浜崎あゆみ、友近、ビートたけしが死去? 著名人の偽訃報を発信【ファクトチェック】

浜崎あゆみ、友近、ビートたけしが死去? 著名人の偽訃報を発信【ファクトチェック】

歌手の浜崎あゆみ氏、タレントのビートたけし(北野武)氏、友近氏などの著名人が亡くなったという情報がYouTubeの特定のアカウントから次々と発信されています。これらは偽の訃報で、死亡したという情報は誤りです。サムネイルには「死去」と書いていますが、動画は経歴を自動音声で読み上げるだけで、死去に関する情報はありません。

検証対象

YouTubeで「浜崎あゆみが死去」「ビートたけしが死去」「タレントの友近氏が事故死」など著名人が死亡したという動画が次々と配信されている。

このアカウントは「◯◯が死去」というサムネ付きの動画を遅くとも2023年7月頃から配信しており、直近では1日数本のペースで新たな「訃報」を流している。動画では、人物の画像と共に経歴を紹介する自動音声がそれぞれ約15分間流れる。

これらの動画の中には、視聴数が10万を超えるものもある。これらの投稿に対して「友近が事故で死んだの?何でなん」「なんかあったの?」と信じるようなコメントの一方で「え嘘なら捕まれ」などの批判も出ている。

検証過程

動画の内容は自動音声で不自然な日本語も

拡散した動画はいずれも13~15分程度で、内容は自動音声が「幼少期から周囲を笑わせることが好き」などと経歴を読み上げるだけだ。

いずれも、死去に関する情報は無い。友近氏の動画では、タレントのタモリ氏が登場する場面で「タゴリ」と言い間違える不自然な日本語もある。

友近氏は2025年6月6日にSNS発信

友近氏が亡くなったという動画が配信されたのは2025年5月29日だ。

しかし、友近氏が発信しているInstagramを確認すると、6月6日に食事の様子を投稿している。

浜崎氏も動画配信後にSNS発信

浜崎氏の場合、6月3日に「死去した」という動画が配信されている。

しかし、浜崎氏のInstagramは6月5日に更新され、公演のリハーサルについて発信している(浜崎氏のInstagram)。

北野氏は長嶋茂雄氏へのコメントを公表

北野氏が「死去した」という動画は6月1日に配信されている。

しかし、動画公開後の6月3日、北野氏は自身の公式サイトで長嶋茂雄氏の訃報についてコメントを公表している。

判定

拡散した動画は自動音声で経歴を読み上げるだけで、死去に関する情報は無い。また、動画が拡散した後に著名人自身がSNSや公式サイトで発信を続けている。よって誤りと判定した。

あとがき

著名人が亡くなったという偽情報は、インプレッションを稼ぐ目的などで定期的に発信されています。

著名人が亡くなれば、主要メディアは一斉に報道します。名前を聞いたこともないメディアや個人の発信の場合は、他メディアの報道を確認しましょう。

日本ファクトチェックセンター(JFC)では、過去にも著名人の偽の訃報を検証して「誤り」と判定しています。

研ナオコさんが70歳で自宅死去 葬儀では数千人が涙?【ファクトチェック】
歌手の研ナオコさんが自宅で死去という言説が拡散しましたが誤りです。拡散元のYouTubeアカウントは著名人の訃報に関する偽情報を多数配信しています。 検証対象 2023年12月11日、「研ナオコさんが70歳で自宅死去 葬儀では数千人が涙」という動画がYouTubeに投稿され、X(旧Twitter)などで拡散した。動画では、研ナオコさんの画像が流れ、「帰省中に交通事故にあった」と音声が流れる。 2023年12月27日現在、動画は144万回以上再生されている。Xでは歌手のASKA氏も「研ナオコさんのこと、嘘だよね?」と投稿し、リポスト300件以上、表示回数は87万件を超える。投稿について「知らなかった」「亡くなったんだ」などのコメントの一方で「悪質なデマだ」との指摘もある。 検証過程 研ナオコさんは、動画が投稿された9日後の2023年12月20日、公式Instagramで食事する様子を動画で投稿している。 また、公式HPによると、2023年12月23日に福島県富岡町での公演に出演している。日本ファクトチェックセンター(JFC)が会場の「富岡町文化交流セン

検証:木山竣策
編集:藤森かもめ、古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

被害が拡大するオンライン詐欺、対策はファクトチェックと共通/JFC検証8本、動画など【今週のファクトチェック】

被害が拡大するオンライン詐欺、対策はファクトチェックと共通/JFC検証8本、動画など【今週のファクトチェック】

「ファクトチェック」とは印象が異なるかもしれませんが、オンライン詐欺の問題にも世界の多くのファクトチェック機関が取り組んでいます。 著名人を騙るアカウントを使い、架空の投資話などで資金を振り込ませる。世界中で被害が広がっている手口です。偽アカウントの見分け方、オンラインで見の安全を守るメディア情報リテラシーなど、対策はファクトチェックと共通します。 日本ファクトチェックセンター(JFC)でも、たびたび具体的な事例を挙げて注意を呼びかけていますが、被害額は増える一方です。 法的な取り締まりも必要ですが、まずは身を守るために自衛策を学び、家族や知人にも注意を呼びかけましょう。(古田大輔) ✉️日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら。 JFCからのお知らせ JFCファクトチェック講師養成講座はこちら 日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
実業家・前澤友作氏になりすましたAI偽広告に注意

実業家・前澤友作氏になりすましたAI偽広告に注意

実業家の前澤友作氏になりすました偽広告がYouTubeなどで拡散しています。AIで生成したと見られ、前澤氏自身がSNSで注意喚起をしています。 YouTube広告に著名人の偽広告 実業家の前澤友作氏になりすました偽のYouTube広告が拡散している。偽の動画では、前澤氏が株式投資を勧め、「10倍にしたい人、今すぐ耳を傾けてください」などとLINEへの登録を促している。 一部不自然な日本語で話していたり、唇と発言が一致していない場面もある。また動画上部には「KABU&」と書かれている。 広告リンクをクリックすると、「前澤友作のLINEを無料で追加し、『受取』と送信するだけで、翌日値上がりする銘柄がわかります。さらに、毎週60%の利益が期待できる優良銘柄情報も入手できます」と表示され、「特別な投資情報をお届けします!」とLINEへの登録を促している。 前澤氏やカブアンドもSNSで注意喚起 前澤氏は自身のXアカウントで注意喚起している。 「【拡散希望】前澤やカブアンドを騙る『偽の動画広告』について以下の動画は、すべて個人情報や金銭を騙し取ろうとする極めて

By 木山竣策
参政党、日本保守党に特別委員会の割り当てなし? 画像は過去のもの【ファクトチェック】

参政党、日本保守党に特別委員会の割り当てなし? 画像は過去のもの【ファクトチェック】

2025年7月の参院選で議席を獲得した参政党と日本保守党について「特別委員会の割り当てがない、国民の支持で議席を得た政党が、委員会審議に参加できないのは代表性の欠如」と国会を批判する投稿が拡散しました。これはミスリードで不正確です。画像は2025年1月〜6月の国会資料で、2025年7月の参院選後、参政党、保守党ともに議席に応じて各特別委員会の席が割り当てられています。 検証対象 2025年8月4日、「参政、保守に特別委員会の割り当てなし。国民の支持で議席を得た政党が、委員会審議に参加できないのは代表性の欠如。少数政党だからって、発言の場すら奪うなんてあまりにも理不尽だ」という投稿が根拠とされる画像付きで拡散した。 投稿したアカウントは@Hoshuto-kaihaで「日本保守党会の国会議員、河村たかし、島田洋一、竹上裕子の『会派』アカウント」とプロフィールに記している。 拡散した画像には「※参政、保守については割当なし」と書かれた資料が映っている。 8月15日現在、この投稿は8800件以上リポストされ、表示回数は68万回を超える。投稿について「あれだけ議席

By 木山竣策
太陽光パネルを屋根につけると火災保険に入れない? 損保大手3社など否定【ファクトチェック】

太陽光パネルを屋根につけると火災保険に入れない? 損保大手3社など否定【ファクトチェック】

「太陽光パネルを屋根につけると火災保険に入れない」という投稿が拡散しましたが、根拠不明です。大手損害保険会社3社は公式サイトで保険対象になると説明しています。2025年4月から新築住宅への太陽光パネルの設置等を義務付けている東京都も「太陽光パネルを設置した住宅は火災保険に入ることができる」と説明しています。 検証対象 8月5日、「保険屋さんから聞いたんだけど太陽光パネル屋根に実施すると火災保険に入れないとか」「東京都新築に義務化だったわよね?」という投稿がXで拡散した。 8月15日現在、投稿は6700回以上リポストされ、表示は402万回を超える。 投稿には「火事になった時、水かけられないからでしょ」「発火する可能性が屋根にある訳ですからね」というコメントの一方で「デマです」「その保険屋さん嘘つきだから、他の保険屋さんに契約変えた方が良いよ」という指摘もある。 検証過程 大手損保3社は火災保険の対象、ただし条件も 大手損害保険3社「東京海上日動」「MS&AD三井住友海上」「損保ジャパン」は、自社サイトに太陽光パネルを設置した住宅が火災保険の対象にな

By 根津 綾子(Ayako Nezu)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は8月23日(土)午後2時~3時15分で、お申し込みはこちら。 https://jfckoushiyousei0823.peatix.com 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にど

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験  教材と申し込みはこちら

JFCファクトチェッカー認定試験  教材と申し込みはこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)