大阪だけで毎日1-2万人の接種後異常の問合せが殺到?【ファクトチェック】

大阪だけで毎日1-2万人の接種後異常の問合せが殺到?【ファクトチェック】

Twitter上にて「大阪だけで毎日1-2万人の接種後異常の問合せが殺到」というツイートが拡散していますが、この投稿は誤りです。大阪市は「オペレーターは最大250名で、1日最大4400件程度の対応」、大阪府新型コロナワクチン専門相談窓口は「1日に1万件ということではない」と回答しています。

検証対象

11月16日に投稿された以下のツイートは 2万件以上のいいねと1万件のリツイートを獲得した。

画像
▪︎大阪だけで毎日1-2万人の接種後異常の問合せが殺到(800人体制のコールセンターで1人20-30人/日対応するもパンク)
▪︎その殆どがオミ💉(特に+インフル💉)接種者!

同じツリー内で以下のような投稿もしている。

情報は大阪市のワクチンコールセンター従業員から直接聞いたもの。
彼が怒るのは、相談者の話や苦情にはただ「はい」を繰り返し聞き流せとの指示が出ており、行政には助ける気などさらさら無い事だ。

リプライでは「いつも情報ありがとうございます」や「1回も摂取してない人から言わせてもらうと『でしょうね。』て感想だと思う」などの反応がある一方で、「大阪だけパンクしているなんて非常に疑問です」などと投稿を疑うものもある。

検証過程

日本ファクトチェックセンター(JFC)が大阪市保健所感染症対策課に問い合わせたところ、「令和4年11月の大阪市新型コロナワクチンコールセンターのオペレーターは最大250名で1日最大4400件程度の対応をしております」との回答が得られた。言説であるような「1日に1-2万人」ではない。

また、同センターは「大阪市集団接種会場の案内・予約や接種券の再発行等に係る対応」をしており、「接種後の副反応に係る医学的見地が必要となる専門的な相談受付については、大阪府が設置する『大阪府新型コロナウイルスワクチンに関する専門相談窓口』にて対応している」とのことだった。

大阪府コロナワクチンポータルサイト - 専門相談窓口における副反応疑いの相談についてでは、副反応関連の相談件数実績を掲載している。

2022年4〜9月の累計は、副反応関連の相談数が9265件、そのうち接種後の副反応を疑う症状に関する相談数は8400件で、「副反応に限らず、専門相談窓口におけるすべての相談件数の総数は28581件でした」と明記している。

副反応関連の相談件数を月毎に見ると、4〜9月で最も多いのは4月で2224件、うち接種後の副反応を疑う症状に関する相談数は2043件だった。

大阪府新型コロナワクチン専門相談窓口へ問い合わせ、この統計に反映されていない10月、11月について尋ねると「急増した印象はない」とのことで、「1日に1万件ということではない」との回答が得られた。

判定

「大阪市」で考えた場合の問い合わせ件数は1日最大4400件程度で、大阪府の問い合わせ件数を加えたとしても、「毎日1-2万人の接種後異常の問い合わせが殺到」という事態には至っておらず、誤り。

あとがき

BuzzFeed Japanもこの件をファクトチェックし、21日に記事を配信しています。JFCも別途、独自に大阪府や大阪市に問い合わせをしていました。

検証:本橋瑞紀
編集:古田大輔

検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。

「ファクトチェックが役に立った」という方は、シェアやいいねなどで拡散にご協力ください。誤った情報よりも、検証した情報が広がるには、みなさんの力が必要です。

X(Twitter)FacebookYouTubeInstagramなどのフォローもよろしくお願いします。またこちらのQRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、真偽が気になる情報について質問すると、AIが関連性の高い過去のJFC記事をお届けします。詳しくはこちらの記事を

もっと見る

ファクトチェックと「プリバンキング」 “情報の空白”を埋める注目の手法【JFC講座 実践編9】

ファクトチェックと「プリバンキング」 “情報の空白”を埋める注目の手法【JFC講座 実践編9】

日本ファクトチェックセンター(JFC)のファクトチェック講座です。 実践編第8回は、よく質問されるファクトチェックと調査報道や裏取りとの違いについてでした。第9回は世界のファクトチェック事例や新手法を解説します。 (本編は動画でご覧ください。この記事は概要をまとめています) ファクトチェックの多様な事例 ファクトチェックには原則がありますが、同時に、検証対象の選び方や組織のあり方などは多様です。国内外の事例を紹介します。 Factchek.org ファクトチェック団体としては老舗のFactchek.orgはアメリカ政治に関する偽情報に対応するために、「有権者のための消費者保護センター」を目指して2003年に設立されました。 そのため、主なトピックに並ぶのは「バイデン大統領」「トランプ前大統領」、そして「その他の大統領候補」などアメリカ政治中心です(2024年7月27日現在)。 例えば、「バイデンが不法移民に家賃を支払っているという根拠のない主張」という記事には、見出しに検証対象と検証結果=根拠なしが記され、記事内では検証過程が詳細に記述されていま

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
日本での農地取得、外国人が3分の2? 新聞記事の誤読が拡散【ファクトチェック】

日本での農地取得、外国人が3分の2? 新聞記事の誤読が拡散【ファクトチェック】

「外国人による農地取得が全体の3分の2」という言説が拡散しましたが、誤りです。新聞記事を誤読した投稿が拡散しました。 検証対象 2024年7月20日、日本農業新聞の記事を引用して「これやばいだろ?なんで国は規制しない? 外国人による農地取得が全体の3分の2を占めたらしい」という言説が拡散した。 この投稿は43万以上の閲覧と6900のリポストがある。「農地って簡単に買えるの?」「自国の国民のために農地を開拓しているのかもしれない」というコメントのほか、「記事をちゃんと読みましたか」「日本であっても規制はありますよー」といった指摘もある。 「外国人による農地取得が3分の2を占めた」という言説を検証する。 検証過程 言説に添付されたのは、日本農業新聞が2024年7月20日に配信した記事だ。拡散したスクショは「外国人の農地取得 23年は90ヘクタールに 3分の2が国内在住」という見出しで、7月26日朝の時点では「3分の2」が「国内在住の個人・法人中心」に変わっている。 外国資本が「全体の3分の2」ではない 記事の内容は「外国人もしくはその関係法人が2

By 宮本聖二
最新の複数世論調査でトランプ前大統領がハリス副大統領を大幅リード? 拡散したのは予想サイトの数字【ファクトチェック】

最新の複数世論調査でトランプ前大統領がハリス副大統領を大幅リード? 拡散したのは予想サイトの数字【ファクトチェック】

「最新の複数世論調査でトランプ大統領がカマラ・ハリスを大幅リード」という言説が拡散しましたが誤りです。言説に表示された数字は世論調査の数字ではありません。2024年7月26日現在、最新の世論調査では、両氏の支持率は拮抗しています。 検証対象 2024年7月23日、「最新の複数世論調査でトランプ大統領がカマラ・ハリスを大幅リード/NHKは『僅差』と報道」という言説が拡散した。言説にはまとめサイト「トータルニュースワールド」のリンクが添付されている。 2024年7月26日現在、投稿は1700件以上リポストされ、表示回数は31万件を超える。投稿について「当たり前」「妥当」というコメントがある。 検証過程 数字は予測市場プラットフォームの数字 拡散した言説にはまとめサイト「トータルニュース」のリンクが添付され、「64% Trump」「36% Kamala」と書かれたサムネイルが表示されている。リンク先を確認すると、根拠として「PolyMarket」の数字を集計した一般ユーザーのX投稿を複数取り上げている。 Polymarket(ポリマーケット)は、仮想通

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
ファクトチェックと調査報道 共通する手法と異なる方法論【JFC講座 実践編8】

ファクトチェックと調査報道 共通する手法と異なる方法論【JFC講座 実践編8】

日本ファクトチェックセンター(JFC)のファクトチェック講座です。 実践編第7回は、ファクトチェックに役立つサイトやツールについてでした。第8回はよく質問されるファクトチェックと調査報道や裏取りとの違いを解説します。 (本編は動画でご覧ください。この記事は概要をまとめています) ファクトチェックと調査報道の違い 「ファクトチェックは事実を確かめることだから、報道機関は当然どこでもやっているのではないか」とよく聞かれます。 半分正解で半分間違いと言えます。何が共通していて、何が異なるのかを解説していきます。 ファクトチェックとオンライン調査 検証の根拠を公開し、可能な限りユーザーにもアクセス可能にすることが原則のファクトチェックでは、オンライン調査の手法を活用します。 誰でもアクセスできるオープンソースを使うOSINTの重要性は実践編6でも説明した通りです。 OSINTでファクトチェック 公開データを使い真偽を判別する【JFC講座 実践編6】日本ファクトチェックセンター(JFC)のファクトチェック講座です。 実践編第5回は、生成AIで作られる画像

By 古田大輔(Daisuke Furuta)