ファクトチェック業界の資金難と広がるコラボ IFCN報告書から見える世界の現状とは【解説】

ファクトチェック業界の資金難と広がるコラボ IFCN報告書から見える世界の現状とは【解説】

世界のファクトチェックをリードする国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)が、業界の現状をまとめた「ファクトチェッカー実態レポート」2024年版を公開しました。

IFCNの認証を受けた世界182のファクトチェック団体を対象に2025年1-2月にアンケートを実施。67カ国141団体から回答を得ました。4月2日の国際ファクトチェックデーを前にした毎年恒例の公開で、過去分はこちら(2018, 2019, 2020, 2021, 2022, 2023)。

30ページの英文レポートからは、Metaのファクトチェックプログラムの廃止などで資金難がさらに厳しくなっている現状と、収入の多様化や業界を超えたコラボレーションの広がりが見て取れます。

日本ファクトチェックセンター(JFC)はこれらの状況も踏まえ、日本での偽・誤情報、ファクトチェック、メディアリテラシーなどに関して、調和のとれた情報生態系を目指す「情報インテグリティシンポジウム」を4月2日に開催します。

会場とオンラインのハイブリッド開催です。参加や視聴のお申し込みなどはこちらからどうぞ。レポートに関する解説もあります。

情報インテグリティシンポジウムを4月2日開催 お申し込みはこちら
毎年4月2日の国際ファクトチェックデーに合わせ、一般社団法人セーファーインターネット協会(SIA)/日本ファクトチェックセンター(JFC)は、情報インテグリティシンポジウム「ファクトチェックとメディアリテラシー -調和のある情報空間を目指して-」を開催します。 会場となる慶応大学グローバルリサーチインスティテュートとの共催で、ライブストリーミングありのハイブリッド形式。多様な登壇者による議論で、ファクトチェックとメディアリテラシーの普及、偽情報対策の促進を目指します。 また、電通総研と共同実施した情報インテグリティ調査の概要やファクトチェックやメディアリテラシー教育の普及の現状なども発表します。 シンポジウム概要 日時:2025年4月2日(水) 14時00分~16時30分 場所:慶応大学 ※JFCのYouTubeアカウントでライブ配信 プログラム 開会あいさつ(14:00-14:05) 中妻照雄 氏(慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート 所長 慶應義塾大学経済学部 教授) 基調講演1: 情報インテグリティ調

「資金と経済的な継続性」への不安は89.3%

レポートによると、「ファクトチェック団体にとって最大の課題は」という質問に対して、最も多かった回答は「資金と経済的な継続性」で、回答した団体の89.3%に上りました。これは2023年版の83.7%からさらに増えています。

背景にあるのは今回の調査開始(1月22日)前に発表されたMetaによる第三者ファクトチェックプログラムの廃止です。プログラム廃止はアメリカで始まり、他地域についてMetaは方針を明らかにしていません。しかし、減ることはあっても増えることはないと、アメリカ以外の地域の団体も新たな収入源を模索しています。

プログラム廃止の影響は甚大です。IFCN認証団体の61.4%が参加し、その対価が収入の半分を超えるという団体がアンケートに回答した団体の36.3%に上るだけに、その他の助成金や寄付金を探るにしても奪い合いになってしまい、対策は簡単ではありません。

もともと少ない予算、収入源の多様化に活路

ファクトチェック団体の多くは小規模予算で成立

ファクトチェック団体の弱点であり、利点でもあるのは、もともと予算額が少ないことです。11.3%は年間2万ドル以下、29.1%は2万〜10万ドルで、日本円にして年間1500万円以下で活動している団体が全体の4割になります。

日本ファクトチェックセンター(JFC)は2023年度(2023年4月-2024年3月)の支出が約7000万円。これは国際大学グローバル・コミュニケーション・センターと実施した大規模調査などの特別な出費を含んでおり、それ以外では年間5000万円弱で運営できます。これは世界の団体で言うと、ちょうど中規模です。

フルタイム職員5人以下が4割

収入が少ないだけに、フルタイム職員の採用にも苦労します。フルタイム職員5人以下が4割、10人以下で全体の7割を占めます。2023年に比べると増加した団体が42.6%ありますが、それでも小規模チームがほとんどです。

今後予想される収入減に対し、チームが大規模であれば大幅な活動の縮小が避けられませんが、小規模チームであれば柔軟な対応をする余地が残されています。

プラットフォーム頼りから収入源の多様化に活路

アメリカのドナルド・トランプ大統領や政権の高官たちは、ファクトチェックへの否定的な言動で知られています。Metaのファクトチェックプログラム廃止もその流れを受けたものです。

これまで世界のファクトチェック団体はMetaとGoogleという世界の巨大プラットフォームからの経済的な支援に支えられてきました。レポートで各団体の収入源を聞いた中で最多の回答が「Metaのファクトチェックプログラム」、2位が「補助金・助成金」でした。この中にはGoogle/YouTubeからの補助金・助成金が多く含まれています。

MetaだけでなくGoogle/YouTubeからの支援も縮小すれば、多くの団体が立ち行かなくなります。そのため、各団体は収入源の多様化にも取り組んでいます。回答で目立つのは「TikTokのファクトチェックプログラム」「ユーザーの寄付やメンバーシップ」「広告」「トレーニング」「メディアとのパートナーシップ」などです。

JFCも「ファクトチェッカー認定試験」「講師養成講座」など、トレーニングの提供による事業収入を増やしつつある他、今後はメディアや企業などとのパートナーシップや研究開発への協力による収入の多様化を目指しています。

業界を超えて広がるコラボレーション

メディア・研究団体・NGO・テック企業とも

経済的な壁にぶつかっているファクトチェック団体ですが、より効果的な活動のためのコラボレーションは広がっています。

35.3%の団体は毎月かそれ以上のペースで他団体と協力しており、46%は年間2-5回、10.1%は年1回。2024年に一度も他団体との協力がなかったのは8.6%だけです。協力相手も「他のファクトチェッカー」79.4%、「メディア」70.9%、「学術・研究団体」56.7%、「NGO」52.5%、「テック企業」45.4%と多岐にわたります。

JFCも台湾、タイ、インドネシア、インドなど各国のファクトチェック団体と協力し、日々のファクトチェックだけでなく、若者向けにファクトチェックのスキルを競う国際大会を開くなど様々なコラボに取り組んでいます。

情報の検証力競う「ユースファクトチェック選手権」、日本で初開催 大学生ら5チームが世界大会へ
中高生から大学生を対象に、情報検証スキルを競うオンラインイベント「ユースファクトチェック選手権(英語名:Youth Verification Challenge)」が、日本で初開催されました。日本ファクトチェックセンター(JFC)と学生スタートアップClassroom Adventureが共催し、全国から60チーム約150人が参加しました。 ファクトチェックとリテラシーを実践的に学ぶ 選手権は日本、台湾、タイ、インドネシアのファクトチェック団体が共同で企画した国際的な取り組みで、参加者はネット上の情報を効率的かつ正確に検証する技術を学び、それを実践する課題に挑戦しました。 日本では、11月23日にプレイベントとして、ネット上の情報を効率的に探す「高度な検索」や、画像・動画の検証ツールの利用法や位置情報の特定技術(ジオロケーション)などについて学ぶセミナーを実施しました。 また、Classroom Adventureが開発した謎解きゲーム「レイのブログ」で実際にこれらの検証手法を使ったゲームに取り組みました。 検索やジオロケーションなど情報検証力を競う 11月30日に本選

また、国内外の企業と協力してAIを活用した検証ツールの開発やチャットボットの活用にも取り組んでいます。

4月2日には業界横断の「情報インテグリティシンポジウム」

コラボの一環として開かれるのが4月2日に開催する「情報インテグリティシンポジウム」です。

会場となる慶応大学グローバルリサーチインスティテュートとの共催で、ライブストリーミングありのハイブリッド形式。多様な登壇者による議論で、ファクトチェックとメディアリテラシーの普及、偽情報対策の促進を目指します。

また、電通総研と共同実施した情報インテグリティ調査の概要やファクトチェックやメディアリテラシー教育の普及の現状なども発表します。

ファクトチェッカー実態レポートのさらなる解説もありますので、ぜひこちらからお申し込みください。

情報インテグリティシンポジウムを4月2日開催 お申し込みはこちら
毎年4月2日の国際ファクトチェックデーに合わせ、一般社団法人セーファーインターネット協会(SIA)/日本ファクトチェックセンター(JFC)は、情報インテグリティシンポジウム「ファクトチェックとメディアリテラシー -調和のある情報空間を目指して-」を開催します。 会場となる慶応大学グローバルリサーチインスティテュートとの共催で、ライブストリーミングありのハイブリッド形式。多様な登壇者による議論で、ファクトチェックとメディアリテラシーの普及、偽情報対策の促進を目指します。 また、電通総研と共同実施した情報インテグリティ調査の概要やファクトチェックやメディアリテラシー教育の普及の現状なども発表します。 シンポジウム概要 日時:2025年4月2日(水) 14時00分~16時30分 場所:慶応大学 ※JFCのYouTubeアカウントでライブ配信 プログラム 開会あいさつ(14:00-14:05) 中妻照雄 氏(慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート 所長 慶應義塾大学経済学部 教授) 基調講演1: 情報インテグリティ調

ライブ視聴はこちら

シンポジウムは4月2日午後2時からJFCのYouTubeアカウントでライブ配信します。申し込みをしていない方も視聴は可能なので、ぜひ御覧ください。


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

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個人情報やカード情報、企業の情報漏洩を狙う偽メール・偽サイトに注意 共通する6つの手口は?【プレバンキング】

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2026年夏以降、不正アクセスによる個人情報の大規模な流出が相次いでいます。また、SNSでは「偽メールが届いた」などの報告が多数投稿されています。 日本ファクトチェックセンター(JFC)は、カード会社や宅配業者を装って個人情報やカード情報を盗み取ろうとする偽メールについて、繰り返し注意を呼びかけてきました。同様の事例は、企業や団体名を変えて、繰り返し広がっています。今回は、これまで検証してきた事例に共通する6つの「手口」を紹介します。 この記事は、偽・誤情報の手口を知ることで、同様の情報を目にしたときに騙されにくくする「プレバンキング」という予防的な取り組みです。詳しくは、JFC用語解説「プレバンキング」をご覧ください。 広がりやすい6つの手口 1. 実在の企業になりすます カード会社や宅配業者など、利用者の多い企業の名前やロゴを使って、公式の通知に見せかける手口です。 2026年10月、三井住友カードを名乗り「お客さまのアカウントに異常な利用を検知いたしました」という偽メールが確認されました。本文には同社のロゴや「Vpassで利用明細を確認」という

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)
セゾンカードを名乗る偽メールが拡散 送信元は不正アクセス発覚の「アララ」【詐欺注意】

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セゾンカードを名乗り、「メルカリで25万円余りの利用があったが、決済は完了していない」という文面で、別のリンクへ誘導する偽メールが確認されています。送信元は、第三者による不正アクセスが発覚したメール配信サービス「アララメッセージ」で、見分けにくいため注意が必要です。 偽メールの内容は 2026年10月29日、JFC編集部のメンバーのもとにセゾンカードを名乗るメールが届いた。 差出人の表示名は「セゾンカード」、件名は「利用内容確認のご依頼」。本文にはセゾンカードのロゴとともに「CARD USAGE NOTICE」「利用内容の確認」と記され、利用先「メルカリ」、利用金額「254,100円」と表示されている。 末尾には「利用内容確認の回答はこちら(所要時間:30秒)」というボタンがあった。高額な利用を示して不安をあおり、リンクボタンを押させようとする手口だ。 2026年10月末、類似したメールを受け取ったという投稿がX上にも散見された。編集部のメンバーへのメールでは、利用先がメルカリとなっていたが、ヨドバシカメラや楽天市場などの他サービスが利用先として表示され

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)
富山県知事が「県民をインド人に置き換える」と発表? そのような発表はない【ファクトチェック】

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「富山県知事が、県民をインド人に置き換えると発表した」「義務を課し権利を制限する『多文化共生条例』でがんじがらめにした上で、外国人を受け入れる」と主張する投稿が拡散しましたが、誤りです。富山県・新田八朗知事はそのような発表をしていません。県の多文化共生条例の素案には、「県民は、多文化共生推進に協力するよう努めるものとする」とありますが、努力規定で、義務を課したり権利を制限する内容ではありません。 検証対象 拡散した言説 2026年10月24日、「【悲報】県民をインド人に置き換えると発表した富山県知事」「義務を課し権利を制限する『多文化共生条例』でがんじがらめにした上で、外国人を受け入れる」などと主張する投稿がXで拡散した。 同一のアカウントが新田知事の10月19日の投稿写真を一部加工したうえで引用し、批判を繰り返している(例1,2)。 検証する理由 11月5日現在、投稿は多いもので7900回以上リポストされ、表示は159万件を超える。 投稿には「堂々の売国奴宣言、恐れ入る…」「つまり日本人差別をし、富山県知事は日本を売り渡す気なんだね」など、真に

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高市首相「ウクライナのために増税」? 動画は発言の一部を切り貼り【ファクトチェック】

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「ウクライナのために増税するって国民の理解得られてるの?」と高市早苗首相を批判する投稿がXで拡散しましたが、誤りです。動画は会議での高市首相の発言の一部を切り張りしたもので、実際には、日本の防衛力強化のために「2027年1月から所得税には1パーセント上乗せになる」と説明しています。ウクライナを支援するために増税するとは述べていません。 検証対象 拡散した投稿 2026年10月26日、「は?ありえないんだけど、、ウクライナのために増税するって国民の理解得られてるの?まじ意味不明なんだけど。ウクライナのために働いてないし、税金はウクライナのためじゃなくて国民のために使うべきだろ。他国の戦争の為に増税って歴史上聞いたことないよ」という投稿が動画とともにXで拡散した。 検証する理由 この投稿は1.8万件以上リポストされ、表示回数は219万回を超えている。「デマです」という反応もあるが、「ウクライナのために増税するのか」などと真に受けたコメントも多数あるため検証する。 検証過程 動画の内容は 拡散した動画は約27秒だ。動画では「戦略3文書の改訂に向け

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日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

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日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や騙されない人の行動

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