台風で駅が浸水しても陽気なスウェーデンの人々の画像?【ファクトチェック】(訂正あり)

台風で駅が浸水しても陽気なスウェーデンの人々の画像?【ファクトチェック】(訂正あり)

「台風で駅が浸水しても陽気なスウェーデンの人々」という画像が拡散しています。加工された偽物の画像ではと疑う声もありますが、これは浸水した駅で撮影された本物の画像です。

検証対象

2022年9月6日にTwitterに投稿された画像には、浸水した建物内で、複数の人が浮き輪を使ってくつろぐ様子が写っている。「台風で駅が浸水しても陽気なスウェーデンの人々が草」と書かれたこの投稿には6万のいいねがつき、「神適応能力」「たのしそうwいいな」などと反応する人が大勢いる一方で、「CGで作った?」「そもそもスウェーデンに台風ってくるの?この画像は本物なのか?」とネタ画像ではないかと疑う声も見られる。

画像
Twitterで拡散した画像

検証過程

同様の画像はソーシャルメディアで世界中に拡散している。投稿された画像をたどると、ハフポストフランス版に同じ写真が見つかり、撮影されたのは2018年7月29日頃、スウェーデン中部ウプサラの中央駅との説明がある。

この情報をもとにTwitterなどで検索すると、異なるユーザーが、同じ場所で撮ったと見られる別アングルの画像動画別アングルの動画)を発信したり、地元メディア「The Local」にも「「豪雨による洪水後、鉄道駅の地下道で泳ぐスウェーデン人たち」という記事が出ており、ビジネス・インサイダーの記事もある。

En Suède, les pluies diluviennes inondent une gare et ça donne des idées à certainsAprès des mois de sécheresse, de l'eau. Beaucoup d'eau.www.huffingtonpost.fr

判定


これらの画像や動画、記事から、2018年7月にスウェーデンのウプサラで洪水があり、浮き輪に乗る人々がいたという画像は本物と判断した。(以下、太字は訂正追記)ただし、台風ではないため「ほぼ正確」と判定する。

(台風ではないと言う検証については検証部分をご参照ください)

あとがき

気象庁によると「台風は、東経180度より西の北西太平洋および南シナ海に存在する熱帯低気圧のうち、最大風速が約17m/s以上になったものを指します」とあり、スウェーデン周辺にはこの定義で言う「台風」は発生しません。一方で「ハリケーン」の発生可能性はありますが、米National Hurricane Centerのデータでは、同時期に近郊で水害が発生するようなハリケーンはありませんでした。

なので、細かく言うと「台風」ではありません。

検証:本橋瑞紀
編集:藤森かもめ

訂正

当初、判定を「正確」としていましたが、「ほぼ正確」に訂正します。

問い合わせフォームやソーシャルメディア経由で、「『台風』ではないのだから『正確』ではないのでは」など、ご指摘をいただきました。

記事公開の際には「画像を中心とした検証で、画像は間違っていないので『正確』と判定し、台風ではないという点は追記に書く」という判断をしていました。

指摘を受けて改めて議論し、「サムネイル画像を見ると画像ではなく、ツイートそのものを検証しているように見える」「サムネイル画像を見たユーザーが『台風』という部分も正確と認識する」など検討の上、訂正することにいたしました。

ご意見ありがとうございました。JFCでは今後もみなさまのご意見を参考にしつつファクトチェックに取り組んでまいります。

(2022年9月30日17:47)


検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。

「ファクトチェックが役に立った」という方は、シェアやいいねなどで拡散にご協力ください。誤った情報よりも、検証した情報が広がるには、みなさんの力が必要です。

X(Twitter)FacebookYouTubeInstagramなどのフォローもよろしくお願いします。またこちらのQRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、真偽が気になる情報について質問すると、AIが関連性の高い過去のJFC記事をお届けします。詳しくはこちらの記事を

もっと見る

NHKは地震が起こるのを知っていたから対応が早い? 速報システムがある【ファクトチェック】

NHKは地震が起こるのを知っていたから対応が早い? 速報システムがある【ファクトチェック】

NHKがニュース番組放送中に地震があった際、キャスターが地震の原稿をすぐに読み始めたことについて「NHKは地震が起こることをあらかじめ知っていた」という投稿が拡散しましたが、誤りです。速報の仕組みが整えられています。 検証対象 2025年1月13日、「速報鳴ってから映像に見切れるFDフロアーディレクターが原稿渡すまでわずか11秒です。いくら何でも早過ぎやしませんかね😅」という投稿がXで拡散した。投稿に続くスレッドではこの地震が「人工地震」であるかのような主張もある。 2025年1月14日現在、この投稿は300件以上リポストされ、表示回数は35万件を超える。「確かに不自然なぐらい原稿渡されるまでが早い」と同調するコメントの一方、「日々相当な訓練をされてるんですね」というコメントもついている。 検証過程 動画はNHKニュースの切り取り 日本ファクトチェックセンター(JFC)が確認したところ、この動画は1月13日午後9時からのニュースウォッチ9。NHKプラスで見ることができ、拡散した動画は午後9時19分41秒から44秒間を切り取ったものだ。内容は改変さ

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
Metaがファクトチェックプログラムの廃止を発表/トランプ新政権めぐり繰り返される偽情報【今週のファクトチェック】

Metaがファクトチェックプログラムの廃止を発表/トランプ新政権めぐり繰り返される偽情報【今週のファクトチェック】

FacebookやInstagramを運営するMetaがこれまで進めてきたファクトチェック・プログラムを廃止し、コンテンツ規制を緩める方針を発表しました。ザッカーバーグCEOが表明した6つの新施策について詳しく解説しました。その他、韓国の飛行機事故、ワクチンなどのファクトチェック記事を紹介します。 ✉️日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら。 JFCからのニュース Metaのファクトチェックとコンテンツ規制に関する方針転換に対する公開書簡 Facebook、Instagram、Threadsを運営するMetaが現状のファクトチェック・プログラムを廃止し、コンテンツ規制を緩める方針を発表しました。マーク・ザッカバーグCEOは「検閲が過剰だ」とその理由を述べ、これまでパートナーシップを結んできたファクトチェック団体を「政治的に偏り、信頼を生むよりも壊してきた」と説明しました。 世界中のファクト

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
SNSはフェイクとヘイトの巣になるか Metaの方針転換とXが示すファクトチェックとコンテンツ規制の未来

SNSはフェイクとヘイトの巣になるか Metaの方針転換とXが示すファクトチェックとコンテンツ規制の未来

FacebookやInstagramなどを運営するMetaが「ファクトチェックを廃止する」と話題になっています。公式の発表では「第三者とのファクトチェックプログラムを廃止する」。実際には何がどう変わるのか。より影響の範囲が大きい「コンテンツ調整」の問題とともに解説します。 Metaの偽・誤情報対策は自社によるものと第三者によるものがあった 今回の動きを理解するためには、そもそもMetaがこれまでどのように偽情報やヘイトスピーチなどに対応してきたかを知る必要がある。外部のファクトチェック団体と協力する「第三者ファクトチェックプログラム」とMeta自身による「コンテンツ調整」の2つだ。 Metaの「コンテンツ調整」とその課題 Facebookを利用していて「投稿が削除された」という経験がある人もいるだろう。これを「ファクトチェック」と誤解している人がいるが違う。これはMetaが自社のテクノロジーで実施しているもので「Content Moderation(コンテンツ調整)」と呼ばれる。 コンテンツ調整とは、あるコンテンツを削除したり、拡散量を減らしたり、逆に

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
Metaのファクトチェックとコンテンツ規制に関する方針転換に対する公開書簡

Metaのファクトチェックとコンテンツ規制に関する方針転換に対する公開書簡

Facebook、Instagram、Threadsを運営するMetaが現状のファクトチェック・プログラムを廃止し、コンテンツ規制を緩める方針を発表しました。マーク・ザッカバーグCEOは「検閲が過剰だ」とその理由を述べ、これまでパートナーシップを結んできたファクトチェック団体を「政治的に偏り、信頼を生むよりも壊してきた」と説明しました。 世界中のファクトチェック団体を認証している国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)は、この決定と発言に対して公開書簡を出しました。日本ファクトチェックセンター(JFC)を含む多数のファクトチェック団体も署名しています。JFCとして日本語訳し、こちらに掲載します。 IFCNの公開書簡(2025年1月9日) 拝啓 ザッカーバーグ様、 9年前、私たちはFacebook上の虚偽情報によって引き起こされる現実世界での被害についてあなたに公開書簡を書きました。それに応じて、Metaはファクトチェックプログラムを立ち上げ、数百万人のユーザーをデマや陰謀論から保護しました。今週、あなたは「検閲が過剰である」との懸念から、アメリカ国内で

By 古田大輔(Daisuke Furuta)