遺伝子組み換えバナナはシールの数字で見分けられる? 遺伝子組み換えを示す数字はない【ファクトチェック】

遺伝子組み換えバナナはシールの数字で見分けられる?  遺伝子組み換えを示す数字はない【ファクトチェック】

市販されているバナナが遺伝子組み換えかどうか、シールの数字で見分けられると主張する投稿が拡散しましたが、誤りです。遺伝子組換え作物かどうかを示す数字はありません。

検証対象

2025年4月9日、「Doleのバナナ 遺伝子組み換えかどうかの見分け方」という投稿が、画像とともに拡散した。画像には「輸入果物のシールにあるバーコードの番号で遺伝子組み換えかどうかが判別できる」「8で始まる番号=遺伝子組み換え」などと書いてある。

この投稿にはThreadsの投稿のスクリーンショットが添付されており、元の投稿は約2.4万件のいいねを獲得している。

2025年5月19日現在、この投稿は1000件以上リポストされ、表示回数は50万回を超えている。

この投稿について、「遺伝子組み換えだったの!」「9で始まるものを選ぼうっと」などのコメントの他、「デマです」「令和7年3月21日現在、遺伝子組み換えバナナは認可されておらず、生産・輸入されていません」などのコミュニティノートの指摘もある。

検証過程

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、果物のシールの番号で、遺伝子組み換え作物を見分ける方法があるかどうかを検証した。

在庫管理などに利用する「PLUコード」

検証対象の画像のようなシールについている番号は「PLUコード」と呼ばれ、在庫管理などに利用するものだ。

PLUコードを国際的に管理しているInternational Federation for Produce Standards(IFPS)によると、PLUコードは4または5桁の数字で、生鮮青果に貼られた小さなシールに記載される。このコードは品目や栽培方法などに基づいて識別され、国内および国際レベルでの厳格な審査を経て、IFPSが割り当てる。

IFPSのサイトによると、有機栽培の農産物は通常栽培の4桁コードの先頭に「9」を付けることで表現される。有機栽培のコードは93000〜94999の範囲におさまる(What is a PLU Code?)。

つまり、添付画像の主張のうち「9で始まる番号=オーガニック」という部分は正しい。しかし、「8で始まる番号=遺伝子組み換え作物」とは書かれていない。

IFPSのサイトにPLUコードを入力すれば、商品やサイズなどを調べることができる。拡散した画像の「4011」という数字を入力すると、「バナナ/黄色(Cavendish種を含む)」という情報とともに、バナナの画像が表示された。なお、84011で検索すると「該当なし」だった。

PLUコードに遺伝子組み換えを示す数字はない

PLUコードで遺伝子組み換え作物が見分けられるという主張は海外でも拡散し、ファクトチェック団体や報道機関が「不正確」「誤り」などと判定している(Science FeedbackAFP)。

AFPは次のように伝えている。

「IFPSの2015年の声明によると、『83000番〜84999番はかつて遺伝子組み換え作物用に予約されていたが、この番号が小売で使用されたことは一度もない』」(IFPS Media Release: PLU code transition

ドール社「画像は弊社のものではない」

JFCはDole Japan, Inc.に問い合わせた。

お客様相談室は、バナナにシールが貼られている画像について「この度SNSにupされている画像は、弊社(Dole Japan,Inc.)で扱っているものではございません」と答えた。

同社はPLUコードについて「商品管理を行うための民間団体(IFPS)による任意のコードであり、表示義務がないため、弊社商品には付けておりません」と説明した。

また、同社が輸入・販売するバナナについて「弊社で取扱うバナナに遺伝子組み換え作物は含まれておりません」とも回答。画像が同社と無関係な文脈で拡散していることについては「誠に遺憾に感じております」とコメントした。

日本では遺伝子組み換えバナナは認められていない

農水省のウェブサイトによると、日本では、遺伝子組換え生物の輸入や流通は、事前の科学的審査で「問題がない」と評価された場合のみ認められるという。

遺伝子組み換え生物には様々な用途があるが、食品として使用する場合は「食品衛生法」、飼料の場合は「飼料安全法」に基づいて審査される。生物多様性への影響は「カルタヘナ法」に基づいて評価される(農水省「生物多様性と遺伝子組換え(基礎情報)」)。

遺伝子組換え農作物の輸入や流通など、遺伝子組換え生物等の環境中への拡散を完全には防止しないで行う行為を「第一種使用等」と呼ぶ(農水省「カルタヘナ法に基づく生物多様性の保全に向けた取組」)。

2025年5月16日現在、農林水産省が第一種使用等として承認した遺伝子組換え農作物はアルファルファやイネなど17種類。この中にバナナは含まれていない。つまり、日本では遺伝子組換えバナナの輸入も流通も認められていない。

判定

確かに、PLUの83000番〜84999番は、かつて遺伝子組み換え作物用に準備されていたことはあったが、実際には小売で使われなかった。つまり、PLUコードで遺伝子組み換え作物かどうかを判断することはできない。よって、拡散した画像の主張「8で始まる番号=遺伝子組み換え」は誤りと判定する。

検証:リサーチチーム、根津綾子
編集:藤森かもめ、古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

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