JFCの体制や資金に関する報道について 運営委員会見解

JFCの体制や資金に関する報道について 運営委員会見解

スローニュース社が5月21〜23日に配信したファクトチェックに関する3本の記事で、日本ファクトチェックセンター(JFC)について、運営体制や資金源の透明性などに問題があるのではないかとの指摘がありました。

JFCの運営については、設立時から運営体制や資金提供元を公表し、適宜説明を追加して参りましたが、運営委員会より改めて下記のとおりご説明申し上げます。また、今後につきましても、必要に応じて適宜説明を追加し、読者の皆様に安心して記事を読んでいただけるように心がけていく所存です。

ガバナンス体制について

JFCの運営にあたっては、「編集権の独立」が重要との視点に立ってガバナンス体制を工夫し、日本ファクトチェックセンター設置規程ファクトチェックガイドラインで詳細を定めています。

具体的には、運営委員会はファクトチェックガイドラインを定めるほか、事後的に個別の記事について編集部に質す権限を持っていますが、日々の記事については編集部が独自に題材を選び配信をしています。一般社団法人セーファーインターネット協会(SIA)は運営主体として法的な責任を持つとともに事務局業務を担っており、編集活動には携わっていません。

運営委員の任免は、設置規程によれば、監査委員会の意見を聴取しSIAが行うとされています。実務が先行した関係で、現在まで監査委員会が設置されておりませんが、2024年内に監査委員会の設置及び開催を予定しており、設置後速やかに、設置規程に則り、現在の運営委員の適正性等について監査委員会の意見聴取を行うよう、事務局には要請しております。なお、編集長については設置規定に則り運営委員会の推薦に基づきSIAが任命しています。

一般のメディア企業においても、経営側が編集長の任免権限や予算権限を有した上で、経営と編集とのファイアウォールを設けているのが通常であると理解しており、この点について設置規程で定めた体制に問題があるという認識はございません。

なお、言うまでもなく、運営委員会の委員は独立した立場で委員としての活動を行っています。

資金の拠出元について

まず、上記のとおり、「編集権の独立」を重視するガバナンスとしているため、政府が資金提供を条件にファクトチェックの内容、記事の編集、組織の運営方針について介入また強制するなど、編集権の独立を妨げる形態で、政府から資金提供・助成を受けたことはこれまでにありません。また、今後もそのような形態で助成は受けるつもりはありません。

資金の拠出元については、2022年9月の設立記者発表において、Google.orgから2年間で150万ドル、ヤフー株式会社から初年度2000万円の拠出を受けた旨公表し、広く報道されたとおりです。

なお、2023年3月のIFCNへの加盟申請時に、5%以上の資金源についてWEBサイト上で開示していなかったことについては、既に記者発表等で公表していたため改めてWEBサイトにて手当することに思い至らなかったためですが、こちらは誤りに気づき、2024年1月にJFCのWEBサイト上に収支報告の掲載を行った上で、この度の更新申請に際しても修正の上申請しています。

警察庁事業について

IFCNが申請書の設問で求めているものは下記のとおり前年度までの期間についてです。IFCNに申請したのは2023年3月16日であり、2023年3月16日(2022年度)を基準として、その前会計年度は2021年度(2021年4月〜2022年3月まで)となります。

これに対して、SIAと警察庁のインターネット・ホットラインセンターの契約は2021年3月(2020年度)に終了していますので、設問の範囲外となりますから記載しておりません。

Criteria 1.5
The applicant’s editorial output is not, in the view of the IFCN, controlled by the state, a political party or politician.

Please explain any commercial, financial and/or institutional relationship your organization has to the state, politicians or political parties in the country or countries you cover. Also explain funding or support received from foreign as well as local state or political actors over the previous financial year.

運営委員会

JFC運営委員会の詳細とSIA・JFCの体制については、JFCの体制で解説しています。運営委員は以下の通りです。

運営委員長 曽我部 真裕(京都大学大学院教授)
副委員長  山本 龍彦(慶應義塾大学大学院教授)
委員    市原 麻衣子(一橋大学大学院教授)
委員    小川 一(毎日新聞客員編集委員)
委員    平 和博(桜美林大学教授)
委員    水谷 瑛嗣郎(関西大学准教授)

検証の手法に関するJFC編集部の見解

SlowNewsの記事ではJFCの検証手法に関する指摘もありました。そちらに関しては編集部が見解を公表しています。

SlowNews記事「検証手法を検証する」へのJFC編集部見解
日本ファクトチェックセンター(JFC)は2022年10月の発足から1年半、日々、正確で透明性の高いファクトチェックに取り組んでいます。この度、SlowNewsで公開されたフロントラインプレスの記事でご指摘を受けたJFCのファクトチェック手法への疑問や懸念も参考にしつつ、今後はさらに体制を拡充し、より幅広く難易度が高い検証に取り組んでいきたいと考えております。 SlowNewsの記事の読む中で、ファクトチェックの方法論に関し、私たちの言及が不足していた部分もあるかと思い、Webサイトに公開している点も含めて、改めて説明させていただきます。 なぜオープンソースに頼るのか 「公開」「透明性」の原則 SlowNewsの記事「ファクトチェックの『検証手法』を検証する」は「公的機関のオープンソースに頼る手法には限界があるのではないか」と指摘し、また、「JFCのファクトチェックには当事者・関係者取材が乏しく、公開データのみで真偽を判断するものも目立つ」と評しています。 (ただし、SlowNewsの記事が出た時点でJFCが公開している300本を超えるファクトチェック記事の


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

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東京都議選、偽誤情報の影響は/検証5本・関連18本【今週のファクトチェック】

東京都議選、偽誤情報の影響は/検証5本・関連18本【今週のファクトチェック】

東京都議選が始まりました。2024年の兵庫県知事選をきっかけにネット上の真偽が不確かな情報が投票に大きな影響を与えることが日本でもようやく認識されるようになり、新聞社やテレビ局などもファクトチェックを始める動きが出ています。ただ、一人を選ぶ大統領選型の知事選と異なり、都議選のように候補者も当選者も多い選挙では、対決型の構図が作りにくく、偽・誤情報も何か1つの大きなナラティブ(物語の語り口)を形成するというよりは、様々なテーマが同時多発的に広がり、検証対象を選びにくくなりがちです。選挙結果だけではなく、そのような選挙の信頼性・正当性を貶めるような情報にどのように対応していくかも注目されます。(古田大輔) ※今週から冒頭にミニコラムをつけるようにしました。ご意見・ご感想などはこちら。 ✉️日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら。 JFCからのお知らせ JFCファクトチェック講師養成講座はこちら

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
アメリカ産のミニマムアクセス米は除草剤などで健康に影響? 輸入時に安全検査

アメリカ産のミニマムアクセス米は除草剤などで健康に影響? 輸入時に安全検査

「アメリカ産のミニマムアクセス米には、除草剤・殺虫剤等が頻繁に使われていて健康に影響がある」という趣旨の投稿がXで拡散しましたが、誤りです。アメリカ産に限らず、政府が輸入するコメは、農林水産省と厚生労働省が安全検査をしており、基準に満たないコメは輸出国に送り返したり、廃棄したりしています。 検証対象 2025年6月6日、「アメリカ産のミニマムアクセス米には、除草剤・殺虫剤等が頻繁に使われている」という趣旨の投稿がXで拡散した。 投稿には、ニュース番組のような動画が添付され、小泉進次郎農水相が「備蓄米を使い終わったら、ミニマムアクセス米も含め、あらゆる選択肢を考えてコメ価格の高騰を落ち着かせる」などと話している。 また、動画には「ミニマムアクセス米という、除草剤、殺虫剤等の農薬が頻繁に使われていて、発がん性、内分泌かく乱作用、生殖能力への影響などの懸念があり、生態系への影響も指摘されているアメリカ産米」という文言も添えられている。 コメントには、「日本人の身体どうなってしまうんだろう?」や「米国の生産者は残留農薬のことなんてアタマにありませんから」などの意

By 根津 綾子
シンガポールでワクチン接種拒否が犯罪に?  法律の変更はなく当局も否定【ファクトチェック】

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シンガポールでワクチン接種を拒むと犯罪として処罰される法案が通ったという趣旨の情報が拡散しましたが、誤りです。シンガポールには、1977年から、感染症の流行が差し迫った状況に限ってワクチン接種を義務づけることができる法律がありますが、法律が新たに変更されたわけではなく、当局も否定しています。 検証対象 2025年5月13日、「シンガポール『ワクチン接種拒否』を犯罪化/国が義務付けた接種を拒否すると、懲役6ヶ月、さらに常習犯の場合は懲役1年の刑」という投稿が拡散した。 この投稿は、2025年5月12日の別の人物による英語の投稿を引用リポストする形で、日本語で要約したものだ。英語の投稿にはSlay Newsという、アメリカに拠点を置く独立系メディアで、2025年5月7日付の記事リンクがついている。 記事は「シンガポール国民、ワクチン拒否で投獄の可能性――政府が『反ワクチン派』を犯罪者扱いするよう法律を改正」というタイトルで、マイクロソフト共同創業者でワクチン普及を推進しているビル・ゲイツ氏の訪問が法改正に影響したと示唆している。 2025年6月5日現在、拡散

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
石破首相が海外から研究者を呼ぶために10兆円使う? 大学ファンドの一部 【ファクトチェック】

石破首相が海外から研究者を呼ぶために10兆円使う? 大学ファンドの一部 【ファクトチェック】

石破茂首相が海外から研究者を呼ぶために10兆円使うと宣言したという投稿が拡散しましたが、誤りです。もともと準備されている「10兆円規模の大学ファンド」の一部を活用する考えを示しただけです。 検証対象 2025年6月7日、「石破総理、海外から研究者を呼ぶために10兆円使うと宣言。なお、日本政府が日本人の子どもに使う教育予算は4兆円です」という投稿が拡散した。 2025年6月10日現在、この投稿は1.7万件以上リポストされ、表示回数は320万回を超える。投稿について「ほら、財源あるんじゃん」「狂ってる」というコメントの一方で「流石にミスリーディング」という指摘もある。 検証過程 リンクの記事が言及しているのは「10兆円ファンド」 拡散した投稿にはTBS NEWS DIGが2025年6月4日にYahoo!ニュースに配信した「【速報】トランプ政権が大学への圧力を強める中 日本政府10兆円ファンド活用し海外研究者を招へいへ 石破総理が表明」という記事が添付されている。 記事では、トランプ政権がアメリカの大学への圧力を強める中で「石破総理は10兆円ファンドも

By 木山竣策

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

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日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は6月21日(土)午後2時~3時半で、お申し込みはこちら。 https://jfckousiyousei0621.peatix.com 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にどのよう

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

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日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験  教材と申し込みはこちら

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日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)