ひろゆき氏、生放送中のとんでも発言で日銀が提訴? 偽記事を使った詐欺【ファクトチェック】

ひろゆき氏、生放送中のとんでも発言で日銀が提訴? 偽記事を使った詐欺【ファクトチェック】

「ひろゆき氏が生放送中にとんでもない発言をして日銀が提訴した」という記事が、XやYouTubeで拡散していますが、捏造された内容で、誤りです。記事中のリンクは投資を促す偽サイトにつながるため注意が必要です。

検証対象

2025年5月ごろから「(実業家の)西村博之氏が生放送中にとんでもない発言をした」という記事がXやYouTubeのプロモーション(広告)機能で拡散した(例1例2)。

拡散した投稿の中には、毎日新聞のロゴを用いているものもあるが、リンク先は毎日新聞とは無関係だ。

いずれの投稿も、ひろゆき氏が生放送中に失言をして日銀に訴えられたという内容になっている。

検証過程

リンク先は偽のニュースサイト

投稿に添付されたリンクをクリックすると、「日本銀行が生放送中の発言を理由に西村 博之氏を提訴」という記事が表示される。

記事にはNTTドコモが運営する「gooニュース」のロゴがあり、記事提供元として「読売新聞オンライン」のロゴもある。だが、実際のgooニュースとはURLが異なり、無関係のサイトだ。

記事の内容は、ひろゆき氏と政治評論家の寺島実郎氏が対談するものになっている。しかし、文章は翻訳調の不自然な日本語だ。内容も、ひろゆき氏が脈絡なく投資を促すなど、違和感がある。

画像はTV番組の一部を加工

過去には「日本銀行が提訴」という同様の内容で、ひろゆき氏ではなく、ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井正氏や映画監督の宮崎駿氏、タレントのタモリ氏など、著名人の名前を使った偽記事が繰り返し拡散している。

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、これまでにも、それらを検証して「誤り」と判定している。

日銀、生放送の発言で柳井正を提訴?【ファクトチェック】
日本銀行が、ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井正氏を提訴したという言説が拡散しましたが誤りです。ネットニュースの記事を装った投稿で、読者を投資サイトへ誘導するための偽広告です。 検証対象 2023年12月20日、「日銀、柳井正を提訴 生放送の発言で」という投稿がX(旧Twitter)の広告機能で拡散した。2023年12月21日現在、表示回数は19万件を超える。 投稿について「こんなのわざとやっている」「マジか」「ツイッターちゃんと広告審査しろよ」などのコメントがついている。 検証過程 投稿に添付されたリンクをクリックすると「日本銀行が生放送での発言で柳井正さんを提訴」という記事が出てくる。 柳井正氏と政治評論家の寺島実郎氏が対談する写真が添えられており、「このスキャンダルは、生放送中に柳井正さんが誤って番組で秘密を暴露したことから勃発した」という書き出しで始まっている。 サイトにはNTTドコモが運営する「gooニュース」のロゴがあり、記事には提供元として「読売新聞オンライン」のロゴもあるが、報道記事の見出しや書き出しとしては不自然だ。
タモリさんが起訴された?投資を促す偽広告【ファクトチェック】
「タレントのタモリさんが起訴された」というニュースを装った投稿がFacebookで広がっていますが、誤りです。起訴の事実はなく、ネットニュースを装って投資サイトへ誘導する偽広告です。 検証対象 「タモリさんの起訴が確定!」と書かれた投稿がFacebookで広がっている。 クリックすると「大スキャンダル: 日本銀行が生放送での発言でタモリさんを提訴」という記事が出てくる。 記事にはタモリさんの生放送中の発言がスキャンダルとなり、日本銀行が番組中止を求めたといった内容が書かれている。 検証過程 Yahoo!ニュースを装った記事 この記事が掲載されているページの上部には「Yahoo!ニュース」のロゴが入っている。また、テレビ朝日の人気番組「徹子の部屋」で黒柳徹子さんとタモリさんが対談している映像のスクリーンショットが使われている。 不自然な日本語、個人情報の入力に誘導 記事の内容を確認すると、「放送に多くのメッセージを送った」など日本語が不自然だ。「徹子の部屋」を生放送番組と書くなど間違いがあり、二人の話し言葉もぎこちない。 また、唐突に「む
日銀が宮崎駿監督を提訴?【ファクトチェック】
日本銀行が生放送での発言をめぐって、宮崎駿監督を提訴したという言説が拡散しましたが誤りです。ネットニュースの記事を装った偽広告で、読者を投資サイトへ誘導します。 検証対象 2023年12月27日、「日銀、宮崎駿を提訴 生放送の発言で」という投稿がX(旧Twitter)の広告機能で拡散した。リンク先のサイトにはNTTドコモが運営する「gooニュース」のロゴがあり、記事には提供元として「読売新聞オンライン」のロゴがある。内容は宮崎駿監督が日本テレビの番組「news zero」で投資について語ったというものだ。2024年1月4日現在、投稿のリンクから偽サイトには繋がらなくなっていたが、X上の投稿はまだ存在している。 検証過程 日本ファクトチェックセンター(JFC)は、2023年12月21日にもgooニュースを装った柳井正氏に関する偽記事についてファクトチェックをしている。今回の検証対象は、宮崎氏の名前と写真を使っているが「日銀、〇〇を提訴 生放送の発言で」という投稿の文面は前回の偽記事と全く同じものだ。 今回の検証対象については、弁護士ドットコムニュースも記

今回の記事は、柳井氏の偽記事で利用されたTOKYO MX「寺島実郎の世界を知る力」という番組と同じ画像が使われている。今回は柳井氏の画像をひろゆき氏に取り替えることで使い回されている形だ。

元になった番組は2023年3月にYouTubeに公開され、評論家の寺島氏と柳井氏が世界情勢や日本の針路について議論している。投資話ではない。

判定

拡散した記事は偽のニュースサイトに誘導し、実在する番組の画像を流用して内容を捏造し、最終的に投資を促している。よって、誤りと判定する。

あとがき

偽広告を用いた詐欺は、ソーシャルメディア上で大量に拡散しています。

JFCではオンライン詐欺の実態や対策についてもメディア情報リテラシー教育の一環として、ファクトチェック講座で解説しています。参考にしてみてください。

フェイクニュースと詐欺 堀江貴文氏や前澤友作氏など「なりすまし」への対策【JFCファクトチェック講座 理論編9】
日本ファクトチェックセンター(JFC)のファクトチェック講座です。 理論編第8回はニュースの読み方などニュースリテラシーについてでした。第9回は急増しているオンライン詐欺とその対策について説明します。 (本編は動画でご覧ください。この記事は概要をまとめています) 急増するオンライン詐欺の実態 SNSやメッセージアプリを利用したオンライン詐欺は、近年増加しています。 著名人の写真や映像を勝手に利用した詐欺広告が多く見られ、警察庁によると2023年の投資詐欺の認知件数は2271件、被害総額は約278億円に上ります。 被害者は主にFacebookやインスタグラムで詐欺に遭い、最終的にはLINEで連絡を取って振り込ませる手口が使われています。 クリティカルシンキングによる自衛 泥棒を取り締まる法律があっても自分で家に鍵をかけるように、オンライン詐欺から身を守るためには、ネット上での自衛策が必要です。 クリティカルシンキングで吟味し、立ち止まって考えましょう。突然、有名人が投資情報をあなたに売り込んでくることに疑問を持つ。そのアカウントのIDが公式のもの

検証:木山竣策
編集:古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

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