「熱中症の頭痛にはロキソニンよりカロナール」? どちらも推奨していない【ファクトチェック】
熱中症を疑う頭痛があった時には、発熱や痛みを抑える薬「ロキソニン」ではなく、「カロナール」を飲んだ方がましだと主張する投稿が拡散しましたが、誤りです。日本救急医学会の医師は「熱中症ではロキソニン、カロナールのいずれの解熱薬も治療として推奨されていません」「熱中症が疑われる場合には、自己判断で解熱薬を服用するのではなく、まず適切な応急処置を行うことが望まれます」と説明しています。
検証対象
拡散した言説
2026年7月、「熱中症疑いの頭痛には、ロキソニンよりカロナールの方がマシ」という趣旨の投稿がSNSで拡散した。
検証する理由
ほかにも、「軽い熱中症っぽくてカロナール飲んどいた」「熱中症の時の頭痛はロキソニン系じゃなくてカロナール系を飲んでね」などという投稿が多数見つかる。健康に害を与える恐れがあるため、検証する。
検証過程
カロナールとロキソニン
医薬品の承認や審査をする独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の一般人向けくすり情報サイト「PMDAおくすりサーチ」で検索すると、カロナールの効果は以下の通りだ。
・解熱鎮痛剤と呼ばれるグループに属する薬です。
・熱を放散させて熱を下げる作用や、痛みの感受性を低下させて、痛みをやわらげます(PMDA”くすり情報 一般の方向け カロナール細粒20%/カロナール細粒50%”)
ロキソニンについては、「おくすりガイド」の「どんな薬」の欄に以下の記載がある。
「からだの炎症にかかわるプロスタグランジンというものの生成をおさえ、痛みや炎症をやわらげたり熱をさげたりするはたらきがあります」(PMDA”おくすりガイド ロキソニン錠60㎎、細粒10%”)
つまり、カロナールにもロキソニンにも、熱を下げたり痛みを和らげたりする効果がある。
神田潤・日本医科大学准教授「いずれも推奨されていない」
日本ファクトチェックセンター(JFC)は、日本救急医学会の「熱中症および低体温症に関する委員会」で委員長を務める神田潤・日本医科大学准教授に取材した。 神田氏の説明は下記の通り。
Q 熱中症の際にはロキソニンとカロナールのどちらが推奨されるのでしょうか。
神田氏「日本救急医学会の『熱中症診療ガイドライン2024』では、ロキソニン、カロナールのいずれも熱中症の治療としては推奨されていません。熱中症の治療では、涼しい場所への避難、身体の冷却、水分・電解質の補給などが基本となります。熱中症は感染症による発熱とは仕組みが異なるため、解熱薬によって改善するものではありません」
Q 「熱中症診療ガイドライン2024」には、「解熱薬を使用しないことを弱く推奨する」と書いてあります。「弱く推奨する」とは、どのように考えれば良いのでしょうか。
神田氏「熱中症に対する解熱薬については、有効性を検証する質の高い研究がありません。『解熱薬を使用する群』と『使用しない群』を比較する臨床試験を実施することは、熱中症の病態や安全性の観点から倫理的に困難です。このため、現時点では『熱中症の治療として解熱薬は使用しないことが望ましい』と考えられるものの、強いエビデンスを構築することが難しいことから、『使用しないことを弱く推奨する』という推奨になっています」
Q 「熱中症疑いの頭痛にはロキソニンは良くない。カロナールの方が望ましい」という投稿について、どう思いますか。
神田氏「『ロキソニンなどのNSAIDsは、脱水時に急性腎障害のリスクを高める可能性がある』という点は適切な指摘です。一方で、熱中症ではロキソニン、カロナールのいずれの解熱薬も治療として推奨されていません。そのため、『カロナールの方が望ましい』という表現は、熱中症の治療としてカロナールが推奨されているかのような誤解を招く可能性があります。
熱中症では、解熱薬で体温を下げることではなく、身体を適切に冷却し、水分・電解質を補給し、必要に応じて速やかに医療機関を受診することが重要です。熱中症が疑われる場合には、自己判断で解熱薬を服用するのではなく、まず適切な応急処置を行うことが望まれます」
判定
SNS上で熱中症の際にロキソニンよりカロナールという投稿が拡散し、双方を熱中症薬として飲むという投稿も見つかる。しかし、日本救急医学会の熱中症および低体温症に関する委員会の神田委員長は「ロキソニン、カロナールのいずれも熱中症の治療としては推奨されていない」と説明している。よって、「ロキソニンよりカロナール」という情報は誤りと判定する。
あとがき
JFCのファクトチェック記事では通常、検証対象のところに拡散した投稿の画像を添付し、アーカイブリンクをつけています。しかし、情報の拡散の仕方は多様で、もともとの投稿者の意図とは違う形で広がったり、リプライや引用リポストという形で情報が歪められたりすることもあります。
そのような場合に元投稿の画像やリンクを入れると、逆に誤解を広げる恐れがあるため、今回は画像やリンクを入れていません。
熱中症については、日本救急医学会が、熱中症判定アプリを無料で公開しています。スマホやタブレットなどで設問に回答すると、熱中症の重症度をその場で判定し、医療機関を受診すべきか否かの必要性などを分かりやすく表示します。猛暑が続きます。熱中症が疑われる症状があるときの参考にしてください。
出典・参考
PMDA.”くすり情報 一般の方向け カロナール細粒20%/カロナール細粒50%”.https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/rdDetail/iyaku/1141007C1075_5?user=2,(閲覧日2026年7月28日).
PMDA.”くすり情報 一般の方向け ロキソニン錠60mg/ロキソニン細粒10%”.https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/rdDetail/iyaku/1149019C1149_1?user=2,(閲覧日2026年7月28日).
検証:根津綾子
編集:古田大輔、藤森かもめ
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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