税金の使用透明度指数で日本は独裁国なみ? データや解釈に誤解【ファクトチェック】

税金の使用透明度指数で日本は独裁国なみ? データや解釈に誤解【ファクトチェック】

「税金の使用透明度指数で日本は独裁国なみ」という情報が拡散しましたが、ミスリードで不正確です。この指数が「税金の使い方の透明性」を示すものという誤解が広がりましたが「税優遇措置に関する透明性」の指数です。また、拡散した表は日本が94位ですが、最新の2024年には73位に更新されています。

検証対象

2025年9月15日、「税金の使用透明度指数で日本が独裁国なみということだけれど、そりゃそうでしょうよとしか。お隣の国はすっかり先進国で透明度ランキングでもトップというえげつない差」という投稿が拡散した。

9月17日現在、この投稿は3800件以上リポストされ、表示回数は148万回を超える。投稿について「税金透明30%、暴動起きるくらいのレベル」「独裁国家レベルの不透明度」というコメントの一方で「そのサイト引用して大丈夫ですかね」という指摘もある。

検証過程

引用元の記事は

拡散した投稿には、まとめサイト「JAPAN NEWS NAVI」の記事が添付されている。記事を確認すると、商工組合「関東塗料工業組合」が「世界租税支出透明性指数(Global Tax Expenditures Transparency Index:GTETI)」について書いた記事を引用している。

2024年7月11日付の記事の見出しは「日本の租税支出透明性指数は世界の最低レベル!」。記事では、2023年のGTETI(租税支出透明性指数)で日本が調査対象104か国のうち94位だったことについて、この指数が「税金の使い道の透明性に特化したもの」であり、日本の状況は問題だと指摘している。

世界租税支出透明性指数(GTETI)とは

GTETIのサイトによると、GTETIとは、各国政府の「租税支出(Tax Expenditures)」の透明性を示す指数。情報公開の状況や制度などをもとに評価する(GTED.”Global Tax Expenditures Transparency Index“)。

「租税支出」とは、本来は課税されるべき所得や資産に対して与えられる税金の優遇措置を意味する。例えば、医療費控除や扶養控除や住宅ローン控除などだ。

サイトのランキングは、租税支出を公開していない中国などを含まず、全105か国が対象だ。2024年12月にアップデートされたデータでは、1位が韓国でスコアは76.1。2位はインドネシア、3位はカナダと続く。

日本は73位でスコアは38.4だ。日本の前後は、70位がカーボベルデ、71位がヨルダン、72位がトルコ、74位がマリ、75位がアルメニア、76位がパプアニューギニア。GTETIの指標で日本のランキングが低いことは事実だ。

租税専門弁護士・三木義一氏「そのデータではない」

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、租税法が専門の弁護士で青山学院大学名誉教授の三木義一氏に取材した。

三木氏は、GTETI(租税支出透明性指数)について「特別措置などで特別に税金をおまけしてあげるよという所のチェックができているかの判断。日本はできていないので順位が低いのは間違いない」と指摘する。

一方で、国民にとっては不親切な面があるとしつつも、日本の税の使い道にあたる歳出については「省庁ごとに出していてわかりにくいが、決算などは一応ある。歳出は分かりにくいが出している」と説明した。

また、GTETIが示す「租税支出透明性」の数値や順位から「税金の使用透明度指数」と表現したり、「独裁者並み」と判断することが適切かという質問に対しては、「使い道そのもののチェックも弱いんだけど、そのデータではない」と回答している。

つまり、GTETIは特別措置などによって一部の税金がどのように使われているか、その透明性を評価した指数であり、国の税金全体の使い道にあたる歳出の透明性を示す数値ではない。

判定

GTETIの指標で日本のランキングが低いのは事実だ。しかし、拡散した表が対象としているのは個人や企業向けの税優遇措置に関する透明性だ。公共事業の予算や税金の使い道そのものを評価する指標ではない。よってミスリードで不正確と判定した。

あとがき

税の使い道全体の透明性について、JFCが取材した三木氏は「使い道そのもののチェックも弱い」と指摘しています。

税の使い道の透明性を向上させることは、民主主義国家にとって非常に重要です。同時にその議論をするための根拠となるデータを間違えて読み取ってしまえば、議論自体の信頼性が下がってしまいます。信頼性の高いデータを正しく理解したうえでの議論が必要です。

出典・参考

GTETI.Global Tax Expenditures Transparency Index.https://gteti.taxexpenditures.org/ ,(閲覧日 2025年9月17日)

GTETI. “Country Profile”.https://gteti.taxexpenditures.org/country-profile/ , (閲覧日 2025年9月17日).

International Budget Partnership. “Japan – Country Results, Open Budget Survey 2023”. https://www.internationalbudget.org/open-budget-survey/country-results/2023/japan , (閲覧日 2025年9月17日).

検証:木山竣策
編集:古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

衆議院選・神奈川15区の無効票1万1025票は異常? 前回より微増、選管「トラブルなし」【ファクトチェック】

衆議院選・神奈川15区の無効票1万1025票は異常? 前回より微増、選管「トラブルなし」【ファクトチェック】

2026年2月8日に投開票があった衆議院選挙・神奈川15区で、約1万票の無効票が出たのは「異常だ」という指摘が拡散しましたが、根拠不明です。神奈川県の選挙管理委員会は日本ファクトチェックセンター(JFC)の取材に対して、「特にトラブルは無い」と答えています。神奈川15区では無効票は過去3回、数千から約1万票出ており、これがただちに不正選挙の証拠とはなりません。 検証対象 拡散した投稿 2026年2月13日、「神奈川15区、無効票11025票⁉️何これ、異常でしょ」という投稿が拡散した。投稿はXの別の投稿を引用し、「衆議院小選挙区選出議員選挙 開票結果(開票区別投票総数)」と書かれた画像が添付されている。 検証する理由 2月17日現在、この投稿は7200件以上リポストされ、表示回数は21万回を超える。投稿について「操作です」「不正選挙かも」というコメントの一方で「異常というほどではないかと」という指摘もある。 検証過程 衆院選・神奈川15区の開票結果は JFCが、拡散した画像の数値を調べたところ、開票結果は本物だ。選管が公表した”衆議院小選挙

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)
衆院選・佐賀1区で無効5000票、不正選挙の疑惑? 無効票は毎回数千票、選管「トラブルなし」 【ファクトチェック】

衆院選・佐賀1区で無効5000票、不正選挙の疑惑? 無効票は毎回数千票、選管「トラブルなし」 【ファクトチェック】

2026年衆議院選挙・佐賀1区で、無効票が5000票あり、不正選挙の疑惑があるという指摘が拡散しましたが、根拠不明です。佐賀県の選挙管理委員会は「大きなトラブルや立会人からの異議申し立てはなかった」と日本ファクトチェックセンターの取材に答えています。無効票は毎回数千票あり、ただちに不正選挙の証拠とまでは言えません。 検証対象 拡散した投稿 2026年2月13日、「もう止まらない、不正選挙疑惑」「ゆうこく連合・原口一博代表が1000票差で落選した佐賀1区では『無効票』が5000票以上もあった」「無効票は本当に『無効票』なのか?」という投稿が拡散した。 検証する理由 2月16日現在、この投稿は1.2万件以上リポストされ、表示回数は76万回を超える。投稿について「その5000票のなかには半分以上有効票がはいってるよね」「普通に考えてこの規模で無効票が5000もあるなんておかしい」というコメントの一方で「差が少ないから不正ってどうかしてる」という指摘もある。 検証過程 衆院選・佐賀1区の開票結果は 2026年2月8日投開票の衆院選・佐賀1区では、自民

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)
自民党は有権者の大半の支持を得た?/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

自民党は有権者の大半の支持を得た?/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

衆院選は自民党が小選挙区249、比例代表67の合計316議席を獲得する大勝利で終わりました。一つの政党が衆院の3分の2の議席を占めるのは戦後初めてです。 これだけを見ると、日本の有権者の大半が高市政権を支持したように見えますが、本当でしょうか? 各政党の得票数を有権者数で割る「絶対得票率」で見てみましょう。自民党は小選挙区で27%、比例代表で20%ほどでした。「自民党が有権者の大多数に支持された」というような表現はおかしいことがわかります。 今回の自民党の勝利を小さく見せようとしているわけではありません。今回の絶対得票率は2017年衆院選の安倍政権での地すべり的な勝利をも上回っており、大勝利であることは間違いありません。 ただ、小選挙区という制度はこのように数%の得票率の差で議席数が大きく動くということは知っておいた方がよいでしょう。 そして、その数%の違いに偽・誤情報や大量の根拠も論理もないショート動画やディープフェイクの拡散が影響した可能性があります。 どの政党が勝とうと、規制を含めた対策の議論が必要です。特定の政党ではなく、民主主義を守るために。 今週の

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
高市首相を熱狂的に応援する高齢者、踊りだす中道... 急増したAIによる偽画像/動画【#衆院選ファクトチェック 解説】

高市首相を熱狂的に応援する高齢者、踊りだす中道... 急増したAIによる偽画像/動画【#衆院選ファクトチェック 解説】

2026年の衆院選で、明らかに増えたものがあります。生成AIによる画像や動画の捏造や改変です。「ディープフェイク」と呼ばれる手法が、いよいよ日本でも普及してきました。実際にどのようなAI製フェイクが拡散していたのでしょうか。 衆院選ディープフェイク検証記事は16本で急増 日本ファクトチェックセンター(JFC)が収集した衆院選に関するファクトチェック記事96本中、ディープフェイクもしくはそう疑われる画像や動画に関する検証記事は16本ありました。1本の記事で複数のディープフェイクについて解説した記事もあります。 2025年参院選ではディープフェイクを検証する記事は、ほとんどありませんでした。FIJが収集した236件の記事の中で見出しにAIがあるのは1本だけです(FIJ”参院選2025ファクトチェック”)。 2025年参院選でのディープフェイク検証の例: JFC”トランプ大統領が岸田文雄氏について「グローバリストの操り人形」と発言? 繰り返し拡散するAI動画” 急増の背景に生成AIの進化 世界的に見ると大型選挙が集中した2024年がディープフェイク大拡散の

By 古田大輔(Daisuke Furuta)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は2月28日(土)午前10時~11時30分で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei0228.peatix.com/view 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的に

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験

JFCファクトチェッカー認定試験

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)