自民党にポジティブなYouTube動画が激増 高市人気に引っ張られ、ショート動画で政策よりも印象勝負【#衆院選ファクトチェック 解説】

自民党にポジティブなYouTube動画が激増 高市人気に引っ張られ、ショート動画で政策よりも印象勝負【#衆院選ファクトチェック 解説】

政治や選挙に関する情報をYouTubeやTikTokで得る人が増え、生成AIによるディープフェイクなど、動画での偽・誤情報が増えています。日本ファクトチェックセンター(JFC)は、「どういう動画がどれだけ見られているか」について、選挙・政治の情報サイト「選挙ドットコム」が収集したデータをもとに解説します。

参考:JFC”参院選の動画、視聴上位は独立系YouTuberばかりでテレビ系は1割切る 自民に批判・参政は礼賛【#参院選ファクトチェック解説】

自民党に関する動画は圧倒的に「ポジティブ」

選挙ドットコムでは、選挙のたびにYouTubeで見られている政治・選挙関連の動画を政党別に収集・分析しています。今回は2026年衆院選に関連し、1月27~2月1日に公開されたYouTube動画を政党別に再生数上位から収集したデータを見てみます。

選挙ドットコムによると、政党別の分類は、YouTubeで各政党名で検索した結果を用い、タイトルをAIで分析して、各動画がそれぞれの政党についてポジティブかネガティブかを判定しています。

選挙ドットコムの鈴木邦和編集長は、今回の衆院選のYouTube動画について、「自民党に対してポジティブな動画が激増した」と指摘しています。

2025年の参院選では、選挙ドットコムの同様の調査で自民党に関する動画でポジティブなものは4%にとどまりました。2026年の衆院選では6割を超えています。鈴木編集長は次のように話します。

「参院選のときは、当時の石破茂首相に対するネットユーザーのマイナスイメージが強かった。今回は高市早苗首相の人気に引っ張られる形で自民党に対するポジティブな反応が増えています」(鈴木編集長へのインタビューは記事後半に)

再生数上位20本の合計再生数は2534万回を超え、そのうち13本がポジティブと判定されています。いいねの合計数は54万回を超えました。

中道に関する動画は「ネガティブ」一色に

一方で、立憲民主党と公明党が合併し、与党の対抗勢力として注目された中道改革連合はどうだったのでしょうか。動画の中には、立憲民主党、公明党を話題にしたものもありますが、中道改革連合に関する動画に限定して見てみます。

中道改革連合に関する動画の再生数上位20本の合計再生数は2700万回、いいね数は39万回を超えており、この数字だけを見ると、自民党に迫っているようにも見えます。しかし、20本全てがネガティブと判定されました。

これでは多く視聴されたとしても、中道の勢いにはつながりません。

動画を作っているのは主に匿名投稿者

動画の投稿者は、誰なのでしょうか。

選挙ドットコムによると、2025年参院選の調査では、選挙に関する動画の92.5%は政党や政治家以外の「第三者」、特に独立系のYouTuberが作っていました。一方、2026年の衆院選は、第三者による動画は85%でした。

日経新聞の独自調査では、衆院選に関するYouTube動画の再生数の7割が匿名投稿者によるものだったと分析しています。政党・政治家15%、ネットメディア6%、インフルエンサー・専門家5%、報道機関3%と続いており、匿名による動画作成が大半を占めました(日経”衆議院選挙のYouTube再生数、7割が匿名投稿 政党発信の4.6倍”)。

偽・誤情報は? 事実よりも雰囲気

人気の動画の中に、偽・誤情報はどれだけ混じっていたのでしょうか。すべての動画の検証は時間的に厳しいため、政党別に再生数上位10本ずつをJFCが見たところ、そのほとんどが「事実」の提示ではなく、「雰囲気」を伝える内容でした。

例えば、自民党に関する動画で人気のものには、以下のようなタイトルのものがあります。

・【総理の朝】お化粧パタパタってやってます!#ニュース #政治 #自民党 #高市早苗

・【爆笑】自民党候補の決め台詞に爆笑してしまう大臣 #ニュース #政治 #片山さつき

・【※サナエ人気が炸裂】オールドメディア(in姫路)は絶対に報じない高市人気!とんでもない人だかり! みんな見てくれてるよ #自民党 #shorts #ショート #高市早苗 #選挙 #総理大臣 #衆議院

一方で、中道改革連合に関する動画は、以下のようなものでした。

・【よねやんパニック😅】中道改革連合・米山隆一、路肩に寄せてあった雪を道路にぶちまけだしてしまう。#中道改革連合 #中道 #中道改革 #政治ニュース #政治 #政治問題 #最新ニュース #最新情報

・【絶句】安住淳氏、親族の訴えを鼻で笑う。被災者の声を「押し付け」「乱暴」と一蹴して「こっちだって助けてもらいたい」。 #衆院選 #中道改革連合 #立憲民主党

・議席狙いで中道入りした左翼議員の末路w

これらはいずれも短いショート動画で、ファクトチェックには不向きです。客観的な検証が可能な根拠や論理を提示するというよりは、政党や候補者に対する「快・不快」を示す意見のような作りだからです。

影響工作の存在は?

2025年の参院選では、ロシアがネット世論の操作に介入している「影響工作」があったのではないかと報じられ、政府からも警戒する発言が相次ぎました(読売新聞”外国からの選挙介入「日本も対象」、SNSで政府に批判的な大量投稿や日米分断あおる内容確認…政府警戒”)。

高市政権をめぐっても、台湾有事に関する発言以降、中国による影響工作を示唆する事例が報じられています(JFC”高市発言後に急増した日中めぐる偽情報 動画を改ざんして「琉球独立」煽る認知戦”)。

人気動画の中には、比較的新しいものや、知られていないアカウントから発信されているものもあります。鈴木編集長に「不自然な拡散はあったのか」とたずねたところ、「私たちの調査手法ではそれはわからない」との回答がありました。

ある動画が誰から投稿されているのか、拡散させているのは誰か、再生数を稼いでいるのはbotではないか、など複雑な分析が必要になるため、影響工作を明らかにする調査には資金と時間が必要です。

ただ、再生回数が100万回を超えているのにコメントがほとんどついていないような動画は、広告機能を使って再生数を増やしていると考えられます。また、近年のYouTubeのアルゴリズムでは、立ち上げたばかりで登録者がほとんどいないチャンネルの動画でも、爆発的に見られることがあります。

鈴木編集長は「その傾向はTikTokで特に強くて、新しいアカウントの投稿がいきなり凄まじい視聴数を稼ぐこともあります。そのぶん、『不自然なアカウント』を見極めにくくなってます」と指摘します。

鈴木編集長インタビュー「安倍政権支持者が高市政権で戻ってきた」

--衆院選でのYouTube視聴の特徴は何でしょう?

一番大きいのは、自民党に対するボジティブな反応が激増したことです。視聴数も各政党の中で最も多い中で、ポジティブな反応が6割を超えています。昨年の参院選はポジティブな反応は4%しかなかった。

参院選のときは当時の石破茂首相に対するネットユーザーのマイナスイメージが強かったのが、今回は高市早苗首相の人気に引っ張られる形で自民党に対するポジティブな反応が増えています。

--もともと、安倍政権時代はネットユーザーの間では自民党の人気が高かった。それが数年ぶりに戻ってきたということでしょうか。

その通りです。私たちは選挙に関するネットのデータを継続的に見ています。安倍政権時代にネットで自民党を応援していた、保守的な傾向が非常に強い人達がここ数年離れる傾向にあり、特に自民党の中では比較的リベラルと言われていた石破政権時代には、国民民主党や参政党への支持につながる面があった。

それが、安倍政権の後継を口にする高市政権の誕生によって戻ってきています。高市氏が昨年の総裁選に勝ったぐらいから、その傾向が顕著に出ています。

--人気動画のほとんどはショート動画です。

政策を訴えるものではなく、高市氏を中心に候補者をポジティブに伝えるようなものが多いです。

--視聴数の多さが不自然に多いのではないかという指摘もあります。

視聴数がやたらと多いのに、コメントやシェアがほとんどされていないものがあります。そういう動画は広告で回していると推定されます。

--参院選では外国勢力が情報を意図的に拡散させる「影響工作」が話題になりました。YouTubeの視聴データから気になるものはありますか。

私たちの調査手法だとはっきりとはわかりません。比較的新しいチャンネルや登録者数が少ないのに、動画再生数が伸びているものもあります。しかし、これらは不自然なシェアで伸びているというよりは、現在のYouTubeアルゴリズムの特徴で、登録者数の多さとは関係なく、見られる動画はどんどん視聴数が伸びていきます。

その傾向はTikTokで特に強くて、新しいアカウントの投稿がいきなり凄まじい視聴数を稼ぐこともあります。そのぶん、「不自然なアカウント」を見極めにくくなってます。


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

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世界のファクトチェッカーが集結/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

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6月17-19日の3日間、リトアニアの首都ビリニュスで、世界中のファクトチェッカーが集まる毎年恒例の「GlobalFact」が開催され、日本ファクトチェックセンターからも私を含む2人が参加しました。 対面の参加者は、昨年のリオデジャネイロに続いて約300人。2年前のサラエボ、3年前のソウルの500人規模と比べると減っています。ファクトチェックを支える資金援助が世界的に減っているからです。 ファクトチェックが盛んな欧州で開催されたにも関わらず、参加者が南米開催の昨年と同規模だったということは、国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)に加盟している約170団体の経済的な苦境が、さらに深刻になっていることを示しています。 3日間で開催された全体会合や分科会では、リトアニアの地政学的な背景から、ロシアからの影響工作に関する議論が盛んでした。また、年々増加しているAIにうよるディープフェイクにどう対抗するか。逆にAIをどのようにファクトチェックに活用するかも、昨年に続いて人気のセッションとなっていました。 具体的な内容については、順次記事にしていきたいと思います(古田大輔

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高市首相が英国でサッチャー元首相の写真を見せながら歩いた? 写真は英首相官邸の名物ネコ【ファクトチェック】

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高市早苗首相が「クリアファイルにサッチャー元首相の写真を入れて歩いていた」という投稿がXで拡散しましたが、誤りです。高市首相が持っていた写真は、サッチャー氏ではなく、英国首相官邸の名物猫です。 検証対象 拡散した投稿 2026年6月16日、「イギリスの方々がドン引きな理由が分かりましたよ!何と高市早苗はクリアファイルにサッチャーの写真を入れてわざと見せてアピールして歩いていたんですよ!イギリスの首相スターマーはサッチャー嫌いで有名なのにクリアファイルにサッチャーの写真を入れて謎の1人行進をして歩いてるんですよ」という画像付き投稿がXで拡散した。 画像には、四角い写真のようなものを手に持ってアピールする高市首相の姿が添付されている。 検証する理由 この投稿は1万件以上リポストされ、表示回数は139万回を超えている。「ウソ情報はいけません」という指摘もあるが、「非常識」「トップと会う時に使うのは不適切」というコメントもあるため検証する。 検証過程 高市首相の英国訪問 高市首相は英国を訪問し、6月14日、スターマー首相と首相官邸で会談した(日テ

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偽・誤情報対策だけにとどまらない世界の議論/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

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ドイツ出張から帰国したばかりでしたが、今度はフィンランドに来ています(その関係で今週もニュースレターの配信が一日遅れてしまいました)。 水曜日から3日間、リトアニアで開催されるGlobal Fact2026に参加するためです。Global Factは年に1回、世界中のファクトチェッカーが集まり、偽・誤情報対策を議論する場です。 近年は影響工作やナラティブ分析など、単純な偽・誤情報を超えて、どのように対処すべきか世界各国の状況を共有する場ともなっています。 長年、ロシア帝国とソ連の支配下にあったバルト3国の一つ、リトアニアはロシアからの影響工作に対して、国を挙げて対応しています。Global Factでは重要な論点となるでしょう。 フィンランドも状況は似ています。世界最高水準のメディアリテラシー教育の状況も首都ヘルシンキで取材する予定です (古田大輔)。 ✉️日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら。

By 古田大輔(Daisuke Furuta)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

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日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は6月27日(土)午後4時~5時30分で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei0627.peatix.com 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にどのような知識

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理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

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日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

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日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

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