中道改革連合の街頭演説会に集まった聴衆の動画はAI生成? Grokによる不確かな判定【♯衆院選ファクトチェック】

中道改革連合の街頭演説会に集まった聴衆の動画はAI生成? Grokによる不確かな判定【♯衆院選ファクトチェック】

中道改革連合の街頭演説会に集まった聴衆の動画はAI生成だという投稿が拡散しましたが、誤りです。同日にほかの角度から撮影された画像や動画から、多くの聴衆が集まっている様子が確認できます。AI生成だという指摘はGrokによるものでしたが、判定を間違えることがあります。

検証対象

拡散した投稿

2026年2月1日、中道改革連合のサポーターアカウントが街頭演説会に集まった聴衆の動画をXに投稿した。動画について、X社のAI「Grok」が「これはAI生成動画ですか?」という質問に対し「これはAI生成動画のようです」と回答している。

検証する理由

この回答は700件以上リポストされている。そのほかにも「まさかAI使ったりしてないよね」「明らかに加工された動画」という指摘がついている(例1例2)。

また、Grokの検証をもとにしたコミュニティノートもついた(2月3日午後5時40分現在、非表示)。

Grokの検証では、群衆の動きが不自然、現実の公園サイズと矛盾、音声が時折人工的に聞こえるといった理由からAIの生成動画と結論付けている。AIによる検証は間違っていることも多いが、信じる人もいるため、検証する。

検証過程

動画は福岡・警固公園での街頭演説

動画は、2月1日に福岡市中央区の警固公園で開かれた中道改革連合の街頭演説の様子だ。九州公明党の公式Youtubeチャンネルがライブ配信のアーカイブを公開している(【公式】九州公明党ちゃんねる.”中道改革連合Youth街頭演説会 2月1日(日)12時スタート”)。

Xに投稿されたのは、この街頭演説に集まった聴衆を、演台に立った中道改革連合・共同政務調査会長の岡本みつなり氏が自撮り棒を使って撮影しているものだ。岡本氏も「あの場所で、この映像を撮った本人です」と投稿している。

別角度からの動画でも大勢の聴衆

Youtubeアーカイブの動画は、演台を下や横から撮影している。29:27時点で、岡本氏が自撮り棒にスマートフォンをつけて聴衆をバックに動画を撮影する様子を確認することができる。

その際、映像に拡散した動画と同じく大勢の聴衆が集まっている様子が映っている。

AIによる画像や動画の検証はまだ発展途上

拡散したGrokによる検証は「群衆の動き」「警固公園の実際の規模」「他の投稿で類似のAIフェイク言及」といった根拠からAI生成と結論付けている。

日本ファクトチェックセンター(JFC)がGrokに改めて「この動画はAI生成?」と質問したところ、「イベントは本物ですが、この特定の動画はプロパガンダ目的でAIを使って群衆を水増しした可能性が強い」と回答した。

しかし、JFCがGoogleの生成AI「Gemini」に「この動画はAI生成?」と質問したところ「この動画は実際に撮影された実写映像である可能性が極めて高い」と回答した。OpenAIの「ChatGPT」に「この動画はAI生成?」と聞くと「この動画がAI生成かどうかを 『断定』できる証拠は見つかっていません」と回答した。

3社のAIで全て違う答えとなっている。AIによる判定は完璧ではなく、間違いも含まれる。JFCも生成AIによる画像や動画の検証の際にツールを利用することはあるが、判定の参考にとどめている。

判別ツールの一つ「HIVE MODERATION」は、今回の動画について「AI生成コンテンツやディープフェイクコンテンツを含まない可能性が高い」と判定した。

判定

中道の街頭演説に大勢の聴衆が集まったという動画に対し、Grokの検証を用いて「AI生成」と指摘する投稿が拡散した。しかし、Grokによる検証だけでは根拠不十分で、Geminiなど他のAIモデルの判定結果とも矛盾している。また、2月1日の街頭演説には、多くの人が集まっている様子を別角度からも確認することができる。よって、誤りと判定した。

あとがき

生成AIを情報の確認に利用することで、様々な角度から情報を調べることができます。特にXでは「@grok ファクトチェックして」と依頼するユーザーが多くいます。

手軽に使えるツールですが、完璧ではありません。間違いが含まれることも多く、最終的に自分自身で確認することが必要不可欠です。

検証:木山竣策
編集:古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

パリで移民2世、3世が暴動? 連覇を祝うサッカーファンの動画【ファクトチェック】

パリで移民2世、3世が暴動? 連覇を祝うサッカーファンの動画【ファクトチェック】

「パリのいま 移民の2世、3世による暴動 移民国家の末路を見る」という投稿がThreadsで拡散しましたが、誤りです。映像は2026年5月にフランスのサッカーチームが欧州のチャンピオンズリーグで連覇を果たした際のファンの様子を撮影したものです。 検証対象 拡散した投稿 2026年5月31日、「パリのいま 移民の2世、3世による暴動 移民はもういらん」という動画付き投稿がThreadsで拡散した。 動画には興奮した人々が、花火をあげたり信号に登ったりする様子が映っている。 検証する理由 この投稿は1万件以上いいねがあり、1200件ほどリポストされている。「パリサンジェルマンが勝っての騒ぎでしょ。移民関係ないから」「サッカーの盛り上がりですよね」というコメントの一方で、「世界中で国文化を壊した移民ビジネス」「誰もとめる人もいない。狂ってますね」と誤解したコメントもあるため検証する。 検証過程 動画には広場のような場所に集まった人々が花火を打ち上げる様子が映っている。Googleレンズで検索すると、5月31日にYouTubeやXに投稿された動画が見

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)
スイスが世界で初めてマンモグラフィを禁止? 該当する発表はなく、当局は否定【ファクトチェック】

スイスが世界で初めてマンモグラフィを禁止? 該当する発表はなく、当局は否定【ファクトチェック】

乳房X線検査マンモグラフィを、スイスが世界で初めて禁止したと主張する投稿が拡散しましたが、誤りです。そのような発表はなく、スイス当局はJFCの取材に対して「50歳以上の女性に対し推奨している」と述べています。 検証対象 拡散した言説 2026年6月3日、「速報:スイスが世界で初めてマンモグラフィ禁止の国になった―世界的な医療スキャンダルが白日の下にさらされた!」などと主張する英語の投稿がXで拡散した。 検証する理由 6月8日現在、投稿は7500回以上リポストされ、表示は59.4万件を超える。 投稿には「出典は?」や「スイスはマンモグラフィを禁止していません」などの指摘もあるが「神に感謝します。私は何年も前からこう言ってきました」「サーモグラムはマモグラムよりもはるかに安全」など真に受けた反応も多い。 同様の主張は、日本語でも拡散している(例1、2、3)ため検証する。 検証過程 拡散した投稿は 拡散した投稿の自動和訳は次の通りだ。 「🚨 速報: スイスがマンモグラフィを禁止する世界初の国に — 暴露されたグローバルな医療スキャンダル!

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
「真理省はいらない」認知戦への対策は/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

「真理省はいらない」認知戦への対策は/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

1週間のドイツ滞在を終えて、帰国の途についています(その関係で今週もニュースレターの配信が一日遅れてしまいました)。 公共放送含む大手メディア、ファクトチェック団体、メディアリテラシー団体、政府機関など、様々な立場の専門家と偽・誤情報の現状と対策について議論しました。中でも話題の中心となったのは、ロシアからの認知戦の現状です。 ドイツで著名な事例と言えば、ドッペルゲンガー作戦です。ドイツの大手メディアのサイトを模倣したサイトが大量に作られ、偽記事をSNSで拡散させるという手口でした。CORRECTIVの調査報道などでその実態が明らかとなっています。 政府もこれらの現状に対して、外国からの影響工作に対する備えを強化しています。その動きは国家情報局を設置する日本にとっても参考になるでしょう。 印象的だったのは「ドイツはバルト3国や北欧などと比べて認知戦への対応が遅れた」という言葉です。海外からの影響工作について、ロシアの行動を明らかにする報道や政府対応などを見ると、日本よりもかなり先行しているように見えますが、自己評価は違うようです。 「真理省はいらない」という声も聞

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
経営ビザ取得者の「9割が不正」? 疑いがある事業者に対する調査【ファクトチェック】

経営ビザ取得者の「9割が不正」? 疑いがある事業者に対する調査【ファクトチェック】

厳格化された経営・管理ビザについて「外国人事業者の内9割が、経営実態のない会社、日本への移住目的、高度医療を受けるため悪用していた」という投稿がXで拡散しましたが、不正確です。全体の9割が不正だったかのように読めますが、不正が9割というのは「疑わしい事業者約300件を対象にした調査結果」で、経営ビザ取得者の9割という意味ではありません。 検証対象 拡散した投稿 2026年5月10日、「経営・管理ビザの厳格化により申請が96%減少。また既存の会社を調査した結果、9割が不正。つまり外国人事業者の内9割が、経営実態のない会社、日本への移住目的、高度医療を受けるための悪用していた」という投稿がXで拡散した。投稿は、ニュース番組の動画も添付している。 検証する理由 6月2日現在、この投稿は1万回以上リポストされ、表示回数は66万回を超える。投稿について、「『9割が不正』は扱いに注意がいる」という指摘もあるが、「9割不正って大問題ですよ」「これが外国人が集まる理由」などと誤解しているコメントも多いため、検証する。 検証過程 経営・管理ビザの厳格化 政府

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は6月27日(土)午後4時~5時30分で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei0627.peatix.com 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にどのような知識

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験

JFCファクトチェッカー認定試験

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)