黒柳徹子が新しい学校のリーダーズに「令和の全共闘」と発言?【ファクトチェック】

黒柳徹子が新しい学校のリーダーズに「令和の全共闘」と発言?【ファクトチェック】

タレントの黒柳徹子さんが、テレビ朝日系の番組「徹子の部屋」で、ダンスボーカルユニット「新しい学校のリーダーズ」に「令和の全共闘」と発言したとの言説が拡散しましたが、誤りです。黒柳さんは、そのような発言をしていません。テレビ朝日も否定しています。

検証対象

2024年4月15日、「徹子が、「『新しい学校のリーダーズ』っていうのは、令和の全共闘みたいなことをされてらっしゃるの?」って言ってたの、まだおもしろい。」というポストが、「徹子の部屋」の画像付きで拡散した。

拡散したポストは、4月19日現在で360万回以上表示され、8300件以上のリポストを獲得している。

検証過程

拡散したのは「パクツイ」

「全共闘」とは「全学共闘会議」の略称で、1968〜1969年の大学紛争の際に主体となった、既成の学生自治会組織とは別の運動体だ。

同様のポストは、2024年2月9日にも別のアカウントが「徹子「"新しい学校のリーダーズ"っていうのはなに?令和の全共闘みたいなことをされてらっしゃるの?」」という文言とともに投稿している。

(2024年2月に投稿された対象言説とほぼ同一のポスト)

このポストも4月19日現在で510万回以上表示され、4800件以上のリポストを獲得している。

2月のポストには「本当にこんな事言ったんですか?黒柳さんは言わないと思うし、メンバーからしたら祖父母みたいな世代の話ですよねw」とリプライがあり、これに投稿者は2月9日に「ごめんなさい」と返答。黒柳さんがそのような発言をしていないことを示唆した。

対象の言説は、2月の投稿を、出典を明記せずに引用した、いわゆる「パクツイ」だ。

アーカイブを確認、発言はなし

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、新しい学校のリーダーズが出演した2024年2月6日放送の「徹子の部屋<新しい学校のリーダーズ>黒柳も“首振りダンス”!?話題の4人組が」をアーカイブ配信で確認した。

アーカイブ配信は約23分間で、メンバーによるパフォーマンスや自己紹介などが続く。動画の中に「『新しい学校のリーダーズ』っていうのは、令和の全共闘みたいなことをされてらっしゃるの?」というような発言はない。

テレビ朝日も発言を否定

JFCがテレビ朝日広報に「令和の全共闘」のような発言があったかを取材したところ、発言の存在を否定し、投稿は「改変されている」との返答があった。

判定

「黒柳徹子が新しい学校のリーダーズに『令和の全共闘』と発言」は誤り。黒柳さんは番組内でそのような発言をしていない。

あとがき

冗談や皮肉で事実とは異なる発信をすることはあります。英語ではSatire(風刺)と呼ばれ、Disinformation(偽情報)と区別されます。アメリカであれば「The Onion」、日本だと虚構新聞などが有名です。

ネタを楽しむのは、表現の自由にも関わる大切な文化です。ただし、冗談や皮肉を事実と信じ込んだ人の拡散によって、風刺が偽情報のような効果を持つこともあります。日本でも虚構新聞の記事を事実と誤解して拡散させる人もいます。

JFCでは過去にも海外のネタ動画が事実と受け止められて拡散した事例を検証しています(「北朝鮮軍がアメリカ人気バンドの曲を演奏」は誤り【ファクトチェック】)。

検証:リサーチチーム
編集:藤森かもめ、宮本聖二、古田大輔、野上英文


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

小野田紀美大臣が中国資金を全面凍結? 本人が否定【ファクトチェック】

小野田紀美大臣が中国資金を全面凍結? 本人が否定【ファクトチェック】

小野田紀美経済安全保障担当大臣が中国資金を凍結したという動画が拡散しましたが、誤りです。動画では「ニュースによると、朝日新聞によると」などと語られていますが、そのような情報や報道はありません。本人も「管轄外ですし、完全にデマ」と否定しています。 検証対象 2025年12月、Facebookのリールに「小野田紀美、中国資金を全面凍結、中国人64000口座と不動産18700件が完全封鎖」「実は日本政府は数ヶ月前から中国資本の動きをAIで監視していました。朝日新聞によれば、内閣府、警察庁、防衛省、金融庁までが一体となって動いていたそうです」と語る動画が拡散した。 この動画は4700件以上のいいねを獲得し、400件以上シェアされている。投稿について「こういう政治家を待ち望んでいました」「素晴らしい👍高市政権」というコメントがついている。 検証過程 日本が中国の口座を凍結した? 動画の内容は以下のようなものだ。 「小野田紀美、中国資金を全面凍結、中国人64000口座と不動産18700件が完全封鎖」」「北京困難、120期金停止12.8兆円消失940万人失業

By 木山竣策
医療従事者はマイナ保険証にしない人が大多数? 根拠となるデータなし【ファクトチェック】

医療従事者はマイナ保険証にしない人が大多数? 根拠となるデータなし【ファクトチェック】

「医療従事者はマイナ保険証にしない人が大多数」という情報が拡散しましたが、根拠となる資料などでは示されておらず、根拠不明です。一方で、医療従事者専用サイト「m3.com」のアンケートでは、半数以上の医師がマイナンバーカードに保険証を登録していると回答しています。 検証対象 検証する投稿 2025年11月29日、「実は医療従事者はマイナ保険証にしない人が大多数だという事実、一般の人はあまりご存知ないでしょうね。私も資格確認証を利用していて、マイナ保険証にする予定はありません」という投稿がThreadsで拡散した。 検証する理由 12月2日現在、この投稿は400件以上のいいねを獲得している。投稿について「自分、医療従事者ですが、そんな情報どこから?」「医療従事者ですが、周りもマイナ保険証」という指摘が多くついている。 米メルトウォーターの分析ツールで調べると、12月2日のマイナ保険証への本格移行の数日前からソーシャルメディアへのマイナ保険証関連の投稿が急増し、否定的な内容が目立つ。その中には真偽が不確かな情報も含まれている。 検証過程 マイナ保

By 木山竣策
日本は世界一の重税国? 繰り返し拡散する誤情報【ファクトチェック】

日本は世界一の重税国? 繰り返し拡散する誤情報【ファクトチェック】

日本は世界一の重税国だという投稿が拡散しましたが、誤りです。国民所得で割った租税負担率や社会保障も加えた国民負担率は、OECD加盟国の中でも比較的低い水準にとどまります。同様の誤った言説は、過去に何度も拡散しています。 検証対象  検証する投稿 2025年11月27日、「日本は世界一の重税国です。皆さん知ってますか?日本は世界一の重税国です。その税金は正しく使われてません。」という投稿が拡散した。 検証する理由 12月1日現在、この投稿は5500件以上リポストされ、表示回数は27万回を超える。投稿について「使い方の説明と改善をしてほしい」「その通りです」というコメントの一方で「OECD平均以下の負担率で助かる」という指摘もある。 検証過程 日本の税負担は諸外国と比べて重いのか。国税や地方税を合計した租税収入金額を国民所得で割った「租税負担率」だけでなく、租税負担に年金や国民健康保険などの社会保障負担を加えた「国民負担率」の両方を比べた。 経済発展や途上国援助などを目的とした国際機関「経済協力開発機構(OECD)」などのデータをもとに、財務省は

By 木山竣策
日本ファクトチェックセンター エディター募集【JFC採用】

日本ファクトチェックセンター エディター募集【JFC採用】

日本ファクトチェックセンター(JFC)では、ファクトチェックやメディアリテラシー教育などの活動を強化するため、エディターを募集しています! インターネットやソーシャルメディアは、私たちの世界を大きく広げてくれました。一方で、拡散する不確かな情報や、悪意ある偽・誤情報によって、社会の分断や混乱が生まれているのも事実です。 「インターネット上の情報を、誰もが安心して活用できる社会にしたい」 そんな思いを共有し、日本ファクトチェックセンター(JFC)の活動をさらに加速させてくれる新しい仲間(エディター)を募集します! 明るく、前向きに、デジタル空間の健全化に取り組んでくれる方を待っています。 検証とリテラシー教育の「両輪」を強化する 総務省の情報通信白書などのデータを見るまでもなく、私たちが日々接する情報量は爆発的に増え続けています。 JFCは、日々拡散する疑わしい言説を検証する「ファクトチェック」とともに、情報の受け手が自分自身で情報の真偽を見極める力を養う「メディアリテラシー教育」の強化にも務めています。 検証と教育。この「両輪」を回すことで、情報の

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は12月20日(土)午後2時~3時30分で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei1220.peatix.com 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にどのような知

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験

JFCファクトチェッカー認定試験

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)