「大阪万博にマラリア蚊など様々なウィルスを持った蚊が撒き散らされた」? 人を刺さない虫で感染症リスクは低い【ファクトチェック】

「大阪万博にマラリア蚊などの様々なウィルスを持った蚊が撒き散らされた」という投稿が拡散しましたが、誤りです。日本国際博覧会協会や専門家によると、蚊に似た虫「ユスリカ」で、人を刺さず、感染症のリスクは低いといいます。
検証対象
2025年5月18日、「とうとう、始まってしまいました。大阪万博にDSビルゲイツのDSマラリア蚊や、様々なウィルスを持った蚊が撒き散らされました。大阪万博からパンデミックが始まります。やはり万博には行ってはいけないのです」という投稿が、画像とともに拡散した。

画像の左側には、ビル・ゲイツ氏の写真と「ゲイツが蚊をまいた2州で20年ぶりにマラリアが再流行」というメッセージがついている。右側は、虫らしきものが木製の柱に大量に止まっている。
この投稿は2025年5月21日現在、264万回以上の閲覧回数と3800件以上のリポストを獲得している。投稿について「本当だとしたら大変なことです」「怖すぎる」というコメントの一方で「これはユスリカです」という指摘もある。
検証過程
発生したのは蚊に似た虫「ユスリカ」
大阪万博の会場で、5月ごろから大量の虫が発生していることは広く報じられている。万博を主催する博覧会協会によると、会場で発生しているのは「ユスリカ」という蚊に似た虫だ。(朝日新聞5月20日、産経新聞5月20日、NHK5月21日)。
5月に入って群れが目立つようになり、来場者のXなどで不快感を訴える声が多くあがっていた(例1、例2)。
ユスリカは人を刺さない
検証対象は「マラリア蚊や、様々なウィルスを持った蚊が撒き散らされました」と主張しているが、万博に発生している虫は、人体に有害なのか。
ABCニュース(朝日放送)は、万博会場で採取した虫を分類したユスリカ研究の第一人者・山本直博士の話を紹介している。山本氏は、万博側から提供された15~6匹の虫を調べ、すべて「シオユスリカ」であると確認した。人体への影響に関する山本氏の説明は次の通りだ。
「一般的な『蚊』のように刺される心配も無く、感染症の媒介など大きな実害はない」(ABCニュース 2025年5月20日)
朝日新聞は、大阪府環境衛生課の見解を伝えている。山本博士と同様に「ユスリカは人を刺すことはない」と説明する一方で「ダニと同じように、死骸がぜんそくなどのアレルギーの原因にもなる」と指摘している(朝日新聞2025年5月20日)。
厚労省によれば、マラリアは「マラリア原虫をもった蚊(ハマダラカ属)に刺されることで感染する病気」だ(厚労省検疫所「マラリアに注意しましょう!」)。
万博に大量発生している虫は、人を刺さない。つまり、検証対象が主張するようにマラリアがまきちらされる心配はない。また、ほかの感染症の媒介の可能性も低い。
判定
万博会場に大量発生している虫は「ユスリカ」。人を刺さず、マラリアをまきちらすことはない。よって「大阪万博にマラリア蚊や、様々なウィルスを持った蚊が撒き散らされた。大阪万博からパンデミックが始まる」という主張は誤りと判定する。
検証:リサーチチーム、根津綾子
編集:古田大輔
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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