青森の地震は人工地震? 繰り返し拡散する誤情報【ファクトチェック】
2025年12月8日、青森県東方沖を震源とする地震があり、青森県で震度6強の激しい揺れを観測しました。この地震が人工地震であると示唆する投稿が多数拡散していますが、誤りです。大きな地震が発生したり、震災からの節目の日を迎えたりするたびに「地震は人工的な兵器」というような人工地震説が拡散しますが、専門家は大きな地震を人工的に起こすのは「非現実的」と否定しています。
検証対象
拡散した言説
2025年12月8日夜遅く、青森県東方沖を震源とする地震があり、青森県で震度6強の激しい揺れを観測した。この地震が人工地震であると示唆する投稿が多数拡散した(例1,2)。

検証する理由
こうした投稿は、大きな地震のたびに繰り返し拡散している。「他国からの攻撃だ」というような陰謀論に使われることもある。
検証過程
専門家「人工地震で震災級の地震は非現実的」
日本ファクトチェックセンター(JFC)は、人工地震について、東京大学地震研究所の古村孝志教授にたびたび取材をしている。人工地震について、2023年3月に実施したインタビューを以下に再掲する。
古村教授は、人工地震自体は存在するという。
「人工地震は、爆発や重りの落下、圧縮空気等を海水中で膨張させるなど、人工的に発生させた地震のことを言います。断層や資源探査など地下構造調査に世界で広く使われる技術です。名称が兵器のようなものを連想させるので、最近は制御震源という呼び名が使われるようになりました。結果、人工地震という用語が隠された陰謀のように聞こえるのかもしれません。1990年代までの新聞を探すと、各地で地下構造調査に実施された人工地震の記事が見つかります」
ただし、古村教授は、震災級の地震を引き起こすのは「非現実的」と明確に否定した。
「史上最大の爆発は1971年アメリカネバダ州で5メガトンの核爆弾を使用した核実験で、この規模はM6.9の地震に相当します(参照)。阪神淡路大震災のM7級の地震を人工的に起こすためには、これだけの核爆弾を必要とし、非現実的です。スマトラ島沖地震や東日本大震災のM9級の地震では、この1000倍の核爆弾が必要です」
それだけの核爆弾を準備すること自体が非現実的だが、さらなる技術的な問題もある。
「これらの地震の深さは地表や海底下数十キロであり、世界最大級の地球深部探査船『ちきゅう』を使っても海底下7キロしか掘ることはできません。陸上では、サハリン油田の地下12キロが最深です」
また、データの公開によって透明性も確保されている点を指摘する。ポイントは地震の揺れのうち、最初にくるP波(縦波)と次に来るS波(横波)の大きさだ。
「地震波データは世界中の地震観測点で記録され公表されています。爆発による揺れは、P波が強くS波が不明瞭であるため、S波が強い自然地震の揺れと区別がつき、CTBTO(包括的核実験禁止条約機関準備委員会)ではこれらの特徴を用いて核実験の監視が行われています」
P波とS波の分析には、専門家の知見が必要だ。誤解が生まれやすい事例について、次のように説明する。
「震源付近の観測点では、P波とS波がほぼ同時に到達するため連続した揺れとして記録されることがあります。この特徴を誤って解釈し、『人工地震である』と主張する例がありますが、誤解しないよう注意が必要です」
判定
12月8日に発生した青森の地震が人工地震によるものだという言説が多数拡散した。専門家は、大きな地震を人工地震で引き起こすのは非現実的であると否定している。よって、誤りと判定する。
出典・参考
武藤大介.”爆発または衝突により発生する地震の規模について”.
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/kenshin/vol81_1.pdf,
検証:根津綾子
編集:古田大輔
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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