ほんこん氏「トランプ大統領になってからガザで人は亡くなっていない」? 停戦中だが死者が出ていた【ファクトチェック】

ほんこん氏「トランプ大統領になってからガザで人は亡くなっていない」? 停戦中だが死者が出ていた【ファクトチェック】

タレントのほんこん氏がテレビ番組で「トランプ大統領になってからガザで人は亡くなっていない」という発言をしましたが、不正確です。放送した日は停戦中でしたが、その期間も人が亡くなっています。

検証対象

2025年9月15日、ほんこん氏が「トランプ大統領になってからウクライナで人は亡くなっていない、ガザでもそうだし」と発言したという投稿が、動画付きで拡散した。

9月22日現在、動画は8400回以上リポストされ、表示は825.6万件を超える。

投稿には「朝日放送の劣化ぶりは目も当てられません」「こういう素人が集まって知りもしないことについてあれこれ雑談する番組作る意味がどこにあるんだかさっぱりわからない」や「これ半年前の放送やね、何で今ごろあげたん?」という指摘もある。

検証過程

拡散した投稿と動画の内容は

拡散した投稿に添付された動画は34秒。全文書きおこしは以下の通りだ。

「何やかんや言うてもトランプ大統領なってから停戦っていうか人が亡くなってないから、俺はそれガザの方でもそやし、みんなトランプがあかんあかんって言うてるけども、やり方うまいなとか思うけどね」

「ほんであの、やっぱり譲歩するていうかほんまに通訳を入れるとか入れへんとかっていうの、やっぱりやっぱりあのお金を出してもうてるところに行くのやったら最低の礼儀は必要やと思うし、それがなかって感情的になって、ほんで国民、あの、内政でしょウクライナの。ゼレンスキー大統領は選挙してないやん。ほんまは選挙せなあかんねんけど」

出演者や動画の16秒頃の背景のロゴなどから、朝日放送テレビ(ABC)の番組「正義のミカタ」からの抜粋のように見える。

動画は3月8日放送の抜粋 ABC「結果として不十分」

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ABCに問い合わせた。担当者は「番組内で放送されたもので間違いはありません」としたうえで、以下のように回答した。

「この発言について、視聴者の皆さまをはじめ多くの方からご指摘、ご叱責をいただいております。SNSなどで拡散している発言や動画は、前後が切り取られ、発言者の意図が伝わりにくい形となっておりますが、この発言は前政権であるバイデン政権の状況を念頭におき、『被害が相対的に減少している』という意図であったことを確認しています」

ABCは番組ホームページで「3月8日、9月13日放送回における番組出演者の発言について」と題して声明を掲載している。以下のような内容だ。

「SNSなどで拡散している発言や動画は、前後が切り取られ、発言者の意図が伝わりにくい形となっておりますが、3月の放送回については前政権であるバイデン政権の状況を念頭におき、『被害が相対的に減少している』という意図であった」

「結果として誤解を招く不十分な表現だったと認識しております」(朝日放送テレビ”3月8日、9月13日放送回における番組出演者の発言について”)。

トランプ氏大統領就任~放送日のガザでの死者数は0?

拡散した投稿では、ほんこん氏がウクライナとガザでの死者数に触れた形になっているが、動画で明確に触れているのはガザだ。

JFCはトランプ氏が二度目に大統領に就任した2025年1月20日から放送日の3月8日までのガザの死者数を確認した。国連人道問題調整事務所(OCHA)の2月5日のレポートには次のように書いてある。

「1月28日午後から2月4日午後までの間にガザ保健省(MoH)は、新たに123人のパレスチナ人が殺され、新たに47人が負傷したと報告した。その中には新たに収容された113人の遺体が含まれている。1月19日の停戦発効から2月4日までに、これまで立ち入れなかった地域から合計467体の遺体が収容されたと同省は報告している」(OCHA”Humanitarian Situation Update #261 | Gaza Strip”)

トランプ第2次政権が発足したのとほぼ同時期の1月19日にガザでの停戦が発効し、放送日の3月8日は停戦中だった(朝日新聞”ガザ停戦は崩壊してしまうのか 「薄氷の合意」の裏にあったのは”2025年3月18日、ロイター”ガザ停戦が発効、人質名簿巡る混乱で遅延 15カ月に及ぶ戦闘休止”2025年1月19日)。

しかし、「人が亡くなっていない」は誤りだ。

判定

ほんこん氏がテレビ番組で「トランプ大統領になってからウクライナやガザで人は亡くなっていない」という趣旨の発言をしたという投稿が拡散した。動画は2025年3月8日に放送されたテレビ番組からの切り抜きで、ほんこん氏は「ガザで人が亡くなっていない」と発言している。実際にはこの期間は停戦中だったが人は亡くなっているため、不正確と判定する。

出典・参考

朝日放送テレビ.”3月8日、9月13日放送回における番組出演者の発言について”. https://www.asahi.co.jp/mikata/,(閲覧日2025年9月22日).

OCHA.”Humanitarian Situation Update #261 | Gaza Strip”. 
https://www.ochaopt.org/content/humanitarian-situation-update-261-gaza-strip,(閲覧日2025年9月22日).

朝日新聞.”ガザ停戦は崩壊してしまうのか 「薄氷の合意」の裏にあったのは”.2025年3月18日.
https://digital.asahi.com/articles/AST3L1GD2T3LUHBI02ZM.html,(閲覧日2025年9月22日).

ロイター.”ガザ停戦が発効、人質名簿巡る混乱で遅延 15カ月に及ぶ戦闘休止”.2025年1月19日. https://jp.reuters.com/world/mideast/FDFE3TU64BNYBCL75MJ2WNPIO4-2025-01-19/,(閲覧日2025年9月22日).

検証:根津綾子
編集:古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

イオンモール熊本の爆発はテロ? 現時点で未解明、漏洩したLPガスに着火した可能性も【ファクトチェック】

イオンモール熊本の爆発はテロ? 現時点で未解明、漏洩したLPガスに着火した可能性も【ファクトチェック】

2026年7月28日に発生した熊本地震の後、嘉島町のイオンモール熊本で起きた爆発事故をめぐり「テロだ」と主張する投稿が拡散しましたが、根拠不明です。経済産業省は漏洩したLPガスに着火した可能性に言及していますが、現時点で未解明です。イオンは8月5日、外部専門家らによる事故調査委員会を設置すると発表しました。 検証対象 拡散した言説 2026年8月2日、イオンモール熊本の爆発がテロによるものだと主張する投稿がXで拡散した。 検証する理由 8月5日現在、投稿は600回以上リポストされ、表示は19万件を超える。 同様の情報の拡散量を調べるため、「熊本」「イオンモール」「爆発」「テロ」など複数のキーワードを組み合わせてソーシャル分析ツールMeltwaterで調べると、総投稿数は8月5日までに約9900件あった(例1,2,3)。拡散のほとんどはXだ。 これらの投稿は根拠を示していないが、「ガス爆発には見えないね」「これは 熊本を略奪する為のテロですよ」など、投稿を真に受けたり、同調する反応が多い。「デマまたは不確定な情報を流すな」や「陰謀論だよ」などの指摘

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
イオンモール熊本の爆発は「ガスコージェネレーション」が原因? 経産省「設置していない」【ファクトチェック】

イオンモール熊本の爆発は「ガスコージェネレーション」が原因? 経産省「設置していない」【ファクトチェック】

熊本地震後にイオンモール熊本で発生した爆発について、「ガスコージェネレーションシステムが原因だ」とする投稿がXで拡散しましたが、誤りです。経済産業省は「ガスコージェネレーションやガス発電機は設置していないことを確認している」と発表し、LPガスが原因だった可能性が高いと説明しています。またイオンは5日、事故原因を調べる事故調査委員会を設置すると発表しました。 検証対象 拡散した投稿 イオンモール熊本で発生した爆発を受けて、Xでは、都市ガスを燃料としてガスエンジンやガスタービンで発電し、排熱を冷暖房などに利用する「ガスコージェネレーション」が原因だとする投稿が拡散した(例1、例2)。  検証する理由 ソーシャルリスニングツールMeltwaterで調べると、これらの投稿の表示回数は少なくとも合計194万回を超えている。爆発の原因をめぐって、さまざまな根拠不明の情報が飛び交っているため検証する。 検証過程 イオンモール熊本の爆発 2026年7月28日午後16時27分ごろ、熊本県で震度7の地震が発生した。午後6時ごろ、嘉島町のショッピングセンター「イ

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)
鳩山由紀夫元首相が中国共産党に頭を下げた動画? 2015年に韓国の独立運動家らに謝罪したもの【ファクトチェック】

鳩山由紀夫元首相が中国共産党に頭を下げた動画? 2015年に韓国の独立運動家らに謝罪したもの【ファクトチェック】

鳩山由紀夫元首相が中国共産党に頭を下げている動画だという投稿が拡散しましたが、誤りです。動画は2015年8月、鳩山氏が韓国・ソウル市の西大門刑務所跡を訪問し、韓国の独立運動家らに謝罪した映像です。中国共産党に対して頭を下げている動画ではありません。 検証対象 拡散した言説 2026年7月30日、「日本人がなぜ左翼を嫌うのか、考えたことはありますか?/ここに日本の左寄り首相だった鳩山由紀夫がいます。彼は2009年から2010年まで1年間務めました。/このビデオでは、彼が中国を訪問中に中国共産党に対して恥じらいながら頭を下げています」という英文付きの動画がXで拡散した。 検証する理由 8月6日現在、投稿は200回以上リポストされ、表示は20万件を超える。 投稿には「私の日本語力が衰えていたら申し訳ないですが、動画に『韓国』と書いてあるように見えます」などの英語の指摘もあるが、「日本が犯した残虐行為を謝罪するのは悪いことだと思わない」「共産主義者に恥じて頭を下げるべき人はいない」など、拡散した投稿を真に受けた反応も多いため検証する。 検証過程 動

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
「マイナポータルに不審なアクセス」という偽メールに注意 警視庁「『オンライン確認画面へ』という部分は押さないで」

「マイナポータルに不審なアクセス」という偽メールに注意 警視庁「『オンライン確認画面へ』という部分は押さないで」

警視庁を名乗り、「マイナポータル関連アカウントに第三者による不審なアクセスが記録された」と嘘の説明をして、リンクへ誘導する偽メールが出回っています。警視庁は公式Xで、メール内のリンクを押さないようにと注意を呼びかけています。 SNSで「不審なメールが届いた」との報告が相次ぐ 2026年7月ごろから「警視庁サイバーセキュリティ対策本部」を名乗るメールが届いたという投稿がX(旧Twitter)上で複数確認できる(例1、例2、例3)。 偽メールの件名は「【警視庁】マイナポータル:不審なアクセスの確認」。本文には「警視庁サイバーセキュリティ対策本部」「通知番号:MN-2026-●●●」「マイナポータル関連アカウントに、第三者による不審なアクセスが記録されました」「お客様のメールアドレスと一致しています」と記している。 そのうえで「2026年8月2日(日)23:59までに、ご本人操作かどうかご確認ください」などと「オンライン確認画面へ」というリンクをクリックするよう誘導している。 本文には、警視庁の住所(東京都千代田区霞が関2-1-1)も書かれている。 しかし、

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は8月23日(日)午後4時~5時30分で、お申し込みはこちら。 日本ファクトチェックセンター(JFC) ファクトチェック講師養成講座 8月23日(日)開催分日本ファクトチェックセンター(JFC)による講師養成講座です。 講師養成講座(オンラインで90分)を受講いただいた後、修了課題を提出された方には、教室や職場などで利用可能な教材の提... powered by Peatix : More than a ticket.Peatix 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験

JFCファクトチェッカー認定試験

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や騙されない人の行動

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)