自民党・小泉進次郎氏が「消費税15%待った無し」と発言? 誤情報の再拡散【ファクトチェック】

自民党・小泉進次郎氏が「消費税15%待った無し」と発言? 誤情報の再拡散【ファクトチェック】

自民党総裁選に立候補を表明した小泉進次郎農林水産相が「消費税から逃げるな」「15%待った無し」などと発言したかのような動画が拡散しましたが、誤りです。2017年の記者会見の映像を恣意的に切り貼りしたもので、繰り返し拡散しています。元動画で、小泉氏はそのような発言をしていません。

検証対象

2025年9月8日、小泉氏が「原口さんにお願いしたいのは、消費税から逃げるなと。15%待った無しです」と発言したかのような動画がXで拡散した。

投稿は9月16日現在、371件のリポストと、9.6万回の表示を獲得している。

投稿には「やはり、馬鹿だ。何言っているか理解不能」「本当に『自民党なんていらない』」や「切り取りに決まってるだろ」などの指摘もある。

検証過程

誤情報の再拡散

日本ファクトチェックセンター(JFC)は2025年5月にも「小泉進次郎氏が消費増税を主張?」という同様の投稿を検証し、「誤り」と判定している(JFC.”小泉進次郎氏が消費増税を主張?恣意的な切り張り【ファクトチェック】”)。

動画は短いカットの切り貼り

拡散した動画は計45秒で、短いカットをつなぎ合わせて編集している。動画の中での小泉氏のコメントを文字起こしすると、次の通りだ。

「大変申し訳ないですけど」「消費税上げさせてください」「11%以降の消費増税が」「こんなにワクワクする世界ないと思いますね」「じゃあ11%以降の消費増税はいつ実現できるんですか」「今ですよね」「さあこれからどこまでコレが伸びるのか」「何ができるのか何がベストなのか」「トップダウンでボトムアップなんですよ」「説得力あるでしょ?」「国民の皆さんにもお願いをしたいのは」「消費税から逃げるなと」「まあ正直言って」「15%待ったナシです」「へえーそうなんだ」「何が本当で何が嘘か」「二度と立ち上がれないように徹底的に叩き潰すのが日本だからね」「世襲こそが革新を生む」「はい、以上です」

2017年6月1日の記者会見の元動画は

拡散した動画をGoogleレンズで画像検索すると、同じ背景、同じネクタイ姿の小泉氏の動画が見つかる。2017年6月1日、日本記者クラブでの会見だ。

動画は1時間21分13秒あり、当時、自民党の「人生100年時代の制度設計特命委員会」事務局長だった小泉氏が「こども保険構想」などについて話している(jnpc.”小泉進次郎 衆議院議員 2017.6.1”)。

検証対象の映像は、この動画の小泉氏の発言を切り貼りしている。拡散した動画の増税に関するコメントを、元の会見動画で確認していく。太字の部分が切り貼りされている。

大変申し訳ないですけど10年後に橋本さん、新聞ってどうなってると思います?」(59:08秒~59:15)

「私この動きを見てて思ったのは、ああ日本の社会保障と同じだな、と思ったんです。もうこのままじゃ持ちません。消費税上げさせてくださいって言ったのが三党合意ですよね」(1:06:10~1:06:29)

「じゃあ仮に新しいことやろうとした時に11%以降の消費増税が不可欠なわけで。じゃあ11%以降の消費増税はいつ実現できるんですか。8%実現するまでに何年かかり8%実現するまでにいくつの政権を必要として、そして8%、その前の5から10に上げるという決断が与党野党が握手をして、三党合意という形で握ったにも関わらず風前のともしびというこの結果」(18:41~19:13)

「食べるもの作るの農業なんですよ。そのね、自分で食べるものを作れる、これ究極の物づくりですよ。こんなにワクワクする世界ないと思いますね」(1:00:29~1:21:13)

「こども保険と消費税と国債この比較というページを作りました。これはよく消費税から逃げるなということ言われます。 よく新聞の方々から言われること多いんですけど、私たちも消費増税を検討しないわけではありません。ただ、この少子化対策こどものこと、まったなしです、その待ったなしの分野に確かな規模とスピード感を持って予算を用意するという観点から考えた時に、私は消費増税というのは選択肢にはなり得ないと思ってます。現実的ではないと思います」(17:32~18:17)

つまり、拡散した動画は、前後の文脈を無視して恣意的に切り貼りしたものであることが分かる。

判定

小泉氏が、消費増税を主張したかのような動画が拡散したが、誤り。拡散した動画は2017年に行われた記者会見の映像を恣意的に切り貼りしたもので、元動画で、小泉氏はそのような発言をしていない。

出典・参考

JFC.”小泉進次郎氏が消費増税を主張?恣意的な切り張り【ファクトチェック】”.2025年5月23日.https://www.factcheckcenter.jp/fact-check/politics/false-shinjiro-for-higher-taxes/, (閲覧日2025年9月16日).

jnpc.”小泉進次郎 衆議院議員 2017.6.1”.2017年6月2日.https://youtu.be/IEEyBfRtNxs?si=-I4X6y2YZcH4Lt1W, (閲覧日2025年9月16日).

検証:根津綾子
編集:藤森かもめ、古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

高市首相を熱狂的に応援する高齢者、踊りだす中道... 急増したAIによる偽画像/動画【#衆院選ファクトチェック 解説】

高市首相を熱狂的に応援する高齢者、踊りだす中道... 急増したAIによる偽画像/動画【#衆院選ファクトチェック 解説】

2026年の衆院選で、明らかに増えたものがあります。生成AIによる画像や動画の捏造や改変です。「ディープフェイク」と呼ばれる手法が、いよいよ日本でも普及してきました。実際にどのようなAI製フェイクが拡散していたのでしょうか。 衆院選ディープフェイク検証記事は16本で急増 日本ファクトチェックセンター(JFC)が収集した衆院選に関するファクトチェック記事96本中、ディープフェイクもしくはそう疑われる画像や動画に関する検証記事は16本ありました。1本の記事で複数のディープフェイクについて解説した記事もあります。 2025年参院選ではディープフェイクを検証する記事は、ほとんどありませんでした。FIJが収集した236件の記事の中で見出しにAIがあるのは1本だけです(FIJ”参院選2025ファクトチェック”)。 2025年参院選でのディープフェイク検証の例: JFC”トランプ大統領が岸田文雄氏について「グローバリストの操り人形」と発言? 繰り返し拡散するAI動画” 急増の背景に生成AIの進化 世界的に見ると大型選挙が集中した2024年がディープフェイク大拡散の

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
高市首相の動画で、視聴回数より高評価の数が多いのは不正? データの反映に時間差【#衆院選ファクトチェック】

高市首相の動画で、視聴回数より高評価の数が多いのは不正? データの反映に時間差【#衆院選ファクトチェック】

2026年2月8日投開票の衆院選の選挙期間中に、高市早苗首相が発信したYouTube動画について、「高評価の方が視聴回数より多い」と不正を示唆する投稿が、画像と共に拡散しましたが、ミスリードで不正確です。YouTubeの高評価や視聴回数のデータは、画面上に反映されるまでにタイムラグがあり、しばしば見られる現象です。2月12日現在、視聴回数は40万回を超え、高評価は3.6万回です。 検証対象 拡散した言説 2026年2月7日、「何で高評価の方が視聴回数より多いんだよおかしいだろwwwww」という文言付きの画像がXで拡散した。 検証する理由 2月12日現在、投稿は1.4万回以上リポストされ、表示は485万件を超える。 投稿に対して、高評価と視聴回数のデータは反映に時間がかかるので、動画公開の直後に高評価が逆転する現象がありうるという指摘も複数ある(例1,2,3)。 一方で、「高市は色々おかしい」「どんな手をつかっても勝てばいいとおもってる」など、真に受けるコメントも多く、注目を集めたため、検証する。 検証過程 拡散したスクショは動画公開の1時

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
中国が「中道改革連合支持」を発表? そのような情報はない【ファクトチェック】

中国が「中道改革連合支持」を発表? そのような情報はない【ファクトチェック】

中国が中道改革連合を支持すると表明したかのような投稿が拡散しましたが、誤りです。中国政府からのそのような発表も、報道もありません。 検証対象 拡散した言説 2026年2月6日、「中国が『中道改革連合を支持する』って発表した」という投稿がXで拡散した。 検証する理由 2月9日現在、投稿は削除されているが、2月7日時点で13000回以上リポストされ表示は69万件を超えていた。 同様の投稿は他にも広がっている(例1,2)。 検証過程 中国外務省「日本の内政問題なのでコメントしない」 中国外務省のウェブサイトには、定例会見の記録が掲載されている。1月15日の会見で、日本の記者と報道官の間のやり取りの記録がある。 テレビ東京記者:日本の公明党が他党と共同で新党結成を検討しているとの報道があります。中国はこれまで公明党と緊密な関係を維持してきました。この動きについて、報道官はどのようなコメントをされていますか?新党が『公明党』という名称を使わなくなった場合、中国はこれまで通り公明党との関係を維持するのでしょうか? 毛寧報道官:これは日本の内政問題

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
河野太郎氏が不正に当選? 開票作業にトラブルなし 出口調査とも一致【♯衆院選ファクトチェック】

河野太郎氏が不正に当選? 開票作業にトラブルなし 出口調査とも一致【♯衆院選ファクトチェック】

2026年2月8日投開票の衆院選で、神奈川15区から立候補していた自民党・河野太郎氏が不正に当選したという投稿が拡散しましたが、誤りです。河野氏は報道各社の事前調査などで大差の1位でした。神奈川県選挙管理委員会もJFCの取材に対し「管内の開票所でミスやトラブルの報告はない」と回答しています。 検証対象 拡散した言説 2026年2月8日、「支援者もいない 河野太郎がダントツ一位当選 おかしくないか」という投稿がXで拡散した。 このほか、同様の投稿は多数拡散している(例1,2)。 検証する理由 2月10日現在、投稿は2万回以上リポストされ、表示は294万件を超える。 「おかしくはない。支援者・支持者がいたから当選した。それだけの話だ」などの指摘もあるが、「なんか変だよね。この選挙。異様に自民党が当選してる」「票を操作できることがわかっているから自信満々で早苗は解散したんでしょう」など真に受けたコメントが多いため検証する。 検証過程 支持者がいないのに当選した? 拡散した投稿には、聴衆が河野氏の街頭演説に耳を傾けず素通りしている様子を映した動

By 根津 綾子(Ayako Nezu)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は2月28日(土)午前10時~11時30分で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei0228.peatix.com/view 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的に

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験

JFCファクトチェッカー認定試験

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)