潜在的国民負担率が62.9%に達した? 過去のデータで現在は改善【ファクトチェック】

「財務省『潜在的国民負担率、62.9%に達しちゃった』」という言説が拡散しましたが、ミスリードで不正確です。2020年にはそのレベルに達していますが、2025年度は48.8%の見通しです。
検証対象
2025年6月17日、「財務省『潜在的国民負担率、62.9%に達しちゃった、ごめんね』」という投稿が拡散した。投稿にはまとめサイトのリンクが添付されている。

2025年6月23日現在、この投稿は1.1万件以上リポストされ、表示回数は337万回を超える。投稿について「財務省は日本国民の敵」「働かないほうがいいじゃん!」というコメントが付く一方で「古いデータです」という指摘もある。
検証過程
国民負担率と潜在的国民負担率
国民負担率とは、国民の所得に占める税金や年金、社会保険料などの負担の割合だ。租税負担率と社会保障負担率を合計したものを「国民負担率」、これに財政赤字を加えたものを「潜在的国民負担率」または「財政赤字を含む国民負担率」という。
財務省は以下のように説明している。「『国民負担率』は、租税負担及び社会保障負担を合わせた義務的な公的負担の国民所得に対する比率です。『財政赤字を含む国民負担率』は、これに将来世代の潜在的な負担として財政赤字を加えたものです」(以上、財務省「負担率に関する資料」)。
2023年投稿のまとめサイト記事を引用
検証対象のリンクは、まとめサイト「NewsSharing」が2023年12月15日に投稿した記事だ。引用元とされる記事の文面をGoogleで検索すると、現代ビジネスが2023年12月12日に配信した記事「『国民負担』と『国民の負担』は違うぞ! それを意図的に混同させる岸田流の『ごまかし術』こそ支持率低下の一因」が表示される。
この記事では「2004年の小泉内閣が掲げた骨太の方針で『潜在的国民負担率で見て、その目途を50%程度としつつ、政府の規模の上昇を抑制する』とあるが、かつて小泉内閣が上限とした50%をはるかに上回り、何と62.9%に達している」と書いている。
約62%は2020年の数値
財務省は国民負担率を毎年公表している。財務省によると、2025年度の潜在的国民負担率は48.8%の見通しだ(財務省「令和7年度の国民負担率を公表します」)。
ただし、国民負担率も潜在的負担率も見通しと実績の値は異なる。過去の潜在的国民負担率の実績を確認すると、拡散した言説の数値に一番近いのは2020年の潜在的負担率で62.7%、最新の2023年で50.0%だ(財務省「国民負担率の推移(対国民所得比)」)。
「潜在的な国民負担率が62.9%」という誤情報は繰り返し拡散しており、過去にも日本ファクトチェックセンター(JFC)が検証して「不正確」と判定している。
https://www.factcheckcenter.jp/fact-check/economics/inaccurate-potential-burden/
判定
拡散した言説が引用したまとめサイトの記事は2023年のもので、2025年の最新の潜在的国民負担率(見通し)は48.8%、実績値の最新は2023年の50.0%。2020年に62.7%(実績)に達しているのは事実だが、現在そうであるかのような投稿はミスリードで不正確と判定した。
出典・参考
財務省. “負担率に関する資料”. https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/a04.htm, (閲覧日 2025年6月23日).
現代ビジネス. “「国民負担」と「国民の負担」は違うぞ! それを意図的に混同させる岸田流の「ごまかし術」こそ支持率低下の一因”. 2023年12月12日. https://gendai.media/articles/-/120588, (閲覧日 2025年6月23日).
財務省. “令和7年度の国民負担率を公表します”. 2025年3月5日. https://www.mof.go.jp/policy/budget/topics/futanritsu/20250305.html, (閲覧日 2025年6月23日).
財務省. “国民負担率(対国民所得比)の推移”. https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/019.pdf, (閲覧日 2025年6月23日).
検証:リサーチチーム
編集:古田大輔
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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