味の素は覚醒剤の親戚? グルタミン酸ナトリウムの安全性は国際的に認められている【ファクトチェック】

味の素は覚醒剤の親戚? グルタミン酸ナトリウムの安全性は国際的に認められている【ファクトチェック】

「味の素は覚醒剤の親戚」という情報が拡散しましたが、誤りです。味の素の主成分のグルタミン酸ナトリウムは、国が使用を認める食品添加物で、国際的にも安全性が認められています。覚醒剤は身体に悪影響を与え、各国の法律で禁止されています。

検証対象

2025年3月18日、「味の素の闇 覚醒剤と同じ」とのテロップがついた動画の切り抜きが拡散した。

動画では、味の素の原材料グルタミン酸ナトリウムについて「覚醒剤の親戚ですね」と発言している。

2025年4月4日現在、1900件以上リポストされ、表示回数は660万回を超える。「覚醒剤とグルタミン酸は全然違う物質だ」「名誉毀損だ」などの批判の一方で「まじかよ味の素買うのやめよ」というコメントもある。

検証過程

内海氏「覚醒剤の親戚」「構造が近い」

拡散した動画の発信者の情報をもとに日本ファクトチェックセンター(JFC)が検索しところ、元動画が見つかった。

元動画は13分39秒。SNSで発信している内科医の内海聡氏が「食品の闇」をテーマにしたYouTubeチャンネルにゲスト出演している。拡散した動画は39秒間。内容は改変されていない。

動画の中で内海氏は調味料「味の素」について「薬物学的に言うと、覚醒剤の親戚ですね」と発言している。また、主成分グルタミン酸ナトリウムと覚醒剤は「構造が近い」と指摘し、「『おいしい~』って脳が非常に興奮状態になれるので、それにまつわるすべての病気になる」などと発言している。

グルタミン酸ナトリウムの安全性は

グルタミン酸ナトリウム(MSG)は、国際的に安全性が認められ、様々な食品に利用されている。

FAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)の合同食品添加物専門家会議はMSGの安全性を科学的に評価し、「グルタミン酸ナトリウムが人の健康を害することはない」と結論付けた(WHO)。

米国食品医薬品局(FDA)や欧州食品安全機関(EFSA)も同様の見解を示している(FDA, EFSA)。

また、味の素自身もウェブサイトで「うま味調味料『味の素®』よくあるQ&A」というコーナーを設けて、安全性について以下のように説明している。

“「味の素®」が体に入ると、グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸、ナトリウムとに分かれ、肝臓や腸管などで代謝されてしまいますので、体に蓄積されることはありません。また、「味の素®」の主成分であるグルタミン酸ナトリウムは、日本はもとより欧米、国連などの権威ある機関(※)からも安全であると認められています。

※国連食糧農業機構(FAO)、世界保健機関(WHO)のFAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)、欧州共同体(EC)の食品科学委員会(SCF)”

味の素をめぐる誤情報の歴史

味の素がこのような情報発信に取り組んでいるのは、過去に安全性をめぐって誤った情報が拡散した経緯があるからだ。

1968年、米国の研究者が中華料理を食べた後に発生する頭痛や発汗などの症状を「中華料理店症候群」として論文で発表した。原因としてMSGが疑われた。

この論文をきっかけにMSGの安全性が議論されるようになったが、後の研究で因果関係は確認されなかった。

覚醒剤の危険性は

動画では内海氏は「覚醒剤は体に良い物が入っている」とも発言している(13秒)。

覚醒剤は主にメタンフェタミンやアンフェタミンなどの化学物質で構成されている。神経を興奮させる作用により身体・精神の両方に深刻な悪影響を及ぼす。日本では、法律によって厳しく規制されており、所持・使用は犯罪にあたる(覚醒剤取締法14条19条)。

判定

味の素の主成分グルタミン酸ナトリウムは、昆布や野菜に含まれるうま味成分グルタミン酸を原料とした調味料。国際的に安全性が認められている。一方、覚醒剤はメタンフェタミンやアンフェタミンなどの化学物質で構成され、グルタミン酸ナトリウムとは異なり、心身への悪影響から各国の法律で禁止されている。よって、「グルタミン酸ナトリウムは覚醒剤の親戚である」という言説は誤り。

あとがき

「味の素は危険だ」という人々の不安を煽るような誤情報が、これまでも繰り返し発信されています。日本ファクトチェックセンター(JFC)では、これまでも味の素は有害だという情報を検証しています。

味の素は神経毒?うま味調味料の安全性は確認されている【ファクトチェック】
「味の素は神経毒」という情報が拡散しましたが、誤りです。味の素は「うま味調味料」として国に使用が認められている食品添加物で、一般的な使用量で健康を損なうことはありません。過去には、味の素に含まれるグルタミン酸ナトリウムの危険性が指摘されたことがありますが、現在の研究ではグルタミン酸ナトリウムは安全とされています。 検証対象 味の素の商品や漫画の画像と共に、「味の素には有害物質が含まれており、人体に悪影響がある」という言説(例1、例2)が拡散した。リツイート・引用リツイート数が2800回、表示回数が41万回を超えたものもある。 リプライ欄には味の素について不安を訴えるコメントが多く寄せられている。 検証過程 検証対象のツイートで述べられている「味の素」は、味の素株式会社が製造する「うま味調味料」だ。そもそも、うま味調味料とは何か。 日本うま味調味料協会のホームページによると、うま味調味料はさとうきびの糖蜜やキャッサバ、とうもろこしなどのでんぷんから得た糖をを発酵させてできるグルタミン酸ナトリウムの結晶でつくる。L−グルタミン酸ナトリウム(うま味調味料と

検証:リサーチチーム
編集:宮本聖二、古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

日本が外国人観光客や不法移民を「寿司のように」簀巻きにして強制送還? 国籍を問わず使うシート【ファクトチェック】

日本が外国人観光客や不法移民を「寿司のように」簀巻きにして強制送還? 国籍を問わず使うシート【ファクトチェック】

日本政府が、迷惑行為をした外国人観光客や不法移民を「寿司のように」シートで簀巻きにして国外退去させていると主張する動画が英語やスペイン語で拡散しましたが、不正確です。警察は、動画に映っているシートを国籍を問わずに使用しています。国外退去目的ではありません。 検証対象 拡散した言説 2026年2月9日、「日本は、迷惑な観光客の『寿司化』プロセスを開始しました。もしあなたが問題を起こしているところを見られたら、彼らはあなたを巻いて強制送還のために送り出します。笑」という英語の投稿がXで拡散した。 投稿には動画が添付されている。街中で「警視庁」という文字の入った制服姿の男性数人が、黒人男性を緑色のシートでくるんでパトカーに乗せる様子が映っている。 検証する理由 4月6日現在、投稿は1.5万回以上リポストされ、表示は455.2万件を超える。 投稿には「天才的な判断だ――無礼は一切許さない」や「観光客は、訪れる国の文化を尊重することを学ぶべきだ」など真に受けたコメントも多い。 スペイン語で「高市政権は不法移民たちを寿司のようにくるんで強制送還する」という

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
キアヌ・リーブスが「ハリウッドスターは赤ちゃんの血を飲んでいる」と暴露? 何度も拡散する偽情報【ファクトチェック】

キアヌ・リーブスが「ハリウッドスターは赤ちゃんの血を飲んでいる」と暴露? 何度も拡散する偽情報【ファクトチェック】

俳優のキアヌ・リーブス氏が「ハリウッドスターは赤ちゃんの血を飲んでいる」と暴露したという動画付き投稿が拡散しましたが、誤りです。そのような発言はしていません。2017年ごろから何度も拡散している偽情報です。 検証対象 拡散した投稿 2026年3月30日、「キアヌ・リーブスが内部告発:『ハリウッドスターはハイになるために赤ちゃんの血を飲んでいる』衝撃的な映像が流出した」という投稿が拡散した。 投稿は英語の投稿を引用しており、引用元には15分の動画が添付されている。動画ではニュースキャスター風の人物が、「キアヌの新番組『フーリガンズ』のプロモーション中、彼はファンに対して爆弾発言をしました」などと話しており、キアヌ・リーブス氏がインタビューに答える画像が挿入されている。 検証する理由 4月7日現在、この投稿は4300件以上リポストされ、表示回数は46万回を超える。投稿について「キアヌ・リーブスが嘘つくとは思えないから本当なんだろう」「キアヌ、こんな発言して大丈夫かな」というコメントの一方で「悪質なフェイクニュース」という指摘もある。 検証過程

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)
高市首相が「移民より出産増で人口減対策」と演説? 出生率向上重視しつつ、外国人労働力も否定せず【ファクトチェック】

高市首相が「移民より出産増で人口減対策」と演説? 出生率向上重視しつつ、外国人労働力も否定せず【ファクトチェック】

高市早苗首相が、2025年10月24日の所信表明演説で「移民を増やすのではなく、子供を多く持つことが日本の人口減少を解決する」と述べたと主張する投稿が拡散しましたが、不正確です。高市首相は「子供・子育て政策を含む人口減少対策を検討していく」と述べるとともに、「人手不足の状況において、外国人材を必要とする分野があることは事実です」とも発言しています。 検証対象 拡散した言説 2026年4月1日、「高市首相は移民を増やすのではなく、子供を多く持つことが日本の人口減少を解決すると述べた」と主張する投稿がXで拡散した。 検証する理由 4月6日現在、投稿は1900回以上リポストされ、表示は15.5万件を超える。 投稿には「真っ赤な嘘。高市は、そんな事ひとことも言ってない」や「情報を都合良く解釈して賛美。アホらし」などの指摘もあるが、「自慢の総理が世界でも認められて飛び上がるぐらい嬉しい」や「悪さをするのは男が多い、移民は40歳以下の女性限定にしましょう」など真に受けた反応も多いため、検証する。 検証過程 添付動画は2025年10月の演説 拡散した投

By 根津 綾子(Ayako Nezu)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は4月25日(土)午前10時~11時30分で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei0425.peatix.com 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にどのような

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験

JFCファクトチェッカー認定試験

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)