NHKのリンクをクリックすると受信料が発生する?【ファクトチェック】

NHKのリンクをクリックすると受信料が発生する?【ファクトチェック】

「NHKのリンクをクリックすると受信料が発生する恐れ」という言説が拡散しましたが、誤りです。URLをクリックするだけでは受信料は発生しません。放送法改正案では、アプリのダウンロードやID入力などをして配信を受け始めた人に受信契約を求めることになる見込みです。

検証対象

2024年3月2日、「【悲報】NHKのリンクをクリックすると受信料が発生する恐れ」という投稿が拡散した。

この投稿は2024年3月7日時点で900回以上リポストされ、表示回数は15万回を超えている。返信欄には「ワンクリック詐欺」「TLにNHKのツイートが流れてきただけでも受信料が発生しそう」との声が多くある。

検証過程

投稿にはまとめサイト「ツイッター速報」のURLが貼られており、リンク先の記事はNHKをめぐる放送法改正案を報じるニュースに関する5chの書き込みを引用している。

その中に「Webサイトや電子メール、SMSなどのメッセージに記載されたURLを一度クリックしただけで、一方的に、NHKの放送受信などの契約成立を宣言され、多額の受信料の支払いを求められるという詐欺」という書き込みがある。まとめ記事の見出しはこの内容を反映している。

実際はどうか。2024年3月1日にNHKにインターネット業務を義務づける放送法改正案が国会に提出された。

放送法改正案は、テレビで放送する番組の同時・見逃し配信と番組関連情報をネットで提供するよう定めたものだ。受信料については「公平負担を確保するため、テレビ等の放送の受信設備を設置した者と 同等の受信環境にある者として、NHKが必須業務として行う放送番組等の配信の受信を開始した者をNHKとの受信契約の締結義務の対象とする」としている(総務省「放送法の一部を改正する法律案の概要」)。

具体的には、スマホやパソコンを所有していてアプリをダウンロードしたりIDを取得したりして配信を受け始めた人に受信契約を求める内容となっている(NHK日経新聞朝日新聞)。

日本ファクトチェックセンター(JFC)がNHKに問い合わせたところ「NHKの記事などのリンクをクリックするだけで受信料が発生することはありません」と拡散した言説を否定した。なお、現時点ではテレビを持ち自ら新規契約をする人はNHKサイト「受信料の窓口」で受信契約を進める仕組みになっている。

判定

NHKのリンクをクリックすると受信料が発生する恐れは、誤り。スマホやパソコンを持ち、アプリのダウンロードやIDを取得した人が配信を受け始める際に受信契約を求める見込みだ

検証:住友千花
編集:宮本聖二、野上英文、古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

2025年の偽・誤情報、ファクトチェック、認知戦 何がどのように広がったか

2025年の偽・誤情報、ファクトチェック、認知戦 何がどのように広がったか

1年前に2024年のファクトチェックの状況を振り返る記事を書いた際に「2024年はこれまで以上に大量の誤情報/偽情報が拡散した」と述べました。残念ながら、2025年は状況の悪化がさらに加速しました。 全体状況や2025年に特に注目すべきテーマを解説します。 偽・誤情報の増加とファクトチェック 「偽・誤情報は実際にどれだけ拡散しているのか」という問いに直接答えるのは困難です。 真偽不明の情報は、YouTube、TikTok、X、Instagram、LINEオープンチャット、Telegramなど多数のプラットフォームにまたがって無数に広がっています。しかし、それらが本当に偽・誤情報かは検証しなければ確認できません。すべての情報を検証することは不可能なため、偽・誤情報の総量を掴むことも不可能です。 確実に言えるのは、日本ファクトチェックセンター(JFC)が2025年の1年間で公開したファクトチェック記事は365本で、2023年173件、2024年330本から右肩上がりが続いているということ。 これはJFCが体制を強化したというだけでなく、JFCが目にする怪し

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
エコーチェンバー【JFC用語解説】

エコーチェンバー【JFC用語解説】

エコーチェンバーとは、自分と似た意見ばかりに囲まれ、自分の考えが世の中の正解であると思いこんで特定の思想に偏ってしまう現象です。日本語では「反響室」。閉ざされた部屋で同じような声が反響している様子に例えています。 XやFacebookやYouTubeやTikTokなど、ソーシャルメディアには「フォロー」や「チャンネル登録」などの機能があります。ユーザーは自分に価値観が近い人、好ましい人をフォローする傾向があります。 結果として、そこから発信される記事や動画だけでなく、そのコメント欄も含めて同質性の高い情報を見る確率が高まります。 これに似た概念がフィルターバブルで、フィルターバブルはアルゴリズムによるコンテンツの選別という技術的で受動的な構造を、エコーチェンバーは主にユーザーの能動的な選択や心理を表しています。 フィルターバブルとは【JFC用語解説】フィルターバブルとは、フィルター(膜)がバブル(泡)のように周りをつつみ、そのフィルターを通ってきたコンテンツ(記事や動画など)ばかりを目にする状態を意味します。 例えば、あなたが料理動画、それも日本の食べ歩きが好きで、YouTub

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
埼玉県川口市で検挙された4人に1人が外国籍? 繰り返し拡散する誤情報【ファクトチェック】

埼玉県川口市で検挙された4人に1人が外国籍? 繰り返し拡散する誤情報【ファクトチェック】

「川口市の検挙人数178人のうち、外国籍135人(約76%)」「検挙された人の約4人に3人が外国籍」という情報が拡散しましたが、誤りです。2024年に川口市内で、刑法犯で検挙された外国人のうち、トルコ・中国・ベトナムの3国籍が7割を占めるというデータを誤って解釈しています。この情報は繰り返し拡散しています。 検証対象 拡散した投稿 2025年12月22日、「【令和6年】川口市の検挙人数178人のうち、外国籍135人(約76%)」「検挙された人の約4人に3人が外国籍。大野知事「治安悪化のファクトない」私「ファクトしかない」という投稿が拡散した。 検証する理由 12月25日現在、この投稿は9100件以上リポストされ、表示回数は63万回を超える。投稿について「これから全国に広がっていきますよ」「めちゃくちゃだわ」というコメントの一方で「検挙人数が国籍無関係で178とは考えにくい」という指摘もある。 検証過程 根拠とされた記事の内容は 拡散した投稿は、産経新聞の2025年6月14日付の記事を引用している。「川口の外国人犯罪『トルコ国籍比率ずば抜けて

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)
インフルエンザワクチン「フルミスト」は劇薬だから危険? ワクチンは劇薬指定が原則【ファクトチェック】

インフルエンザワクチン「フルミスト」は劇薬だから危険? ワクチンは劇薬指定が原則【ファクトチェック】

鼻から吸い込むタイプのインフルエンザワクチン「フルミスト」の添付文書に「劇薬」と書いてあることなどから、「フルミストは危険」と訴える投稿がXやインスタグラムなどで拡散していますが、誤りです。フルミストに限らず、ワクチンは原則「劇薬」に指定されています。「劇薬」は、用量・用法を誤ると有害なおそれがあり、厳重に管理しなければならない医薬品を指しますが、ワクチンが危険だという意味ではありません。 検証対象 拡散した言説 2025年9月4日、フルミスト点鼻薬の添付文書に「劇薬」や「ミトコンドリア脳筋症症状悪化」などと書いてあることから「子供の命が危険」と主張する投稿がXで拡散した。 検証する理由 インスタグラムやTikTokでもフルミストの危険性を訴える投稿が多数拡散し、中には100万回以上再生されている動画もある(例1、2)。 検証過程 フルミストとは フルミストは、2024年10月に国内で接種が始まった鼻から吸い込むタイプのインフルエンザワクチンだ。ウィルスを弱めて使う生ワクチンで、2歳以上19歳未満を対象とし、接種回数は1回で済む。 米国で

By 根津 綾子(Ayako Nezu), リサーチ チーム

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は1月24日(土)午後2時~3時30分で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei0124.peatix.com 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にどのような知識

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験

JFCファクトチェッカー認定試験

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)