ファクトチェックと検閲の違いとは 「情報を消すのではなく追加する」 IFCNサラエボ宣言

ファクトチェックと検閲の違いとは 「情報を消すのではなく追加する」 IFCNサラエボ宣言
第一次世界大戦の発端となったサラエボ事件のラテン橋=2024年6月25日、古田大輔撮影

世界のファクトチェックをリードする国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)は6月25日、「表現の自由とファクトチェックに関するサラエボ宣言」を公表しました。日本ファクトチェックセンター(JFC)を含む世界80カ国130のファクトチェック組織が署名しています。

ファクトチェックと表現の自由の関係

ファクトチェッカーはオンライン検閲者か

情報の真偽を検証するファクトチェックは、特に2016年のアメリカ大統領選や2020年からの新型コロナウイルスに伴う大量の偽情報・誤情報の拡散に対し、その重要性が注目され、世界に広がりました。

この間、IFCNの認証を受けたファクトチェック組織は2016年9月の35団体から2024年にはJFCを含む177(再審査中含む、6月26日現在)にまで増えています。

一方でファクトチェッカーに対する批判も世界中で見られます。その一つが「オンラインの検閲者だ」というものです。ファクトチェックで誤りを指摘することを、表現の自由や言論の自由への弾圧だと捉える批判です。

「検閲は情報を削除するが、ファクトチェックは追加する」

「ファクトチェックと表現の自由に関するサラエボ宣言」では「検閲は情報を削除するが、ファクトチェックは追加する」と、検閲との違いを明確に指摘しています。宣言ではファクトチェックを以下のように説明しています。

「ファクトチェックは、誤った情報、ミスリーディングな情報、または重要な文脈を欠いたメッセージを修正し明確にするための証拠を提供することを目的としています。ファクトチェックはこれらのメッセージを完全抹消または削除することを目的としていません。公共の議論の一部として保存し、その議論を正確に伝えるために必要な証拠を提供します」

アテンションエコノミーへの警鐘

また、SNSや動画プラットフォーム上で大量に拡散する偽情報や誤情報にどう対応するか、世界中で議論が続いていることにも言及しています。

宣言では「実際の害を引き起こす場合、一部の情報は削除されることがありえる」と指摘した上で「誤った主張が単に誤っているというだけで削除されるべきではありません。代わりに、公衆が主張の真偽を判断するための適切な文脈と検証を提供するべきです」と主張しています。

同時に「誤った主張が人気やバイラル性で報われるべきではありません」とも述べています。これは大量のコンテンツとユーザーが集まるプラットフォームにおいて、人の注目を集めることが、そのコンテンツの正確性以上に経済的な利益に結びつくアテンションエコノミーに警鐘を鳴らすものです。

以下の日本語訳はJFCによるものです。英語の原文はこちらをご確認ください。

表現の自由とファクトチェックに関するサラエボ宣言(日本語訳)

2024年、ボスニア・ヘルツェゴビナのサラエボで開催された世界のファクトチェッカーによる年次会議「第11回グローバルファクト」において、私たちは世界中のすべての人々のための、情報へのアクセスと表現の自由に対する長年の責任ある関与を再確認する時が来ました。

すべての人々には情報やアイデアを求め、受け取り、伝える権利があります。ファクトチェックはこれらの原則に深く根ざしています。ファクトチェックには、情報源を見つけ、幅広く読み、率直に話せる専門家にインタビューする権利と能力が必要です—これらすべては厳格な方法論とプロセスの一環として実施されます。これが真のファクトチェックが成立する基盤です。ファクトチェックは自由な報道と質の高いジャーナリズムの一部であり、公共の情報と知識に貢献します。

ファクトチェックは、誤った情報、ミスリーディングな情報、または重要な文脈を欠いたメッセージを修正し明確にするための証拠を提供することを目的としています。ファクトチェックはこれらのメッセージを完全抹消または削除することを目的としていません。公共の議論の一部として保存し、その議論を正確に伝えるために必要な証拠を提供します。

それにもかかわらず、ファクトチェッカーは近年、オンライン検閲者であるとして執拗に攻撃され、多くは、誹謗中傷、個人情報の暴露、組織的な攻撃、法的な脅迫、政治的な圧力、さらには身体的な暴力に晒されてきました。しかし、言論の一形態として、ファクトチェックは真の意味で検閲と見なすことはできません。検閲は情報を削除しますが、ファクトチェックは情報を追加します。

メディアやオンライン企業が言論をどのように受け入れていくか、テックプラットフォームが公共の投稿をどのようにキュレートまたはモデレートするか、そして社会全体として違法または有害な言論をどのように定義し、扱うべきかについての必要な議論がこれまでもあり、これからも続くでしょう。実際の害を引き起こす場合、一部の情報は削除されることがありえますが、誤った主張が単に誤っているというだけで削除されるべきではありません。代わりに、公衆が主張の真偽を判断するための適切な文脈と検証を提供するべきです。同時に、誤った主張が人気やバイラル性で報われるべきではありません。さらに、新しい人工知能(AI)ツールの到来により、誤まった情報を広める可能性についての認識が高まり、正確性の重要性はこれまで以上に重要になっています。

公衆は、政府、経済、健康、そして生活のすべての側面について決定を下すために、正確な情報を必要としています。ファクトチェックは、公衆に正確な情報を提供し、情報エコシステムを改善するための重要な部分です。

宣言に署名したファクトチェック機関(ABC順)

211check (South Sudan) • AAP FactCheck (Australia) • Africa Check (Senegal, Nigeria, Kenya, South Africa) • Agence France-Presse (France) • AkhbarMeter Media Observatory (Egypt) • Animal Político-El Sabueso (México) • Annie Lab (Hong Kong) • Aos Fatos (Brazil) • APA – Austria Press Agency (Austria) • Beam Reports (Sudan) • Belarusian Investigative Center (Czech Republic) • Bolivia Verifica (Bolivia) • BOOM (India, Myanmar, Bangladesh) • The Canadian Press (Canada) • Centar za demokratsku tranziciju / Raskrinkavanje.me (Montenegro) • Check Your Fact (United States) • Chequeado (Argentina) • CivilNet.am (Armenia) • Colombiacheck (Colombia) • Congo Check (Democratic Republic of the Congo, Congo and Central African Republic) • CORRECTIV (Germany) • Cotejo.Info (Venezuela) • Delfi Estonia / Eesti Päevalehe Faktikontroll (Estonia) • Delfi ‘Melo detektorius’(Lithuania) • Demagog (Poland) • Demagog.cz (Czechia) • Demagog.sk (Slovakia) • Détecteur de rumeurs (Canada) • Digital Forensics, Research and Analytics Center (India) • doğruluk payı (Türkiye) • dpa (Germany) • DUBAWA (Nigeria, Ghana, Liberia, Sierra Leone, Senegal, and the Gambia) • EFE Verifica (Spain) • Ellinika Hoaxes (Greece) • Estadão Verifica (Brazil) • Fact-Check Ghana (Ghana) • Fact-o-meter / Maharat Foundation (Lebanon) • Factcheck.bg (Bulgaria) • FactCheck.org (United States) • Factcheck Georgia (Georgia) • Factcheck Lab (Hong Kong) • FactCheckHub (Nigeria) • FactCheckNI (Northern Ireland) • FactCheckZW (Zimbabwe) • Factcheck.Vlaanderen (Belgium) • Factchequeado (United States) • FactCrescendo (India, Sri Lanka, Bangladesh, Myanmar, Cambodia, Thailand) • Factly (India) • Factnameh (Iran) • FactSpace West Africa (Ghana, Liberia, Sierra Leone, Nigeria and the Gambia) • Factual.ro (Romania) • FactWatch (Bangladesh) • Faktisk.no (Norway) • Faktograf(Croatia) • Faktoje (Albania) • Fakt Yoxla (Azerbaijan) • Fatabyyano (Middle East & North Africa) • Fast Check CL(Chile) • First Check (India) • France 24 Observers (France) • Full Fact (UK) • Fundación Maldita.es (Spain) • Greece Fact Check (Greece) • Gwara Media (Ukraine) • The Healthy Indian Project (India) • Hibrid.info (Kosovo) • India Today Fact Check (India) • InFact (Japan) • Internews Kosova / KALLXO (Kosovo) • Istinomer (Serbia) • Japan Fact-check Center (Japan) • The Journal FactCheck (Ireland) • Källkritikbyrån (Sweden) • Knack Magazine(Belgium) • KRIK / RasKRIKavanje (Serbia) • Lakmusz (Hungary) • The Lallantop (India) • Lead Stories (United States) • Les Surligneurs (France) • Litmus (Japan) • The Logical Indian (India) • Logically Facts (Ireland, UK, Europe, India) • Lupa(Brazil) • Mafindo (Indonesia) • Mala Espina (Chile) • MediaWise (United States) • Metamorphosis Foundation(North Macedonia) • MyGoPen (Taiwan) • Myth Detector (Georgia) • NepalFactCheck.org (Nepal) • Nest Center for Journalism Innovation and Development NGO (Mongolia) • Newschecker (India, Nepal, Bangladesh) • NewsMeter(India) • Newsmobile (India, US, Asia Pacific) • Newtral (Spain) • Observador (Portugal) • Open (Italy) • PA Media (UK and Ireland) • Pagella Politica & Facta (Italy) • Patikrinta 15min (Lithuania) • PesaCheck (Africa) • Polígrafo (Portugal) • PolitiFact (United States) • Pravda Association (Poland) • Press Trust of India (PTI) (India) • PressOne.PH (Philippines) • Probe (Philippines) • Provereno.Media (Estonia-Russia) • The Quint (India) • Rappler (Philippines) • Razkrinkavanje.si / Oštro (Slovenia) • Re:Baltica (Latvia) • The Red Flag (Myanmar) • RMIT ABC Fact Check (Australia) • RMIT FactLab (Australia) • Science Feedback (France, United States) • La Silla Vacía (Colombia) • Snopes (United States) • The Stage Media (Liberia) • StopFake (Ukraine) • Stopfals.md(Republic of Moldova) • T Verifica – Noticias Telemundo (United States) • Taiwan FactCheck Center (Taiwan) • Tech4Peace (Iraq) • Telugupost (India) • Tempo(Indonesia) • Teyit (Türkiye) • Tirto.id (Indonesia) • TjekDet (Denmark) • UOL Confere (Brazil) • VERA Files(Philippines) • Verificador LR (Peru) • Verificat (Spain) • Verify Media Platform (Turkey, Norway, Syria) • VishvasNews (India) • YouTurn (India) • Zašto ne / Istinomjer / Raskrinkavanje (Bosnia)


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

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