい働き方に関すること
6東京都のプロジェクトにおける情報発信のDXに関すること

なお、発表資料の末尾には、「本件は『2050東京戦略』を推進する取組です。戦略11 デジタル『都民のQOLに貢献するスマートシティの実現』/デジタル『都民のQOSを更に高める構造改革の推進』」と書かれている。

東京都「個人を特定できる情報が含まれることはない」

日本ファクトチェックセンター(JFC)は東京都に取材した。東京都デジタルサービス局総務部企画計理課の回答は、以下の通りだ。

--「2050東京戦略」には「教育や介護、税務など様々な分野でDXを推進する」と書かれている。東京都はグーグル合同会社に、どのような情報を提供するのか?

既にオープンデータで公表されている内容や、都が取り扱う情報の種類等をグーグル合同会社に共有する可能性はあります。例えば、都が提供している地図サービスの集約という取組であれば、東京都がどのような地図情報を保有しているか、データを共有することが考えられます。しかし、それらのデータに個人を特定できる情報が含まれることはありません。

なお、保有個人情報を取り扱う事務については、東京都のホームページで公表されています。保有個人情報取扱事務登録簿|東京都個人情報の保護に関する条例及び制度運用について|東京都総務局総務部情報公開課

--例えば、都の「3か年のアクションプラン」の「都民のQOLに貢献するスマートシティの実現」という項目を見ると、「税務基幹システムの再構築」や「金融機関への預貯金照会の電子化」「先端技術等の活用による税務行政のDXの推進」などと書かれている。これらの政策を進めるために、住民票や税務申告などの個人情報を提供することは、あるのか?

 上記の事業は、本協定の締結とは別に、以前より都の政策として推進しているものです。本協定に基づいて、住民票や税務申告などの個人情報をグーグル合同会社に提供することはありません。

--SNSなどでは「Google上で作業をすれば、個人情報を渡していることになるのではないか」といった声もある。Google社側と情報の扱いについて、どのような協定を結び、そこに個人情報が含まれる場合、東京都はどのように対応するのか?

「Google上で作業」するという意味を、「Google CloudやGoogle Workspace等のグーグルの製品の基盤を利用する」と理解して回答をいたしますと、まず本協定に基づいて、特定のGoogle製品の提供や許諾を受けて、都が利用することはありません。

また、都の事業において別途契約を締結し、その契約に基づいて直接あるいは間接的にグーグル製品の基盤を利用し、かつ個人情報を取り扱う場合は、「東京都個人情報取扱事務要綱(平成17年3月31日付16生広情報第708号)第2に定める管理体制」及び「局が定める安全管理基準」により、個人情報の安全管理措置を講じることとしています。

判定

東京都はGoogleに提供するデータについて「既にオープンデータで公表されている内容や、都が取り扱う情報の種類等をグーグル合同会社に共有する可能性」はあるとしたうえで「個人を特定できる情報が含まれることはない」と説明している。拡散した投稿は「Google社に東京都民の住民票や税務申告などの個人情報を提供」と主張しつつ、その根拠は示していない。一方で、JFCが検証内容を確認できるのは当事者である東京都に限られる。よって、根拠不明と判定した。

あとがき

今回の検証について、編集部内で判定が「誤り」か「根拠不明」かを議論しました。東京都の説明に基づけば「住民票や税務申告などの個人情報を提供」という主張は誤りです。また、都が「本人の同意」や「特別な理由」なしに個人データを第三者に提供することは、個人情報保護法に違反する懸念があります。(政府広報オンライン.”『個人情報保護法』を分かりやすく解説。個人情報の取扱いルールとは?”)

一方で、当事者である東京都の主張に基づいて「誤り」と判定することは、公正な検証として不十分とも言えます。また、東京都が所有する個人情報について、漏洩の可能性がある事例も発生しています(東京都.”東京都の委託事業における不正アクセス被害について|9月”)。

これらを総合的に判断して「根拠不明」という判定にしました。

出典・参考

山陽新聞デジタル. “DXで東京都がグーグルと協定 小池都知事「課題解決に期待」”. 山陽新聞デジタル. 公開日 2025年9月18日. https://www.sanyonews.jp/article/1794064 , (閲覧日 2025年9月30日).

経済産業省 中小企業庁.”担当者に聞く「DXとは」”.https://mirasapo-plus.go.jp/hint/19693/ ,(閲覧日 2025年9月30日).

東京都.”スマート東京の推進”.https://www.digitalservice.metro.tokyo.lg.jp/business/smart-tokyo ,(閲覧日 2025年9月30日).

東京都.”グーグルと「東京のDX推進に向けた連携・協力に関する協定」を締結”.https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2025/09/2025091701 ,(閲覧日 2025年9月30日).

東京都.”保有個人情報取扱事務登録簿|東京都個人情報の保護に関する条例及び制度運用について”.https://www.soumu.metro.tokyo.lg.jp/01soumu-johokokaika/kojinjoho/gaiyo/tourokubo ,(閲覧日 2025年9月30日).

東京都.”東京都個人情報取扱事務要綱”.https://www.reiki.metro.tokyo.lg.jp/reiki/reiki_honbun/g101RG00004486.html ,(閲覧日 2025年9月30日).

政府広報オンライン.”『個人情報保護法』を分かりやすく解説。個人情報の取扱いルールとは?”.https://www.gov-online.go.jp/article/201703/entry-7660.html#fourthSection ,(閲覧日 2025年9月30日).

東京都.”東京都の委託事業における不正アクセス被害について|9月”https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2025/09/2025092201 ,(閲覧日 2025年9月30日).

検証:木山竣策
編集:古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

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