東京都水道局が不審電話に注意喚起 「10年に一度の管路点検のため訪問したい」は虚偽

東京都水道局が不審電話に注意喚起 「10年に一度の管路点検のため訪問したい」は虚偽

水道局を名乗り、「10年に一度の管路点検のため訪問したい」と電話をする事例が相次いでいます。東京都水道局はXに「そのような宅内の水道管・水道器具の点検はしていません」と投稿し、不審電話への注意を呼びかけています。

「管路点検のため訪問したい」という電話に注意

8月6日、東京都の上下水道に関する情報を発信する公式アカウントが「10年に一度の管路点検のため、訪問したいという電話が頻発しています。東京都水道局ではそのような宅内の水道管・水道器具の点検はしていません」と投稿した。

投稿について「去年もうちにきた」「この間騙されそうになりました」というリプライもついている。

「管路点検」とは

管路とは、水道管や電線などを地下に埋設するための専用の管のことだ。

しかし、「管路点検」という言葉を使っている自治体や水道局は少なく、東京都水道局では「管路点検」という言葉を使った発信をしていない。

東京都水道局「10年に一度の管路点検は存在しない」

日本ファクトチェックセンター(JFC)は東京都水道局に問い合わせた。

東京都水道局は、JFCの取材に対して、屋内で作業をする「10年に一度の管路点検」というもの自体が存在しないと説明。屋外の水道メーター付近で漏水調査をすることはあるが、その場合は身分証を必ず提示しているという。

東京都水道局は、公式アプリなどを通じて「東京都水道局ではそのような宅内の水道管・水道器具の点検はしていません」「訪問を受けた際は、必ず身分証を確認してください。身の危険を感じたら警察に連絡を!」と注意喚起している。

担当者によると、不審電話の相談は、2023年は約100件だったが、2024年には約400件に増加。2025年は8月までで、約400件に達しているという。

東京都水道局の公式サイトによると、電話以外にも、水道局の職員を装って家の中に上がり、高額な浄水器を売りつけたり、やってもいない漏水修理の代金を請求したりする悪質な訪問販売や詐欺も多発している。

不審に感じた時は、水道局の窓口でも確認ができる。

東京都水道局サイトより

偽アカウントや偽サイトに注意を

水道局を装った電話や訪問による不審な電話や詐欺は、東京都に限らず、各地で多発している(千葉県神奈川県大阪市)。各自治体は、少しでも怪しいと感じたら、身分証を確認したり、水道局へ問い合わせてほしいと呼びかけている。

検証:木山竣策
編集:藤森かもめ、古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

新聞社が一斉に斎藤知事を攻撃? 共同通信の配信記事【ファクトチェック】

新聞社が一斉に斎藤知事を攻撃? 共同通信の配信記事【ファクトチェック】

「全国の新聞社各紙が示し合わせてほぼ同じ時刻に斎藤知事を攻撃している」という趣旨の投稿が拡散しましたが、誤りです。各社と契約している共同通信の記事を同じ時間に配信しているだけです。 検証対象 2025年8月8日、「全国各紙で『ほぼ同じ時刻』に報道してるのマジで草 各社一斉に示し合わせて報道することで、斎藤知事に対するメディアの『わかりやすすぎる』攻撃にあきれ果てるね。隠す気もないじゃん」という投稿が拡散した。 添付された画像は検索結果に、中日新聞、東京新聞、高知新聞など新聞各社の「任意聴取報道コメントせず 斎藤知事、公選法違反疑い」という記事が並び、「41分前」「42分前」などほぼ同時刻に配信されている。 8月13日現在、この投稿は1900件以上リポストされ、表示回数は52万回を超える。投稿について「全部同じ見出しも凄いですね」「明らかにテンプレ回ってて草」というコメントの一方で「メディアに情報を配信する報道機関があってだな」という指摘もある。 検証過程 拡散した投稿の画像にある記事は以下の通りだ。 中日新聞."任意聴取報道コメントせず 斎藤知事、

By 木山竣策
トランプ大統領が参政党を支持? そのような事実はない【ファクトチェック】

トランプ大統領が参政党を支持? そのような事実はない【ファクトチェック】

トランプ大統領が参政党支持を表明したという投稿がXで拡散しましたが、誤りです。トランプ氏のSNSにも米ホワイトハウスの公式サイトにもそうした発表はありません。 検証対象 8月6日、「トランプ大統領 ワシントンDCで公式発表 私は参政党を支持する」という投稿がXで拡散した。 8月12日現在投稿は6900回以上リポストされ、表示は213万回を超える。投稿には「トランプ大統領 素晴らしい👍」「トランプ大統領よく見てますね」というコメントや「勇み足にならないように気をつけましょう」「トランプ氏の思想に触発された参政党が選挙で躍進したって意味でしょ?」という指摘もある。 検証過程 投稿者は、この投稿の直後に「トランプに影響を受けた”日本人ファースト党”が日本で支持を拡大(Trump-inspired ’Japanese First’ party gains ground in Japan)」という記事のスクリーンショットを投稿している。 タイトルを検索すると、アジア系アメリカ人向けニュースサイトNextSharkの記事が表示される(NextShark.”Tr

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
止まらない政治的な誤情報、選挙が終われば減る検証記事/JFC検証6本、コラムなど/AIポッドキャストを開始【今週のファクトチェック】

止まらない政治的な誤情報、選挙が終われば減る検証記事/JFC検証6本、コラムなど/AIポッドキャストを開始【今週のファクトチェック】

政治関係の誤情報が拡散する傾向は、参院選以降も続いています。8月7日には1日で自民、国民民主、社民の3党にかかわるファクトチェックをそれぞれ公開しました。 以前も解説記事で書きましたが、2024年に東京都知事選、総選挙、兵庫県知事選という注目された3つの選挙でソーシャルメディアで政治系のコンテンツを見る人が増えた影響で、誤情報混じりの情報発信が増え、それを見る人も更に増えるという悪循環となっています。 参院選中に盛り上がったファクトチェックも、選挙期間が終われば、検証記事を出すメディアは激減し、野放し状態です。選挙に影響を与える誤情報は、選挙期間中だけに拡散するわけではありません。むしろ、選挙期間中の世論の風は、選挙が始める前にある程度は形作られています。 誤情報への恒常的な対策が必要です。(古田大輔) ✉️日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら。 JFCからのお知らせ JFCファクトチ

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
「本人がそう言っている」では足りない:検証が止まる瞬間【ファクトチェックの舞台裏】

「本人がそう言っている」では足りない:検証が止まる瞬間【ファクトチェックの舞台裏】

日本ファクトチェックセンター(JFC)がファクトチェックの舞台裏を語るコラム。第5回は、「組織の発表」や「当事者の説明」は偏っている可能性があるため、ボツになった記事を振り返ります。 立ちはだかる企業秘密→保留 2025年4月、エルメスやルイ・ヴィトンなど、ハイブランドのバッグが「実は中国産だ」と主張する動画が拡散しました。 ブランド側は「従業員の多くはフランスで働いている」「製造業者の95%がイタリアに拠点」などと公表しているため、その言葉を信じれば、拡散した動画の検証結果は「誤り」となります。 欧州のメディアやファクトチェック団体の中には、この動画を検証して「偽造品の可能性が高い」「主張は誤りだ」などと報じたところもありました。 一方で、イギリス公共放送のファクトチェックチームBBCVerifyは、ハイブランドの多くが「製造拠点を欧米諸国においていると公表している」と前置きした上で、「ハイブランド業界はサプライチェーンの透明化に対して非常に消極的で、実際のところを正確に知ることはできない。高級ブランドでも、中国で多くの製造が行われている。ただし、『最

By 藤森かもめ(Kamome Fujimori)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は8月23日(土)午後2時~3時15分で、お申し込みはこちら。 https://jfckoushiyousei0823.peatix.com 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にど

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験  教材と申し込みはこちら

JFCファクトチェッカー認定試験  教材と申し込みはこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)