「国連の平和大使、世界経済フォーラムで人口を4.5億に減らすことを提唱」は誤り【ファクトチェック】

「国連の平和大使、世界経済フォーラムで人口を4.5億に減らすことを提唱」は誤り【ファクトチェック】

「国連の平和大使、世界経済フォーラムで人口を4.5億に減らすことを提唱」という言説が拡散しましたが、誤りです。平和大使のジェーン・グドール氏は「もし世界が500年前の人口規模ならば、私たちが話す多くのことは問題にならないだろう」と話していますが、拡散した投稿は、前後の文脈を無視して、発言を歪めた内容です。

検証対象

2023年10月2日、「国連の平和大使、世界経済フォーラムで人口を4.5億に減らすことを提唱」という言説が拡散した。

このポストは2023年10月12日時点で1800件以上リポストされ、表示回数は26万回を超える。リプライには「あなたからどうぞ」「本当なら平和の意味を問いたい」といったコメントの一方、発言内容の和訳が誤りだと指摘する声もある。

なお、APが2022年12月29日にこの言説をファクトチェックし、誤りと判定している。

検証過程

検証対象は、以下のポストを引用している。

ポストは、2020年1月に開かれた世界経済フォーラムの動画の一部(31:06〜31:17および31:35〜31:53)を切り出したもので、霊長類学者のジェーン・グドール氏が話している。動画の31:35〜31:53の部分のグドール氏の発言は以下の通りだ。

 "We cannot hide away from human population growth. Because, you know, it underlies so many of the other problems. All these things we talk about wouldn't be a problem if there was the size of population that there was 500 years ago.”(私たちは人類の人口増加から逃れることはできません。なぜなら、それが他の多くの問題の根底にあるからです。私たちが話しているこれらすべてのことは、500年前の人口規模ならば問題にはならないでしょう)

なお、この言説が削減目標だと主張する「4億5000万人」という人口は500年前の推計人口(国連人口基金)とおおよそ一致する。

よって、このポストはグドール氏の「500年前の人口規模ならば問題にはならない」との発言を「世界の人口を4億5000万人まで削減することを主張」と歪めていることが分かる。

また、APの記事は、このグドール氏の動画は、2022年7月にも「新型コロナウイルスのパンデミックが人口増加を抑制するために作られたことを証明した」という根拠のない主張とともに拡散したと伝えている。

判定

グドール氏の実際の発言は「私たちが話しているこれらすべてのことは、500年前の人口規模ならば問題にはならない」であり、500年前の人口規模に減らすことを提唱したわけではない。よって誤り。

検証:住友千花
編集:藤森かもめ、宮本聖二、古田大輔

検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。

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