熊本地震は「人工地震」? 波形は普通の地震【ファクトチェック】

熊本地震は「人工地震」? 波形は普通の地震【ファクトチェック】

熊本県を震源とする地震が2026年7月28日に発生したことを受け、「波形を見る限り人工地震」「今回の熊本地震の波形も人工地震の波形」などと主張する投稿が拡散しましたが、誤りです。専門家は「人工的な揺れの波形ではない」と説明しています。

検証対象

拡散した言説

2026年7月29日、「熊本地震ですが、波形を見る限り、人工地震であることは確実です」と主張する投稿がXで拡散した。

検証する理由

熊本地震や人工地震など複数のキーワードを組み合わせてソーシャル分析ツール「Meltwater」で調べると、今回の熊本地震の波形だという画像を添付した投稿は他にも拡散している(例1,2)。

拡散した投稿には「バカなこと言うのやめろ、恥ずかしいわ」「こういう都市伝説脳の奴ら、日本から出て行ってほしい」などの指摘もある一方、「日付からして人工地震の可能性は高いでしょうね」や「前回の熊本地震も人工地震の様ですし今回も波形からその様ですね」など、真に受けた反応もあるため検証する。

検証過程

「人工的な爆発の波形」?

例1には、「先程の熊本震度7の地震ですが、防災科研から震源地付近のUD(アップダウン)波形を見ると、地震ではなく人工的な爆発の波形ですね…」という文言に、画像が添付してある。

例1が主張する「防災科研から震源地付近のUD(アップダウン)波形」は、国立研究開発法人防災科学技術研究所(防災科研)が運営する強震観測網 K-NET・KiK-netのデータのことだ。登録すれば無料でダウンロードできる。

日本ファクトチェックセンター(JFC)が、今回の熊本地震の日付などを入力して検索した結果、一つの資料の波形が拡散した投稿と同じものだった。

JFCがK-NETで地震の日付や都道府県名など条件を入力してダウンロードしたファイル「KMM0122607281627.wave.pdf」。赤枠が拡散した投稿と一致

資料の上部には「2026/07/28-16:27 32.6N 130.7E 10km M7.1 (KMM012)」と書いてある。2026年7月28日16時27分、マグニチュード7.1、熊本県八代市のK-NET観測点(KMM012)で記録された地震のデータであることが分かる。

拡散した例1の画像は、確かに、今回の熊本地震のデータだ。

酒井教授「普通の地震の波形」

拡散した投稿は、今回の地震の波形について「人工的に引き起こされた証拠だ」と主張している。JFCは東京大学地震研究所の酒井慎一教授に地震の波形記録の特徴について聞いた。

Q今回拡散した地震の波形記録には、人工地震の特徴があるのでしょうか。

いいえ。私には、普通の地震の波形記録に見えます。

地震の波形記録とは、地震の際に地面がどう動いたかを表したグラフです。横軸に時間、縦軸に揺れの勢い(加速度もしくは速度)を取り、南北・東西・上下の3方向ごとに表します。SNSで拡散された波形記録は上下方向の地面の動きを現した波形記録です。

自然に起きる地震の際には、主にP波とS波の2つの波が震源から出ます。Pはプライマリー、Sはセカンダリーを表し、P波が先に、S波がその後に観測点に到達した波であることを意味します。一方、爆発によって作られる地震動の場合は、S波が出にくいためP波しか見えなくなってしまうことが多いです。

投稿した人はおそらく、この波形記録を見て「P波のみでS波が見えないから『人工的な揺れだ』」と主張しているのでしょうが、実際にはS波もちゃんと存在しています。ポイントは横軸です。この波形では5分間(300秒間)の波形記録が描かれているので、横にギュッと圧縮されていて見づらいのですが、横軸を数十秒間などに広げて見ると、P波とS波の両方の波がちゃんと見えるので、爆発ではない自然な地震の波形記録であることが分かります。上下動成分だけではなく、南北成分や東西成分の波形記録を詳しく見ると、大きな振幅(S波)の揺れの前に小さな揺れ(P波)が数秒間存在していることがわかります。

八代は震源地に近いので、P波とS波が観測点に到達する時間差が短いため、P波とS波がより見分けにくいという事情もあります。

Q「人工地震」だと断定するにはどんな条件が必要なのでしょうか。

SNSなどで言われている「人工地震」は、爆弾などで人工的に地表を揺らしたもの、という意味ですよね。しかし本来、地震というのは、地下の断層が急にずれて起きる現象のことを指し、そのずれによって地震波が生成され、それが伝わってきて地面を揺らします。その揺れをあらわす言葉は、「地震動」と言います。今回の熊本の地震の震源の深さは、約16kmです。その深さまで穴を掘ることは、現在の技術では不可能ですから、その深さで爆発させることもできないので、「人工地震」ではありえません。

なお、1つの観測点で記録した波形記録だけを見て、それが人工的な原因による揺れかどうかを断定することはできません。「震源を取り囲むような配置の複数の観測点で記録された、南北・東西・上下の波形記録において、すべてP波しか観測されない」ということになれば、それは「人工地震」と言えるのかもしれません。

波形記録以外の情報で確認することも大事です。今回のM7.1という規模の地震の揺れを引き起こすためには、その地域全体を大きく揺らすことが必要です。そのためには、例えば核爆弾など巨大なエネルギーを放出する方法を考えなければいけません。もし仮に、核爆弾を使えば、その爆薬を地下に埋める大規模な工事が必要になり、こっそりとひと目に触れないように行うのは困難です。さらに、そんな大きな爆発を伴えば、大変な騒ぎになるはずだし、大量の放射能が漏れてしまうことで周辺に大きな影響が及んでしまいます。でも、そういう話は聞いてないですよね。

複数の情報を合わせて総合的に判断すれば、「人工地震だ」という説がナンセンスであることが分かると思います。

地震は予知できるのか

Q地震を予知することはできるのでしょうか。

今回の熊本地震は、 10 年前の熊本地震と同じ日奈久断層帯で起きたと、我々研究者たちは考えています。前回、日奈久断層帯の地震を起こさなかった部分(2016年熊本地震で断層運動しなかった部分)では、いずれまた近いうちに地震が起こるのではと、考えていました。ただ、それが明日なのか、10年後か100年後か発生時期に関してはわかっていませんでした。

Q発生の直前に、大地震を言い当てたという主張が度々拡散します。

毎日「明日、地震が起きるぞ」と言っていれば、いつかは必ず当たるという話ですね。もし本当に当てられるなら「次の地震が起きる前に、ぜひ教えて欲しい」とお願いします。

「地震を予知した」という話を科学的に証明するには、予知が当たった回数と外れた回数を比較して、適中率を出し、「この人の言うことは本当なのか」を検証する必要があります。でも、誰もそんなことはしていませんよね。

地震の誤情報にどう向き合う

Q今回拡散した情報をどう受け止めますか。

偽情報を見た時は、不安になったり拡散したりせずに、「また変なことを言ってるな」と聞き流してほしいです。拡散している人達は注目を集めるために言っているだけでしょうから。

判定

熊本地震について、「波形を見る限り人工地震」「今回の熊本地震の波形も人工地震の波形」などと主張する投稿が拡散した。専門家は「人工的な揺れの波形ではない」と説明しており、人工的な揺れであることを示す情報もないため、誤りと判定する。

出典・参考

国立研究開発法人防災科学技術研究所”強震観測網 K-NET・KiK-netK-NET”.https://www.kyoshin.bosai.go.jp/ja/,(閲覧日2026年8月20日).

検証:根津綾子
編集:古田大輔、藤森かもめ


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

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