都知事選関連の誤情報/選挙での生成AI/プラットフォームの取り組みは【今週のファクトチェック】

都知事選関連の誤情報/選挙での生成AI/プラットフォームの取り組みは【今週のファクトチェック】

東京都知事選挙を前に立候補予定者に関連した誤情報が拡散。世界では生成AIを選挙運動に利用する動きもあります。6月の欧州議会選でロシアによる情報操作が問題になりましたが、各プラットフォームはどう向き合ったのか。

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JFCのファクトチェック記事

ヒカキンが小池都知事に「老けました?」と失礼な質問をした?

YouTuberのヒカキン氏が、小池百合子東京都知事に「老けました?」と失礼な質問をしたとする言説が拡散しましたが、誤りです。新型コロナウイルスについての対談動画のスクリーンショットに第三者が全く異なるテロップをつけたものです。

ヒカキンが小池都知事に「老けました?」と失礼な質問をした? 【ファクトチェック】
YouTuberのヒカキン氏が、小池百合子東京都知事に「老けました?」と失礼な質問をしたとする言説が拡散しましたが、誤りです。新型コロナウイルスについての対談動画のスクリーンショットに第三者が全く異なるテロップをつけたものです。 検証対象 2024年5月26日、X(旧Twitter)に「小池都知事にめちゃくちゃ失礼な質問するHIKAKIN懐かしい」とのポストが拡散した。 ポストにはヒカキン氏と小池百合子東京都知事の画像が添付されており、「今回の話とは関係ないんですけど老けました?」というピンクの文字のテロップが入っている。 当該ポストはX上で130万回以上表示され、400件以上のリポストがされている。 検証過程 Google画像検索をしたところ、ポストの画像はヒカキン氏のYoutubeチャンネル「Hikakin TV」の2020年4月10日投稿の対談動画の一部と一致した。ヒカキン氏と小池都知事の対談動画のタイトルは「小池都知事にコロナのこと質問しまくってみた【ヒカキンTV】【新型コロナウイルス】」だ。 日本ファクトチェックセンター(JFC)はこの動

蓮舫氏が「尖閣諸島は日本の領土」にバツの札?

東京都知事選への立候補を表明した立憲民主党の蓮舫参議院議員が「尖閣諸島は日本の領土?」という質問に、×の札で否定しているような画像が拡散しましたが誤りです。画像は加工されており、2016年ごろから何度も拡散しています。

蓮舫氏が「尖閣諸島は日本の領土」にバツの札?【ファクトチェック】
東京都知事選への立候補を表明した立憲民主党の蓮舫参議院議員が「尖閣諸島は日本の領土?」という質問に、×の札で否定しているような画像が拡散しましたが誤りです。画像は加工されており、2016年ごろから何度も拡散しています。 検証対象 2024年6月、テレビ番組と見られる画面内で、蓮舫議員が「尖閣諸島は日本の領土だ」という質問に、バツ印の札をあげている画像がX(旧Twitter)で拡散した。 「国を愛していて…蓮舫って選択肢になります?(´・ω・)」「尖閣の日本領否定してますよ?(´・ω・)」というコメントも付けられている。蓮舫氏が、2024年7月7日投開票の東京都知事選に立候補すると表明したことを受けた投稿と見られる。 1000件以上リポストされた投稿は既に削除されているが、スクリーンショットが引き続き投稿され、「蓮舫アウト」「全員ダメ」というコメントの一方で「悪質なコラ画像」という指摘もある。 検証過程 2016年から拡散する加工された画像 画像をGoogle画像検索すると、同じ画像が多数ヒットする。BuzzFeedは2016年11月に「これは後か

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選挙でのAI利用どこまで

インド総選挙では生成AIを利用した選挙運動が展開され、インドネシアでは故スハルト元大統領がAIでよみがえりました。選挙に関連する偽情報もAIによって作られています。NHKサタデーウォッチ9が特集記事を配信しました。

“死者の演説”は認められる? 選挙での生成AI利用 どこまで | NHK
【NHK】「党の候補者への投票をお願いします」SNSに投稿された動画で、選挙での投票を呼びかけていたのはインドネシアのスハルト元大…

高校1年生の半数がフェイクニュースについて学校で教わる

フェイクニュースについて高校1年生の半数近くが学校で教わっていることが総務省が公表した2023年度の青少年インターネット・リテラシー指標の調査(ILAS)で分かりました。教育新聞の記事です。

学校でフェイクニュースを教わった 高1の半数近くに
偽・誤情報(フェイクニュース)について、半数近くの高校1年生が学校で教わっていることが6月12日、総務省が公表した2023年度の青少年のインターネット・リテラシー指標の調査(ILAS)の結果で分かった。こうしたフェイクニュースに遭遇したことのある生徒のうち、適切な対応を取れている生徒は、インターネット上のリスク対応能力に関するテストの正答率が全体の正答率よりも高かった。

総務省2023年度 青少年インターネット・リテラシー指標の調査結果はこちら

総務省|報道資料|2023年度 青少年のインターネット・リテラシー指標等に係る調査結果の公表
総務省では、青少年のインターネット・リテラシーに関する実態調査を実施し、結果概要を「2023年度 青少年のインターネット・リテラシー指標等に係る調査結果」として取りまとめましたので、公表します。

アメリカとポーランドがウクライナに関するロシアの偽情報に対抗

アメリカとポーランドが、ロシアによるウクライナへの情報工作に対抗する多国籍グループを発足させるとフランスのルモンドが報じました。

US and Poland launch group to fight Russia’s disinformation on Ukraine
The Ukraine Communications Group initiative ‘will bring together like-minded partner governments to promote accurate reporting of Russia’s full-scale invasion and expose Kremlin information manipulation,’ the US State Department said on Monday.

トップブランドの67%が誤情報に資金を提供

スタンフォード大学の調査で、有名ブランドの67%が気づかないまま偽情報に関わるウェブサイトに広告を出していることがわかりました。

67% of Top Brands Inadvertently Fund Misinformation, Stanford Study Finds
PLUS: Bikini-Clad Bots Push Trump Propaganda; Information-war Milestone as Number of Russian Disinformation Websites Exceeds 500

欧州議会選挙でのプラットフォーム事業者の対策は

欧州議会選挙に関連した偽情報の拡散に対して​、XやFacebook、インスタグラム、YouTubeなどSNSや動画配信プラットフォームがどのように対応したのか。レポートが出ました。こちらでご覧ください。

ロシアは、ファクトチェッカーを​圧倒するために大量の情報を流した?

親ロシア派は、​偽情報を拡散するため大量のフェイクニュースをジャーナリストに浴びせて検証リソースを分散させ、ファクトチェッカーの力を削ごうとしていることがわかったとeuronewsが報じました。

Operation Overload: Russia wilfully flooding newsrooms with fake news
A new report says that the scheme also seeks to amplify certain fake narratives by having reporters publish their debunks and share them far and wide. #TheCube

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2025年7月に日本で大地震が起きる? 日付特定する地震予測は不可能【ファクトチェック】

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2025年7月に日本で大地震が起きるという言説が拡散していますが、科学的根拠はありません。気象庁は「現在の科学的知見からは、日時と場所を特定した地震の予測は難しい」と説明しています。 検証対象 2025年7月に日本で大災害が起き、巨大な津波が日本に押し寄せるという言説がXやTikTok、YouTubeなどで拡散している(例1、2、3)。 拡散した言説に対し、「本当かな」「怖い」などのコメントのほか、「当たり外れは大した問題じゃなくていつ来ても迅速に対応できる様に知識を入れておくのは大事」という指摘もある。 検証過程 噂の発端は漫画 例1、2、3は、たつき諒氏の「私が見た未来 完全版」という漫画を引用している。作者が見た夢を書き留めた夢日記という体裁の漫画だ。1999年に刊行され、東日本大震災を予言していた漫画として話題になった。 本作の第一部「予知夢編」には、たつき氏が見た夢の内容として、「災難が起こるのは、2025年7月」「日本とフィリピンの中間あたりの海底がボコンと破裂(噴火)した」「その結果、海面では大きな波が四方八方に広がって、太平洋周辺

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保守党「東京都は経済的豊かさ全国最下位」? 指標は2つ、最新ランクはアップ

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東京都議選で日本保守党の有本香事務総長が東京都について「47都道府県の経済的豊かさランキングで最下位」と発言しましたが、誤りです。根拠とされた2021年の資料に経済的豊かさに関する指標は2つあり、低い方が47位。最新の2024年の資料では低い方でも40位です。 検証対象 2025年6月13日に告示された東京都議選で、日本保守党の有本香事務総長が東京都について「大変繁栄して豊かなように見えるけれども、実は47都道府県の経済的豊かさランキングというものでは47位でございます」と発言した(NHK"都議選告示 各党幹部は何を訴えた【ノーカット動画 演説全文】”)。 日本ファクトチェックセンター(JFC)は、東京都が経済的豊かさで47都道府県最下位かを検証した。 検証過程 根拠は国土交通省の資料 日本保守党の有本事務総長が言及している「47都道府県の経済的豊かさランキング」とは何か。 NHKのサイトでは、東京都議選の告示日の有本氏の演説がノーカット動画と文字起こしで確認できる。その中で有本氏は「彼のソーシャルメディアで発信しております」と触れている(NHK

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全国民に2万円給付のために税金を増やす? 税収上振れ分を充てる方針【ファクトチェック】

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政府が物価高対策として国民1人当たり2万円給付を検討していることについて、「給付金のために税金を増やそうとしている」と主張する投稿が拡散しましたが、誤りです。財源に検討されているのは税収の上振れ分で、その情報が誤解とともに拡散しました。 検証対象 2025年6月15日、「やっている事も考えている事も めっちゃくちゃだ。給付金のために税金を増やすそうです。」という投稿が拡散した。 この投稿は、2025年6月14日の共同通信による投稿を引用リポストしたものだ。 2025年6月17日現在、拡散した投稿は14万回以上の閲覧回数と2400件以上のリポストを獲得している。投稿について「自民党じゃなくて増税党だな」「これ以上税金増やすの?」というコメントの一方で、「増税するとは書かれていません」という指摘もある。 検証過程 拡散した投稿に添付された共同通信のX公式アカウントの投稿には、同社が2025年6月14日に配信した「子ども加算、18歳以下対象 自民、参院選公約を調整」という記事が添付されている。 記事は「自民の森山裕幹事長は14日、鹿児島市での党会合で、首

By リサーチ チーム

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

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日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は6月21日(土)午後2時~3時半で、お申し込みはこちら。 https://jfckousiyousei0621.peatix.com 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にどのよう

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

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日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

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JFCファクトチェッカー認定試験  教材と申し込みはこちら

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日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)