ワクチン接種で献血禁止の偽情報/AI動画にラベルをつける取り組み/欧州議会選挙と偽情報・情報工作【注目のファクトチェック】

ワクチン接種で献血禁止の偽情報/AI動画にラベルをつける取り組み/欧州議会選挙と偽情報・情報工作【注目のファクトチェック】
✉️

日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら

ワクチン接種で献血が禁止になるという言説が再び拡散。詐欺サイトに誘導するために新聞社を装ったアカウントが登場しました。AIで生成された動画・画像にラベルをつける取り組みをTikTokが開始するという発表がありました。欧州では、来月に迫った欧州議会選挙を前に偽情報の拡散や情報工作への警戒感が高まっています。

JFCのファクトチェック記事

「日本政府がコロナワクチン接種者の献血を禁止」は誤り

日本政府がコロナワクチンを接種した人の献血を禁止するという言説が拡散しましたが、誤りです。日本赤十字社では接種から一定期間が経過すれば献血を受け入れています。「ワクチン接種者の献血禁止」は繰り返し拡散しています。

「日本政府がコロナワクチン接種者の献血を禁止」は誤り 接種から一定期間経過すれば献血できる【ファクトチェック】
日本政府がコロナワクチンを接種した人の献血を禁止するという言説が拡散しましたが、誤りです。日本赤十字社では接種から一定期間が経過すれば献血を受け入れています。「ワクチン接種者の献血禁止」は繰り返し拡散しています。 検証対象 2024年5月1日、X(旧Twitter)で、「日本政府はワクチンを接種した人の献血を禁止。”汚染された血液”」というコメントと、岸田文雄首相の写真を付けたポストが拡散した。ポストは、科学者を名乗る人物の英文の投稿「Japan to ban vaccinated people from donating ‘tainted blood’」を引用している。 5月7日から8日にかけてこの投稿はXによって削除されたが、120万を超える閲覧数があり、「80%の日本人のは、もう献血できない」「日本赤十字社どうするんだろうね?」 と言ったコメントがついたほか、「こないだ献血しましたよワクチン2回と問診にこたえてますが」という投稿に疑問を投げかけるコメントもあった。 検証過程 日本ファクトチェックセンター(JFC)は、厚生労働省医薬局血液対策課に取

杉田水脈氏「『民族衣装のコスプレおばさん』なんて投稿していない」 は誤り

自民党の杉田水脈衆議院議員が「そもそも『民族衣装のコスプレおばさん』なんて投稿していません」とX(旧Twitter)に投稿しましたが、誤りです。2016年2月に投稿した記録がアーカイブで残っており、2022年11月の参議院予算委員会で杉田氏自身も認めています。

杉田水脈氏「『民族衣装のコスプレおばさん』なんて投稿していない」 は誤り 自身が国会で認め、記録も存在【ファクトチェック】
自民党の杉田水脈衆議院議員が「そもそも『民族衣装のコスプレおばさん』なんて投稿していません」とX(旧Twitter)に投稿しましたが、誤りです。2016年2月に投稿した記録がアーカイブで残っており、2022年11月の参議院予算委員会で杉田氏自身も認めています。 検証対象 2024年5月2日、自民党の杉田水脈衆議院議員がX(旧Twitter)で、「杉田水脈議員の在日コリアン投稿 人権侵犯と認定 大阪法務局」というNHKの記事(2023年10月)を否定した。 杉田氏は、NHK記事を引用した別アカウントに返信する形で「残念ながらこのNHKの記事、事実とは程遠いです。そもそも『民族衣装のコスプレおばさん』なんて投稿していませんし」などと主張している。 2024年5月7日時点で、杉田氏のポストは180万回以上の視聴と3600回のリポストがあり、引用元のコメントにも37万回以上の閲覧がある。 検証過程 日本ファクトチェックセンター(JFC)は、杉田氏が「民族衣装のコスプレおばさん」と投稿したかどうかを調べた。 「大阪法務局が杉田氏を人権侵犯と認定」と各社が報

東京新聞編集局の偽Xアカウントが出現

東京新聞編集局の偽Xアカウントが出現しています。公式アカウントが「投資の勧誘をする『なりすまし』アカウントが確認されています。東京新聞とは全く関係ありません」と注意を呼びかけています。

東京新聞編集局の偽Xアカウントが出現 公式が注意喚起
東京新聞編集局の偽Xアカウントが出現しています。公式アカウントが「投資の勧誘をする『なりすまし』アカウントが確認されています。東京新聞とは全く関係ありません」と注意を呼びかけています。 リプライに投資を呼びかける偽アカウント X(旧Twitter)で東京新聞編集局の投稿にリプライ形式で投資を呼びかけるなりすましのアカウントが出現した。 2024年5月8日、東京新聞編集局の公式アカウントが「『東京新聞編集局』を名乗って、同じアイコン、背景を使って投資の勧誘をする『なりすまし』アカウントが確認されています。東京新聞とは全く関係ありません」と注意を呼びかけている。 なりすましアカウントは、公式アカウントの投稿にツリー形式で表示されるリプライを付けている。公式アカウントと同じアイコンでLINEの友達追加を促している。 公式アカウントは8万以上のフォロワーがいるのに対し、偽アカウントは5月9日15時の時点で0人だ。またIDも英数字の羅列になっている。 あとがき 著名人のなりすましアカウントや偽の広告がSNSに次々と出てきています。詐欺サイトへの誘導や個人情報

「ファッションの祭典『メットガラ』にケイティ・ペリーが登場」は誤り

歌手のケイティ・ペリーが、バラをあしらったドレス姿で、ファッションの祭典「メットガラ」に参加したかのような画像が拡散しましたが、誤りです。画像はAIで生成されたもので、ケイティ本人がメットガラに出席していないと否定しています。

「ファッションの祭典『メットガラ』にケイティ・ペリーが登場」は誤り 画像は生成AI【ファクトチェック】
歌手のケイティ・ペリーが、バラをあしらったドレス姿で、ファッションの祭典「メットガラ」に参加したかのような画像が拡散しましたが、誤りです。画像はAIで生成されたもので、ケイティ本人がメットガラに出席していないと否定しています。 検証対象 2024年5月7日、歌手のケイティの白いドレス姿の画像がX(旧Twitter)で拡散した。投稿には「メットガラ」のハッシュタグが付けられて、あたかも5月6日(現地時間)にニューヨークのメトロポリタン美術館で開かれた「メットガラ」に、ケイティが参加したかのようだ。 拡散したポストは5月9日現在で6.7万件以上リポストされ、表示回数は1696万回を超える。投稿について「素晴らしい」「美しい」というコメントの一方で「これはAI」という指摘もある。 検証過程 メットガラ(MET GALA)は、年に一度開かれるファッションの祭典。今年のドレスコードは「The Garden of Time(時間の庭)」で、各界の著名人らが華やかで個性的な姿で登場した。 ケイティは、過去に何度もメットガラに独創的なドレスで参加して話題となってい

国民民主党、榛葉賀津也幹事長の偽アカウントが出現

国民民主党の榛葉賀津也幹事長のなりすましアカウントがX(旧Twitter)に現れて、本人が注意を呼びかけています。投資詐欺に誘導されたり、個人情報を抜き取られたりするなどの危険性があります。

国民民主党、榛葉賀津也幹事長の偽アカウントが出現 政治家のなりすましに注意
国民民主党の榛葉賀津也幹事長のなりすましアカウントがX(旧Twitter)に現れて、本人が注意を呼びかけています。投資詐欺に誘導されたり、個人情報を抜き取られたりするなどの危険性があります。 榛葉幹事長本人が注意を呼びかけ 2024年5月8日、国民民主党の榛葉幹事長はXアカウントで、自身のなりすましアカウントが出現したことに「 【ご注意ください】榛葉賀津也を名乗る『なりすまし』の偽アカウントが確認されました。絶対にURLをクリックしないでください」と注意を促しました。 このなりすましアカウントは、Xによってすでに凍結されている。 なりすましアカウントの特徴 デザインは、榛葉幹事長のアカウントと全く同じだが、@から始まるIDはアルファベットと数字の羅列で、フォロワーはゼロだ。 これまでも著名人や政治家のなりすましアカウントが次々に出現しているが、その多くがこうしたIDやフォロワーがゼロかわずかである。 あとがき こうしたなりすましアカウントの多くは、LINEなどに誘導した後投資に関する情報を提供すると言った文言でユーザーからお金を騙し取ったり、個

今週のJFC動画

飛行機雲は、有害物質をばら撒く”ケムトレイル”だ…。この陰謀論は繰り返し拡散します。

その他の関連記事

中国企業が「世論工作システム」開発か、Xアカウントを乗っ取り意見投稿…ネットに資料流出

中国政府と取引関係がある上海のIT企業がXを通じて世論工作を仕掛けるシステムを開発した疑いがあると読売新聞が報じました。営業用資料がネットに流出しており、日本の情報機関も入手して調査していると伝えています。

中国企業が「世論工作システム」開発か、Xアカウントを乗っ取り意見投稿…ネットに資料流出
【読売新聞】 中国政府と取引関係にあるIT企業(本社・上海)が、X(旧ツイッター)のアカウントを通じて、世論工作を仕掛けるシステムを開発した疑いがあることがわかった。このシステムを紹介する営業用資料とみられる文書がインターネットに流

SNSで横行 “インプレゾンビ”の正体は?投稿者に直撃すると…

SNSで注目を集める投稿に群がって、盗用したり、無意味な返信を繰り返したりしてインプレッション(閲覧数)を稼ぐ「インプレゾンビ」。閲覧数に基づく広告収益を得ようと日本語での投稿を繰り返すパキスタンの男性にNHKがインタビューしました。

SNSで横行 “インプレゾンビ”の正体は?投稿者に直撃すると… | NHK
【NHK】「ここでは毎日が新しい物語です」「日本はとても良い国です」その男性はあまり意味も分からないまま、旧ツイッターのXに日本語…

OpenAI、ディープフェイク対策ツール「DALL・E Detection Classifier」のテスト開始

OpenAIが自社の生成AI「DALL・E3」で作成した画像を検出するツールを開発しました。少数の研究者らに公開してテストを実施します。各社が報じました。

OpenAI、ディープフェイク対策ツール「DALL・E Detection Classifier」のテスト開始
OpenAIは、「DALL・E 3」で生成した画像かどうかを検出するためのツール「DALL・E Detection Classifier」の外部によるテストを開始した。内部テストでは生成画像の約98%を識別できたとしている。「Voice Engine」への音声透かし組み込みもテスト中だ。

欧州議会選挙 ロシアが情報操作で介入か 警戒感高まる

EU=ヨーロッパ連合の議会選挙が6月に行われるのを前に、ロシアなどが情報操作を行い、選挙に介入しようとしているとして欧州各国で警戒感が高まっているとNHKが報じました。

欧州議会選挙 ロシアが情報操作で介入か 警戒感高まる | NHK
【NHK】ヨーロッパ各国では、EU=ヨーロッパ連合の議会、ヨーロッパ議会の選挙を来月に控え、偽情報の拡散など、ロシアが情報操作によ…

TikTokがAI生成の動画・画像にラベルをつける取り組み

動画共有アプリのTikTokが、AIで生成され投稿された動画や画像に自動でラベルを表示させる取り組みを開始すると発表。各社が報じています。

TikTok、日米で生成AI使用の動画・画像にラベル自動表示…今後世界中で展開へ
【読売新聞】 【ニューヨーク=小林泰裕】中国発の動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」の運営会社は9日、米国や日本で、生成AI(人工知能)サービスを使用した動画や画像に対し、自動的にAIが生み出したことを示すラベルを表示す

How to tell if a conspiracy theory is probably false(陰謀論をどのようにして誤りと見分けるか)

陰謀論的な言説を強固に信じる人が少なくなく、検証やその結果の届け方には工夫が必要です。豪州の研究者とジャーナリスト協働のメディア「The Conversation」は、社会心理学の観点からその手法に関する論考を出しました。

How to tell if a conspiracy theory is probably false
Conspiracy theories abound. What should you believe − and how can you tell?

Awareness-raising of the risks of disinformation and information manipulation(偽情報や情報工作への意識を向上させよう)

2024年6月6日から始まる欧州議会選挙を前に、EC・欧州委員会が偽情報や情報操作に対する意識を高めようというニュースを出し、どういう点に気をつけるべきかを学ぶ30秒の動画や若者向けの学習ツールキットを公開しました。日本にいる私たちにも参考になります。

Boosting awareness-raising of the risks of disinformation and information manipulation
In the run-up to the European elections, the Commission acts to raise awareness of the risks of disinformation and foreign information manipulation and interference.

検証手法や判定基準については、JFCファクトチェック指針をご参照ください。検証記事を広げるため、SNSでの拡散にご協力ください。

XFacebookYouTubeInstagramのフォローもお願いします。毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録はこちらからどうぞ。また、こちらのQRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、真偽が気になる情報について質問すると、AIが関連性の高い過去のJFC記事をお届けします。詳しくはこちらの記事を

もっと見る

ファクトチェックと「プリバンキング」 “情報の空白”を埋める注目の手法【JFC講座 実践編9】

ファクトチェックと「プリバンキング」 “情報の空白”を埋める注目の手法【JFC講座 実践編9】

日本ファクトチェックセンター(JFC)のファクトチェック講座です。 実践編第8回は、よく質問されるファクトチェックと調査報道や裏取りとの違いについてでした。第9回は世界のファクトチェック事例や新手法を解説します。 (本編は動画でご覧ください。この記事は概要をまとめています) ファクトチェックの多様な事例 ファクトチェックには原則がありますが、同時に、検証対象の選び方や組織のあり方などは多様です。国内外の事例を紹介します。 Factchek.org ファクトチェック団体としては老舗のFactchek.orgはアメリカ政治に関する偽情報に対応するために、「有権者のための消費者保護センター」を目指して2003年に設立されました。 そのため、主なトピックに並ぶのは「バイデン大統領」「トランプ前大統領」、そして「その他の大統領候補」などアメリカ政治中心です(2024年7月27日現在)。 例えば、「バイデンが不法移民に家賃を支払っているという根拠のない主張」という記事には、見出しに検証対象と検証結果=根拠なしが記され、記事内では検証過程が詳細に記述されていま

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
日本での農地取得、外国人が3分の2? 新聞記事の誤読が拡散【ファクトチェック】

日本での農地取得、外国人が3分の2? 新聞記事の誤読が拡散【ファクトチェック】

「外国人による農地取得が全体の3分の2」という言説が拡散しましたが、誤りです。新聞記事を誤読した投稿が拡散しました。 検証対象 2024年7月20日、日本農業新聞の記事を引用して「これやばいだろ?なんで国は規制しない? 外国人による農地取得が全体の3分の2を占めたらしい」という言説が拡散した。 この投稿は43万以上の閲覧と6900のリポストがある。「農地って簡単に買えるの?」「自国の国民のために農地を開拓しているのかもしれない」というコメントのほか、「記事をちゃんと読みましたか」「日本であっても規制はありますよー」といった指摘もある。 「外国人による農地取得が3分の2を占めた」という言説を検証する。 検証過程 言説に添付されたのは、日本農業新聞が2024年7月20日に配信した記事だ。拡散したスクショは「外国人の農地取得 23年は90ヘクタールに 3分の2が国内在住」という見出しで、7月26日朝の時点では「3分の2」が「国内在住の個人・法人中心」に変わっている。 外国資本が「全体の3分の2」ではない 記事の内容は「外国人もしくはその関係法人が2

By 宮本聖二
最新の複数世論調査でトランプ前大統領がハリス副大統領を大幅リード? 拡散したのは予想サイトの数字【ファクトチェック】

最新の複数世論調査でトランプ前大統領がハリス副大統領を大幅リード? 拡散したのは予想サイトの数字【ファクトチェック】

「最新の複数世論調査でトランプ大統領がカマラ・ハリスを大幅リード」という言説が拡散しましたが誤りです。言説に表示された数字は世論調査の数字ではありません。2024年7月26日現在、最新の世論調査では、両氏の支持率は拮抗しています。 検証対象 2024年7月23日、「最新の複数世論調査でトランプ大統領がカマラ・ハリスを大幅リード/NHKは『僅差』と報道」という言説が拡散した。言説にはまとめサイト「トータルニュースワールド」のリンクが添付されている。 2024年7月26日現在、投稿は1700件以上リポストされ、表示回数は31万件を超える。投稿について「当たり前」「妥当」というコメントがある。 検証過程 数字は予測市場プラットフォームの数字 拡散した言説にはまとめサイト「トータルニュース」のリンクが添付され、「64% Trump」「36% Kamala」と書かれたサムネイルが表示されている。リンク先を確認すると、根拠として「PolyMarket」の数字を集計した一般ユーザーのX投稿を複数取り上げている。 Polymarket(ポリマーケット)は、仮想通

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
ファクトチェックと調査報道 共通する手法と異なる方法論【JFC講座 実践編8】

ファクトチェックと調査報道 共通する手法と異なる方法論【JFC講座 実践編8】

日本ファクトチェックセンター(JFC)のファクトチェック講座です。 実践編第7回は、ファクトチェックに役立つサイトやツールについてでした。第8回はよく質問されるファクトチェックと調査報道や裏取りとの違いを解説します。 (本編は動画でご覧ください。この記事は概要をまとめています) ファクトチェックと調査報道の違い 「ファクトチェックは事実を確かめることだから、報道機関は当然どこでもやっているのではないか」とよく聞かれます。 半分正解で半分間違いと言えます。何が共通していて、何が異なるのかを解説していきます。 ファクトチェックとオンライン調査 検証の根拠を公開し、可能な限りユーザーにもアクセス可能にすることが原則のファクトチェックでは、オンライン調査の手法を活用します。 誰でもアクセスできるオープンソースを使うOSINTの重要性は実践編6でも説明した通りです。 OSINTでファクトチェック 公開データを使い真偽を判別する【JFC講座 実践編6】日本ファクトチェックセンター(JFC)のファクトチェック講座です。 実践編第5回は、生成AIで作られる画像

By 古田大輔(Daisuke Furuta)