マスク氏がCNNを30億ドルで買収? 風刺サイトによるもの【ファクトチェック】

マスク氏がCNNを30億ドルで買収? 風刺サイトによるもの【ファクトチェック】

第2次トランプ政権で政府効率化省(DOGE)の責任者も務める実業家イーロン・マスク氏が、米メディアCNNを30億ドルで買収したとの情報が拡散しましたが、誤りです。2024年に風刺サイトが発信した情報が再拡散しました。多くのファクトチェックによって誤りであると検証済みです。

検証対象

2025年3月2日頃から、イーロン・マスク氏がCNNを30億ドルで買収したと主張する投稿が複数拡散した(投稿1投稿2)。

拡散した投稿はいずれも多数のリポストやインプレッションを獲得している。

投稿には「フェイクニュースの終焉です」「嘘しかない日本メディアも誰か買ってそのまま潰してくれー」などのコメントが付く一方で、偽情報との指摘もある。

検証過程

多数のメディアやファクトチェック団体によって検証済み

Googleが提供する検証記事のデータベース「Fact Check Explorer」で「Elon Musk Buy CNN」と検索すると「イーロン・マスク氏がCNNを30億ドルで買収した」という今回拡散したのと同じ主張への検証が多数ヒットする(USAトゥデイSnopesFullFactロイター通信PolitiFact)。検証は2024年11月中旬ごろに集中している。

ロイター通信と英国のファクトチェック団体FullFactはCNNの「CNNの売却や所有権変更の噂に一切事実はない」とのコメントを紹介しながらそれぞれ「誤り」「事実ではない」と判定した。USAトゥデイと米国のファクトチェック団体PolitiFactも、信頼できる情報源がなくイーロン・マスク氏自身も何も発信していないことからいずれも「誤り」と判定している。

米国のファクトチェック団体Snopesは、演説内でこの主張に触れたアルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領や、それを無批判に報じた同国で最も発行部数の多いスペイン語日刊紙「Clarín」が誤情報の拡散の一因と指摘しながら、「風刺が発端」と判定した。

これらの報道機関・ファクトチェック団体は、拡散した主張は「SpaceXMania」というウェブサイトの記事(現在削除済み)が発端だとしている。

主張の発端は風刺サイト

「SpaceXMania」のサイト説明には「最新のフェイクニュース、生意気な分析、そして風刺の数々をイーロン・マスクやトレンドを賑わせている様々なものを中心にクレイジーな構成で届ける」とある。

公開されている記事には「Satire(風刺)」などのタグが付けられ、記事末尾には「This is SATIRE, It’s Not True(これは風刺で事実ではない)」と記載がある。

判定

イーロン・マスク氏がCNNを30億ドルで買収したとの主張は誤り。風刺サイトが発信した事実と異なる情報だ。

あとがき

冗談や皮肉、風刺として事実と異なる発信をしたり、それを楽しんだりすることは表現の自由にも関わる大切な文化です。娯楽としての側面の他に、権力を遠回しに批判する手法としても世界中で発達しました。風刺や皮肉を専門とするサイトもあり、日本では虚構新聞、海外ではThe Onionなどが有名です。

海外のファクトチェックサイトでは、誤・偽情報と区別するためSatire(風刺)というラベルをつける団体もあります。実際に、今回の主張もSnopesは「Originated as Satire」と判定しています。

しかし、冗談や皮肉を事実だと信じ込んだ人の拡散によって、偽情報のような効果を持ってしまうこともあります。今回の検証対象でも、発信源の風刺サイトは風刺のための事実でない情報であることを明記していましたが、拡散されていくうちにそのことが欠落してしまいました。

日本ファクトチェックセンター(JFC)は過去にインターネット上の冗談が事実かのように拡散した事例を検証しています。冗談や皮肉と事実を正しく見分けることが大切です。

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検証:リサーチチーム
編集:古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

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