東京都はムスリム園児の給食に月9000円を支給?対象や用途は限定されず 【ファクトチェック】
「東京都がムスリムの園児1人につき毎月9000円を給食のために支給している」という趣旨の投稿が多数拡散していますが、ミスリードで不正確です。東京都が外国人児童を受け入れる施設に対して、園児1人につき毎月9000円を助成しているのは確かですが、対象はムスリム(イスラム教信者)に限りません。また、補助は給食に限らず、言語コミュニケーションや宗教、文化などへの配慮に対して交付されます。
検証対象
拡散した言説
「東京都がムスリム園児の給食に毎月9,000円を支給している」という趣旨の投稿がX、YouTube、TikTok、Instagramなど複数のプラットフォームで拡散している(例1、例2、例3、例4)。

例1は2025年9月22日にXへ投稿され、11月14日現在、表示は110万件を超え、1.3万回リポストされている。例2は例1を引用投稿し、表示は25.7万件、リポストは5900回以上。例3、例4の動画では「イスラム教の園児に毎月9000円あげるとは憲法違反」「都民の税金から出すとはありえない」「日本人の家庭は給食費を自分で払っている」などと主張している。
検証する理由
このような投稿は、9月後半頃から増えて多数のプラットフォームで拡散している。
「結局のところ外国人優遇ですよね!? 税金使って多文化共生はありえません」「政治や行政による特定宗教への忖度は政教分離の原則に抵触するのでは?」「東京都は狂ってませんか?配慮するならムスリムから自費を徴収するべき」「日本の子供に税金使えよ」など同調するコメントが多くみられる。
検証過程
元記事の内容は
例1の投稿には、2025年1月15日付のAERA Digitalの「『ハラル給食』広がる『みんなで同じごはん』の感動と『大炎上』のウラにあった大誤解」という記事が添付されている。
記事は、東京都の保育園でイスラム教徒向けの給食が提供され、都から「外国人の子ども受け入れ」の補助金として、園児1人につき毎月9000円が支払われていると説明している。
東京都は「外国人児童1人につき毎月9000円を施設へ補助」
都は「多様な保育ニーズに対応するため」として、施設に費用の一部を補助する「保育サービス推進事業補助金」を設けている。補助の対象は幅広く、障がい児保育やアレルギー児対応などと並び、「外国人児童受入れ」もある(東京都福祉局”保育サービス推進事業補助金”)。
東京都福祉局によれば、「外国人児童」の対象は、両親か父母のいずれかが外国人で、「児童本人に対して、言語・習慣・食事等において特別な対応をすること」もしくは「外国人である両親(又は、父もしくは母)に対して、言語において特別な対応をすること」のいずれかに該当することが条件だ。該当する児童を受け入れた施設には、毎月、対象児童数×9000円が支払われる(東京都”東京都保育サ-ビス推進事業補助金 各加算項目等説明資料令和7年度版”)
この制度は、イスラム教徒に限定しているわけではなく、すべての外国人児童が対象だ。
判定
「東京都がムスリム園児に毎月9000円を給食のために支給」という趣旨の投稿が多数拡散している。毎月9000円が施設に払われていることは事実だが、対象はすべての外国人児童だ。また、給食だけでなく、言語コミュニケーションや生活習慣への配慮にかかる費用を含んだものだ。よって、ミスリードで不正確と判定した。
出典・参考
AERA Digital.”『ハラル給食』広がる『みんなで同じごはん』の感動と『大炎上』のウラにあった大誤解」”.2025年1月15日.https://dot.asahi.com/articles/-/246400?page=1,(閲覧日2025年11月17日).
東京都福祉局.”保育サービス推進事業補助金”.https://www.hoikunomiryoku.metro.tokyo.lg.jp/service-suishin.html.(閲覧日2025年11月17日).
東京都.”東京都保育サ-ビス推進事業補助金 各加算項目等説明資料令和7年度版”.https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/fukushi/2025-02-27-185108-705,(閲覧日2025年11月17日).
あとがき
検証:リサーチチーム
編集:古田大輔、根津綾子
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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